中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

「中国製品は品質が低い」先入観を払拭したANKER

すでに多くのファンがいる電子機器ブランドANKER。このブランドのメーカーは中国の湖南海翼電子商務有限公司で、創設者は元グーグルのエンジニアだった。ANKERは、「品質が悪い」という中国製品のイメージを払拭することに成功したと小沐科技が報じた。

 

品質、デザイン、価格、顧客体験。一歩抜けているANKER

ANKERというブランドをご存知だろうか。モバイルバッテリーやBluetoothスピーカーなどを製造、販売していて、品質も高く、デザインもいい。それでいて、ライバル製品よりも価格が一段低いのだ。

さらに素晴らしいのがユーザーサポートだ。電子機器である以上、不具合や故障はどうしても生じてしまう。その場合、電話1本かけるだけで、細かいことを言わずに、すぐに新品を送ってくれる。それもアマゾンの配送システムを利用するので、翌日には到着する。別便で、回収キットを送ってくるので、そちらに故障した製品を入れて、郵便局などから返送すれば終わりだ。

日本の多くのメーカーが、故障した場合、販売店やサービスセンターに持参することを強要し、しかも保証修理にするか有償修理にするかを検査するということをやっている。それが日本の常識なのかもしれないが、消費者からしてみれば、不具合が発生した上に手間と時間がかかり、顧客体験は最悪のものになる。

ANKERは、不具合が発生した場合も、最高の顧客体験を与え、不具合発生というネガティブな状況を、ポジティブな経験に変えてしまう。そもそも、製品にもよるが保証期間が18ヶ月もあるのだ。

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▲ANKERのウェブサイト。モバイルバッテリー、スピーカーなどで、日本でもファンが増えている。http://www.anker.com

 

ANKERの国外輸出額は670億円

このANKERが中国メーカーであることを知らない人は多い。2017年、中国の越境ECサイトの販売額は7.6兆元(約130兆円)であり、中国の輸出額の約1/3にもなっている。その中で、もっとも越境ECサイトの販売額が高いのがANKERだ。売上は39.12億元(約670億円)あり、全世界に2400万人のユーザーがいる。2018年の輸出企業では第7位にランキングされている。

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▲ANKERで人気なのが、バッテリー内蔵スピーカーSoundCore。小さいのに音質がいいという評判だ。

 

創設者は元グーグルのエンジニア陽萌

ANKERの創設者の陽萌は、もともとはグーグルのエンジニアで、200万元(約3400万円)もの収入を得ていた。ところが、ある時、ノートPCのバッテリーをネットで購入しようとしたが、選択肢があまりにも少ないことに気がついた。あるものは価格が高く、あるものはレビューの評判がものすごく悪い。

陽萌はこれは大きなビジネスチャンスではないかと考えた。当時、中国の製造業は品質が向上し、他国の製品と比べても遜色がなくなっていた。ところが、世界では「中国製品は品質が悪い」というイメージが強く、価格を思いっきり下げなければ売れなかった時代だ。

きちんと品質の高さ、デザイン性をアピールすれば、「安いだけの中国製品」のイメージを変えることができるのではないか。

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▲ANKER創設者の陽萌氏。元グーグルのエンジニアで、自分のネット購入体験からANKERの創設を思いついた。

 

アマゾンを利用することで世界に販売

2011年、陽萌は湖南省長沙市に帰り、湖南海翼電子商務有限公司を設立、質の高い電子機器の生産を始めた。しかし、当時、地方のスタートアップメーカーが海外輸出をするのは簡単なことではなかった。そこで、陽萌は、アマゾンとeBayを利用することにした。

これがあたった。アマゾンやeBayを利用する人の多くは、「中国製品は劣悪」というような先入観よりも、レビューの内容で購入を決定する。2011年に、すでに北米でUSB3.0スマホバッテリーで最も売れたブランドとなり、2012年にはモバイルバッテリーが北米でヒット、2013年6月にはアマゾンで世界で最も売れたモバイルバッテリーのメーカーとなった。

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もはや製造国は意味がなくなっている

すでに製造業はグローバル化している。日本メーカーも米国メーカーも、実際の製造は中国だったり東南アジアだったりすることが多い。その状況の中で、「中国製だから」「日本製だから」とこだわっているのは、すでに時代錯誤になろうとしている。

ANKERは中国製品のイメージを変えることに成功した。同時に、消費者に、製造国を見て判断するのではなく、自分の目やレビューを参考に判断する習慣をもたらした。日本でもANKERのファンが増えている。一度、アマゾンのレビュー欄を見てみることをお勧めする。