中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

中国スターバックスがアリババと提携。3km以内30分出前を開始

中国スターバックスが、アリババと提携し、アリババの新小売スーパー「盒馬鮮生」(フーマフレッシュ)の宅配システムを使って、30分配送を杭州市で始めた。スタバは、新興の国内系カフェ「ラッキンコーヒー」やミルクティーブーム、コンビニコーヒーなどに押され、初めて売上が減少に転じた。スタバは、中国の消費者のニーズに合わせた改革を進めていると浙江24時が報じた。

 

意外と多い中国進出のグローバル企業

中国にもグローバル企業は数多く進出している。小売分野では、米ウォルマート、仏カルフールスウェーデンのイケアなど。電子製品ではアップル。アップルは中国にアップルストアをすでに42店も展開している。アマゾンも中国でサービスを展開している。カフェの分野では、スターバックスが1999年に北京市故宮博物館(紫禁城)の中に開店して以来、中国ではカフェと言えばスターバックスだった。このようなグローバル企業が、中国の消費者文化をリードしてきたことは間違いない。

 

グローバル式を押し付けていたグローバル企業

このようなグローバル企業は、いずれも「グローバル式」を押し付けるようなところがあった。中国のローカル事情をあまり考慮しない傾向があった。例えば、アップルは考え方の違いから保証修理の問題で、中国の消費者の支持を失ったことがある。どちらが悪いという問題ではなく、中国特有の考え方に配慮しなかったことが原因だ。

スターバックスも、グローバル的には紫禁城の中に店舗を出すというのは中国1号店としてはインパクトがあったが、中国伝統文化に対する敬意を感じられないとしてよく思わない中国市民も多かった(現在は閉店)。また、中国特有のQRコード方式スマホ決済にもなかなか対応しようとしないグローバル企業が多かった。

f:id:tamakino:20181031215330j:plain

北京市故宮博物館の中にあったスターバックス1号店。およそスタバらしくない外観だった。後に、中国文化を破壊するとして大きな議論になった。現在はすでに閉店されている。

 

中国式を取り入れていくスターバックス

ところが、この数年、特に「アリペイ」「WeChatペイ」のスマホ決済が普及をして、中国の小売構造が大きく変わる中で、どのグローバル企業も「中国式」を積極的に取り入れるようになっている。スターバックスもすでにスマホ決済に対応をし、さらに外売(出前)にも一部の店舗で対応をした。

スターバックスが中国式に対応し始めた理由は、スターバックスにとって中国市場が大きな存在になってきたからだ。すでに145都市、3300店舗を展開するが、2021年までに5000店舗にする計画を立てている。また、昨年12月には上海市に高級業態であるリザーブ・ロースタリーを開店した。焙煎工場を持つ飲料のテーマパークとも言えるもので、本拠地シアトル市に続く2号店となる。中国国内に焙煎工場ができたことで、一般のスターバックス店舗のコーヒーの品質も向上した。

f:id:tamakino:20181031215359j:plain

スターバックスが上海にオープンした高級業態、リザーブ・ロースタリー。焙煎工場が中にあり、飲料のテーマパークともなっている。シアトル市に続く2号店。スタバが中国市場をいかに重要視しているかがわかる。

 

f:id:tamakino:20181031215411j:plain

リザーブ・ロースタリーの店内。コーヒーだけでなく、紅茶や中国茶のコーナーもある。専門家が美味しい飲料の入れ方の講座を開くなど、イベントも随時行われている。焙煎したてのコーヒーが飲めるため、一般のスタバ店舗のコーヒーとは段違いに香りが高く美味しい。

 

スタバを追いあげる国内系カフェ、ミルクティー、コンビニ

一方で、中国のカフェ市場は成長し続けていて、2020年には1兆元(約16兆円)を突破、2030年には3兆元(約48兆円)を突破すると予測されている(日本の市場規模は約3600億円)のに、2017年後半から中国スターバックスは売上をわずかながら落としている。

その理由は、中国国内系のカフェが伸びてきているからだ。スタートアップ「ラッキンコーヒー」は、スマホ注文を全面的に取り入れて、レジカウンターをなくした。店舗の席から自分のスマホで注文するか、あるいは店舗にいく途中でスマホから注文をし、「行列ができない」カフェとなり、今年5月までに500店舗を展開するという無謀とも言える計画を公表したが、それをやりきり、2番手の英コスタコーヒーと並ぶ地位に上がってきた。

さらに、コーヒー以外の中国茶を使ったミルクティーが、ブームとも言える状況になっていて、様々なミルクティー店が登場している。さらには、各コンビニ、ケンタッキーも格安コーヒーを始めるなど、もはや「スターバックス」というグローバルブランド力だけに頼ってビジネスができる状況ではなくなっている。

中国の消費者のニーズに対応をしていく必要が出てきているのだ。

f:id:tamakino:20181031215338j:plain

▲アリババとスターバックスが提携をした。左から2人めがアリババのダニエル・チャンCEO。3人目がスターバックスのジョン・カルバー社長。手に持っているぬいぐるみは、フーマフレッシュのキャラクター。

 

アリババと提携し、30分配送を実現

スターバックス中国企業との提携を進めているが、その中でも大きいのがアリババとの提携だ。10月18日、杭州市でアリババが運営する新小売スーパー「盒馬鮮生」(フーマフレッシュ)が入る親橙里(チンチェンリ)モールの中にスターバックスを出店し、このスターバックスがフーマフレッシュの配送システムを使って、3km以内30分配送の試験運用を始めた。試験運用中は、毎日、最初の1杯が無料になる。配送料は無料だ。

配送はフーマフレッシュが利用している保温ボックスで行われ、温かいものは温かく、冷たいものは冷たいままに配達される。

注文は、フーマフレッシュのモバイルアプリの中から行い、同時にスマホ決済が行われる。自宅だけでなく、職場や指定した場所への配送も可能。

すでに北京と上海では、出前を始めていたが、10月中に、広州、深圳、成都、天津、南京、武漢、寧波、蘇州などで出前の試験運用を始める予定だ。

中国スターバックスは3300店舗、2位グループの英コスタコーヒー、国内系ラッキンコーヒーは500店舗と、まだまだスタバ一強であることは揺るがない。しかし、スターバックスは危機感を持ち、猛スピードの改革を進めている。

f:id:tamakino:20181031215342j:plain

▲お馴染みのスタバの紙袋に入れ、フーマフレッシュの保温、保冷バッグに入れて30分配送される。温かいものは温かいまま、冷たいものは冷たいまま届けられる。

 

f:id:tamakino:20181031215352j:plain

▲自宅だけでなく、3km以内であれば指定地点への配送もされる。写真は杭州市の景勝地、西湖。多くの観光客がそぞろ歩きし、市民の憩いの場所でもある。今後は、スタバのコーヒーを手にした人が増えていくことになる。