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タオバオ15周年で、中年の危機に

5月10日で、アリババのECサイトタオバオ」が15周年を迎えた。しかし、アリババはこれといったお祝いごともせず、ひっそりとした誕生日になった。開設から15年、中国のEコマースを変えてきたタオバオにも曲がり角がきていると新芽が報じた。

 

タオバオが変えてきた中国のECビジネス

ECサイトタオバオ」がスタートしたのは、2003年5月10日。アリババは、電子部品などのBtoBマッチングサイト「Alibaba.com」で急成長をし、そのノウハウを活かして、CtoC商品取引サイト「タオバオ」をスタートした。

当初は、企業でも個人でも緩い審査で出店することができるBtoCとCtoCを兼ねあわせたようなサイトだった。「タオバオ」とは中国語で、宝探し、宝掘りといった意味。大量の商品の中から、安くて質のいい掘り出し物を見つけることが面白く、ゲーム感覚で買い物ができると、多くの中国人を夢中にさせた。


[ENG SUB] 淘宝开箱(上)3000块RMB买了好多好多....l 首饰 l 零食 l 家居装饰品 l 收纳

動画共有サイトには「タオバオアンボックス」という動画が無数に投稿される。タオバオでまとめ買いをした箱を開けるところを動画にしたものだ。何が出てくるかわからない。そんな福袋的な買い方が楽しまれている。

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アリババECサイトは62%の伸び

アリババの2017年度第四四半期(2018年の1月から3月)の財務報告書によると、アリババの総収入は619.32億元(約1兆円)で昨年同時期の61%増となった。その中で、ECサイト事業は512.87億元(約8800億円)で、昨年同時期の62%増となっている。

また、ECサイトの流通総額は45%増で、特に服飾品、日用消費財(飲料、食品、化粧品など)、家電製品、電子製品などが好調だった。

しかし、アリババは、運営する2つのECサイト「Tmall」「タオバオ」個別の流通総額は公開していない。

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▲Tmallのサイト。出店できるのは業者のみ。いわゆる正統的なECサイトだ。11月11日の独身の日セールで、会員数と売上を倍増させるように成長してきた。

 

偽物出品を防ぐために生まれたアリペイとTmall

当初、タオバオが悩まされたのは、偽物商品や詐欺出品だった。この問題を解決するために、タオバオ内で使えるサイト内通貨を導入した。出品者に問題があった場合は、サイト内通貨の口座を凍結することで、偽物商品や詐欺の出品を防ごうとしたのだ。これが後に、サイト外の実体店舗でも使えるようになり、アリペイとなっていく。

もうひとつがBtoCとCtoCを分離したことだ。サイト内に「タオバオ商城」を作り、ここに出店できるのは、原則企業のみにして、消費者が安心をして買い物ができるようにした。

2009年から、11月11日の独身の日セールを始め、これが大当たりをし、タオバオ商城が急成長をしていく。そして、2012年、タオバオ商城を「Tmall」と改名し、別サイトにして完全分離をした。

また、タオバオに出店している個人業者も、Tmall小店として順次Tmallに移動させていった。

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タオバオのサイト。現在は、個人間取引サイトになっている。品質やサービスの点では不安も残るが、その代わり低価格で購入できたり、普通のECサイトでは手に入らないものが手に入る。

 

成長の鈍化が明らかになったタオバオ

外部の調査機関の観測によると、Tmallとタオバオの売上の比率は、Tmall45%、タオバオ55%程度で、まだまだタオバオの方が多い。しかし、問題は伸び率で、ECサイト全体の流通総額が45%も伸びているのに、タオバオの伸び率はわずか18%だと推定されている。

タオバオとTmallの歴史を考えれば、Tmallがタオバオのマーケットを食べて成長しているというカニバリズムの関係になっているので、タオバオの成長が頭打ちになるのは仕方のないことだし、アリババもそこは当然織り込み済みのはずだ。

 

地方都市で大ブレイクしている拼多多

しかし、想定内だと安穏とはしていられない状況が生まれてきている。新興のECサービス「拼多多」(ビンドードー、たくさん寄せ集めるの意味)の成長だ。

拼多多は、SNS「WeChat」を利用し、知り合いあるいは募集をして、多人数でまとめ買いをするサービス。日用品が低価格で購入できることから、地方都市の低所得者層を中心に大ブレイクしている。

現在、毎月の流通総額は400億元(約6900億円)とも言われ、それが正しければ、タオバオの半年分にもあたることになる。

タオバオは大都市から普及をし、地方都市に波及をしていっていた。しかし、地方都市での普及の途上で、拼多多という伏兵に、地方都市市場をさらわれてしまった。現在のタオバオは「成長の鈍化」で収まっているが、拼多多が大都市へ波及するようになると、タオバオも「成長の鈍化」では収まらず、「衰退」を始める危険性がある。

タオバオも、さまざまなセールや優待施策で対抗しているが、今のところ、これといった反撃ができないままでいるようだ。

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▲地方都市を中心に大ブレイクしている拼多多。同じ商品を買う人をSNSで集め、まとめ買いをすることで、驚くほどの低価格で商品を購入することができる。

 

タオバオは寿命が終わったのか、それとも第二の人生があるのか

タオバオは、アリペイを生み出し、Tmallを生み出したことで、歴史の役割を終わったと見る向きもある。一方で、むしろ今からこそCtoCの取引が盛り上がるのだから、タオバオはまだまだやれることがあり、成長空間はたっぷりと残されていると見る向きもある。

アリババが今後どのような戦略を打ち出してくるかはわからないが、タオバオは中年の危機を迎えていて、第二の人生を考えなければならない時期にきていることは確かだ。