中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

貴重なマオタイ酒は、ロボットとドローンが守る。農産加工メーカーにもIT革命の波

大手ECサイト「京東」と貴州茅台集団は、業務提携を行い、マオタイ酒業務のIT化に着手する。人工知能を導入して、醸造まで自動化することを視野に入れている。その手始めとして、酒蔵を監視する巡回ロボットと監視ドローンが稼働を始めたと京東黒板報が報じた。

 

今またブームになっているマオタイ酒

中国のマオタイ酒というと、国酒とまで言われる。国賓を歓迎する晩餐会などで振舞われ、中国人の誰もが最高の酒だと絶賛する。マオタイ酒は、コーリャンを原料にした蒸留酒だが、強い芳香があるのが特徴。最近では、カクテルベースとしても若い世代に受け入れられ、マオタイ酒のブームがきているという。

 

貴州茅台集団の時価総額は15兆円を突破

ところが、マオタイ酒はその製法も秘匿され、年間1万トン程度しか製造できない。そのため、価格はうなぎのぼりで、貴州茅台集団の直販サイトでも、500mlの15年ものが9099元(約15万5000円)という高値がついている。

貴州茅台集団の株価もうなぎのぼりで、2017年の時価総額は8762億元(約15兆円)。中国の時価総額ランキングでも11位に入り、上はIT企業、銀行、保険などで、製造業、しかも農産物加工品製造業としては驚くべきことだ。

日本企業と比較をしても、トヨタ自動車にはとどかないが、NTTやソフトバンク三菱UFJ銀行を抑えて、2位にランキングされる大きさだ。

f:id:tamakino:20180415135144p:plain

茅台集団の直販サイトでの価格。最高級品の15年ものでは、1瓶9099元(約15万5000円)もする。「黄金と同じ値段」とも言われる。

 

類似品、偽物も多いマオタイ酒

稀少であるがゆえに、類似品も多く出回っている。多くはパッケージなどを似せている安価な別物として、普段飲みに用いられているが、中には貴州茅台集団製造の本物だと偽って高値で売るまったくの偽物もある。そのため、貴州茅台集団はパッケージに偽造防止ホログラムをつけたり、シリアル番号で管理をするなどの対策をしている。

さらには盗難の不安もある。マオタイ酒は最低3年は熟成させる必要があることから、酒蔵には大量の茅台酒が眠っている。これを盗まれてしまう危険性がある。また、パッケージの盗難の恐れもある。本物のパッケージを盗んで、粗悪な類似品を詰めて販売される可能性があるのだ。

このようなことから、貴州茅台集団の酒蔵は、厳重な警備がされていた。

 

酒蔵を守る巡視ロボットとドローン

大手ECサイト「京東」と、貴州茅台集団は、IT開発の業務提携を行い、酒蔵の警備をドローンとロボットに行わせるようにした。

守るのは失火と盗難だ。失火があった場合は、ライターの火程度であっても、巡回ロボットがすぐに火元を特定、アラートを発する。また、煙感知の機能もあり、煙が出た時点でアラートを発する。

また、盗難に関しては、「空気」「動」「霧」の2つを感知。空気の流れを感知することで、ドアや窓の開け閉めを認識し、侵入者を検知する。また、酒蔵内で動くものも検知する。

f:id:tamakino:20180415135149j:plain

▲酒蔵を巡視する監視ロボット。空気の流れ、動くもの、火などを発見していち早く通報する。

 

最終的には醸造までも人工知能で自動化

このロボットとドローンによる酒蔵監視は、京東と貴州茅台集団の共同プロジェクトの手始めのもので、すでにロボットによる自動出荷システムの開発が始まっている。

また、京東社内にマオタイ酒チームを作り、人工知能を利用した自動醸造システムの研究開発を行っていくという。

f:id:tamakino:20180415135152j:plain

▲侵入者を発見するために、ドローンで空中監視も行う。侵入者を発見すると、すぐに警報を発してくれる。

 

立ち遅れている農産加工のIT化を狙う京東

この提携は、京東の長期戦略に沿ったものだ。ECサイト京東は、有力な出品者企業と提携をし、出品者企業の製造、品質管理、出荷などのあらゆる業務のIT化をしようとしている。京東を単なるECサイトとして利用するのではなく、IT業務プラットフォームとして使ってもらうことを考えている。

そうすることで、有力な出品企業に京東中心に販売をしてもらうだけでなく、その企業にITシステムを販売する利益も狙える。京東は、他の酒造メーカーとも同様の提携を結んでおり、醸造システムを一気にIT化、自動化することを狙っている。

貴州茅台集団としても、近年のマオタイ酒ブームで、株価が急激に上がっており、新たに得られる資金の投資先としては、この京東との提携で、業務をIT化していくことが有効だと判断した。

京東が狙っているのは酒だけではない。農産物加工品の世界は、まだまだIT化が進んでいない世界なので、酒以外の農産物加工メーカーと同様の提携をしていくのではないかと見られている。

ひょっとすると、これが中国の農業のIT革命のきっかけになるかもしれない。

f:id:tamakino:20180415135155j:plain

▲京東の狙いはここ。農産物加工メーカーでは、「職人の腕」が過剰に重要視されるため、機械的作業まで人手に頼る傾向がある。ここを機械化し、さらには人工知能を導入して、農産物加工メーカーを改革することが京東と貴州茅台集団の提携の目的だ。

茅台迎賓酒 (マオタイゲイヒンシュ) 500ml

茅台迎賓酒 (マオタイゲイヒンシュ) 500ml