中国空間技術研究院は、公式ウェイボーで、西昌衛星発射センターから通信衛星「鵲橋」を搭載した嫦娥4号の打ち上げに成功したと報じた。中国は、月への有人飛行を目指しており、これで月の裏側と地球の通信手段を確保できたことになる。
月には表側と裏側がある
衛星はいびつな形をしているので、惑星の引力に引っ張られて、重たい方の面を向け続けることになる。月も常に重たい側を地球に向けるため、月の表側と裏側ができる。
そのため、月の裏側に人を送り込むことは様々な困難が伴う。最大の問題が、月の裏側に入ってしまうと、月本体が邪魔になって、通信が途絶えてしまうことだ。これでは月面活動を行うことができない。
▲嫦娥4号の打ち上げ成功を報じるテレビニュース。「月からでもネットが使えるようになる」と話題になった。
静止させることができない地球・月間の通信衛星
そこで、月の向こう側に通信衛星を配置して、地球からの通信をいったん通信衛星で反射させて、月の裏側に届けるというアイディアが浮かんでくる。しかし、これはうまくいかないのだ。
月の向こう側に通信衛星を配置した場合、太陽から見ると、その通信衛星は、地球の公転軌道よりも、内側または外側を公転することになる。地球の公転軌道の内側の物体は地球よりも早く太陽を公転することになり、外側の物体は地球よりもゆっくりと太陽を公転することになる。地球から見ると、通信衛星の位置がどんどんずれていってしまうことになる。
▲月の裏側は、これまで通信手段がないため、月面活動が難しかった。通信手段が確保できることで、月の裏側での月面活動ができるようになる。
ラグランジュ点なら静止衛星が可能になる
そこで利用されるのがラグランジュ点だ。太陽と地球、月という3つの天体の引力が釣り合うため、そこの物体が、地球から見て静止しているかのように見えるポイントが5箇所ある。通信衛星「鵲橋」(カササギの橋。七夕に天の川にかかる橋のことで、織姫と彦星の出会いを実現する)は、そのうちのL2ラグランジュ点を周回するハロー軌道に投入される。
このハロー軌道は、月から約6.5万km外側にある。地球と月との距離が変化するため、ハロー軌道の位置も変化していくが、最大で月から8万kmの位置になる。
▲地球と月の通信回線を中継する通信衛星「鵲橋」。月の外側に静止し、通信を反射して中継する。
▲鵲橋は、月の向こう側にあるラグランジュ点L2を周回するハロー軌道に投入される。地球から見て、ほぼ静止した位置にある準静止衛星となる。
世界初の地球軌道外の通信衛星
L2は、太陽から見て、地球の外側にある。本来、軌道半径の大きな公転軌道なので、地球よりもゆっくりと太陽を周回することになるが、太陽と地球の両方から引っ張られるので、地球と同じ速度で太陽を公転するポイントだ。つまり、地球から見て、静止衛星になる。
地球公転軌道以外に投入される通信衛星としては世界初。この鵲橋が通信中継に成功すれば、月の裏側と地球との通信回線が確保でき、中国が目指す月への有人飛行が一歩実現に近づくことになる。
▲発射準備中の鵲橋。ハロー軌道投入後に、上部の傘の部分が開いて、アンテナとなる。
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