中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

厳しさを増す無人コンビニビジネス。トレンドは新小売へ

無人スーパー、無人コンビニ、無人商品棚といった無人系小売ビジネスの倒産、営業停止が相次ぐようになり、新たな投資資金が流れ込まなくなり厳しさを増している。低コストを目的とした無人系小売が思ったほどコストダウンすることができず、同時にアリババを中心とした新小売が台頭してきたことが原因だと派代が報じた。

 

無人系小売と新小売の激しい競争

この数年、中国の小売×ITの分野は激変をしてきた。従来のITによる効率化を極限まで進めようとした「無人スーパー」「無人コンビニ」「無人商品棚」の起業が相次いだ。一方で、まったく異なる視点から、実体店とECの融合を図ろうとするアリババなどの「新小売」戦略が登場。この発想がまったく異なる2つの小売×ITが市場で競い、現在、無人系の倒産が相次ぐことになった。消費者は新小売系を支持していることが鮮明になりつつある。

f:id:tamakino:20180816124530j:plain

▲タクシーやライドシェアのシートで菓子類を販売する「GOGO家」。アイディアは面白いが、売上はほとんど立たない。ビジネスというよりも、乗客へのサービスのひとつとしてやるべきことだ。すでに、投資資金の流入は止まり、各社とも存続が厳しくなってきている。

 

新小売とは実体店とEC店の「いいとこどり、悪いとこ捨て」

新小売はアリババが言い始めた概念で、簡単に言えば、実体店とEC店舗の「いいとこどり、悪いとこ捨て」だ。新小売戦略の中心である盒馬鮮生(フーマフレッシュ)は、生鮮食料品を中心にしたスーパーで、食材を使った料理も提供するグローサラント業態だが、従来のスーパーと圧倒的に異なるのが、専用スマホアプリから宅配注文ができる点だ。宅配地域は、店舗からほぼ3km圏内で、最短30分、無料で配達する。

すでに大きな成果があがっていて、フーマフレッシュの売上の半分以上は宅配によるもの。60%を超える店舗もあるという。また、単位面積あたりの売上は、同規模スーパーの平均の約3.7倍になる。

 

長年の「クリック&モルタル」問題に対する解答「新小売」

実体店だけでは、単位面積あたりの売上はどうしても物理的な限界がある。しかし、そこに効果的にECを組み合わせることで、青天井で面積あたり売上を伸ばしていくことができるのだ。

米アマゾンがオンライン書店として台頭してきて以来、小売業界は実体店とECをどうすれば効果的に組み合わせることができるかという「クリック&モルタル問題」に悩み続けてきて久しい。アリババの新小売は、現在のところ、この問題に対する最も成果の上がっている解答なのだ。

 

死亡理由「売上が上がらない」

記事では、倒産、閉鎖した無人系小売が列挙されている。

GOGOコンビニ:無人コンビニ。開店4ヶ月で営業停止。平均客単価が33元から37元(約590円)。1日の平均売上が1300元から1500元(約2万4000円)と低く、運転資金がショートし始めた。テコ入れをするために、起業2ヶ月目に一気に500カ所に出店したが、売上は改善せす、この投資が決定的な打撃となってしまった。

f:id:tamakino:20180816124527j:plain

▲GOGOコンビニのドアに貼られた貼り紙。「システムのアップデートのため、無人スーパーはしばらく営業を停止します。乞うご期待…」と書いてあるが、結局、ただの営業停止だった。

 

死亡理由「商品ロスが多すぎる」

領蛙:もっと初期に起業した無人商品棚。企業内、マンション内などに開架式の商品棚を設置し、利用者に自由に商品を手にしてもらい、スマホで決済してもらう。手軽だが、万引きが簡単にできてしまうので、オフィスなど限定された人が使う場所にしか設置できない。同じく、大手の無人商品棚ビジネスをしている便利蜂に救済買収されることになった。

ただし、この領蛙は、他の無人商品棚から比べると緻密な営業をしていた。一般の無人商品棚では、商品ロスが40%にもなってしまう。開架式の商品棚であるため、利用者が自由に手を触れるためパッケージなどが痛んだり汚れたりしてしまうのだ。しかし、領蛙では商品ロス率は13%と低く、リピート率も95%、利益率も35%に達していた。失敗というよりは、自己資金による成長の限界を感じて、便利蜂に売ったのだと推測されている。

f:id:tamakino:20180816124523j:plain

無人商品棚「領蛙」。大手の「便利蜂」に買収されることになった。無人商品棚の最大の通天は、開架式であるために商品ロスが多いこと。一般には40%にも達するという。領蛙では13%と健闘したが、継続はなかなか厳しかったようだ。

 

死亡理由「想定よりも低い利益」

7コアラ:初期に起業した無人商品棚。3000の企業に5000カ所の無人商品棚を設置し、この分野では最も成功していたスタートアップだった。しかし、無人商品棚以外のビジネスに方向転換をしようとして内部が混乱している。無人商品棚の分野では最も成功した部類なのだが、思ったほどの利益があがっていないのではないかと推測されている。

f:id:tamakino:20180816124520j:plain

無人商品棚「7コアラ」。オフィスなどに軽食、飲料などを置き、消費者が自分でスマホ決済してもらうという方式のもの。最も成功した無人商品棚だと言われているが、想定以下の利益しか生み出せていないと推測されている。

 

投資家の間での無人系小売熱は冷めている

この他、多くの無人コンビニ、無人商品棚などのスタートアップの「死亡リスト」が挙げられている。まだ営業を続けて生き延びている無人コンビニ、無人商品棚も数多くあり、地方都市ではまだときどき起業されているが、少なくとも投資家の間では「終わったビジネス」と認識されているようで、この分野への投資は極めて集まりにくい状況になっているという。

 

消費者の関心は無人から新小売に向かっている

無人系小売の発想は「人件費を省くことで、コンビニよりも安く商品を提供する」だったが、販売スタッフは不要であるものの、商品配送スタッフ、商品管理スタッフは必要になる。また、すべての商品に電子タグをつけるという手間も必要になる。このため、思ったほどコストを下げることができず、コンビニと明確な価格差をつけることができなかった。

一方で、コンビニやスーパーは仕入れや物流のIT化を進め、大量一括購入で仕入れ値を下げることで対抗してきた。

消費者の関心は、わずかな低価格よりも、アリババのフーマフレッシュのような体験と利便性を両立した小売に向かっているようだ。

サーモス 保温マグカップ 350ml エスプレッソ JDC-351ESP

サーモス 保温マグカップ 350ml エスプレッソ JDC-351ESP