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寂れゆく中国深圳の”ラジオ会館”ーー華強北電子商城。空室率が40%の商城も

深圳市の華強北(ホワチャンベイ)と言えば、電子製品の卸市場街として世界的に有名で、ガジェット好きの人が深圳に行けば、必ず訪れるという地域。しかし、時代は変わり、華強北の商城にも空き店舗が目立つようになり、空き店舗率が40%に達している商城もあると深圳新聞網が報じた。

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▲深圳市の華強北。今でも通りは大勢の人で賑わっているが、商城の上層階では、倒産する小規模店舗が増えている。

 

空き店舗率が40%にも達する商城も

ガジェット好きの人にとって、華強北は朝から晩までいても飽きることのない夢の国だ。商城と呼ばれるビルが建ち並び、その中に無数の小規模店舗がひしめいている。著名メーカーの電子製品が驚くほどの価格で販売され、中古品はビニール袋で梱包され山積みになっている。さらには、山塞(シャンジャイ)と呼ばれる独立小規模メーカーの店舗が無数にある。数人の仲間で、携帯電話やPC周辺機器を製造し、店舗で販売している。中には、品質が悪く、権利関係を無視した偽物製品もたくさんある。法的な問題はあるが、見ているだけでも楽しい場所だった。

しかし、時代が変わり、その商城にも空き店舗が目立ち始め、空室率が40%に達している商城もあるという。夢想青年科技が公開した曼哈数碼広場の取材映像では、シャッター通りとなっている無残な姿が映し出されている。

記者が、華強北で最も有名な華強北電子世界を取材してみると、1、2階のメーカー製品売り場は相変わらずの賑わいだったが、4階の携帯電話売り場は閑散とし、閉店をしている店舗が目立った。営業を続けている店主に尋ねると、「携帯電話の売れ行きが以前から落ち込んでいて、倒産する店舗が相次いでいます。この一角は、デジタル一眼レフカメラ売り場に改装される予定だと聞いています」と言う。

明通数碼城も1階は相変わらず賑わっていたが、2階には空き店舗が目立ち、「入居募集中」の張り紙があちこちに貼られている。明通数碼城の管理会社に取材をすると「家賃3000元の店舗を1920元まで割り引いていますが、入居する人が見つからない状態で、空室率は40%に達しています」と言う。

以前の華強北の賑わいを知っている人にとっては、なんとも切なくなる状況だ。

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▲曼哈数碼広場の2階は、ほとんど営業している店がなく、閑散としている。1階も営業している店が半数ほどになってしまった。

 

携帯電話の進化によって、零細メーカーが次々と脱落

空き店舗が増えたのには、複数の要因が重なっている。ひとつは、2010年頃から、華強北の商業組合が協同して「品質の華強北、誠実の華強北」運動を進めてきたことがある。低品質の製品や権利侵害をしている山塞製品を売る店舗には、店舗を貸さない、賃貸契約を延長しない運動を進めてきたため、空き店舗が増えていった。それでも、問題のある店舗が排除できたことに、地元商業組合は一定の成果があったと感じている。

もうひとつの理由は、タオバオなどの個人レベルでも簡単に出品できるECサイトが登場したことだ。華強北に店を構えるよりも、ECサイトで販売した方が、家賃や光熱費は不要で、中国全土に売ることができる。タオバオの流行とともに、商城の店舗は減少していった。

記者は今でも営業を続けている山塞携帯電話を製造販売する店舗に取材をした。「山塞携帯電話のいちばんよかった時期というのは、2Gの携帯電話時代だったのです。あの頃は、深圳周辺の中小企業がパーツを生産し、それがジャンク品として大量に流通していました。それを購入して組み立てれば山塞携帯電話が簡単につくれました。しかし、3Gの携帯電話時代になると、内部が複雑になり、大量生産をする大メーカーでないと、製造原価が高くつくようになってしまいました。山塞メーカーの中には、大量の資金を投入して携帯電話を製造するところもありましたが、零細の山塞メーカーは資金面でついていけなくなったのです」。

そして、4G、スマートフォンの時代になると、零細メーカーではほとんど手が出せない製品になっていった。大量の資金を投入して、数百万台を製造しなければ、利益がだせないのだ。山塞メーカーは、現在では安価なアンドロイドスマホ仕入れて、外装を改造したスマホを販売するようになっている。

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▲曼哈数碼広場は、入居者募集中の張り紙が出て、中が荒れている店舗が多い。空き店舗率が40%を超えてしまっている。

 

昔を懐かしむ深圳悲歌

品質に問題があり、権利侵害もしている山塞製品は確かに問題はある。しかし、それを面白がる人が一定数いたことも確かだ。そういう妖しさを楽しめる場所が、深圳から消えようとしている。一部のマニアからは「深圳悲歌」と呼ばれ、昔を懐かしむ声があがっているという。あの熱気の塊のような華強北を体験できた人は、その思い出が一生の宝物になるかもしれない。

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▲在りし日の深圳市華強北の遠望数碼城。華強北の商城はどこも熱気の塊で、身動きもできないほどだった。

プラッツ 1/1000 ラジオ会館×シュタインズゲート ラジオ会館 プラモデル

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