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学食で勃発したアリペイvsプリペカード戦争

中国でも決済手数料を取る古い仕組みの電子マネーが学校や病院などに導入されている。しかし、決済手数料不要のQRコード方式スマートフォン決済「アリペイ」「WeChatペイ」への置き換えが始まっている。ある学食で、旧電子マネーへの反乱が起きたと明陽デジタルが報じた。

 

手数料ゼロのアリペイvs手数料5%の旧電子マネー

中国のQRコード方式スマートフォン決済「アリペイ」「WeChatペイ」は、QRコードを利用した決済方式であることばかりが強調されるが、キモは加盟店から決済手数料を取らず、付帯する金融機能などから収益を上げるビジネスモデルであるというところにある。このため、個人商店などでもスマホ決済に対応することができ、街中のどの店でも対応するという環境が生まれ、利用者はメインの決済手段として使うことができるというポジティブな循環が生まれた。

しかし、中国にもオールドエコノミーとも言える決済手数料で利益をあげるビジネスモデルの決済方式がまだ残っている。このような決済方式は、病院や学校、チェーン店など特定の業種に決済システムを提供し、売上の5%程度の決済手数料をもらうことで利益を出している。

そのひとつが、学校の学食向け決済システムで、「完美校園」というプリペイドカードだ。現在、雲南大学、河南工業大学、河南漢方医薬大学、上海立信会計金融学院などの大学、専門学校、高校などに導入されている。

あらかじめプリペイドカードにチャージをしておけば、学食で食事をするときに支払いを電子決済することができる。また、図書館で本を借りるときの学生証代わりにもなる。

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▲完美校園の決済端末。プラスティック製のプリペイドカードから、スマートフォンアプリに進化し、NFC(近接通信)により、かざすだけで決済ができるようになった。しかし、決済手数料5%の問題が、学食側と学生の反発を招くことになった。

 

決済手数料に対して起きた学生たちの反乱

この完美校園がアプリ化され、QRコード決済やNFC(近接通信)決済にも対応したが、いくつかの学校の学食で「反乱」が起きているという。

学生側にしてみると、あらかじめチャージをしておくのが面倒に感じられる。完美校園の決済は学食と学内キヨスクでしか使えない。お金の余裕があまりない学生たちは余分なチャージをしておくことができないので、学食に行くたびに、必要な金額を毎回チャージして、それから支払うというということをしている。これだったら、現金で支払った方がよっぽど早い。

学食の運営会社も問題を感じている。それは5%の決済手数料を取られることだ。それだけ売上が減ることになる。さらに、完美校園からの振込は、月末に一括して行われるため、その間の食材仕入れのための運転資金を準備しておく必要がある。ギリギリのコストでできるだけ安く学生に食事を提供したい学食としては、経営が厳しくなるばかりなのだ。

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▲学生たちの学内SNSの画面。「直接、食事代金をアリペイで送ろう。絶対プリペイドカードは使わない」「うん」「前に、食堂のおばさんが、学食は家賃が高いのに、決済手数料まで取られるので、商売が難しいと言っていたよ」「上級生は出前をとっているって。(完美校園は)ゴミアプリだよ」。

 

アリペイからも手数料を取ろうとする決済代行業者

学生も学食側も当然ながら、アリペイで決済をしたい。アリペイは街中どこでも使えるので、財布代わりに全財産をチャージしておいても問題ない。学食側は決済手数料を引かれることなく、代金をまるまる得ることができる。

しかし、完美校園は、学校と「すべての電子決済を代行する」契約をしている。そのため、学校側が完美校園に対して「アリペイ、WeChatペイにも対応してほしい」と申し入れたところ、完美校園は独自のスマホ決済アカウントを作成し、学生にはそちらに代金を送金する方式を提案してきた。完美校園側が決済を代行し、その後、手数料として5%を差し引いて、学食側に送金する仕組みだ。

これでは学生側の問題は解決されるが、学食側の決済手数料問題は解決されない。学食側がクレームを入れると、完美校園はスマホ決済の取り扱いを中止し、完美校園のプリペイドカードしか使えないようにしてしまった。

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▲学食に貼り出された完美校園の使い方ポスター。その上の「通告」には、QRコードスマホ決済「アリペイ」「WeChatペイ」への対応が停止されたと書かれている。この措置が学生たちの反乱に火をつけた。


ニセ告知で闇決済に走った学食と学生たち

学校名は明らかにされていないが、ある大学で、一部の学生たちがこの完美校園のやり方を問題にした。今時、アリペイが使えないというのも時代遅れだし、ショボいプリペードカードシステムを運営するだけで、食事代の5%を取っていき、学食の経営を圧迫していることにも憤りを感じた。

そして、その学生たちと学食のスタッフは、反撃に出た。隠れアリペイ口座を開設したのだ。

学食の窓口に「学生アルバイト募集。電話番号:xxxx-xxxx」という手書きの掲示が貼り出された。ところがこの募集告知は偽物で、アリペイで支払いたい学生は、告知にある携帯電話番号に代金を送金すれば支払うことができるのだ。この携帯電話は、学食スタッフのもので、決済手数料を引かれずに、まるまる学食の売上となる。

このことは、皮肉なことに、完美校園アプリの中にある学内SNS機能で、多くの学生に伝わった。学生はアリペイの方が便利だし、学食の経営を助けることにもなる。多くの学生が、完美校園を使うのをやめて、隠れ口座を使ってスマホ決済をするようになった。

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▲学食に貼り出された「招学生工」(学生アルバイト募集)の手書き告知。この告知は偽物で、この電話番号にアリペイから送金をすると、学食に直接アリペイでの支払いができる。

 

利用者志向でないサービスは破壊されていく

完美校園の対応は明らかにされていないが、当然、このような事態が起きていることは気がついているだろう。怒って、契約を解除してくるかもしれない。でも、ある程度の違約金を支払っても、契約を解除してしまった方がいいのではないかと学生たちは話し合っている。

QRコード方式スマホ決済は、教科書通りの破壊的イノベーションなのだ。

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