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シャオミーが北京から武漢に一部移転か。加速する「北上広深から逃げる」現象

携帯電話メーカーで、中国のアップルとも呼ばれ、熱狂的なファンを持つシャオミーが、本社を北京から武漢に移転するのではないかという噂が駆け巡っている。シャオミーだけでなく、ファーウェイやZTEも大都市から地方都市への移転をしている。大都市からIT企業が流出する傾向が強まるのではないかと芯華集成電路人材基地が報じた。

 

シャオミーが地方移転を奨励

北京に本社のあるシャオミーが武漢に一部の機能を移転するのではないかという噂が駆け巡っている。その出どころとなったのは、シャオミーがウェイボーで公開した「移転社員に関する福利政策」だった。これによると、2019年3月までに武漢または南京に移住をした社員に対しては、同じ給与額を保証し、3万元(約48万円)の奨励金を出す。現地でのマンション購入の補助をし、さらに無料の引越しサービスを提供するというものだ。どのくらいの社員が応じているかは明らかにされていないものの、応じる社員は多いのではないかと見られている。

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▲現在のシャオミー本社。ショッピングモールに併設されたオフィスビルに入居をしている。中関村からは少し離れた場所にあるが、それでも家賃負担がバカにならないという。

 

深圳から移転するファーウェイ、ZTE

このようなIT企業大手が、大都市から地方都市に移転する例はシャオミーだけではない。すでに携帯電話メーカーのファーウェイが開発拠点を深圳から東莞市に、同じくZTEが生産拠点を深圳から河源市に移転をしている。

北京には、シャオミーの他、百度バイドゥ)、京東などのIT企業があり、その中心地である中関村は「中国のシリコンバレー」とまで言われていたが、その大きな一角の存在感が薄れることになる。北京市内にも社屋を建設していることから、完全移転ではなく、開発関係を移転させ、営業機能などは北京に残すことになるものの、業界関係者は時代が変わったことを実感しているという。

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▲シャオミーが入居しているオフィスビルに併設されているショッピングモール五彩城。食事や買い物には便利で、オフィス環境としては決して悪くない。

 

大都市の家賃と物価が移転の最大の理由

大都市から移転する理由は明らかだ。家賃が高くなりすぎたのだ。また、社員にとっても、大都市は物価が高く、通勤時間が長くなりがちだ。地方都市へ移転することで、通勤時間が短く、ラッシュもなくなり、物価も安いために生活も楽になる。大都市と同じ給与が支給されれば、物価との比較で実質給与がアップしたのと同じことになる。

一方で、大都市に居続ける理由は、知名度を上げるためだ。スタートアップ企業が全国的な知名度を得るには、北京、上海、広州、深圳という「北上広深」にいることが消費者の信頼を得て、知名度を上げることができる。しかし、2010年に創業して、わずか8年で香港市場に上場したシャオミーは、もはや知名度を上げる必要はない。大都市に居続ける理由が希薄になってきているのだ。

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▲現在のシャオミーが入居するオフィスビルの入り口。この本社機能を大幅縮小し、武漢に移転するのではないかと噂が流れている。

 

武漢に湖北本部を稼働させたシャオミー

昨年6月、シャオミーは武漢市政府と協議して、武漢市に湖北本部の建設を始め、11月から一部使用を開始、今年6月から本格稼働をしている。7月には関連会社を含め、600人の社員が勤務をしている。年内には1000名を超えるが、最終的には1300名ほどになる予定だという。

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武漢に建設されたシャオミーの湖北本部。左岸の四角い建物2棟がシャオミーの自社ビル。最終的には1300名ほどがここで働くことになるという。

 

大都市から地方都市へ経済成長も波及をしていく

このようなIT企業の地方都市への移転が進む背景には、経済発展をしたい二級都市の猛烈な誘致がある。税制優遇はもとより、道路などのインフラ建設も誘致を前提にして進めている。

北上広深が未だにスタートアップのゆりかごであり、IT企業が知名度を上げるための競技場であることは変わらないが、事業を確立し、知名度を得て、上場をした企業から、低コストでより環境のいい場所を求めて、地方都市に移転をしていく傾向が決定的だ。そうすることで、大都市から地方都市へ、資金、人材、技術が波及をしていき、地方都市の経済発展を刺激することになる。中国のIT経済の発展は、厚みを増していくことになる。