中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

スマホ決済「アリペイ」「WeChatペイ」「銀聯」それぞれの国慶節

国慶節の大型連休が終わり、各スマホ決済「アリペイ」「WeChatペイ」「QuickPass(銀聯)」が、国慶節期間での海外での利用状況をまとめて発表している。その発表内容はそれぞれの特色があると新零售支付が報じた。

 

海外旅行をする人も多い国慶節の大型連休

10月1日は国慶節。毛沢東天安門中華人民共和国成立の宣言をした日で、いわば建国記念日だ。10月1日から3日までが休日となるが、前後の週末を挟むことで、7日から8日の大型連休となる。

同じ大型連休の春節旧正月)は、実家に帰る人や親戚、家族と会う人も多いが、国慶節はそれぞれがそれぞれにレジャーを楽しむ休暇だ。海外旅行に行く人も多くなる。それは、中国のキャッシュレス決済が海外で大量に使われる時期でもある。

国内では、アリペイとWeChatペイに押されっぱなしの銀聯だが、大型連休期間は息を吹き返す。5年ほど前まで、中国人にとって海外での決済手段と言えば、銀聯カードしか事実上なかったため、海外のツーリストエリアでは銀聯対応が進んでいた。日本でも、アリペイやWeChatペイ対応の店舗は増えているとはいうものの、圧倒的に銀聯対応の店舗数が多い。銀聯は、中国人が海外にいく大型連休後は、利用率の統計などを発表して、存在感をアピールするのがいつものことになっている。

f:id:tamakino:20181017142631j:plain

▲WeChatペイが利用できることを知らせるノボリ。日本でも観光地を中心にアリペイ、WeChatペイへの対応が進んでいる。

 

カードだけではなく、スマホにも対応している銀聯のQuickPass

銀聯カードというのは、本来はデビットカードなのだが、そこに審査をした上で、分割払い、リボ払いなどの機能をつけるケースが多く、使い勝手はクレジットカードと変わらない。実際、中国人は「信用カード(クレジットカード)」と呼んでいる。

銀聯カードは、IC付きのプラスティックカードだったが、現在ではQuickPassと呼ばれる新方式の普及を急いでいる。これはカードにNFC機能をつけ、リーダーにタッチするだけで済む非接触決済だ。さらに、スマートフォンに専用アプリを入れ、カードとひもづけることで、非接触スマホ決済やQRコード決済にも対応する。Apple Payだけでなく、ファーウェイペイ、Miペイ(シャオミー)、サムスンペイなど各種スマホ決済プラットフォームにも対応している。

つまり、プラスティックカードとして非接触決済を実現しただけでなく、多様なスマホ決済に対応することで、アリペイに対抗しようというものだ。

 

国内では低調でも、海外では存在感がある銀聯

銀聯は、例年通り、国慶節期間に利用額が大幅に伸びたという発表を行った。銀聯の発表によると、国慶節期間の利用額は1.58兆元(約25兆円)、決済数は7.94億回、それぞれ昨年同時期よりも31.9%、24.5%の伸びになった。

QucikPassも大幅に伸び、スマホによるQRコード決済の利用額、決済数は、それぞれ昨年同時期の6.9倍、36.8倍になった。また、ファーウェイペイ、Apple Payなどのスマホ決済プラットフォーム経由での決済額、決済数とも昨年同時期から70.1%、102.8%の伸びになった。

 

アリペイの海外利用は急増中

アリペイは、現在海外での対応を進めている状況で、海外でのアリペイ決済が急増しているということをアピールした。海外でアリペイが利用できる観光地の人気ランキングを発表している。

このうち、1位のイギリスバイチェスターでは昨年の90倍、2位の日本の大阪道頓堀では70倍、オーストラリアのシドニー国際空港では55倍のアリペイ決済が行われたと発表している。

今年のアリペイは、欧州での展開に力を入れていて、すでに100以上の欧州の銀行と提携をし、欧州20カ国でアリペイが利用できるようになったという。

f:id:tamakino:20181017142629p:plain

▲アリペイが発表した海外でアリペイが利用できる人気観光地ランキング。バイチェスターアウトレットでは、昨年の90倍もアリペイが使われた。

 

アリペイの海外利用は中高年が中心

また、面白いのが利用者のデータ分析で、海外でアリペイを使った世代で最も増えたのはなんと60年代生まれ(60歳前後)で、9割も利用人数が増えた。一方、海外での消費額が増えたのは70年代生まれ(50歳前後)と80年代生まれ(40歳前後)でいずれも35%の増加だった。

一方、90年代生まれ、00年代生まれの若い層は、海外での消費が増えていない。つまり、海外旅行をして海外で消費をするのは40歳以上が主力であり、90年代生まれ(30歳前後)が消費の中心になる数年後に、中国人の海外旅行事情に大きな変化が生じるかもしれない。

 

テンセントが発表した「百歩青年」は1200万人

WeChatペイを運営するテンセントは、ユニークな発表を行った。それは、国慶節期間、100歩しか歩かない日が1日でもあった人が1200万人もいて、80年代生まれと90年代生まれがそのうちの56%を占めているというのだ。つまり、まったく外出をせずに、自宅で過ごしているということで、このような若者は「百歩青年」と呼ばれるようになり始めている。

 

一級都市市民は自宅で過ごし、二級都市市民は旅行に行く

国慶節期間、海外に出国した中国人は約700万人。その中で目立つのが二級都市市民の躍進だ。海外消費の伸び率は、北京市民が45%、上海市民が60%と依然として高いが、深圳市民は28%、広州市民は27%とそろそろ頭打ち感が出始めている。しかし、二級都市では福州市民の70%、杭州市民の50%、武漢市民の31%、天津市民の30%、成都市民の26%、重慶市民の21%と、大幅に伸びる、あるいはこれから伸びていく様子が見て取れる。

中国の海外旅行者数、海外消費は、これからもどんどん伸びていく。しかし、その中心は二級都市の中高年になりつつある。一級都市の若い世代は、むしろ自宅でくつろぐ「百歩青年」が増え始めている。都心の便利な地域では、ECサイトや外売(出前)、新小売(宅配スーパー)などが充実していて、必要なものは30分で配送してもらえる環境が整っているからだ。

「長期休暇に海外旅行をする中国人」のイメージは変わらないが、その中身はかなり変化をしてきている。