中華IT最新事情

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交通違反が1回チャラになる優待券の配布を始めた広州市警察

中国のお役所は、日本と違って意外と融通が効く。各警察では、スマホアプリを開発し、市民に親しんでもらおうと必死だ。広州市警察が警察のスマートフォンアプリを普及させるため、なんと「交通違反が1回チャラになる優待」を始めた。さすがにそれはやりすぎではないかと話題になっているとIT之家が報じた。

 

反則金を稼がないと、自分たちの給料が出てこない

中国のお役所というと、日本よりもさらに官僚的で融通が利かないイメージをお持ちの方もいるかもしれないが、現実は融通が効きすぎて、帰って問題が起きている。末端の公務員でもある程度の決済権を持っているために、それが賄賂や汚職の引き金になってしまっている。

お役所にも独立採算制の考え方が過度に取り入れられたため、交通警察では、反則金で稼がないと、自分たちの給料が出ない状態になっている地域もある。そのため、押収した違反車両をオークションで売却してみたり、軽微な交通違反を摘発して、市民とトラブルになることも起こっている。

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反則金スマホ決済はもはや当たり前

交通警察はこのような融通が効きすぎるお役所であるため、IT技術の利用にも積極的だ。例えば、スマホ決済であるアリペイ、WeChatペイなどは、多くの地域の交通警察が、違反金の支払いに利用されている。

北京市などでは、駐車違反をすると、車に違反キップが貼り付けられるが、そこにはQRコードが印刷してある。このQRコードを読み取って、その場でスマホ決済で違反金を支払ってしまえば、それでおしまい。警察署に出頭する必要もない。

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ハルビン市交通警察が、違法駐車車両の窓ガラスに貼った違反切符。下部のQRコードをスキャンすると、そのままスマホ決済で罰金を支払うことができる。

 

優良市民には交通違反が1回チャラになる優待券

これなどは、単に利便性を高めただけだが、広州市の交通警察がさらに一歩踏み込んだ“優待”制度を始めて、話題になっている。これは広州交通警察のアプリを利用している市民の中で、一定の条件に合致した人は「優待券」がもらえるという制度だ。

この優待券は、減点3点以内、罰金200元(約3200円)以内の交通違反を起こしても、優待券を使うことでチャラになる。ネット民からは「違反の合法的もみ消しだ!」「交通違反も初回無料になったか…」「タオバオで売買されるに決まっている」という批判が上がる一方で、優待券ほしさに交通規則を守るようになるのではないかと評価する声も上がっている。

 

通報5回でもらえる熱心市民券と無事故無違反でもらえる遵法市民券

優待券には2種類ある。ひとつは「熱心市民券」、もうひとつは「遵法市民券」。熱心市民券は、前年に5回、アプリから交通違反の目撃通報をすると1枚もらえる。10回通報すれば2枚になる。遵法市民券は、過去1年間無違反であり、なおかつ2年間死亡事故を起こしていなければもらえる。

いずれの優待券も、アプリの中で、10項目の交通安全に関するクイズに答えると有効になる。

日本で同じことをしようとすると大反発され、おそらくなんらかの法律と整合性が取れなくなるだろう。しかし、中国の役所や中国人はこのような新しいことに対して寛容だ。「やってみて問題があれば修正すればいい。修正しきれない大きな問題があるなら、そこでやめればいい」と考えていて、民間でも役人でも、こういった工夫を次々としている。

もちろん、それは社会を騒がすことになり、整然や秩序といったものは乱されることになる。しかし、それを乗り越えて前に進んでいくのが、中国らしい発展の仕方なのだ。

東洋マーク 駐車違反 ステッカー 1967

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