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宅配の無人カート配送。北京で正式運用が始まる

6月18日、ECサイト「京東」が、北京市海淀区の中関村地域で無人カートによる宅配配送を始めた。今まで、試験運用は各都市で行われてきたが、正式運用は初めてのことになると36クリプトンが報じた。

 

6月18日のセールに無人カートが正式運用開始

6月18日は、ECサイト「京東」の創立記念日であり、毎年京東では大セールを催していた。他のECサイトもそれに追従し、中国では11月11日独身の日に次ぐ、ECサイトの大セール日となっている。当然、宅配便も大量に増えるため、京東ではこの日に合わせて、20数台の無人カートを投入した。1台のカートに約30個の荷物を収納でき、時速15kmで公道を走行する。レーダーと対物センサーを搭載し、障害物や通行人、車両を認識し、衝突を回避できるだけでなく、画像解析により信号も認識でき、交通ルールを守りながら自動走行ができる。

このような自動運転宅配カートの試験運用は各都市で行われているが、正式運用は初めてのことになる。京東では、今後も投入車両、カバー地域を増やしていきたいとしている。

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▲中国では、道路の脇に、バイクと自転車の通行帯がある道路が多い。無人カートはその二輪車の通行帯を走行する。障害物を感知したら、減速、停止する戦術で、衝突を回避する。

 

各戸配達ではなく、動く宅配ボックス感覚

ただし、無人カートが家の前まで運んでくれるわけではない。無人カートは、配送地域の中に定められた配送ポイントに自動停車し、そこで利用者のスマートフォンに通知が飛ぶ。利用者は、配送ポイントまで数分の距離を歩いてきて、自分で荷物を受け取る必要がある。

顔認証、または携帯電話に送られてきた検証コードの入力、あるいはアプリを起動してかざすなどの方法で荷物を受け取ることができる。

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▲618セール用の特別仕様車も3台投入された。基本は量産型カートと同じだが、外装が特別仕様になっている。

 

実際は、配送拠点と地区担当配達スタッフの中継に使われる

この受け取りがまだ面倒なのが難点で、自分で受け取りにくる人はあまり多くないようだ。そこで、配送拠点と配達スタッフの中継に使われるケースが多いという。配達スタッフは受け持ち地域にいて、無人カートが配送拠点から荷物を運んでくる。配達スタッフは、荷物を自分の車や三輪自転車に移し、地域の各戸に配達をする。空になった無人カートは自動的に配送拠点まで戻り、次の荷物を積んで、往復を繰り返す。配達スタッフは、いちいち配送拠点まで戻る必要がなく、配達地域に張り付くことができるので、配達の効率は著しくあがることになる。

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▲交差点も普通に通過する。画像解析により、信号の色も見分けられる。配送ポイントに自動停止をする。動く宅配ボックスという感覚だ。

 

京東の正式運用に刺激され、他都市でも期待が高まる

京東では、昨年から大学構内での無人配送を始めていたが、他社に先駆けて、公道走行する無人配送する仕組みを正式にスタートさせたことになる。現在、アリババ、テンセントなども系列会社が、北京、上海、天津、広州などで無人カートの公道走行を行っているが、あくまでも試験運用であり、正式運用にこぎつけた京東は他社を一歩リードしたことになる。

他企業も、この正式運用に刺激されていることは間違いなく、中国では一気に無人カートによる宅配が各都市で行われるようになる可能性がある。


京东配送机器人走上街头

▲ネットメディアによる報道。裏道にも侵入していき、すでに街の風景に馴染んでいる。試験運用でなく、正式運用であるということに注目する必要がある。他都市でも正式投入が今後相次ぐことになると見られている。