中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

送電線監視のドローンは、鉄塔に「巣」を作り、そこで充電する

中国では、送電線鉄塔の故障発見の巡回監視にドローンが使われるのが当たり前になってきている。人工知能による解析を取り入れるのはもちろん、鉄塔に巣を作り、そこで充電する技術開発が進められていると36クリプトンが報じた。

 

電気とテレビは隅々まで普及している中国

中国は、政策として、過疎地の隅々まで衛星放送を普及させている。プロパガンダを含め、中央の情報を伝えるためだ。それに伴い、電力も隅々まで供給されている。場所によっては独自に小型の水力発電所などを設置することもあるが、多くは大型の火力発電所などから供給をしている。そのため、送電線の総延長が約118万kmに達していて、これは世界一位だ。日本は、約1.4万kmなのでまさに桁違いだ。

しかし、その80%から90%は、人を寄せ付けない山地の中にかけられている。そのため、メンテナンスに莫大なコストがかかってしまう。もし、月に1回、監視員が鉄塔を巡視するとすると、全体でのコストは年200億元(約3400億円)を超えるという。

そのため、早くからドローンによる自動監視が行われてきた。

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2011年からドローン監視を始めているエアウィング社

中国の電力会社から最も多く採用されているのが、北京市のエアウィング社製の無人機、ドローンだ。充電式で、30分から90分の飛行が可能で、高解像カメラだけでなく、赤外線やレーザーなども搭載し、さまざまな情報を取得する。取得したデータは、自動的に解析され、問題点を自動抽出する仕組みだ。

エアウィング社は、2009年創立、2010年から国家電網北京超電圧と共同で、ドローン及び解析ソフトウェアの研究開発を始め、2011年には河北省、山西省チベットで、試験運用を始めた。その後、各地の送電企業と共同し、現在では20の省で、鉄塔の巡回監視に使用され、年の売り上げは2000万元(約3億4000万円)に達している。

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▲ドローンが鉄塔を高解像度撮影し、これを解析することでボルトの緩みなどを発見する。現在は、人による目視、簡単な画像解析で行っているが、深層学習で自動発見する技術を開発中だ。

 

鉄塔に巣を作り、そこを基地とする

エアウィング社の巡回監視ドローンは、さらに進化を続けている。ひとつは深層学習の採用だ。鉄塔のボルト緩みなどの物理的な問題点は、自動の画像解析ではなかなか発見しづらく、人間の目視に頼っている部分がまだ大きい。これを画像を深層学習させることで、人工知能に自動検出させようというものだ。これはすでに学習が進み、近々試験運用を経て、実用化の段階に進めるという。

もうひとつは、鉄塔に「巣」を設置する技術開発を行っている。ドローンを基地から発進させた場合、鉄塔までの往復の飛行が無駄になる。そこで、鉄塔自体に「巣」を作り、そこに帰還をさせ、発進させる。巣では自動的に充電が行われるというものだ。鉄塔に発進基地を設置すること自体は難しくないものの、自動的に充電を開始させることに技術的な課題が残されており、現在研究開発中であるという。

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▲RX-400。最高速度時速54km。幅1.1m。航続時間60分。

 

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▲エアウィングRX-600。最高速度時速54km。幅90cm。航続時間30分。

 

人よりも効率的、人よりも正確

人間が鉄塔巡視を行なった場合、山岳地帯では危険もあるため、2人一組で行動するのが基本になるという。それで、2つの鉄塔を巡視するのが限界。また、鉄塔上部の目視監視は、双眼鏡などで行うため、どうしても見落としが生まれる。

一方で、ドローン監視は、1日に20程度の鉄塔の検査を行うことができ、見落とし率は人間の1/20であるという。強風、強雨、急激な天候悪化で、ドローンが故障してロストすることもないわけではないが、鉄塔が設置されるような無人地帯では、人的被害を与えることもない。送電線鉄塔の巡視は、ほぼすべてがドローン監視になっていくと見られている。

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▲飛行機型の無人機FE-200。最高速度時速100km。幅1.6m。航続時間70分。

 

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無人機FE-300。最高速度時速100km。幅2.1m。航続時間100分。