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ニセモノビットコインで5200億円が騙し取られる

中国ではビットコインの取引については厳しい制限がある。しかし、それでもビットコインブームが席巻していて、案の定、偽物ビットコインを利用した詐欺事件が後を絶たない。実態のない仮想通貨「亜欧幣」による大掛かりな詐欺事件が発生し、4万人が被害を受け、40億元(約700億円)以上が騙した取られたと中国新聞網が報じた。

 

ブームに乗ったニセモノ仮想通貨

ビットコイン相場の話題をほぼ毎日耳にするようになった。ビットコインにいろいろ問題があるにしても、将来の通貨の姿を変えてしまうイノベーションであることは間違いない。

問題は、ビットコインよりも、ビットコインブームに乗った限りなく詐欺に近いニセモノ仮想通貨にある。日本でもすでにビットコインではない仮想通貨への投資を誘う限りなく違法に近い広告、限りなく詐欺に近い投資案件を目にするようになった。

もちろん、こういったものが大好きな中国では、すでに亜欧幣と呼ばれるニセモノ仮想通貨の詐欺が横行し、4万人が騙され、40億元以上が詐取された。

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▲逮捕された亜欧幣発行会社の責任者。相場価格はまったくの捏造であることを告白した。

 

最初は8円の投資から始まる詐欺の手口

詐欺に誘う手口も巧妙だ。「亜欧幣は中国製の仮想通貨の中では最も有名で安心できるもの」という口上で、「上がるばかりで下がることがない」「ノーリスクで5倍になる」と耳に入りやすくセリフを並べる。

そして、「まずは0.5元(約8円)だけ投資してみない?」と言って誘うのだという。0.5元であれば小銭だし、しつこい勧誘を断るために0.5元を出してしまう人もいる。それでもきちんと書類のようなものは作成し、金銭の預かり証を発行する。そして、数日後、「あなたの0.5元が100元になりましたよ」と言って、100元(約1700円)を届けにくる。ちゃんと相場のグラフなども持ってくるので、そこで結構な人が信用してしまい、次第に大金を投資し始めてしまうのだ。

 

捏造される上昇相場。最後は夜逃げ

逮捕された亜欧幣の発行会社の責任者は中央電視台の取材の応えた。「相場価格は会社の中で勝手に決定していました。だから、上昇し続ける相場の推移グラフを簡単に作ることができました」。

当然、大金を投資した人が売却をしたいと言い出すと、なぜか相場は急落をする。「売却ができない」というクレームが多くなると、担当者や営業所が一夜のうちに消えてしまう。

つまり、まったくの工夫もない単純で乱暴な詐欺なのだが、ビットコインの話題があるために、騙される人が続出した。

公安局が発表した統計によると、このようなニセモノ仮想通貨は、ほかにも107種類が存在し、公安が立件した事件は5900を超え、被害金額は300億元(約5200億円)になるという。

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▲亜欧幣の相場グラフ。実際に相場は立ってなく、発行会社が自分たちの都合のいいように捏造していた。



監視の目が弱い地方都市で蔓延するニセモノ仮想通貨

中央財経大学の黄震教授は、中央電視台の取材の応えた。「このようなニセモノ仮想通貨は、多くが第2級、第3級都市などの地方都市で出回っています。地方都市では金融監督機関の監視の目がなかなか及ばないのです。多くの場合、地方政府の金融機関が監督の役目を負うことになりますが、人手が足りず、綿密な捜査を行うことができません」。

できるのは、市民に対して、ニセモノ仮想通貨に騙されないように啓蒙することぐらいだ。ニセモノ仮想通貨の詐欺被害は、まだまだこれからも起こると見られている。

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