中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

面積あたりの売上3.7倍。宅配売上50%超。アリババ「フーマフレッシュ」の秘密(上)

中国アリババが今、最も力を入れている「新小売」戦略。その目玉となっているのが「盒馬鮮生」(フーマフレッシュ)だ。グローサラント+宅配という業態だが、すでに既存スーパーの面積あたり売上は3.7倍になっている。その秘密はどこにあるのか。人人都是産品経理が解説した。

 

単位面積あたりの売上は既存スーパーの3.7倍

アリババの「新小売」戦略の目玉である「盒馬鮮生」(フーマフレッシュ)が好調だ。この計画の初期に開店した上海金橋店の2016年の年間売上は2.5億元(約42億円)となった。単位面積(1平米)あたりの年間売上にすると5.6万元(約94万6000円)となる。中国の一般的なスーパーでは1.5万元(約25万円)が標準なので、3.7倍ということになる。アリババは、既存スーパーの5倍を目標にしている。

このフーマフレッシュは、海鮮、生鮮野菜などを中心にしたスーパーだが、本格レストランが併設されている。レストランの料理は、すべてスーパーで販売している食材を使っている。また、半径3km以内の「フーマ区」では、スマートフォンから食材や料理を注文することができ、最短30分で配送してくれる。つまり、「店で買う、食べる」「家で作る、食べる」と4通りの楽しみ方ができるスーパーだ。

現在、北京、上海、杭州などを中心に37店舗を展開し、大規模な出店計画が進んでいる。すでに「フーマ区」内の家賃やマンション価格が上昇しているという話もあり、都市生活者に歓迎されている。

f:id:tamakino:20180625192605j:plain

▲フーマフレッシュの店舗は、都市部でないと出店ができない。半径3km以内に30万戸の家庭があるということが最低条件だ。そのため、都心のショッピングモールに出店するケースが多い。

 

宅配(スマホ注文)売上が全体の50%以上

このようなスーパーとレストランが融合した業態は、グローサラント(グロッサリーストア+レストラン)と呼ばれ、フーマフレッシュは「宅配可能なグローサラント」ということになるが、そのコンセプトは一般のグローサラントとはまったく違っている。

グローサラントは店舗の魅力を高めて、店舗に集客をするという考え方のもの。一方で、フーマフレッシュは店舗は商品のショールームであり、宅配(スマホ注文)が主力の販売チャンネルと考えている。

一般的なグローサラントでは料理や食材の宅配をしていないケースもある。また、中国でフーマフレッシュに対抗して展開されている永輝スーパーの「超級物種」は宅配(スマホ注文)を、フーマフレッシュと同じ、3km以内30分で行っているが、宅配(スマホ注文)売上は全体の10%程度でしかない。ところが、フーマフレッシュは宅配(スマホ注文)の売り上げが、50%を超えていて、さらにこの数値を上げていく施策を打っているのだ。

スマホ注文売上が異常に高いので、既存スーパーの単位面積あたりの売上で3.7倍という驚異的な数字を出すことができている。

f:id:tamakino:20180625192615p:plain

▲フーマフレッシュの専用アプリ。さまざまな商品がここから注文できる。決済もこのアプリから行える(アリペイと紐付けされていて、支払いはアリペイから行われる)。

 

ダニエル・チャンCEOが定めた「4つの原則」

アリババのダニエル・チャンCEOは、フーマフレッシュのプロジェクトを進めるときに、4つの原則を定めた。

1)オンライン売上は、オフライン売上より上回るようにする。つまり、フーマ区からの宅配(スマホ注文)をメインに考える。

2)スマホ注文は、毎日最低でも5000件を確保。フーマフレッシュは独自の宅配スタッフを抱えている。そのため、スマホ注文が5000件以上にならないと、固定コストが吸収できなくなる。キャンペーンや割引などの手段を使っても、毎日5000件を死守する。

3)宅配地域は、半径3km。最短30分配送。半径3kmは約28キロ平米。都市部では、30万戸の家庭がある。この30万家庭をメインの顧客とする。

4)オンラインでもオフラインでも同じ顧客体験を実現する。

f:id:tamakino:20180625192601j:plain

▲フーマフレッシュのキャラクターはカバ。盒馬(フーマ)とは、「馬をパッケージしたもの」という意味。「ジャック・マー会長の発想をパッケージした店舗」という意味でないかと想像されている。カバ(河馬)も中国語の読みでは「フーマ」と同じになるため、カバがキャラクターに採用されている。

 

生鮮食料品がECの最大の弱点

ECサイトは、保存のきく家電製品や日用品が中心で、最近では飲料、菓子類などの加工食品も取り扱いが増えている。しかし、魚や野菜、肉といった生鮮食料品をECで買う人は多くない。

理由は明らかだ。家電製品、日用品、加工食品に関しては、いろいろな場所で製品を目にしているので、品質についてすでに理解をしている。だから、いきなりスマホから注文ができる。

しかし、生鮮食料品は、品質の想像がつかない。同じ白菜といっても、美味しいかどうかは、見てみないとわからないし、食べてみないとわからないのだ。だから、ECサイトでは購入せず、スーパーへ行って、自分の目で確かめて買いたい。

そのため、ECサイトは生鮮食料品をなかなか扱えずにきた。いろいろなECサイトが挑戦をしているが、品質問題を回避するため、高級食材を扱わざるを得ず、コストに見合った売上があげられない状態が続き、消費者がそのECサイトを信頼して気軽に注文するようになるまでは、まだまだ長い時間がかかる。

この問題を解消するために、フーマフレッシュという新しい業態が考案された。極論をすれば、宅配売上が狙いであって、店舗は生鮮食料品の品質を確かめるショールームにすぎないという言い方もできる。

 

店内にいてもスマホから注文させる新しいECの概念

ただし、フーマフレッシュではECの概念も従来のものとは違っている。スマホから商品を注文することがECであって、どこから注文するかは問わない。自宅から注文してもいいし、帰宅途中の地下鉄の中で注文してもいい。フーマフレッシュの店内の中で注文をして、自分は手ぶらで帰るというのでもいい。場所を問わず、スマホから注文をするというのがアリババが考える新しいECの形で、それを実現する仕組みが「新小売」だ。

実際、利用が多いシナリオは、帰宅時に地下鉄の中で料理や食材を注文するというものだ。帰宅して数分で、宅配が届くことになる。また、徒歩などで店舗にやってきて、食材を購入するが、食用油など重いものは、店内からスマホ注文して宅配してもらうの。自宅について、食材を冷蔵庫に入れたり、調理をしている間に、宅配が届く。

f:id:tamakino:20180625192623j:plain

▲フーマフレッシュの店舗の1/3はレストラン。フーマフレッシュで販売されている食材を使った料理が提供される。ここで料理を体験することで、スマホから食材や料理を注文するようになる。

 

店舗で買い物体験をしているから、スマホから気軽に注文できる

ECといっても、誰も店舗にこなくなるというわけではなく、店舗でもどこでもスマホ注文ができるようになる。店舗では実際の食材を見たり、匂いをかいだり、触ったり、あるいはレストランで食べてみたりという「体験」をする。この「体験」があるから、安心してスマホから注文できるわけだ。

つまり、フーマフレッシュとは、ECサイトに欠けていた「生鮮食品の品質がわからない」「買い物体験に乏しい」という問題点を解決した、新しい形のECなのだ。

この新小売、新ECを実現するために、どのような仕掛けを用意しているか。それを次回ご紹介したい。