中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

中国巨大キャリア「中国移動」の凋落が始まった

中国で時価総額の大きな企業といえば、テンセント、アリババというIT企業がトップだが、その他は携帯電話キャリアの中国移動、石油の中国石油、マオタイ酒の貴州茅台、その他各銀行というのが常連だった。しかし、巨大キャリア、中国移動が時価総額ランキングトップ20の中で、唯一時価総額を減らし、ランキングを下げたと捜狐が報じた。

 

元は国営企業の中国3大キャリア

中国の携帯電話キャリアは、主に3つのキャリアが競争をしている。中国移動、中国聯通、中国電信の3つだ。しかし、加入者数はまったく違う。中国移動が約7億人、中国聯通が約3億人、中国電信が約2億人だ。事実上は、中国移動の1強を、2キャリアが追いかけているという構図だ。

しかし、この3社はいずれも国営企業だった中国電信が元になっている。2000年に携帯電話事業を担う部署が中国移動となった。元の中国電信は加入電話事業を担うことになった。しかし、急増する携帯電話加入者に対応をするため、2002年に中国電信も携帯電話キャリアとなり、北部地域担当が中国聯通、南部担当が中国電信となった。

つまり、3キャリアは兄弟会社のようなものだが、現在では3キャリアが激しく競争をするようになっており、中国の携帯電話コストは急激に下がってきた。

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▲中国の3大キャリア。1強+2弱体制だったが、中国移動の凋落が鮮明になりつつある。

 

高コスト体質になっている中国移動

その最大のキャリアである中国移動の経営が苦しくなっている。中国移動といえば、中国企業時価総額ランキングでは常に5位以内に顔を出す超巨大企業。しかし、2017年のランキングでは6位となった。多くの専門家が驚いたいのが、ITを中心に好景気に沸いている中国で、トップ20企業はいずれも時価総額を伸ばしているのに、中国移動だけが9.9%のマイナスになったのだ。

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中国企業時価総額ランキング。IT企業の他、銀行の時価総額が大きい。トップ20企業が業績を伸ばす中、中国移動だけが時価総額を減らした。


値下げにより収益が悪化した中国移動

中国移動の低迷は、一言で言えば、老舗巨大キャリアの殿様商売のツケが回ってきたということにつきる。回線品質は確かに中国移動が優っていたが、通話料やパケット通信料は他の2キャリアよりも高かった。

特にスマートフォンが登場して、2キャリアは、パケットし放題料金の価格競争を始めたが、中国移動はなかなか値下げをしなかった。これを嫌って若い世代を中心に、中国移動から離脱するユーザーが増え始めていった。

特に、天津市湖北省江西省海南島などで、番号そのままで他キャリアに移れる番号ポータビリティー制度が始まってから、ユーザーの流出が顕著になってきた。また、QQやWeChatなどのSNS、音楽、映像の配信サービス、スマホゲームを運営するテンセントと中国聯通は、テンセントが運営するサービスへアクセスするパケット通信費が無料になるテンセント王カードを発売し、これがヒット商品となり、あっという間に5000万人のユーザーを獲得した。

この流れを食い止めるため、中国移動もパケットし放題料金の値下げに踏み切ったが、これが収益を圧迫する原因となった。

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▲テンセント王カードの購入サイト。テンセントのサービスにアクセスするパケット代が無料になる。最も安いプランは月19元(約320円)から(通話料、一般のパケット通信費は従量制)。

 

厳しさが予想される中国移動の今後

しかも、専門家は中国移動の将来を厳しく見ている。中国移動の本質的な問題は、中国最初の携帯電話キャリアであるため、2G、3Gの施設がまだ整理しきれてなく、すべてにおいて高コスト体質になっていることだ。中国聯通、中国電信は、新しいキャリアであり、加入者数も多くなかったため、その分、身軽で古い設備を切り捨てて低コストを実現することができている。

そして、今、5G時代を迎え、各キャリアとも5G施設の拡充競争を始めている。記事では、これは小さな問題ではない、中国移動は重大な危機を迎えていると記している。数年内に中国の携帯電話キャリアは、大きな再編を迎えることになるのかもしれない。

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▲中国最大のキャリア中国移動のショップ。中国のどの都市に行ってもこの青い看板を見かける。

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