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中国のユニコーン企業(2):ofo

自転車ライドシェアのofoは、創業わずか2年でユニコーン企業となった。戴威CEO以下、社員はみな若く、まだまだ伸び代のある企業だ。スタートアップ企業のお手本になる企業だと科技企業価値が報じた。

 

若者たちの手作りスタートアップofo

ofoは、いろいろな意味で若いスタートアップだ。戴威(たい・い)CEOは、まだ26歳、ofoを創業したのは24歳の時だった。そもそもofoという名前がしゃれている。何かの略というわけではなく、単にofoという文字を図として見た時に、自転車に乗っている人の絵に見えるからという理由だ。

若い企業だけに、失敗も多かった。しかし、その失敗でめげずに、ひとつひとつ乗り越え、現在の企業価値は7億ドル(約120億円)と見積もられている企業に成長した。

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▲まだ26歳の戴威CEO。学生のような雰囲気だ。失敗も多かったが、その失敗をひとつひとつ解決することで、現在中国の自転車ライドシェアのトップ企業になった。若い企業だけに、いい意味での“やんちゃ”な施策を次々と打ち出している。

 

世界を理解するのに最も適した自転車

戴威CEOは、北京大学金融工学を学んでいた。当時から自転車が大好きで、北京大学自転車協会に入り、自転車ツーリングを楽しんでいた。

2013年、北京大学を卒業し、大学院に進学する予定だったが、それを1年遅らせて、1年間、青海省大通県東峡鎮で数学の教師をした。

東峡鎮は山の中の山村で、町との間は徒歩で何時間もかかった。戴威CEOはマウンテンバイクを持ち込み、これで町との往復をした。自転車で山道を走りながら、戴威CEOは雄大な景色を眺めていた。「自転車に乗ることが、世界を理解するのにいちばんいい方法だとわかったのです」。

 

シンプルにするため、GPSも電子鍵もつけない

大学院に進学するため北京に戻ると、すぐに自転車ライドシェアビジネスをやろうと考えた。協力する友人も集まった。

戴威CEOは、低コストを徹底することにした。自分たちはで自転車は生産しない。購入だけをして、利用者とマッチングさせる部分に集中する。また、GPSも電子鍵も搭載しない。自転車がどこにあるかは、自転車にGPSを搭載しなくても、利用者のスマホの位置情報から推測できるはずだ。

自転車をIT化するといっても、できるだけ余計な装置をつけたくなかった。自転車はタイヤとチェーンとペダルだけで、人間がこげば、人の力で前に進む。そういうシンプルな道具であってほしかった。

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▲ofoの中国名は「小黄車」。中国の都市ではどこでも見かけるようになった。Mobikeと激しいシェア争いをして、ここ半年はわずかながらofoが上回っている。

 

いきなり盗難、私物化、放置の問題が生じる

しかし、これが裏目に出てしまった。ofoの自転車は、心ない利用者によって私物化される事態が続出することになってしまったのだ。電子鍵ではなく、固定の番号鍵であるということが問題だった。アプリに自転車のナンバーを入力すると、固定鍵の番号が表示される。利用者は、その番号を自転車の鍵に入力して解錠する方式だった。

ofoの自転車を使った人が、ある場所で使用を終了する。すると、自動的に鍵が施錠される。しかし、鍵の番号は変わらないのだから、同じ番号を使って再び解錠し、どこかに乗っていけば、料金を支払わずに使い続けることができてしまう。後は、自分の家の庭や近所に置いておけば、無料で使える自転車になる。

また、小学生が勝手に自転車に乗ってしまうという問題も生じた。中国の道路状況は危険なので、12歳以下は、公道を自転車で走行することができない。ところが、鍵の番号を知っている小学生たちは、勝手に鍵を開けて乗ってしまう。そのような小学生が右折するバスに巻き込まれ、死亡するという事故まで起きてしまった。

 

誰だって、初めてのことは経験をしたことがない

戴威CEOたちは、このような問題をひとつひとつ解決していった。毎回、番号が変わる電子鍵を搭載するようにし、GPSも搭載していった。子供たちが勝手に自転車に乗らないように、下校時の時間に合わせて、小学校近くを巡回するようにした。放置された自転車を回収するチームを結成し、市民ボランティアにも協力してもらうようにした。保険会社も立ち上げて、利用者が自動的に傷害保険に入れるようにした。

その努力が実り、国内が170都市で800万台の自転車を提供する企業に育った。今年7月には、アリババなどから7億ドルの投資を受け、ユニコーン企業となった。創業当初は、ビジネス経験のない若い社員たちであったため、継続を危ぶむ専門家も多かった。しかし、問題を丁寧にひとつひとつ解決していくことで経験不足を補い成長し、いつ株式公開をしてもおかしくないところまで育ってきた。戴威CEOは言う。「誰だって、初めてやることは、未経験。ひとつずつ解決していけばいいだけ」。

今年には、サドルの下に1元硬貨を隠し、宝探しゲームのようなユニークなキャンペーンを行った。若い企業だけに、まだまだ楽しいことをやってくれそうだ。

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