中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

2017年、中国スタートアップ死亡リスト

中国のスタートアップは勝負が早い。3年がひとつの目安になっていて、創業3年で事業が軌道に乗らなければ、廃業して次のビジネスを考える。そのため、大量のスタートアップが誕生して、大量のスタートアップが消えていく。2017年、どのようなスタートアップが“死亡”したか。i黒馬が報道などから「2017年スタートアップ死亡リスト」をまとめた。

 

企業の10年生存率は5%程度

スタートアップの生存率は意外に低い。さまざまな統計があるが、企業の5年生存率は20%程度、10年生存率は5%程度というのが、世界共通の数字のようだ。中国の場合、企業生存率はおそらくこの数字よりもかなり低いのではないかと想像される。特に5年生存率は20%もないはずだ。

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企業の成長段階を示す投資ラウンド

スタートアップの世界では投資ラウンドという考え方があり、中国のスタートアップを見る時に、そのスタートアップがどの投資ラウンドにいるのかを投資家たちは気にする。明確な定義があるわけではないが、その企業の成長段階を知ることができる。

投資ラウンドには、(中国の場合)シード、エンジェル、A、B、Cの5つの段階がある。シードは事業を始めるのに必要な少額の資金を自分や自分の友人から調達すること。エンジェルは、自分たち以外の個人が資金を出してくれること。事業が他人に認められたということになり、スタートアップが本格的にスタートする。

Aラウンドは、事業を確立させる段階で、企業や投資機関などからの投資資金が入り始める。Bラウンドは、確立したビジネスが拡大するフェーズ。Cラウンドは、ビジネスが軌道に乗り、付加価値をつける段階。この後は、もう株式公開ということになる。

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60社以上が生まれて2社が生き残ったシェア自転車

2017年は、シェア自転車を中心とするシェアリングエコノミーが吹き荒れた。シェア自転車のスタートアップは、60社以上が起業し、消えていったという話もある。報道では、このような倒産劇ばかりが伝えられ、あたかもシェアリング自転車ビジネス自体が崩壊したかのようなニュアンスで語られることもあるが、事実は逆で、淘汰整理が起こり、ofoとmobikeの2社に集約され、サービスとしてはしっかりと市民生活に定着をした。ライドシェアは、「いつでもどこでも利用できる」ことが鍵になるので、規模が大きいことが有利に働く。すでにofoとmobikeは黒字化を果たし、ofoはさらなる資金を調達し、ユニコーン企業となっている。

また、モバイルバッテリー、雨傘などのシェアリングエコノミーも数多くのスタートアップが生まれ、消えて行った。こちらは、まだ淘汰整理の段階に進んでおらず、2018年に定着するかどうかがはっきりとしてくるだろう。

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▲倒産したシェアリング自転車企業が放置した自転車の残骸。中国メディアがこのような写真をたびたび報道するため、シェアリング自転車産業自体が失敗したかのような印象を受けてしまうが、実際はofoとMobikeの2強に淘汰整理が行われ、サービスとしては市民生活に定着をしている。

 

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ある日突然、夜逃げでフィニッシュ。金融スタートアップ

もうひとつ、スタートアップが大量に生まれ、大量の消えたのが金融分野だ。しかし、金融分野はそもそもが限りなく詐欺に近いスタートアップも多く、サービス停止や倒産ではなく、「夜逃げ」という結末を迎えた企業も多い。

この分野は、政府の規制も厳しく、中国の金融規制はある日突然に方針が変わる。自社サービスが突然に違法になってしまうこともあるほどだ。しかし、あたれば短期間で莫大な利益をあげられる分野でもあり、2018年も、数多くのスタートアップが生まれては消えていくという状況は続くと思われる。

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スマホ転換できなかった“老舗”ITサービスも死亡へ

2017年、特徴的だったのが、5年以上続いた「老舗」オンラインサービスでも、倒産をする企業が多かったことだ。eコマース、SNSなど、一時期は好調だったサービスでも、今年サービス停止や倒産に追い込まれた企業がある。

ポイントは、PCからスマートフォンへの移行に失敗をしたことだ。このようなオンラインサービスの多くは5年以上前に起業し、当時としてはPCベースのサービスを展開していた。しかし、中国は2012年前後から、急速にPCからスマホへの移行が始まり、現在では、生活関連のサービスの90%はスマホから利用されている。

このスマホへの転換がうまくいかなかったところが、利用者を減らし、経営が悪化し、倒産することになった。

その好例が、テンセントのSNS「QQ」だ。QQはアカウント数10億件を超え、PC時代は、中国人のほぼ全員が加入していると言われた巨大SNSだった。スマホ時代になって、スマホアプリなども配布しているが、PCベースであるために、使いやすいとはとても言えない。PCからでないと使えない機能もある。スマホ転換がうまくいっているとはとても言えず、利用者数の減少という数字には現れていないものの、アクセス時間や利用回数などは急激に落ち込んでいる。

テンセントはスマホ時代のSNS「WeChat」も提供していて、多くの人がQQではなくWeChatを使うようになっていっている。一時代を築いたQQも、スマホ時代に対応することができなかった。

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2018年は無人コンビニの淘汰整理が始まる

現在、中国では人工知能関連、無人店舗システム関連のスタートアップが続々と誕生している。無人店舗である無人コンビニは、すでに淘汰整理が始まりつつある。2018年は、無人コンビニスタートアップが多く、この死亡リストに名を連ねることになりそうだ。

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