中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

乗車地点までARナビをしてくれる滴滴出行アプリ

AR(拡張現実)は毎日のように話題になるが、身近なところでの活用法というのはなかなか登場しない。その中で、ライドシェア滴滴出行(ディーディー)が乗車地点までをARでガイドするといううまい活用法をアプリに搭載したと遇見人工智能が報じた。

 

話題にはなっても実用活用が難しいAR

ARを活用したサービスが今いち普及をしない。業務用や研修用にはAR技術の活用が進んでいるが、消費者向けサービスでは実用的なものがほとんどない。多くが、実用性よりも話題性を狙ってリリースされているからだ。

例えば、家具メーカーが、自分の家に家具を置いたらどんな感じになるかをARでわかるアプリのようなものを公開しているが、消費者がいちばん知りたいのは、その家具を置いて、家の中でじゃまにならないのかどうかという「サイズ感」だ。しかし、スマートフォンの画面で見ると、このサイズ感がよくわからない。

ARは技術的には話題になるものの、意外に使いどころが少なく、効果的な活用が難しい。

f:id:tamakino:20180919212845j:plain

▲北京のショッピングモールで試験運用が始まった屋内ナビ。滴滴出行の車が迎えにきている地点まで誘導してくれる。

 

施設の中では利用できないGPS

その中で、ライドシェアの滴滴出行がアプリの中で実現したARナビゲーションが便利だと話題になっている。

飛行場やターミナル駅、ショッピングモールなど巨大施設では、どこへ向かえばいいのかがわからなくなることがしばしばある。しかも、巨大なだけに間違った方向に歩いてしまうと、時間のロスは大きく、足も疲れる。

屋内であるのでGPS信号がうまく受信できず、表示される現在地はずれることが多い。その状態でコンパスをオンにして、進む方向を確かめても、合っているのかどうか不安なまま歩くことになる。

f:id:tamakino:20180919212842j:plain

▲現在位置は、ビーコンではなく、画像解析で把握する。そのため、人混みが多くなる、背景が単純などの条件下では現在位置把握が難しくなるという弱点もある。

 

ライドシェアのお迎え地点までの案内してくれるARナビ

滴滴出行のARは、飛行場や駅、ショッピングモールなどで、ライドシェアが向かえにきている車寄せまでをガイドしてくれるARだ。現在、北京のショッピングモールで試験運用が始まっている。

スマートフォンをかざすと、ライドシェアの車が到着する出口までの方向と距離が現実の風景にオーバーラップして表示される。

 

ビーコンではなく、画像解析で位置を把握する

ユニークなのは、通常、このようなシステムを導入しようとすると、GPSの代わりにビーコンを設置して、このビーコン信号を受信することで現在地を把握しようとする。しかし、滴滴のARはビーコンを設置せず、風景を画像解析することで現在地と方向を把握しているという。滴滴によると、画像解析による現在地把握は非常に安定性があり、1mの精度で現在地を把握できる。WiFiBluetoothなどのビーコンを使うよりも優れているという。

f:id:tamakino:20180919212839j:plain

▲空港、駅、モールなどの巨大施設では、乗車地点まで迷ってしまうことが多い。滴滴出行ならではのARナビだと話題になっている。

 

人が多いと位置確定が難しいという弱点も

ただし、弱点もある。大きな広場など変化が少ない場所、人混みが多くなり風景画像が一部しか得られない状態では、現在地把握がしづらくなり、また同じ風景、文様を意図的に繰り返すようなデザインをしている場合、時間によって陽の光により風景画像が大きく変化する場合なども苦手だという。

つまり、滴滴はこのような弱点が避けられる、空港、駅、ショッピングモールからサービスを提供しようとしている。

ライドシェアを頼んだはいいが、どこに車が止まっているかわからず右往左往するということは多く、運転手に電話をしても、運転手も利用客がどこにいるのかわからないので案内しようがないこともある。

このARナビゲーションは非常に便利で、他の施設でも早くサービスを開始してほしいという声が早くも上がっている。