6本の脚を持ち、日向を探して自分で歩いていく植木鉢が世界中で話題になっている。この植木鉢HEXAの正体は、Vincrossが開発したロボット。植木鉢としてだけでなく、プログラミング学習用や工場内での検査用としての用途が高まり、世界40カ国で買われていると量子位が報じた。
6本の脚で歩き、感情表現も
このロボット植木鉢HEXAは、6本の脚を持ち、自分で日向を求めて歩いていく。Linuxベースで動き、720pナイトビジョンカメラ、3軸加速度センサー、距離センサー、赤外線通信を搭載し、自律的に行動する。また、専用スマホアプリを使い、リモコン操作することもできる。また、感情表現をする動作(嬉しいと踊る、不快だと足をばたつかせるなど)も組み込まれている。
▲日向を求めて、自分で移動していく植木鉢HEXA。
▲日向にたどり着くと、回転をして植木に満遍なく陽を当てる。
▲日向に長時間いると、あえて日陰に自動的に移動する。
▲人に甘えるなどの感情表現行動もスキルとして組み込まれている。
開発者は元有名科学ブロガー
このロボット植木鉢HEXAを開発したのは、北京のスタートアップ「Vincross」。創設者である孫天斉(スン・ティエンチー)は、学生時代から科学ブロガー「蘇椰」(スーイェ)として有名な存在だった。Q&Aブログサイト「知乎」で、科学や技術に関する文章を発表し、人気を博していた。
孫天斉がマイクロソフトのアジア研究所でインターンをすることになり、ブログの執筆が続けられなくなり、ブロガー引退を表明した時は、ブログサイト「知乎」の創設者である黄継新が直接、引き止める公開メッセージを書いたりしている。それほど、人気があるブロガーだった。
▲HEXAを開発した孫天斉CEO。元は有名な科学ブロガーだった。枯れているひまわりを見て、HEXA開発の着想を得た。
日陰で枯れているひまわりがアイディアのきっかけ
2年後、孫天斉は清華大学の研究員となり、生物医学と神経経路の研究をする。その時、北京のオリンピック森林公園で、ひまわりの展覧会があり、孫天斉は気晴らしに出かけてみた。一面のひまわりが植えられていたが、変圧器が置かれていて、その陰になっているひまわりが枯れていた。1本だけ、太陽がどの角度になっても日がまったく当たらないひまわりがあったのだ。
このひまわりの位置が1mずれていたら枯れることもなかったのに。孫天斉は、植木鉢に脚があって移動できたらいいのではないかと思いついた。
孫天斉がそのアイディアを周囲に話してみると、ある投資家が名乗りをあげて、100万ドル(約1億1000万円)のエンジェル投資資金を出してくれた。孫天斉はその資金でHEXAのプロトタイプを開発、量産体制ができる段階で、さらに600万ドル(約6億6000万円)のAラウンド投資を獲得した。
▲VincrssのHEXA。6本脚なので、段差があるなど路面状況が悪い場所でも歩行ができる。720pカメラも搭載されている。
▲スマホで操縦をすることも可能で、前面のカメラ映像がスマホに表示される。
▲プログラミングをすれば、脚で文字を書かせることも可能。
▲本格的に使うには、プログラミングをする。教育機関などでプログラミング教育に使われている例が多いようだ。
フォーブズの30人のリーダーに選出
このHEXAは数も売れたが、世界中で売れたことが特徴だ。40の国と地域で買われ、昨年の夏には、孫天斉はフォーブスのアジアコンシューマーテクノロジーの30歳以下のリーダー30人のうちの1人に選ばれた(Forbes 2017 30 Under 30)。
このHEXAは単なる歩く植木鉢ではなく、行動をプログラミングできることから、学生のプログラミング教材用として買われているケースが多い。さらに、タイヤではなく6本脚で歩くことから、砂地、岩場、段差といった不規則な地形を移動することができる。そのため、荒野や砂漠、泥炭地などでの活動にも向いているため、実用用途にもニーズがあるようだ。
シリアから謎の注文も
あるとき、シリアとヨルダンの小学校でプログラミング教育に使うといって、120台の大量注文が入ったことがある。しかし、その人物は、HEXAのリモコンの通信限界距離と積載可能重量について細かく尋ねてくる。
妙に感じていた孫氏はある日ネットニュースを見て驚いた。HEXAの送付先として指定されていたシリアとヨルダンの住所がある場所は、世界で最も自爆テロの多い場所だったのだ。孫天斉は慌てて出荷を止めて、販売を断ったという。
HEXA from Vincross Inc., Beijing, China
▲Vincrossの公式紹介ビデオ。どのような動作、どうのようなプログラミングができるかがかなり詳しく紹介されている。
シミュレーターは無料で使ってみることができる
このHEXはスタンダード版が949ドル(約10万5000円)、ワイヤレス充電ドック付きが999ドル(約11万1000円)。また、シミュレータは無料でユーザー登録が必要だが、無料で利用することができる。行動をパッケージ化したスキルもすでに豊富に揃いつつある。少し高価ではあるが、プログラミング教育などで使われることもあるかもしれない。
▲無料でダウンロードできるHEXAのシミュレーター。プログラミングというよりも既存のスキルを並べていくだけで、HEXAの行動を設定することができる。https://www.vincross.comよりダウンロード可能。
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