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4000万人が使う隠れた定番アプリ。バスナビ「車来了」

武漢元光科技が開発したバスナビアプリ「車来了」が、利用者4000万人という隠れた定番アプリになり、成長を続けている。「次のバスが何分後にくるか」を教えてくれるのが主な機能だが、他ではなかなか真似ができない発想で、定番アプリとなった。

 

次のバスが何分後にくるかを教えてくれるアプリ

中国の都市内移動は、バスが便利だ。地下鉄の駅間は数kmあるが、バス停の間隔は1km以内。バスで移動をすると、歩く距離が短くなり、疲れない。

ただし、問題がある。バス路線は非常に複雑なので、地元民でなければ、どの路線に乗ればいいのかがなかなかわからなかった。これは、百度地図、高徳地図などのマップアプリが登場して、路線検索をすることでほぼ解決された。

もうひとつの問題は、道路渋滞により、しばしばバスが遅延することだ。次のバスがいつくるかはマップアプリでも表示されない。マップアプリは、公式の時刻表に基づいて、遅延がなかった場合の状況を表示してくれだけだ。

ところが、車来了(車が来たよ!の意味)は、実際の遅延を考慮して、次のバスがいつくるかを表示してくれる。

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▲車来了を起動すると、周辺の複数のバス停にくるバスの到着時間の一覧が表示される。先にこれを見て、どのバス停にいくかを考えることができる。下に定時運航率が表示されている。

 

バスの位置情報はテロ防止のために非公開

なぜマップアプリはリアルな状況を表示してくれないのか。それはバスのGPS情報が非公開だからだ。多くの都市の路線バスには、GPSユニットが搭載されていて、市の交通局は、すべてのバスの位置情報をリアルタイムに把握している。

しかし、その情報は公開していない。テロの標的になるという理由からだ。バス停には液晶パネルなどが配備され、そこには次のバスが何分後にくるかが表示される。しかし、この情報はバス停にいかないと知ることができない(市によっては公式アプリ、公式ウェブで情報提供しているところもある)。

車来了では、アプリを起動すると、周辺の複数のバス停が表示され、それぞれに次のバスが何分後に到着するかが表示される。それを見て、どのバス停を利用すればいいか選ぶことができる。

わざわざバス停にいかなくても、次のバスの到着時間がわかる。これが車来了の人気の秘密だ。

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▲中国のバス停には電光表示で、次のバスが何分後にくるかを表示してくれるところが増えてきた。しかし、バス停までこないと、この情報を知ることができない。

 

利用者のスマホGPS情報からバスの位置を推定

しかし、GPS情報が非公開であるのに、車来了はどうやってバスの到着時間を知ることができるのだろうか。

原理は単純で、車来了の利用者のスマートフォンGPS情報を追跡するのだ。グーグルマップなどのマップアプリでは、利用者のスマートフォンGPS情報を取得し、移動パターンから、徒歩、自転車、電車、自動車を判別し、自動車の移動が速度低下を起こしたら渋滞と判断して、マップ上に渋滞表示をする。これと同じことを、徒歩とバス移動に関して行なっている。

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▲バスの路線図も表示され、この場合は次のバスが6分後、その次が25分後にくる。6分でバス停にいけるのであれば、このバスを利用するなどと考えることができる。渋滞が発生している場合は、この路線図に赤色などで表示される。

 

年内には利用者1億人を突破予定

車来了は、アプリだけでなく、スマホ決済「アリペイ」「WeChatペイ」のミニプログラムとしても提供されている。このミニプログラムをいったん入れた人のうち、50%以上が使い続けるという驚異の継続率になっている。

武漢元光科技によると、現在、車来了は利用者1人あたり、1日で11分の時間を節約しているという。現在66都市をカバーし、利用者は4000万人だが、年内にはカバー都市を100都市以上にし、香港もカバー地域にし、利用者1億人を突破させる見込みだという。

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▲中国の都市部ではバスも重要な公共交通機関のひとつ。駅間が短いので、うまく使うと歩く距離が短くできる。バス停もどんどんIT化していっている。

[オールカラー]昭和青春バス紀行 (NEKO MOOK)

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