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中国がバスの乗車賃を急いで電子化する本当の理由

雲南省麗江市は、街中を清らかな運河が流れる美しい街だ。少数民族が多く、トンパ文字の発祥地でもある。その小さな街のバスも、スマホ決済に対応を始めた。その理由は、偽札、偽硬貨の分別に大きな手間がかかっているからだと麗江網が報じた。

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▲世界で最も神秘的な街とも言われる麗江。人口110万人の都市に、毎年1億人を超える観光客が訪れる。世界で最も成功した観光都市のひとつだ。

 

偽札、偽硬貨に悩まされる麗江市バス

以前、中国のバスが、NFCカード決済からQRコード式のスマホ決済に転換しようとしていることをお伝えした。

tamakino.hatenablog.com

雲南省にある麗江市もその例外ではない。スマホ決済にするということは、全国的に普及しているアリペイ、WeChatペイでの支払いができるということで、麗江市民でなくても、そのままスマホ決済が可能になる。また、スマホ決済はほぼ実名制なので、乗客の年齢、性別、居住地などのデータを収集することができ、データ解析をすることでバスのダイヤや路線計画を効率的に改善していくことができる。

しかし、麗江網はもうひとつの理由を紹介している。それはバス乗車賃には、偽札や偽硬貨が使われることが多く、スマホ決済にすることにより、この問題を解決できるだからという。

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▲偽札にもほどがあるが、中国の子どもの玩具の紙幣、葬儀に使うお供え物の紙幣が妙にリアルであるため、使われてもうっかり見逃してしまうことがある。

 

中国のバスは、釣銭が出ないルール

偽札などが使用されたことは、バスの運転手が確認をしなければならないが、乗客が多い時は、すべてを確認することは難しい。また、発見をして注意をすると、言い返されてトラブルになることもある。

中国のバスは、規定により釣銭を用意していない。効率を考え、乗客の方が釣銭がでないように事前に乗車賃を用意しておくというルールになっている。しかし、現実にはそういかないこともあり、乗車してから小銭が足りないことに気がつくこともある。このような時に、財布の中に入っている外国の硬貨やゲーム用のコイン、玩具のコインなどで払ってしまう人もいるようだ。

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▲硬貨に紛れて発見された鍵の一部。

 

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▲正規の硬貨なのだが、穴が空いている。なんのために開けられた穴なのかは謎だ。

 

汚れた紙幣が多く、偽札が見分けられない

もうひとつは、中国の紙幣は概して汚れているということがある。最近の大都市では、ほぼ日本と変わらない綺麗な紙幣が使われているが、地方に行くとまだ汚れたり、破れたりしている紙幣が流通している。市民は財布を使う習慣がなく、ポケットなどに直接入れていることが多く、紙幣と硬貨の製造量が少ないために、ボロボロの紙幣が流通している状況があった。都会の若者が、現金を嫌って、短期間にスマホ決済に移行したのには、この紙幣が汚いという理由もあったと推測される。

紙幣が汚れているために、玩具の紙幣を使われても、運転手はなかなか気づきづらい。そんな理由で、偽札の類も使われてしまう。

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▲財布を持つ習慣がない中国では、紙幣を折りたたんで持ち歩く人が結構いる。折りたたんだ紙幣を開いてみると、偽札だったり、破れているお札だったりすることがある。

 

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▲乗車賃として回収された紙幣。一目見て、綺麗でないことがわかる。最近は随分と改善されたが、以前は汚れた紙幣がよく流通していた。

 

札被害は毎年7万元

市バスの運営局では、回収した乗車賃を集め、まず真札とそれ以外の分別作業をしなければならない。麗江市の場合、毎年、このような不正な紙幣、硬貨が7万元(約115万円)発見されるという。また、この分別作業にかかる人件費もバカにならない。小さな麗江市にとっては決して小さくない負担だ。

麗江市は、市の人口は110万人程度だが、国内外からの観光客は毎年1億人を超えるという、世界で最も成功した観光都市だ。交通カード方式では、観光客になかなか使ってもらえないため、現金による乗車賃が多いままだった。スマホ決済にすることによって、アリペイ、WeChatペイが使えるようになり、中国人観光客はスマホ決済でバスに乗れるようになり、現金比率が大きく下がることが期待される。

将来、外国人観光客もスマホ決済ができるようになれば、現金はほとんど使われなくなる。そうなれば偽札が使われることもなく、真札との分別作業も必要がなくなる。

小さな麗江市が、いち早くスマホ決済に対応したのは、こんな理由があったのだ。

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▲回収した現金から、不正な紙幣、効果を分別する作業。かなり汚れる作業であるため、白衣とマスクは必須だ。麗江市では毎年7万元の不正乗車賃が発見される。