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「京東」が物流センターにリニア駆動を導入。狙いはスマート包装

ECサイト「京東」(ジンドン)の物流を担当する京東物流は、物流センターの仕分けラインにリニアモーター駆動のコンベアを導入した。その目的は、仕分け効率アップもあるが、中国独特の問題として包装素材の節約という目的があると中関村オンラインが報じた。

 

物流の世界で採用されるリニアモーター駆動

物流の世界では、仕分け設備にリニアモーター駆動を採用する例はもはや珍しくない。カートと呼ばれる台をリニア駆動させることで、扱える荷物の大小、重い軽いの幅が広がり、さまざまな荷物に対応できる。また、機械式駆動に比べて接触部分が少ないので、メンテナンスが楽で、騒音も少ない。

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リニアモーター駆動の内部。物流の世界で、リニア駆動自体はもはや珍しいものではなくなっている。

 

処理件数は従来の10倍に

カートを浮上させて荷物を移動させる方式なので、高速かつ定速度で荷物を移動させることができる。京東では、リニア駆動方式の導入で、1ラインで1時間に1000件の荷物を処理することができ、これは従来方式の10倍だという。

また、カートは重い軽いに関係なく、最高毎秒5mの高速で移動する。

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リニアモーター駆動が導入された京東の物流センター。処理件数が大幅増加をすることもあるが、画像解析がしやすくなり、スマート包装が実用化できるということが京東にとっては最大のメリットだった。

 

京東の狙いは画像処理によるスマート包装

リニア駆動であれば、速度を自由自在に調節できる。荷物の大きさ、重さに関係なく、どの荷物も同じ速度で移動させることができ、検査区間などでは速度を落とすことも簡単だ。この速度調節が可能ということが京東にとっては重要だった。なぜならスマート包装の導入を進めているからだ。

スマート包装とは、荷物を画像処理し、大きさや種類などを判別、最適な大きさ、素材、形状の包装を自動で行う仕組みだ。中国では、ECがあまりにも普及しすぎて、包装素材の不足に悩んでいる。最適な包装を行うことで、包装素材を少しでも節約をする。また、人に判断させる方法では時間がかかり、処理件数が落ちてしまう。これを自動化することで、処理件数が上がる。

このスマート包装の画像処理を行うのに、荷物が低速で移動することが重要で、今回、リニア駆動式を導入したいちばんの目的は、スマート包装の効率を上げるためだったという。

京東物流設備計画部責任者の王琨氏は、中関村オンラインの取材に応えた。「現在スマート包装は、スマートフォンルーター、スマートウォッチなどの商品に限られていますが、書籍や化粧品などにも拡大したいと考えています。国内の物流業界では、スマート包装を実用化したのは初めての事例だと思います」。

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▲梱包セクション。包装種別により分類された荷物が流れ、その荷物に最適の梱包をしていく。中国では、梱包材の節約が大きな課題になっている。

 

物流センターの無人化を目指す京東

また、段ボール箱などの包装の封緘にも従来の粘着テープを廃止し、熱溶解接着剤を利用するようにした。これにより、段ボール箱や包装の再利用が可能になるという。

さらにピックアップもロボットによって自動化を進めるなど、「仕分けの無人化」を推し進めている。

京東がこのような包装素材の節約や無人化を急いでいるのは、今年も11月11日がやってくる。中国最大のECサイトのお祭り「独身の日」だ。この日1日で、4兆円を超える売上があり、10億件を超える荷物が発送される。今回のリニア駆動、スマート包装も、今年の11月11日の準備のためだ。

中国のECサイト運営企業は、すでに臨戦態勢に入っている。

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▲仕分けもロボット化し、物流センターの無人化を進めている。