中国でも携帯電話のキャリアは、大手だけでも3社あり、それぞれが別々に携帯電話インフラを構築している。しかし、江蘇省では、携帯電話基地局を3社が共有し、共有率が80%に達したと竜虎網が報じた。
携帯基地局鉄塔のシェアリングが進む中国
中国でも、日本と同じように、携帯電話キャリアが複数ある。大手3社と言われるのが、中国移動、中国聯通、中国電信。シェアはそれぞれおおよそ7:2:1の感覚だ。複数あるということは、サービスでの競争が行われ、消費者にとってはメリットがあるが、一方で、3社がそれぞれにインフラを構築しなければならないという多重投資による社会コストが問題になる。
そこで、中国では、中国鉄塔という企業を設立し、鉄塔建設を一手に引き受け、キャリアはこの鉄塔に使用料を支払って基地局を設置するという方式を採用してきた。中国ではシェアリング経済が注目を集めているが、携帯電話基地局は早くからシェアリングが行われてきたことになる。
▲典型的な中国移動の携帯電話基地局。キャリアが独自の鉄塔を建設することは無駄なので、3キャリアで共有する仕組みができあがっている。
需要が急増する携帯基地局鉄塔
中国鉄塔の江蘇省支社にあたる江蘇鉄塔では、2015年から150億元(約2500億円)を投じて、8万基の鉄塔を建設してきた。これは2015年以前の30年分の建設量に等しいという。4Gスマートフォンの時代になって、基地局の需要が急増しているのだ。
しかし、それでもシェアリングをすることで、総建設数を抑えることができている。
江蘇鉄塔の理葉臻(り・ようしん)副社長は、竜虎網の取材に応えた。「この3年間で、鉄塔の共有率を24%から80%にすることに成功しました。共有率が24%のままの時よりも、約5万基節約できたことなります。建設費は100億元(約1600億円)以上が節約でき、利用する土地も1600ムーが節約できました。政府が推進するシェアリング時代、スマート都市の政策に大いに貢献したと考えています」。
携帯基地局鉄塔で、刑務所内を監視する
江蘇鉄塔では、携帯電話の基地局を共有するだけでなく、スマート都市に向けたさまざまなプロジェクトを進めている。その中でも大きなものは、浦口刑務所との共同プロジェクトだ。
浦口刑務所の周囲に携帯電話基地局用の鉄塔を建設し、それだけでなく監視カメラを設置し、刑務所内の受刑者の監視をしようというものだ。さらに、鉄塔にドローン用の基地も設置し、刑務所の敷地内を巡回するドローンでも監視をする。近年では、刑務所上空に侵入する不審なドローンもあることから、巡回ドローンには、侵入してきたドローンを撃墜する機能も持たせるという。
また、江蘇鉄塔では所有している鉄塔のうち、14万基を社会に向けて解放し、スマート都市構築に利する利用を促していく。環境保護、治安、交通、気象などの機関、企業との協働を期待している。
▲南京市郊外にある浦口刑務所。この敷地の外3箇所に鉄塔を建設し、携帯電話基地局だけでなく、刑務所内の監視システムを設置しようというプロジェクトが進行している。
▲浦口刑務所の内部。最近、中国の刑務所には、不審なドローンが上空に侵入してくることが多いのだという。シェアリング鉄塔に装備される監視ドローンには、撃墜機能を持たせる計画もある。
日本でも第5世代携帯網から始まるシェアリング鉄塔
日本でも、携帯電話キャリアが携帯電話基地局を共有しようという動きはある。なぜなら、携帯電話基地局を1つ建設するのに約2500万円、土地利用料が年間300万円かかると言われているからだ。
しかし、現在のところ、各社の思惑、利益が複雑に絡み、ほとんど実現できていない。今から始まる第5世代のインフラでは、各キャリアで共有しようという動きが進んでいるが、まだ公平な負担を巡って、議論されている状態だ。
中国の場合、このような公的資本のシェアリングはスムースに進む。国家政策として位置づけられてしまったら、各社はそれに逆らいようがないからで、これが中国の強さの大きな要因になっている。それが幸せなことであるかどうかはともかく、この中国の強さは意識しておく必要がある。