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モードが変わった中国スマホ決済競争

中国のスマホ決済「アリペイ」と「WeChatペイ」はサービスイン以来、熾烈な競争をしてきた。しかし、その様相が切り替わったとIT168が報じた。

 

競争しながら成長してきたスマホ決済市場

中国のスマホ決済は、「アリペイ」(アリババ)と「WeChatペイ」(テンセント)が2強であり、この2方式が熾烈なシェア争いをしてきた。その競争は、利用者にとっても好ましいものだった。それぞれに関連サービスが増えていき、さらにはさまざまなな優待の恩恵を得ることができた。

特に普及の原動力になったのが、紅包大戦と呼ばれるイベントだ。企業がプロモーションの一環で、消費者に紅包を送る。これは、利用者間で現金を送金できる機能を利用したもので、一定幅の金額がランダムに遅れるクジのような仕組み。本来は、お正月に送るお年玉として使う機能だった。企業サイトに登録をするだけで、少額とは言え、現金がもらえる。企業は、消費者の名簿を作ることができ、プロモーションの告知ができるようになるというものだった。大型の紅包大戦が行われると、アリペイとWeChatペイの利用者数は一気に急増した。

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▲WeChatペイ(左)とアリペイ(右)の使い方を解説した広告。アリペイの方が決済手続きのステップが1つ少ない。こういう利便性競争が今までは行われていた。

 

ウォルマートがアリペイの使用を停止

中国のウォルマートがアリペイの扱いをやめると宣言して、消費者の間に衝撃が走った。ウォルマートでは、WeChatペイ、銀聯カード、クレジットカード、現金のみで決済ができ、3月15日から4月1日まで、WeChatペイで支払った場合には優待をすると公告した。

ウォルマートは、189都市に439店舗を展開し、すでに中国人にはおなじみの大型スーパーとなっている。しかし、その拡大戦略を転換し、今後は毎年30店舗から40店舗のコンパクト店を出店し、周辺の配送サービスも始める。

ウォルマートは「1号店」という名称のECサイトも展開していたが、これをECサイト「京東」に売却、京東株の5%を取得し、京東との提携を深めていくことになる。

京東は、アリババのタオバオ、Tmallのライバル。そこでアリババのアリペイの扱いを停止したのではないかと見る向きもあったが、中国ウォルマートは否定をした。テンセントと排他的契約を結ぶことにより、優遇が得られる。そこに魅力を感じて、WeChatペイに一本化したと説明している。

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▲ウォルマートが店頭に掲げた告知。「尊敬するお客様へ:2018年3月15日より、本店の決済方式は以下のものになります。WeChatペイ、銀聯カード、クレジットカード、プリペイドカード、現金(アリペイは当面使用できません)。さらに、多くのお客様への還元として、2018年3月15日から4月1日まで、WeChatペイの優待キャンペーンを行います。詳細については店内でお知らせします」。

 

モードが変わった排他的契約によるパイの奪い合い

中国人は「スマホ決済は、スターバックス以外どこのお店も使える」とよく口にするが、なかなかスマホ決済に対応しなかったスターバックスも実は昨年1月にWeChatペイに対応をしている。しかし、アリペイに関しては9月になってようやく対応をした。背景にはWeChatペイとの排他的契約があったのではないかと言われている。

また、アリペイは以前から海外展開を初めていたが、WeChatペイは海外展開をしていなかった。ところが、昨年末あたりから海外展開の準備を進めているという。

国内都市部の普及がほぼ終わり、残るは農村部だけ。アリペイもWeChatペイも新たな出口を求めている。以前は、それぞれに成長競争をしていたため、利用者のメリットも大きかったが、これからはモードが変わって、パイの奪い合いの競争になる。その象徴的な施策が排他的契約だ。

多くのメディアが、消費者の利益にならない競争として、批判的に報道をしている。中国スマホ決済の競争は、明らかにシフトチェンジを始めている。

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▲アリペイとWeChatペイ。スマホ決済の2強は、競い合いながら、スマホ決済市場を成長させてきた。これからはパイの争奪戦になる。

 

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