中国版新幹線「高鉄」では、2014年から車両内で無料WiFiのサービスを提供していた。しかし、乗客からは「遅い」「途切れる」と不満が続出していた。7月、テンセントとジーリーの民間企業の協力を得て、大規模改善をすることになったと中関村オンラインが報じた。
不満続出の高鉄内の無料WiFi
中国版新幹線「高鉄」では、2014年から「復興号」車両内で無料のWiFiが提供されていた。WiFi一覧から高鉄用のSSIDを選ぶだけの簡単操作で、事前にアカウントを取得しておく必要もない。中国鉄路総公司では、4年間で80億元(約1300億円)の資金を投入して、無料WiFiを整備してきた。
ところが利用客からは、不満が続出していた。遅い、途切れる。動画が見られないのは我慢するが、写真やウェブすら見られないことがある。スマートフォンの自前の4G回線の方がはるかにましだというものだった。
▲高鉄の復興号。不満だらけだった車両内WiFiがようやく改善されることになった。
8億人の利用者が民間企業にとっては魅力
高鉄は、現在総延長2.2万km。年間の乗客数は17.1億人(日本の新幹線は、総延長約3000km、年間乗客数は4億人程度)。しかし、高鉄は現在も建設が進んでいる。2020年に総延長は3万kmに達し、中国の人口100万人以上の都市の80%をカバーする計画だ。
現在、無料WiFiは不満が多いため、使う人が少なくなっているが、17.1億人の乗客の半数が使うとしても8億人が使うことになる。民間企業は以前から高鉄の無料WiFiに技術提供をすることでビジネスチャンスを得ようとしていた。
そして、今年7月、IT企業「テンセント」と自動車メーカー「ジーリー」と中国鉄路が協力して、高鉄の無料WiFiを刷新することになった。高鉄は民間の技術力や知恵を借り、民間企業は8億人の利用者に対してビジネスを展開していくことになる。
▲現在の車両無料WiFiの概念図。一般の携帯電話基地局の電波を車両上部のアンテナが拾い、車内にWiFIで飛ばすというもの。速度が遅い一般列車ではこれで問題なかったが、時速300kmで走行する高鉄では切断、速度低下が頻発した。
高鉄は速すぎて従来のシステムでは追いつかない
中国鉄路では、高鉄以前から、一部の長距離列車で無料WiFiのサービスを始めていて、こちらは大好評だった。3G/4Gの携帯電話ネットワークを広い、車内のルーターでWiFiを提供するという方式のもの。
高鉄でも、このシステムを流用して、無料WiFiを提供した。しかし、高鉄は時速300km以上の速度で走行する。頻繁に携帯電話基地局の切り替えが起こり、また基地局の位置も最適化されてなく、途中で止まる、切断するということが頻繁に起きることになってしまった。
昨年6月には、1人が利用できるデータ量を600メガに制限をしたが、これがさらに不評で、ほとんどの人が無料WiFiを使わず、自分のスマホの4G回線を利用するようになってしまった。
この状態が4年間も放置されていたのは、高速で走行する高鉄に、4G回線で快適なWiFiを提供するには技術的に難易度が高く、飛行機と同じような衛星経由で回線を提供する方式や、4G回線と衛星のハイブリッド方式などが議論されていたからだ。さらに、衛星を利用する場合、投資金額はさらに増えることになり、無料ではなく有料にすることも検討されるなど、議論が混乱して前に進まなかった。
▲従来から一部の長距離列車で採用されていた無料WiFiサービス。列車の速度が速くないので、既存の携帯電話基地局の電波を捕まえられればじゅうぶんで、乗客からも好評だ。
民間企業が加わりサービスが向上することに期待が集まる
このような混乱を収拾するために、中国鉄路は民間企業を引き入れることにした。民間を入れることで、現実的、合理的な判断ができ、なおかつ膨大な数の利用者に対してなんらかのサービスを提供することで、中国鉄路側は利益を得ることができ、乗客の利便性も向上することを狙っている。
テンセントが加わることで、同社が運営するスマホ決済「WeChatペイ」を利用して、スマホで高鉄のチケットを購入し、そのままチケットレスで乗車できる仕組みの開発も始まった。
現在のところ、提携が発表されただけで、具体的にどのような技術的な改善を行うのかは発表されていない。しかし、多くの人は、これでようやく高鉄の中でWiFiがまともに使えることになると喜んでいる。
▲高鉄で無料WiFiを快適に提供するためには、線路近くに基地局や中継局を設置する、指向性を持たせて車両が電波を拾いやすくするなどの工夫が必要だという。相当額の追加投資が必要になってくる。
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