中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

セルフ方式のビュッフェが続々登場。スイーツやホテルの高価格帯ビュッフェも

経済が冷え込む中国で、飲食店がセルフ方式のビュッフェに活路を見出している。オフピークの時間帯に、バイキング方式で料理を提供するものだ。スイーツ店やホテルも参入し、セルフ方式ビュッフェが定着をしようとしていると餐飲老板内参が報じた。

 

続々登場するバイキング方式のセルフ朝食

中国経済が冷え込んで、人気となっているのが「自助餐」だ。ホテルの朝食のようなバイキング形式を取り入れた飲食のことだ。自助餐を取り入れる飲食チェーンが次々と登場している。

昨年2023年の初めに、台湾ブランドの豆漿を中心にした「永和大王」、お粥を中心にした「谷連天」、豆漿を中心にした「漿小白」などが、朝食の時間帯に3元などの格安価格で、好きなメニューを食べられるセルフサービスメニューを提供して人気となった。また、火鍋で有名な「海底撈」も今年1月に108元のセルフ朝食メニューのテスト販売を上海で行った。

自助餐の魅力は、安いということが最も大きいが、出費が事前に確定をするという点が好まれている。安いと思って入った飲食店で、追加のメニューを頼んでいたら結局高いものについた、そういうことが起こらない。出費を抑えたい、お金は計画的に使いたいという、今の市民の心理をうまくついた販売形式になっている。

▲台湾の豆漿チェーン永和大王も3元ビュッフェを始め、好評を得ている。

▲著名な火鍋チェーン「海底撈」も108元食べ放題のテスト販売を行ったところ好評だった。

 

高価格帯ビュッフェも盛況

安い価格で質素なメニューという自助餐のイメージも変わってきている。香港ブランドのスイーツチェーン「満記甜品」では、2023年6月に35元で食べ放題のデザートビュッフェをテスト運用し、その後、価格を48元に改定して、正式投入している。

このデザートビュッフェは、平日の10時から13時までで、利用するには、事前にオンラインで予約をする必要があるが、どの店舗でも満席状態になっている。デザート店にとっては、10時から13時という昼食の時間帯はオフピーク時間帯だった。朝食にスイーツを食べる人はいるが、昼食に食べる人は少ないからだ。このトラフィックの少ない時間帯をデザートビュッフェにあて、客数は10倍以上に増加をしたという。

▲スイーツチェーン満記甜品では、客数の少ない昼の時間帯に48元のデザートビュッフェを初めて、その時間帯の客数は10倍以上になった。48元のデザートは安くないが、食べ放題というところに魅力を感じて、多くの人が押し寄せている。

 

ホテルでもビュッフェサービスを始める

バイキング形式のビュッフェを朝食で提供してきたホテルも、ビュッフェのオープン化を進めている。マカオ市のMGMマカオでは、12888元で1年間ビュッフェを自由に利用できる年間パスの販売を始めている。価格は高いが、1日あたりにすればわずか35元で、食事の質を考えれば格安とも言え、近隣のオフィスワーカーに利用をされている。

 

3元朝食で成功した南城香

自助餐で有名になったのは、地域密着系の飲食チェーン「南城香」だ。八宝粥、豆漿など7種類の朝食メニューが3元で食べることができ、おかわり自由の食べ放題なのだ。

提供されているのは基本メニューが中心で、それを何杯もおかわりして満腹になるという人はあまりいない。日本の感覚で言えば、ご飯が食べ放題になっている感覚だ。そのため、ワンタン、油条(揚げパン)、サンドイッチなどを追加メニューとして取る人が多く、以前の単品注文の頃と比べて、朝食時間帯の売り上げは倍増をしている。

▲地域密着系飲食チェーン南城香では、3元の朝食を出して成功をしている。朝食だけでなく、通常価格の昼や夜の客数が伸びている。

 

オフピーク時間帯にセルフ方式であるため低価格が実現できる

自助餐は、来店客が自分で食事をとって自分の席に持っていく方式であるため、少人数のフロアスタッフで運営することができる。また、メニューもお粥や豆漿、パンなど作りおきが可能なものが中心となるため、調理スタッフの負担も少ない。

それぞれの飲食店のオフピーク時間帯にうまく自助餐を設定することができれば、売上が増加するばかりでなく、来店してもらうことで、メインの時間帯にもきてもらえるようになる。消費者の心理が萎縮をする中で、この自助餐は広範囲の飲食店に広がっていくのではないかと見られている。

 

 

台湾人の6割が「現状維持」を望む。独立と統一の間で引き裂かれてしまっている台湾人

台湾の国立政治大学選挙研究センターでは、1994年から毎年、台湾独立/統一に関する意識調査を行なっている。2023年の調査では、「現状維持」61.1%、「独立」25.1%、「統一」7.4%という結果になったとフォーカス台湾が報じた。

 

台湾人の6割が「現状維持」を希望

「台湾有事」という言葉を毎日のようにメディアで目にするようになっているが、当の台湾人たちはどう感じているのだろうか。

台湾の国立政治大学選挙研究センターでは、1994年から台湾独立/統一に関する意識調査を行なっている。これによると、最も多かったのは「永久に現状維持」の33.2%だった。さらに「現状を維持して後に決定」27.9%を加えると、61.1%が現状維持派だった。

独立派は「どちらかというと独立」「独立」を合わせて25.1%、中国との統一派は「どちらかというと統一」「統一」を合わせて7.4%となった。つまり、多くの人が、曖昧な形での現状維持を望んでいることになる。

▲台湾の国立政治大学選挙研究センターによる意識調査。香港の民主化運動で独立派が上昇したことを除けば、現状維持が主要な意見であることは変わっていない。

 

独立も統一も選択したくない台湾人

台湾人の立場に立つと、独立か統一かを決めることは簡単ではない。台湾人は独立と統一の間で引き裂かれてしまっている。

中国との統一に賛同ができない理由は、中国の国家優先の統治体制に組み入れられることは誰もが嫌うからだ。1947年に台湾政府が成立をした時、実態は軍事政権であり、言論の自由などなかった。そこから、多くの民主化運動を経て、多くの人の血を流しながら、現在の自由な社会を手に入れてきた。中国と統一をするということは、時代を逆戻しすることになり、自由のために命を落としてきた先人たちに合わせる顔がなくなると考えている。

中国と統一をする場合でも、高度な自治区など、現在の台湾の社会体制が維持されることが絶対条件だと考えている人が多い。しかし、香港の現状を見ていると、それが叶えられないことがはっきりとしている。これにより、2018年から「どちらかというと独立」が急上昇をしている。

 

独立できない2つの理由

では、中国と袂を分かつことができるかというと、それも難しい。ひとつは経済問題だ。中国市場に進出をしている台湾企業は少なくない。有名なのはカップ麺の康師傅、豆漿の永和大王、スナック菓子の旺旺、メガネの宝島メガネ、電子機器製造の富士康(フォクスコン)など、大陸の中国人たちが中国企業だとすら思い込んでいる台湾ブランドがたくさんある。独立を強行すれば、このような中国でのビジネスを失うことになる。

もうひとつ大きいのが、儒教的な考え方に基づく、自分たちのルーツの問題だ。台湾には、福建省などの中国から移住をした人たちが多く、儒教の考え方では、先祖の霊を祀ることが何よりも重要だとされる。そのため、台湾人でも、中国にある先祖の墓参りをしたいと考える人は多く、歳を取ったら中国に移住して墓を守りたいと考える人もいる。中国と袂を分かってしまうと、それができなくなる。

これは心の問題であり、日本人でも故郷に実家があることが心の拠り所となっている人は多い。都会に生活基盤を築いても、どこか漂泊しているような虚しさを感じることがある。それと同じで、中国の社会体制がどんなものであれ、中国とのつながりを完全に断ち切ることはできないという感情がある。

 

それでも備えは進める台湾

現状維持を望む人が多い台湾だが、台湾有事をまったく考えていないわけではない。台北市政府は2023年7月に市民に対し、「台北市全民国防応変パンフレット」を配布した。そこでは、人民解放軍という言葉は使われていないものの、敵軍が空襲をした場合にどう避難をすべきかが分かりやすくまとめられている。

しかし、ある市民からの指摘で、敵軍の軍服を紹介した図版が誤っていることが発覚をし、訂正版を配布する事態となった。人民解放軍の古いタイプの制服に基づいた図版を載せてしまったのだ。切迫感に欠ける話だが、ここに「現実的だとは思えなくても備えはしておく」という台湾人の考え方が見える。

台湾人の考え方は「現状維持」。ただし、台湾有事のリスクが0でない限り、可能な対応はしておくというのが台湾の考え方だ。周囲が「台湾有事」と騒ぎ立てるのは、当の台湾人にとっては「現状維持」が難しくなる困った状況なのかもしれない。

▲台湾有事に備えて、台北市では敵軍が攻めてきた時にどう行動すればいいかをまとめたパンフレットを配布している。「中国」「人民解放軍」という言葉は使われていないものの、敵軍が攻めてきた時にどう行動すべきかがわかりやすくまとめられている。

▲パンフレットには敵軍(人民解放軍)を識別するために、制服などのイラストが掲載されていたが、市民の指摘により、古いタイプの制服が掲載されていたことが発覚をした。現在では訂正版が配布されている。

 

 

人型ロボットが自動車工場で働く。品質管理AIを内蔵し、人の代わりに検査を行う

UBTECHの人型ロボット「Walker S」が、NIOのNEV生産工場で研修を始めた。中国だけでなく、米国でも人型ロボットを生産工場に導入する例が増え始めてきた。工場では、人とロボットが協働して働く時代が始まろうとしていると毎日経済新聞が報じた。

 

自動車工場で働き始めた人型ロボット

優必選(UBTECH、https://research.ubtrobot.com/)の人型ロボット「Walker S」が、深圳市にある蔚来汽車(NIO)の新エネルギー車(NEV)の生産工場で研修に入った。Walker Sは、UBTECHが開発した産業用人型ロボット。人型であるため、既存の製造ラインに入って、人の代替をすることができる。UBTECHは、開発時から複数のNEV生産企業と接触をしており、自動車の生産工場に導入することを目指している。

▲Walker Sは、車のエンブレムを取り付ける作業も行なった。

 

品質管理システムを内蔵した人型ロボット

Walker Sは、NIOの生産工場で、ドアロックの品質検査、シートベルトの検査、ヘッドライトカバーの品質検査を行なっており、さらには車のロゴを車体に貼る作業もこなした。

Walker Sには、AIによる品質管理システムが搭載されていて、車のドアロックの映像を収集して、品質問題を確認し、工場の品質検査システムにOK/NGの信号を返す。

シートベルトの品質検査では、手を車内に入れ、シートベルトを下げる動作を行い、シートベルト機構に問題がないことを確認する。

▲シートベルトの品質検査では、手でシートベルトを引き出して、その映像から品質検査を行う。

▲ドアロックの品質検査では、ドアロックの映像を撮影し、それをAIで解析して、不具合がないという信号をシステムに返す。

▲工場内で移動するWalker S。移動できるため、生産ラインの状況に柔軟に対応できる。

 

日本では下火になった人型ロボット開発

UBTECHは、さまざまな産業応用可能なロボットを開発している。最も広く知られているのは、配膳ロボットで、飲食店などで、人などを避けながら、注文したテーブルまで食事を運ぶ。

人型ロボットの開発に関しては、2010年ぐらいまでは日本で盛んに試みられたが、その後、下火になってしまった。その後、2015年頃から中国の大学や企業で盛んに開発が進められるようになり、UBTECHもそのような企業のひとつで、2023年12月には香港に上場を果たすほどまで成長をした。

UBTECHでは、工業生産、商業サービス、ホームコンパニオンの3つの分野で、人型ロボットが使われるシナリオを想定して、人類を反復で退屈な労働から解放することをミッションとしている。これはテスラのイーロン・マスクCEOの考え方とも一致をする。マスクCEOは、人間とロボットの比率は2:1が適切で、最終的には100億台から200億台の人型ロボットが、さまざまな分野で、人間の代わりをすることになると予測をしている。

▲日本でもすでにおなじみになっている配膳ロボット。UBTECHの配膳ロボットでは日本の飲食店でも働いている。

▲UBTECHの案内ロボット。人や障害物を避けて移動し、話しかけると音声で施設内のガイドをしてくれる。

▲人型ロボットの特許件数の取得時期の分布。左から「ホンダ」「ソニー」「サムスン」「トヨタ」「セイコーエプソン」「ソフトバンク」。右から2つ目の優必選(UBTECH)は2015年以降、大量の特許を取得している。

 

米国でもロボットが工場で働く

自動車生産工場で、“研修”を始めた人型ロボットはWalker Sが最初ではない。米国のスタートアップ「Figure」(https://www.figure.ai/)が、米サウスカロライナ州BMW工場で1月早く研修を始めている。テスラが開発している人型ロボット「Optimus」も、テスラの自動車生産工場で稼働することを目的としている。

2010年までの人型ロボットはメカニカル技術が基本になったものだったが、現在の人型ロボットはAIを実装するのが当たり前で、高度な判断ができるようになっている。これからの工場は、単純作業は産業用ロボット、高度な作業、危険性を伴う作業は人型ロボット、繊細さを必要とする超高度な作業は人間ということになっていきそうだ。

 

 

 

欧州EV市場は中国とテスラに侵食される。UBSの衝撃的なレポート

スイスの金融機関UBSが衝撃的なレポートを公開している。欧州のEV市場は、中国メーカーとテスラに侵食され、既存メーカーはシェアを大きく落とすという内容だ。その理由は、BYDがすべてのパーツを自社生産していることにより、品質とコストを両立させていることにあると両抖雲が報じた。

 

スイスUBSの衝撃的なレポート

電気自動車(EV)の市場予測について、スイスの金融機関UBS傘下のUBSエビデンスラボが、衝撃的とも呼べるレポートを公開している。「BYD teardown:Will Chinese EVs win globally?」(BYD分解検証:中国EVはグローバルで成功できるか?)というもので、中国のEVが欧州市場でも躍進をし、現在のシェア3%から2030年には20%にまでなるという内容だ。同様にテスラも2%から10%に増え、既存メーカーのシェアは95%から70%にまで低下をし、グローバルサプライヤーとともに大きな打撃を受けるというものだ。

UBSエビデンスラボでは、過去にテスラモデル3、フォルクスワーゲンVW)ID.3を分解して検証した経験があり、今回、BYD「海豹」(シール)を分解して検証したところ、中国メーカーはコストが圧倒的に小さく、欧州市場に参入をしてくれば大きな競争力を持つと結論づけた。

▲UBSの予測による欧州市場の変化。2030年には中国メーカーのシェアが20%、テスラが10%となり、既存メーカーは大きくシェアを落とすことになる。

▲UBSの予測による中国市場の変化。2030年にはEV化率が80%を超え、既存グローバルメーカーはほぼ居場所がなくなる。

 

UBSが想定する4つのシナリオ

UBSは、やみくもに「中国EVが躍進をする」と主張しているわけではない。レポートでは複数のシナリオを想定している。「EVシフトが進む/進まない」「市場がオープン/クローズ」の2軸により、4つのシナリオを想定した。

1)EVシフトが進まず、市場がオープンのシナリオ:確率5%

EVシフト政策が後退をし、バッテリー価格の上昇、充電設備の普及の遅れなどにより、消費者は燃料車を選択する。中国EVは参入はするものの売れない。既存グローバルメーカーが市場を支配する。

2)EVシフトが進まず、市場がクローズのシナリオ:確率15%

EVシフト政策が後退をし、輸入車にはさまざまな参入障壁が設けられる。中国メーカーは欧州市場に入っていくことができず、既存グローバルメーカーが市場を支配する。

3)EVシフトが進み、市場がクローズのシナリオ:確率30%

欧州市場が輸入車に関税をかけるなどして既存メーカーを守ろうとする場合。しかし、中国は当然の反応として報復関税をかけるため、欧州メーカーは中国市場を失うことになる。また、競争が起こらないために、既存メーカーのEVは価格が高止まりをし、政府は補助金などの大規模な支出を迫られることになる。中国とテスラは欧州域内に生産工場を設立する形で参入をしていく。

4)EVシフトが進み、市場がオープンのシナリオ:確率50%

市場の健全性を損なうような参入障壁を設けず、オープンな競争が進む場合。中国メーカー、テスラが欧州市場に参入し、自由な競争の中で、コストパフォーマンスに優れた中国メーカーとテスラが一定のシェアを持つ。ポルシェやフェラーリなどの高級車に特化をしたメーカー以外は、大きな影響を受けることになる。

レポートでは、最後のEVシフトが進み、市場がオープンな場合のシナリオの実現確率を50%とし、その場合、どのようなことが起きるかをさまざまな角度で検証している。

▲UBSが想定する4つのシナリオ。数値はシナリオの実現確率。

 

バッテリーだけでなく駆動系コストも中国とテスラが強い

レポートでは、BYDシール、テスラモデル3、VW ID.4の3車種のコストを比較している。圧倒的に異なるのが、バッテリーコストだ。VWはkWhあたりのコストが、BYD、テスラと比べてかなり高い。バッテリーの量産技術が出遅れていることが伺える。

さらにショッキングなのが、モーターの動力をタイヤに伝える駆動系のコストでも、VWは高くなっていることだ。本来は、歴史のある自動車メーカーが得意としなければならない部分だ。それが高いということは、燃料車の技術がじゅうぶんにEVに転換できていないことが伺える。

▲3車のコストの比較。ID.4はバッテリーだけでなく、自動車会社が得意としなければならない駆動系にもコストがかかっている。テスラは自動運転を重視しているためADASにコストがかかっている。

▲BYDシール、テスラモデル3、VW ID.4のスペックの比較。ID.4はサイズは変わらないのに重たい自動車であることが目立つ。

 

BYDが東欧での生産を始めるとVWは負ける

レポートでは、VW ID.4とBYDシールの競争力を見るシミュレーションを行っている。現在、BYDはハンガリーのセゲト市に生産工場を設立する計画を進めている。ID.4は欧州では5.09万ドルで販売をされていて、利益率は1台あたり5%程度になる。UBSエビデンスラボはBYDシールのコスト構造を明らかにし、東欧で生産した場合、利益率がID.4と同じ5%だった場合、販売価格は3.61万ドルになると試算した。ほぼ同じスペックのEVが1万ドル以上の価格差が出ることになる。

もし、ID.4がシールに対抗するために、シールの販売価格+10%にまで値下げをした場合、利益率は-17%になり、シールと同価格にした場合は利益率が-27%にまでなってしまう。コストパフォーマンスでは、ほぼ勝負にならない。これにより、BYDを中心とした中国EVが大きく躍進すると結論づけた。

▲BYDシールが東欧生産を始めた場合のシミュレーション。ID.4がシールより10%高い価格にまで値下げをすると、利益率は-17%の赤字になってしまう。

 

垂直統合をしているBYDの強み

では、なぜ、BYDはここまで低コストでEVを生産することができるのか。レポートが指摘をしているのは、BYDが垂直統合を進めていることだ。BYD、テスラは、ほとんどのパーツを自社生産している。BYDがグローバルサプライヤーに頼っているのは、ADAS(Advanced Driver-Assistance System、先進運転支援システム)に必要なチップをクアルコムから調達をしているぐらいだ。

パーツを自社生産すると、技術や人材のリソースを適正配置することができ、全体設計と部分設計をきめ細かく調和させることができる。

その最たる例が、BYDのCTB(Cell To Body)技術だ。これはバッテリーを保護するためのパッケージを自動車のボディ構造の一部として利用するというもので、ボディとバッテリーパッケージが一体化されている。これで生産コストが大きく下げられるだけでなく、居住空間を広く取ることが可能になった。さらに巧みに設計することで、ボディ全体のねじれ剛性も高くなる。ボディがねじれないということは、走行が安定をし、乗り心地がよくなる。スポーツカーや高級車が求める性能のひとつだ。

▲各社の部品調達先割合。BYDは多くの部品を自社生産することで、コストと品質を両立させている。

 

子会社化を進めリスク分散をするBYD

一方、既存メーカーは、設計と組み立てに専念をし、パーツ生産はサプライヤーに頼るというピラミッド型統合をしている。全体設計と部分設計を調和させることは、サプライヤーとの密なコミュニケーションが必要となる。これにより、メーカーとサプライヤーの結びつきが強くなりすぎることがあり、馴れ合いが生じてしまい、技術の進化や変化が起こりづらくなるリスクがある。

もちろん、BYDやテスラのような垂直統合にも問題はある。それは図体が大きくなりすぎるため、肝心のセールスが落ちてしまうと、一気に業績が悪化をしてしまうことだ。そのため、BYDでは各部門の子会社化を進め、子会社はBYDのパーツ生産を優先しながらも、他のメーカーのサプライヤーとしての仕事もするようになっている。別口の収入を確保することで、リスクに対応しようとしている。

2022年は、この子会社化が一気に進んだ年となり、年度報告書によると、この年に247社もの子会社を設立している。

 

落とし穴にはまっている欧州EV市場

レポートは、4つのシナリオを想定しており、欧州市場で中国メーカーとテスラが躍進をするシナリオが現実のものとなる確率は50%としている。これ以外の、既存メーカーが市場をリードできるシナリオにするには、EVシフトを遅らせるか、欧州市場を閉鎖的にするしかない。しかし、欧州の戦略は、世界に先駆けてEVシフトを進め、他市場でも優位なポジションを取るというものだったわけだから、その思惑は崩れることになる。

欧州市場は、EVシフトを進めれば、中国メーカーとテスラに欧州市場を奪われ、EVシフトを遅らせば、海外市場を失うという落とし穴にはまってしまっている。

 

ブームになるマイクロドラマ。「少林サッカー」のチャウ・シンチーも参戦!

少林サッカー」「カンフーハッスル」などで監督を務めた周星馳チャウ・シンチー)が、マイクロドラマに参入するとIT之家が報じた。

 

ブームになっているマイクロドラマ

微短劇(ウェイドワンジュー)とは、ショートムービープラットフォーム「抖音」(ドウイン、TikTok)、「快手」(クワイショウ)などで配信される1話数分の連続ドラマ。全体では80話から100話のものが多い。海外ではマイクロドラマ、ショートドラマなどと呼ばれている。

形式としては以前からあったものの、コロナ禍で仕事を失った映像関係者、映画関係者が、コロナ禍でもできるものとして始めたところ、映像やドラマのクオリティーが大きくあがり、ブームに近い状況になっている。最初の数話を無料で公開し、続きは課金をするというビジネスモデルだが、2023年の市場規模は373.9億元(約7800億円)となり、前年から267%も成長をした。

マイクロドラマは、少ないスタッフが短時間で撮影することが多く、制作費が映画やテレビドラマと比べて少なくて済む。それでいて、ヒットをすると映画並みの収益が得られることもあるため、投資効果の高いコンテンツとして注目が集まっている。

また、有料視聴をするコンテンツであるため、表現に関する規制も緩く、ギリギリのパロディ、風刺、性表現なども入れられる。もちろん、中国のコンテンツ規制は厳しく、海外のドラマに比べれば穏健な表現でしかないが、中国のテレビドラマや映画、ネットで無料公開されるドラマに比べれば刺激的な内容のものが多い。ここも人気の理由のひとつになっている。

チャウ・シンチーは「少林サッカー」で国際的な人気監督、人気俳優となった。さらにその後の「カンフーハッスル」で質の高い映画をつくれることを証明した。

▲アクションコメディーで絶対的な人気を持つチャウ・シンチーだけに、多くのネット民が期待をしている。

 

チャウ・シンチーがマイクロドラマに参戦

そのマイクロドラマに、チャウ・シンチーが参戦する。アクションとギャグを巧みに組み合わせることで知られるチャウ・シンチーが総指揮をとることで話題になっている。

すでに抖音に「九五二七劇場」というアカウントを開設し、「金猪玉葉」というマイクロドラマを5月に公開することを予告している。内容はまだ公開されていないが、コメディー作品になることは予告されている。

盛り上がってきたマイクロドラマが、チャウ・シンチーの登場により、さらに多くの人たちに視聴されるようになることは明らかで、関係者は大いに期待をしている。また、チャウ・シンチーのファンたちも、久々のチャウ・シンチー作品が見られることに期待を膨らませている。

チャウ・シンチーが設立した「九五二七劇場」。抖音が認める公式アカウントで、チャウ・シンチーが制作したマイクロドラマが配信されることになる。

▲九五二七劇場のアカウントでは、すでに予告編やメイキングなどのティザー映像が配信され始めている。

 

 

TikTokは米国で配信禁止になってしまうのか?米国公聴会で問題にされた3つのこと

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https://www.mag2.com/m/0001690218.html

 

今回は、TikTokの売却問題についてご紹介します。

 

3月13日に、米国下院で「The Protecting Americans from Foreign Adversary Controlled Applications Act」(PAFACA、敵対勢力に制御されたアプリケーションからアメリカ市民を守る法律)が可決されました。上院でも可決されると、TikTokは非常に厳しい立場に追い込まれることになります。180日以内に、米国企業に売却をし、運営を完全に手放すか、それができない場合は、TikTokの米国での配信、運営そのものが禁止をされます。

TikTokの何が問題なのか。多くの日本のメディアは、中国政府への個人情報流出の問題を挙げています。昨年から、バイデン政権が、TikTokが収集した米国市民の個人情報が中国政府に渡っているのではないかという懸念から、連邦政府の機関での公用端末にTikTokをインストールすることを禁止しているからです。

もちろん、個人情報が中国政府に渡っているのではないかという疑念も問題のひとつです。しかし、PAFACAの立法趣旨は、TikTokは中国政府に有利な情報を拡散し、不利な情報を検閲することで、中国政府のプロパガンダツールになっている可能性があるのではないか。あるいはフェイク情報を拡散して米国社会を混乱させるツールになる可能性があるのではないか。だから米国企業が運営をするか、さもなくば配信停止にすべきだというものです。

議員の中で、中国政府がTikTokを通じて米国市民に対してプロパガンダ活動を今現在行なっていると考える人は少数派でしょう。しかし、中国政府がそれをやろうと思えばできてしまう構造になっていることを問題にしています。

上院でどのような結論が出るかはわかりませんが、報道によると、若い世代から「Keep TikTok」(TikTokをキープしよう)という運動が起こり始め、多くの議員が若者票を失うことを恐れて反対に回り、成立しないのではないかとも言われています。

 

みなさんは、このPAFACAという法律をどうお感じになるでしょうか。「たかが面白映像の共有アプリにおおげさすぎ」と感じる方もいるでしょう。しかし、いざという時にプロパガンダツールになりかねないものを放置していくことはよろしくないと考える方もいらっしゃるかと思います。この論点は日本も考えなければならない問題です。

日本は、すでに後者の「海外勢力のプロパガンダ活動は認めない」決断をしています。というのは新聞、テレビ、ラジオには外資の参入規制があるからです。テレビ、ラジオの場合、放送法により、外国人の持ち株比率は20%以下に制限されています。これは外国人がメディアの大株主となった場合、その国のプロパガンダを放送し、日本人の選択を歪ませることが可能になるからです。

つまり、保守的な米国人の視点からは、マスメディアと同じように、ネットサービスに関しても敵対勢力が関与できない体制をつくる必要があるというもので、そのような考え方が出てくるのはある意味自然なことなのです。

 

もし、このPAFACAが上院も通過し発効されると、TikTokはあらゆる手段を使って、この法案の取り下げ訴訟を起こすことになるでしょう。TikTokの周受資(ショー・チュー)CEOも「あらゆる法的手段を使ってTikTokを守る」とコメントしています。しかし、それが成功しなかった場合、TikTokは米国では配信停止になる可能性が非常に高いと思います。

と言うのは、「米国企業に売却」というのは簡単な話ではないからです。TikTokがすでに株式公開をしているのであれば、受け入れ企業に株式を売却することで米国企業に移管をすることができます。しかし、残念ながらTikTokは未上場なのです。そうなると、親会社の字節跳動(バイトダンス)が保有するTikTok非公開株を売却することになりますが、中国企業であるバイトダンスが、大量の株式を外国人に売却する場合、中国政府の承認を取り付ける必要があります。中国政府が素直に売却に同意するとは思えません。結局、時間切れとなり、配信停止が実行されることになります。

 

すでに、VPN(Virtual Private Network)関連の企業が動き出しています。TikTokが配信停止になると、大量の人がスマートフォン用のVPNアプリを利用することになるからです。VPNは、企業などで、遠隔地にいる従業員も企業内ネットワークを利用できるようにする仕組みです。インターネット回線上に暗号化されたネットワークを仮想的に確立し、あたかも企業内ネットワークのように利用できるようにする技術です。VPNを利用することで、海外にいても、インターネット経由で社内ネットワークに安全にアクセスすることができるようになります。

米国のVPNサービスに加入をし、VPNからインターネットサービスにアクセスをすると、あたかも米国からアクセスしているかのように装うことができます。そのため、地域制限があるようなサービスを利用するために悪用されることがあります。例えば、映像配信「Netflix」は、米国ではジブリ映画を配信していますが、日本では配信していません。そのため、日本からVPNを使って、米国のNetflixに加入をしてジブリ映画を見るという裏技が知られています。ただし、法的にも問題のある行為ですし、サービスとの契約違反にあたります。

TikTokが米国で配信停止になると、米国のティーンエージャーたちは、VPNを使って配信が停止されていないカナダやメキシコからTikTokにアクセスすることになるでしょう。

 

このPAFACAに至るまで、ショー・チューCEOは、米国の公聴会に2回出席しています。1回目は昨年2023年3月23日、下院エネルギー・商業委員会が主催した「TikTok: How Congress Can Safeguard American Data Privacy and Protect Children from Online Harms」(TikTokアメリカ人のデータプライバシーと子どもたちのオンライン被害を、議会はどのように守ることができるか)で、5時間以上に及ぶ長時間のものです。米国の行政が素晴らしいのは、その全記録をビデオとテキストで公開していること(https://energycommerce.house.gov/events/full-committee-hearing-tik-tok-how-congress-can-safeguard-american-data-privacy-and-protect-children-from-online-harms)です。あまりに長時間で、内容は同じ質問が延々繰り返され退屈であるため、ビデオ視聴することはあまりお勧めできませんが、それでも気になる人は細かく検証ができるようになっています。

もうひとつは2024年1月31日に開催された「Big Tech and the Online Child Sexual Exploitation Crisis」(ビッグテックとオンラインでの子どもの性的搾取危機)で、こちらはX、TikTok、Snapchat、Meta、Discordの5人のCEOが出席をしました。こちらもビデオが公開されていますが(https://www.judiciary.senate.gov/committee-activity/hearings/big-tech-and-the-online-child-sexual-exploitation-crisis)、やはり4時間あり、内容は同じ質問の繰り返しで退屈です。

そこで、読者のみなさんの時間を節約するために、代わりに私が視聴をして、重要な部分を抜き出し、まとめました。公聴会では様々な論点の議論が行われていますので、それを整理します。

また、米国のTikTok禁止への動きは4年前のトランプ政権から始まっています。当時からの流れを整理して、TikTokの何が問題にされているのかをご紹介します。今回は、TikTokは米国で何が問題とされているのかについてご紹介します。

 

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vol.222:儲かるUI/UX。実例で見る、優れたUI/UXの中国アプリ

vol.223:電気自動車EVはオワコンなのか?中国で克服されるEVの弱点

 

 

地図なしで自動運転を目指す中国メーカー。LiDARなしで自動運転を目指すテスラ

L2+自動運転が広がり始めている。テスラ、ファーウェイなどはすでに自動運転システムの市販を始め、個人が自動運転を楽しむ時代が始まっている。その中で、中国メーカーは高精細地図を採用しない自動運転を開発している。高精細地図のコストがあまりに高すぎるからだと青山隠士が報じた。

 

400km以上をハンドルに触ることなく帰郷

この春節期間、華為(ファーウェイ)の余承東常務のSNSの発言が話題になっている。ファーウェイが自動運転ソフトウェア「ADS2.0」を提供している、賽力斯(セレス)の問界M9で、余常務は深圳市から故郷の安徽省に帰郷をした。1314kmの行程の400kmを過ぎたところで、SNSにある投稿をした。それは、すべての行程を自動運転に任せることができ非常に快適だというものだ。ただし、3分間、ハンドルから手を離すと警告音が鳴り、それでもハンドルに手を戻さないと自動運転が解除される仕様になっている。これは法律が要求する仕様だが、余常務はほんとうに必要な機能なのだろうかと疑問を呈した。

▲ファーウェイの余承東常務の投稿。約400kmをハンドルを一度も操作しないで走行した。しかし、法的な規制により、3分に1回はハンドルに触れないと自動運転が切られることになっている。余常務は、このもはや不要となった規制に疑問を呈した。

 

9割以上の状況で運転を自動車任せにできる

実際、ファーウェイのADS、テスラのFSDは、L2自動運転ながら、ほぼほぼ完全自動運転に近いレベルに達している。さまざまな自動車メディア、ユーザーが路上での検証を行なっているが、どのメディアも「都市部の整備された環境であれば90%以上の時間、運転を自動車に任せることができる」と評価している。

もちろん、完璧ではない。SNSにはさまざまな情報があがっている。ある問界M9のユーザーによると、近所にある変形十字路で、ADSがかなりの確率で間違った道に入ってしまうという。また、ある問界M9ユーザーは、あるバイパス道路に入る合流地点で停止をしてしまうバグがあることを報告している。

完璧ではなく、ところどころ、人間が手を貸してやらなければならないが、高速道路などを走行する時はほぼ自動運転が可能になっている。L2自動運転であるため、あくまでも運転主体は人間であるため、スマートフォンの操作をしたり、寝たりすることはできないものの、自動運転はもはや実証実験の段階を終わり、商品として販売される段階に達している。

 

異なるアプローチをとる各社

この自動運転を達成するための手法は、各社によって異なっている。自動運転を行うには、まず何らかの方法で外界を認識し、BEV空間(Bird Eye View空間)を構築することが必要になる。外界の状況を仮想空間内に再現をし、その中で走行戦略を演算し、自動車に伝えるということが必要になる。

このBEV空間を生成するのに、必要とされるのがLiDARと高精細地図だ。LiDARで外界を認識し、それをあらかじめ作成された高精細地図を照合しながらBEV空間を生成する。

▲一般的な自動運転は、このような高精細地図を内部に持っていて、LiDARで得た情報を高精細地図に割り当てて、走行戦略を演算する。しかし、この高精細地図のコストが非現実的なものになっている。

 

高精細地図の採用をやめたファーウェイ

ところが、ファーウェイはこの高精細地図の採用をやめた。最大の理由はコストの問題だ。高精細地図はcm単位の精度が必要なため、道路のちょっとした補修、事故処理などで状況が刻々と変わる。一般的なカーナビ用地図の更新頻度は、平均して3ヶ月に1回だが、高精細地図は1ヶ月に1回程度の更新が望ましいとされる。

しかし、高精細地図は測量にコストがかかる。「スマートコネクティッドカー高精細地図白書」によると、1kmあたり1000元のコストが標準ということだ。中国の主要道路は535万kmであるため、測量をするには53.5億元が必要になる。3ヶ月に1回の更新では年に214億元、1ヶ月に1回の更新では642億元(約1.3兆円)もの費用がかかることになる。

もし、L5の完全自動運転を目指すのであれば高精細地図は必須となり、しかも人命に関わる要素であるため、毎日更新するのが望ましい。とても現実的なコストではなくなる。そのため、L4無人運転ロボタクシーは、走行地域を限定して運行を行なっている。

 

地図なし自動運転を採用する中国メーカー

このような問題から、ファーウェイ、小鵬(Xpeng)、理想(リ・オート)は、地図なし自動運転の技術開発を行なった。地図なしといっても、高精細地図をまったく不要とするわけではなく、まずはLiDARでBEV空間を生成し、その精度を高めるために高精細地図を補助として使うという発想だ。このため、必要な高精細地図は需要の大きな都市部のみでよくなり、更新頻度も通常のカーナビマップ程度に落とすことができる。

ただし、その分、BEV空間の生成アリゴリズムは精度の高いものが必要とされる。そのため、ADSは、高精細地図が利用できる都市部、高速道路では90%以上の時間を自動運転が可能になるが、高精細地図が用意されていない郊外などではまだ問題が発生する可能性を残している。

▲テスラは視覚情報だけで自動運転を実現しようとしている。外界の対象物を映像から、走行に関係あるものと関係ないものに分け、そこから走行戦略を演算する。2枚目の写真では停止しているバスは走行に関係ない障害物(赤)と認識され、動き始めたバスは走行に影響する物体(青)と認識されている。

 

テスラは視覚情報だけで自動運転を目指す

一方、さらに大胆なことをしているのがテスラだ。テスラはLiDARをも放棄して、視覚情報だけを頼りに自動運転を実現しようとしている。環境把握もBEV空間を構築するというのではなく、外界の対象物をラベリングしていき、走行に影響を与える要素と影響を与えない要素を仕分けし、そこから走行戦略を演算していく。

考え方としては非常にシンプルなアプローチで、これが可能になると、地図がない場所、つまりは米国だけでなく、世界のどこでも自動運転が可能になる。

一方で、演算量は爆発的に増えるため、テスラは演算チップも自社開発をした。さらには大量の学習データが必要となるため、β版を発売し、多くのユーザーに使ってもらいながら、大量の学習データを収集している。

一定の範囲内を走行する公共バス、地域タクシーなどは、L5自動運転のロボバス、ロボタクシーの実用化が始まっているが、乗用車についてはL2自動運転で「ほぼほぼ自動運転」を目指す方向になってきている。しかし、そのアプローチにはLiDAR+高精細地図、LiDARのみ、視覚情報のみという3つがあり、どれか正解なのかはまだはっきりとはしていない。