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長期休暇を自宅で過ごす百歩青年。変わり始めた休みの過ごし方

10月1日からまるまる1週間休みとなる国慶節休暇。中国人はどのように過ごすのか。WeChatが行動データをまとめてみると、約2100万人が自宅内で過ごし、1200万人が1日100歩も歩かない日があった「百歩青年」だと観察者網が報じた。

 

のべ7億人が旅行に。自宅派も2100万人

WeChatが発表したのは、アプリWeChatから取得した国慶節休暇中の行動データをまとめたもので「中国人のインドアとアウトドア」というレポートにまとめられている。これによると、相変わらず中国人の外へ向かっての行動力は旺盛で、約7億人が国内旅行をし、約700万人が海外旅行をした。

しかし、今年注目されたのは、自宅で過ごした人も2100万人に達したということだった。しかも、1200万人が1日100歩も歩かない日があった。そのうちの56%が、80年代生まれ(40歳前後)、90年代生まれ(30歳前後)だった。外に出ない人が増えていて、WeChatはこれを「百歩青年」と名付けた(中国の「青年」は男女を含む)。

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▲WeChatの発表で話題になったのが「百歩青年」。1日に100歩も歩かない日があった人のことだ。実際、都市部では日用品は無料30分配送、食事、コーヒーは外売(出前)が利用でき、本、音楽、映画などはスマートフォンで見ることができる。外に出かけないインドア派が増えている。

 

自宅派地域では出前も大幅増加

このような百歩青年が多いのは、広東省江蘇省山東省、浙江省などで、この地域の都市では、外売(出前)の注文量が急増した。外売サービス「餓了么」(ウーラマ)によると、今年の国慶節休暇期間、注文量は昨年同時期より48.8%増え、注文金額は40.7%伸びたという。

 

7日間で26回出前を注文し、13万円を使った人も

ウーラマのデータによると、最も外売に消費をした利用者は、北京の人で、その額は8031元(約13万円)だった。この利用者は、7日間の間に26回も外売を注文している。野菜炒め、サラダ、果物、菓子類を中心に注文した他、536元(約8600円)のシンガポールカニ料理を3回も注文し、1580元(約2万5000円)の高級干しナマコも購入している。

外売全体としては、ピータン入り肉がゆがいちばん人気となり、ジャガイモの細切りサラダ、チキンハンバーガー、チャーハン、おかゆなどの注文が多かった。

 

近隣外食も好調な伸び。特に50歳以上の伸びが目立つ

百歩青年といっても、1週間毎日自宅にこもっているわけではない。近隣の飲食店の消費も好調だった。アリババ系の生活情報サービス「口碑」(コーベイ)によると、外食は通常期間よりも50%増となり、最も人気だったのは火鍋店だった。

また、50歳以上の中高年の伸びが著しく、昨年の国慶節よりも消費額が16%増加した。しかも、中高年が若者文化に属する飲食を楽しみ始めたという。今、中国では若者の間で、ミルクティーが流行している。タピオカとミルクを入れた中国茶などで、見た目も楽しいことから、SNSを通じて人気になっている。このような店にも中高年が行くようになり、50歳以上の来店客は、通常期間の68%増となり、昨年同時期からも30%近く増加した。

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▲自宅派が増えているのに、映画館は低調だった。国慶節休暇期間いちばんの話題作だった「李茶のおばさん」も初日を除けば、空席が目立ったという。

 

映画館は低調、自宅読書が好調

近隣で楽しめる娯楽の代表である映画は低調だった。国慶節休暇期間の国内の映画館の売り上げは17.11億元(約277億円)で、昨年同時期から35%も減じている。国慶節期間の目玉映画であった「李茶のおばさん」は公開初日こそ満員だったものの、次第に満席率が下がっていった。

一方で、自宅で本を読む人が着実に増えている。WeChatには図書の読み放題サービスがあり、国慶節期間にこの読み放題を使った全員の総時間は1987万時間にも達した。最も読書をした利用者は84時間で、毎日12時間読書をしていたことになる。人気だったのは「青春小説」「社会学」「SF」「歴史軍事」「エッセイ」などだった。

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▲WeChatによると、休暇中に自宅で読書をする人も増えているという。最も人気のジャンルとは、都市恋愛小説だが、社会学や歴史など固めの本も読まれている。

 

仏系青年、百歩青年は新しいライフスタイル

人口の多い中国で、2100万人の自宅派、1200万人の百歩青年というのは小さな数字にすぎない。国内旅行の延べ人数が7億人ということを見れば、多くの中国人は相変わらず意識が外に向かって活動的であることがわかる。

しかし、一部とは言え、着実に中国人のライフスタイルは変わりつつある。「仏系青年」(強い欲望を持たないあっさりとした若者)は当初、揶揄する文脈や珍しがられる意味で使われる言葉だったが、今では肯定的な意味合いも増してきて、自ら「仏系青年」を名乗る若者も現れてきた。「百歩青年」も今は、揶揄する言葉だが、そのうち肯定的に使われるようになるかもしれない。

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