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むやみにクラクションを鳴らす車は、自動認識、違反切符を自動発行いたします

中国で問題になっているクラクション洪水。むやみにクラクションを鳴らす車を、指向性音センサーを使い、自動認識し、ナンバーを自動解析、自動で違反切符を発行するという取締システムが、主要都市で稼働し始めたと看看新聞が伝えた。

 

日本も昔は、街はクラクション洪水だった

海外の街に行き、途上国感を感じる最大のものは、街がクラクションの音でやかましいことだ。大通りが、クラクションの音の洪水に溢れていると、「途上国にきた」ということを実感する。

日本も60年代前半は、街はクラクションの洪水だったそうだ。信じられないことに、渋滞が発生すると、止まっていた車が一斉にクラクションを鳴らし始める。前に進みたいのに進めないというストレスを発散させるために鳴らしていたのだという。そんな状態で鳴らしたところで、なんの意味もないのだが。

これが変わったのは、1964年の東京オリンピック前のマナー運動だったという。無意味にクラクションを鳴らすことは道交法違反であるということを周知徹底し、街頭でボランティアが啓蒙活動をした。それ以来、日本の道路は静かになった。

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▲指向性の高い音センサーで、クラクションの音を感知。カメラで撮影し、画像解析でナンバーを読み取る。

 

「合流時にクラクション」マナーが定着してしまった中国

中国でも、クラクションの洪水が問題になっている。中国では、自動車台数が急激に増加し、それに合わせて急ピッチで道路整備、都市高速の整備が行われてきた。そのため、どこの都市でも、ファスナー合流が異常に多い。この合流をするときに、左車線の車と右車線の車が、どちらかが先に入るかで、意地を張りあい、接触事故を起こすことになる。

そこで、自然にクラクションを鳴らすマナーが定着していった。合流で競り合いになったときに、先にクラクションを鳴らした方に優先権があり、鳴らされた方は譲るというマナーだ。本来のクラクションの使い方とは異なるが、余計な事故を起こしたくないことから生まれた知恵のひとつだ。

しかし、合流だらけの中国の都市で、合流地点では年がら年中、クラクションが鳴らされることになり、街はうるさい。2008年、北京オリンピックの前には、警官が大量に街に出て、クラクションの取り締まりを厳しく行った。その成果か、2008年ごろの中国の都市は、気味が悪いほど静かになった。しかし、北京オリンピックが終って数年後から、以前の状態に戻ってしまったようだ。

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▲信号機に取り付けられた音センサーと撮影用カメラ。左下の電光掲示板には、違反車両のナンバーが表示される。

 

音を認識、ナンバーを自動読み取り、自動で違反切符まで

そこで、交通部が投入したのが、自動クラクション取り締まり装置だ。街灯の信号機に、指向性のある音センサーを設置。違法に鳴らしたクラクションを察知すると、カメラによる画像解析で、その車のナンバーを特定。電光掲示板に、ナンバーを表示する。現在、このシステムの試験中ということもあって、自動車の所有者に対する減点は行われないが、50元の罰金の違反切符はきっちりと送られるそうだ。

このシステムは、上海、石家庄、北京、南京、重慶、深圳での運用が始まっている。交通部では、このシステムを広げることで、静かな街を取り戻したいとしている。

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▲電光掲示板には違反車両のナンバーが表示される。もちろん、違反切符も自動発行される。