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人工知能が交通信号を制御。ET都市ブレインが杭州市でいよいよ本格始動

9月19日、杭州市の西湖区雲棲で開催されたアリババの開発者会議で、2年間に渡って杭州市で試験運用をしていた「ET都市ブレイン」を本格始動することが発表された。ET都市ブレインは、交通信号を人工知能で制御することにより、交通流量を円滑にし、渋滞の解消を目指すもの。適用範囲は杭州市中心の3区を含む420キロ平米になると浙江オンラインが報じた。

 

交通信号を人工知能が制御。渋滞を解消する

ET都市ブレインは、アリババ傘下のアリクラウドが開発した人工知能交通ソリューション。交通信号と道路監視カメラなどに接続をされ、交通信号の点滅時間を機械学習で制御することにより、交通の流れを円滑にする。

主な機能は3つある。

1)交通信号を制御することにより、交通流量を調整し、渋滞が生じないようにする。

2)救急車などの緊急車両の移動に合わせて、信号を青に切り替え、現場到着時間を短縮させる。

3)監視カメラの映像から交通違反や交通事故を自動認識、自動で交通警察などに通報する。


ET大脑详情页 城市大脑

▲アリクラウドの公式プロモーションビデオ。ET都市ブレインの機能がわかりやすくまとめられている。

 

渋滞王と呼ばれた渋滞が試験導入で解消

杭州市民が特に実感をしているのは渋滞の解消で、今年7月に試験導入された莫干山路では、以前はタクシーの運転手から「渋滞王」とまで言われて、ぴたりと動かなくなるひどい渋滞が日常的に起こる場所だったが、そのひどい渋滞が消えて、車が前に進むようになった。

この試験導入地域は、次第に拡大され、杭州市の報告書によると、2016年は杭州市は渋滞のひどい都市として全国ワースト5位だったが、今年の第2四半期ではワースト57位まで改善をした。

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▲交通信号を人工知能が制御する。渋滞の程度を機械学習させ、信号の点滅時間を変えることにより、渋滞を発生させない、あるいは解消していく。試験導入では線での制御だったが、本格導入からは面での制御ができるようになる。
 

「線」導入の試験導入でも大きな成果。いよいよ「面」導入が始まる

杭州市は2年前からET都市ブレインの導入を計画してきて、昨年から試験運用を始めていた。

このような信号制御による渋滞解消ソリューションでは、面で導入をしなければ大きな成果が得られない。しかし、線で導入をした試験運用でも大きな成果が上がっている。杭州中心部では、莫干山路で通過時間が8.5%短縮、中河・上塘高架道路で15.3%短縮を達成したとアリクラウドは発表している。

今回の本格運用で、適用範囲の面積は420平方キロ、西湖65個分になり、試験運用時の28倍となる。この適用範囲の中には、1300カ所の信号があり、4500カ所の交通監視カメラがある。杭州市全体の1/4の交差点が人工知能で制御されることになる。

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▲新しくなったET都市ブレインでは、バス停に滞留する人数も把握するという。滞留人数に合わせて、バスを増便し、市内の移動を円滑にする。

消防出動の演習も進む

アリババ開発者会議の前日、余杭区の余杭消防署では特別公開演習が行われた。午前10時57分、余杭区の住宅街の星韵北路で火災が発生したという想定の演習だった。

火災の発生もET都市ブレインが検出する。ET都市ブレインが監視をするIoT機器ーー信号機、監視カメラなどの異常温度上昇を感知すると、ET都市ブレインは火災が発生したと認識、管轄の消防署に、火災の発生位置、周辺の道路状況、ガソリンや油、火薬などの大型可燃物の有無などを通知する。同時に、救急隊、警察、水道、電力会社などにも警報が通知され、現場に向かう消防隊からの写真、音声、テキストなどが共有されるようになる。

現在、6カ所の全域消防署、10カ所の地域消防署、60カ所の小型消防署や救急隊、警察、水道、電力などの機関がET都市ブレインに対応をしている。

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▲交通事故や火災なども自動で判別をし、適切な消防署、交通警察、救急隊に通知を飛ばす。事故の程度も判別をし、どの事故を優先すべきかも判断される。

 

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▲救急車、消防車などの緊急車両が出動すると、現場までの最短経路を自動検索。緊急車両の移動に合わせて、交通信号をすべて青に変えていく。現場到着時間は約1/2に短縮される。


蘇州市、クアラルンプールでの試験導入も始まっている

ET都市ブレインは、杭州市だけでなく、2017年1月には江蘇省蘇州市、2018年1月にはマレーシアのクアラルンプールでの試験運用が始まっている。

ET都市ブレインは、2016年4月に導入計画が始まった。杭州市の交通警察、都市管理、建設委員会などの11の杭州市政府機関と、アリババを中心にフォクスコンなどの13の企業が集まって、導入のための開発を始めている。その9月には、杭州市の粛山地区で導入試験が行われ、車両の平均速度が3%から5%上昇するという結果を得た。

そして、2018年の7月に、杭州市最悪の渋滞道路、莫干山路に導入され、通過時間が8.5%短縮という結果を得た。そして、9月、杭州市の中心部をカバーする広範囲に導入されることになった。

今まで「線」での導入だったものを「面」での導入に踏み切るため、当初は目立った成果を得ることは難しいが、人工知能の学習が進む数ヶ月後には大きな成果が上がるのではないかと関係者は大いに期待している。

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▲監視カメラ映像から事故も自動判別する。左の2台の車が高速で停車。その他の車が車線変更をして避けている。ET都市ブレインは、追突事故と判断し、交通警察や救急隊に通知を飛ばす。

 

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▲すでに設置されている交通監視カメラの映像をリアルタイム解析し、交通量や交通事故、交通違反などを識別する。