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病院に広がるシェアリング車椅子。有償にしたことで利用効率が向上

北京市にある北京協和医院に、シェアリング車椅子15台が登場し、わずか1時間ですべてが借りられるほど好評だったと北京晩報が報じた。従来は無料貸出をしていたが、長時間独占される、扱いが荒いなどの問題があり、管理の手間がかかっていた。低額の有償にすることで、このような問題が解決でき、より多くの患者が利用できるようになった。

 

問題が多かった車椅子の無料貸し出し

北京協和医院は、全国に約1000ヶ所ある最高レベルの医療施設のひとつ。規模も大きく、1日の患者数は1万5000人にも達する。当然、多数の患者が院内で車椅子を使う。

北京協和医院の診療責任者は、北京晩報の取材に応えた。「以前は、車椅子を無料で貸し出すサービスを提供していました。利用は無料ですが、貸出時には一定額のデポジットを預かる仕組みでした。管理上の問題と、できるだけ多くの人に利用してもらうためです。時間内に返却をしてもらえれば、デポジットを返却します。しかし、時間内に返すというのは患者さんにとって難しい場合もあり、規定時間を超えて長時間独占してしまうことがあったのです。病院側も管理、修理などの手間がかかります。このような数々の問題をシェアリング車椅子が一気に解決してくれました」。

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▲折りたたみ式の車椅子がチェーン錠でロックされている。最初の2時間は無料。

 

最初の2時間は無料。以降、最高24時間で500円

シェアリング車椅子は、チェーン錠でステーションに結びつけられていて、ステーションに貼り付けられていてるQRコードを、スマホ決済アプリ「アリペイ」からスキャンすることで、チェーン錠が解錠して車椅子が利用できるようになる。

利用料は最初の2時間は無料。以後、1時間ごとに1.5元(約24円)程度課金され、最高では24時間で30元(約490円)となる。返却は、チェーン錠を車椅子につなぐだけ。

このシェアリング車椅子を運営する健租宝(ジエンズーバオ)によると、15台の車椅子は毎日3回以上利用されているという。

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スマホ決済アプリ「アリペイ」でQRコードをスキャンすると、ロックが解除され、車椅子を使うことができる。返却時間に応じて、自動的に料金が支払われる。

 

有償にしたことで、こまめに返却され、多くの人が利用できる

以前は無料で使えたものが、有料になる。ここに患者からの不満は出ていないのだろうか。北京協和医院によると、患者からは不満どころか大好評であるという。以前は無料だったので、例えば患者がなんらかの検査を受けるとき、ロビーから検査室まで車椅子を使う。そして、検査中は車椅子を近くに置きっ放しにすることが多かった。このため、利用効率が悪く、借りたくてもすべての車椅子が出払っている、一方で院内には、放置されている車椅子がたくさんあるという状態になっていた。

シェアリング車椅子になってからは、検査室に着くと、付添いの家族が車椅子を返しにいく。放置しておくと、料金がかかってしまうからだ。検査室から帰るときには、付添いの家族が再度車椅子を借りにいく。必要な時だけ使うようになり、利用効率が上がり、多くの人が必要なときに借りられるようになった。

健租宝によると、利用者のほぼ半数が2時間の無料時間内で返却をしているという。北京協和医院では、すでに50台を追加導入することを決めていて、病院内各所に設置し、さらに患者の利便性を高めたいという。

この試みが報道されると、他都市の病院も興味を示し、視察も相次いでいる。すでにいくつかの病院で、シェアリング車椅子の試験導入が始まっている。シェアリング車椅子は、中国の病院に広まっていくかもしれない。

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▲現在は試験運用中なので、スタッフが使い方などのガイドをしている。北京協和医院では、すでに50台の車椅子を追加導入し、本格運用することになっている。