宅配企業「順豊」が中国で初めて無人飛行機の運行免許を取得した。順豊は、2012年から構想していた航空機による物流全国ネットを構築して、全国どこでも36時間以内配送を実現することになると人民日報が報じた。
大型貨物機+無人飛行機+ドローンによる配送ネットワーク
順豊が取得した運行免許は、自社開発の無人飛行機AT200のもの。この無人飛行機は、最大航行距離2000km、10立方米、1.5トンの荷物を積載して、時速260kmで飛行できる。
順豊は2012年から飛行機による宅配便ネットワーク構築を進めてきた。すでに41機の貨物専用機を保有している。また、各種ドローンも開発、積載量数kgから数十kg、最大飛行距離数十kmから100km程度までの複数のドローンを開発済みだ。
順豊の構想は3段階物流だ。すでに保有している有人貨物機で基幹ネットワークを構築し、配送拠点から末端拠点まではAT200などの無人飛行機で運ぶ。末端拠点から各戸まではドローンで配送するというものだ。
これで全国どこでも36時間以内の配送を実現する。
▲飛行場から、末端拠点を結ぶ無人飛行機AT200。最大航行距離2000km、10立方米、1.5トンの荷物を積載して、時速260kmで飛行できる。
▲順豊は、すでに貨物専用機を41機保有している。これで基幹路線を結び、支線部分を無人飛行機、そこから各戸への配送をドローンで行う計画だ。
▲順豊が開発したドローン。末端拠点から各戸までの配送を受け持つ。積載量に応じた複数の機種をすでに開発済み。
人民日報が指摘する3つの問題
このAT200は、1000m程度の低空を飛行する。人民日報は、1000mの空中資源を利用するため、無人飛行機やドローンの利用は有望だとしながらも、3つの乗り越えなければならない壁があると指摘する。
一つは安全性の問題だ。無人飛行機やドローンによる事故率を合理的な範囲に収めるには、まだ無人操縦の安全技術は不十分なのではないかという。2つ目は、輸送量を安定させられるかどうかだ。航空機輸送は天候の影響を受けやすい。風、雨、雪、霧、黄砂といった自然現象により、飛行ができないことも多い。このような天候不順が続いた場合でも、安定して輸送できる手段を講じておく必要がある。
3つ目が、政策要因だと人民日報は指摘する。無人機輸送については、中国政府はまだ模索をしている段階で、今後も推進していくかどうかはまだわからない。政策が別の方向に動くこともないとは言えない。
しかし、中国は広すぎるため、全国短時間配送を実現するには、何らかの方法で飛行機を利用する以外にない。中国版新幹線の高速鉄道を利用するアイディアも提唱されているが、輸送量と輸送時間に難がある。一方で、飛行機の操縦は有人であっても、遠隔操縦であっても簡単ではなく、操縦士の育成には時間とコストがかかる。そうなると、やはり、無人飛行機、自律航行する貨物機が必要になってくる。
大手ECサイト「京東」も、全国各地にドローン飛行場を作り、順豊と同じようにドローン配送を計画している。
中国の宅配輸送は、いずれにしても無人機、ドローンを利用する方向に進んでいくことになる。
▲順豊は、SFエクスプレスという名称で、日本でもサービスを提供している。コーポレートカラーの黒い車が都内を走っている。
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