中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

アフリカで普及するアリペイベースのスマホ決済「ザッパー」

電子決済が進んでいるのは、中国、韓国、北欧諸国だが、アフリカも電子決済が急速に進んでいる。最も多く使われているのは、QRコード方式のスマートフォン決済「ザッパー」で、これはアリペイがベースになり開発されたもの。このような現地ブランドの形でアリペイの海外進出が進んでいると人民網が報じた。

 

アリペイの海外進出、3つの方式

アリペイの海外進出戦略は3つの方式が取られている。

1)中国人旅行者の多い国に、中国人旅行客用のアリペイを普及させる

2)地元決済方式に技術提供をし、現地ブランドでの展開

3)そのままアリペイの名前で進出

このうち、最も成功しているのが1の方式で、日本でもすでにインバウンド客が多い店舗を中心に数万店が加盟をしている。

逆に苦戦をしているのが3の方式。現地金融業界の反発に阻まれ、参入は簡単ではない。日本に対しても、アリババは4月からサービスを提供する計画を進めていたが、銀行を中心とした反発を乗り越えることができず、提供時期を延期せざるを得なくなった。銀行団が反発したのは、「決済情報を中国に送信される」ということで、ビジネス上も大いに問題があるし、中国の場合、安全保障上の懸念も払拭しきれない。

国内普及の飽和状態が見えてきた今、海外に活路を求めざるを得ないが、なかなかうまくいっていない。

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現地ブランド方式で成功しているペイティーエム、ザッパー

しかし、2の現地ブランドに技術提供をする形での進出はうまくいっている。特にインドのペイティーエム、南部アフリカのザッパーは、現地の人にとって、もはやなくてはならない決済手段になりつつある。

世界移動通信システム協会が公開した「2017年世界モバイルペイメント業界の現状」によると、モバイル決済は世界の90の国と地域で使われていて、アフリカでは、ケニアルワンダタンザニアウガンダ南アフリカでは、成人の2/3以上が日常的にモバイル決済を利用している。

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▲高速道路の料金所。ザッパーのQRコード掲示され、スマホ決済で高速代を支払うことができる。

先進地は東アフリカのケニアタンザニアルワンダ

アフリカ全体では、すでに3.38億人の利用者がいて、決済金額は199億ドルに達している。最も利用が多い地域が東アフリカで、1.91億人、132億ドル。中部アフリカは3290万人、13億ドル。南部アフリカは1000万人、1.23億ドル。西武アフリカは1.04億人、53億ドルとなっている。

このモバイル決済で、最も利用者が多いのが、アリペイが技術提供をしているザッパーで、レストランではザッパー決済を利用すると5%程度の割引がされるところが多く、街頭の大道芸人も、投げ銭を入れるカゴの代わりにザッパー用のQRコードを置いている。

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ケープタウンストリートミュージシャン。見づらいが、投げ銭用のバスケットにはQRコード掲示され、現金だけでなく、スマホ決済「ザッパー」で投げ銭を入れることができるようになっている。

 

ケニア都市部の電子決済比率は60%

うっかりすると、アフリカは電子決済後進国ではないかと勘違いをしてしまいそうだが、実は11年前からエムペサ(ギリシャ語でモバイルマネーの意味)という現地系の決済サービスが普及をしている。全体で3000万人の利用者がいて、特に普及をしているのがケニアで1800万人。これは人口の40%にあたる。

エムペサは、フィーチャーフォンで使える送金システムで、都市部で給料をもらった出稼ぎ労働者が、農村の実家に送金するのに使われ始めたことを皮切りに、買い物でも利用されるようになっていった。携帯電話の番号さえあれば利用できることが特徴で、銀行口座がなくても利用できることから普及をした。ケニアでは、銀行のATMを含む金融拠点までの平均距離が9.2kmであるのに、エムペサにチャージができるエムペサ拠点までの平均距離は1.4kmでしかない。

アフリカの若い世代は、パソコンを使用する機会に恵まれない人が多く、その分、携帯電話の使用率は、世界の平均よりも高く、銀行口座を開設することが簡単ではないため、モバイル決済に利用率も世界の平均よりも高い。ケニアでは、すでに都市部の電子決済比率が60%に達している。

 

金融機能が遅れている国で普及するアリペイ現地バージョン

アフリカでも、フィーチャーフォンの時代は終わり、スマートフォンが主流になっている。特に中国製の格安スマホが大量に流入している。それとともに、アリペイがベースになったスマホ決済、ザッパーの利用者が急増をしている。

こうしてみると、アリペイが普及をした国というのは、中国、インド、アフリカ各国ということになる。一言で言えば、金融が発達していない国でアリペイは普及をする。中国ではクレジットカードが普及をせず、銀聯デビットカードも国内加盟店は決して多くなかった。インド、アフリカではクレジットカードどころか、銀行口座も開設できない人たちがたくさんいる。その意味で、金融後進国が金融先進国を急速にキャッチアップするためのツールとして歓迎された部分がある。

しかし、無視できないのは、スマートフォンアプリであることから、他のサービスとの連携が容易で、レストラン予約、タクシー配車、チケット購入といった生活関連サービスと連携し、生活サービス側もスマホに対応していくことで、一気に都市生活全体の利便性が進化するということが起きていることだ。現在の中国の都市がまさにそれを体現している。

インドのペイティーエム、アフリカのザッパーが期待をしているのもこの世界だろう。アリペイが、欧米、日本といった先進国で今ひとつ受け入れられないというもの、他国のプラットフォームであるということだけでなく、生活の利便性を進化させる必要性を、中国やインド、アフリカほど強く感じていないということもあるのかもしれない。

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▲インドではペイティーエムが普及している。ペイティーエムの技術ベースになっているのはアリペイ。

 

入門用皿まわし

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