中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

消費者は深夜にベッドの中で衝動買いをする

ロンドンを拠点にする広告代理店グループ「WPP」傘下の調査会社ウェーブメーカーは、「中国消費者のリアルなスクリーン体験(China Consumers’ Real Screen Behaviour)」を公表した。消費者自身が考えている時間の使い方と、実際の時間の使い方の差に注目するというユニークな内容だ。

 

自己認識している行動と実際の行動のギャップに注目

消費者がPCやスマートフォンで何をしているか。調べる方法は、いくつもある。アンケート調査により自己申告してもらう方法もあるし、アクセス量を調べて統計的に実際の行動を調べる方法もある。

この調査では、消費者の自己申告による行動と実際の行動のギャップに注目するというユニークな分析手法を採用した。このギャップから、消費者の潜在的欲求を探りだすことができるのだ。例えば「夜はあまりテレビを見ていない」と自己申告しているのに、実際は見ているとすると、それは本人は意識をしていないのに「ついつい見てしまっている」潜在的な欲求に基づく行動ということになる。

これをどうマーケティングに利用するかはケースバイケースだが、例えば「本人はテレビを1時間しか見ていない」と認識しているのに、実際は2時間見ている場合、潜在的欲求が強いのだから、適切なコンテンツやサービスを提供することで、よりテレビを見てくれるようになるかもしれない。一方で、テレビを2時間見ていると認識しているのに、実際は1時間しか見ていない場合、潜在的欲求が低下しているので、なにか手を打たなければ、テレビをますます見なくなってしまうかもしれない。

もちろん、こんな単純なものではないが、自己認識している行動と実際の行動のギャップを見ることで、さまざまなことが推測できるようになる。

 

寝る前の深夜にスマホ利用のピークがある

ウェーブメーカーは、まず、時間ごとにスマートフォン、PCの利用回数のデータを取った。すると、多くの人が想像する通りの結果が得られた。

PCよりもスマートフォンを使う頻度の方が圧倒的に多く、使う時間は朝方と夜にピークがある。

しかし、新しい発見があった。それは、スマートフォンでは深夜12時から1時の間に小さなピークがあり、PCではこのようなピークは見られないということだった。誰もが想像するのは、寝る前にベッドの中でちょっと使うというパターンだろう。

この「寝る前のピーク」は大都市の市民ほど顕著になる。1級都市、2級都市の消費者の行動と、3級都市、4級都市の消費者の行動に分けて見ると、。1級都市、2級都市では強いピークが見られた。つまり、大都市の消費者ほど、「寝る前にちょっと使う」傾向がある。

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スマホアクセスは、朝方と夜にピークがあるのは予想通り。しかし、寝る前の深夜にも小さなピークがあることが新たにわかった。

 

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▲1級、2級都市の消費者と3級、4級都市の消費者での比較。明らかに大都市である1級、2級都市の方に「深夜寝る前のピーク」が強く現れている。

 

寝る前に「ついつい」お買い物をしてしまう

では、この「寝る前のピーク」で、消費者は何をやっているのだろうか。SNSECサイト、ゲーム、天気アプリの4つについて、消費者に「どの時間に使っていたか」(自己認識している行動)を尋ねた頻度と、実際のアクセス数(実際の行動)を重ね合わせてみた。

すると、ECサイトの利用は、一般的な常識と大きく違っていることが判明をした。常識では、ECサイトへのアクセスは、昼休み、夕食後が多いと言われる。消費者への自己認識も、昼休みと夕食後の時間にピークがあるというものだった。しかし、実際のアクセス数を見ていると、意外に朝早い時間帯にピークがあり、深夜にもピークがあった。夕食後の時間のアクセスは実際はそうは多くない。

SNSの利用も同様の傾向が見られ、SNSECサイトへのアクセスが「寝る前のピーク」を作っていることがわかった。

つまり、朝と深夜寝る前は、本人が「そんな時間にあまり使っていない」と認識しているのに、実際は使っている時間帯で、潜在欲求に従って「ついつい」アクセスしてしまう時間帯だと考えられる。適切なプロモーションを行うことで、消費欲を刺激することも可能になるかもしれない。

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SNSの利用を、自己申告と実際で比較をした。本人は「その時間帯にはあまり使っていない」という認識なのに、実際は、朝方と深夜によく使われている。いわゆる「ついつい使ってしまう」時間帯だ。

 

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ECサイトも、朝方と深夜に「ついつい使ってしまって」いる。この時間帯を踏まえた商品設計、プロモーションなどを行うことで、ECサイトの売り上げを伸ばすことができるかもしれない。

 

寝る前の時間帯を狙ってのプロモーションが効果的?

実際、SNSのアクセスとECサイトのアクセスは、きれいにシンクロする。SNSでさまざまな商品を紹介する情報に出会い、そのままリンクをたどってECサイトにアクセスをしている。深夜のピーク時は、「寝る前にちょっとSNSをチェックしてから寝よう」と考え、興味のある商品情報に出会い、そのままECサイトにアクセスをしているのではないかと推測できる。このときは、他の時間帯よりも衝動買いをしやすくなっているかもしれない。

深夜のピークにどのような商品が売れるか、SNSのどのように反応をしてECサイトに移動をしているかなど、まだ調べなくてはならないことはたくさんある。しかし、「夕食を食べてからゆっくりとネットショッピング」という人は実はそうは多くなく、実際は朝方出勤前と深夜寝る前にネットショッピングをしている人が多いのだ。そこを踏まえた商品の品揃え、プロモーションを行うことで、ECサイトはより売り上げを伸ばすことができるかもしれない。

この調査は、あくまでも中国の18歳から45歳までの都市住民に対するもので、日本の消費者が同じ行動をとっているかどうかはわからない。しかし、日本でも同じ調査をしてみると、新たな発見があるかもしれない。