中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

ショッピングモールの不振から見える小売業の変革。人と商品の関係性が変わる

まぐまぐ!」でメルマガ「知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード」を発行しています。

明日、vol. 060が発行になります。

 

中国のショッピングモールが苦しんでいます。「2020H1一二線都市ショッピングモール空き店舗率報告」(WIN DATA)によると、2020年上半期の空き店舗率が8.88%となりました。これは、19の主要都市の5万平米以上のショッピングモール1116カ所に対する調査結果です。

広州、杭州重慶などの8つの都市では、空き店舗率が10%を超えています。しかも、ショッピングモールの店舗には契約期間があるため、その期間が終了しなければ退去することができません。これにより、2020年下半期ではさらに空き店舗率があがっているのではないかと懸念をされています。実際、すでに空き店舗率が50%を超えてしまい、存続そのものが難しくなっているショッピングモールが出始めているようです。

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▲ショッピンモールの空き店舗率。大都市でも8.88%になり、8つの大都市で10%を超えている。2020H2はさらに空き店舗率が上昇するのではないかと懸念されている。「2020H1一二線都市ショッピングモール空き店舗率報告」(WIN DATA)より作成。

 

ここ数年で中国の都市を訪れたことがある方の中には、ショッピングモールの多さに驚かれた方もいるのではないでしょうか。大都市はモールだらけといってもいいほどです。実際、2019年にはすでにモールの過当競争が大きな課題になっていました。明かに多すぎるのです。しかし、人は新しくできたモールに行きたがるので、過当競争を勝ち抜くには、新しいモールを作るしかない。単なる買い物センターではなく、有名飲食店が入り、シネコンなどの映画館、観覧車などの本格的な遊戯施設があるのも当たり前、さらにはオフィス棟、住居棟なども併設される例も増えていました。

モールには、都市型モールと郊外型モールがあります。都市型モールは都市内にあるもので、郊外型モールは市外に広大な敷地をとって半日そこで遊べるというものです。このうち、都市型モールはそれなりに利用されているようです。スーパーやカフェもあり、地下鉄の駅から徒歩圏内で、通勤経路の途中にあるため、日用品を買うのに使われているからです。

厳しさが増しているのは郊外型モールです。郊外型モールは、わざわざ行かなければならないため、コロナ禍による外出自粛で客数が大きく減ることとなりました。

 

コロナ禍による業績悪化はどうしようもないことです。どの業種も大きな痛手を被っています。しかし、中国の感染拡大は厳しかったものの、他国よりも一早く終息をしています。2020年の3月には終息が見えてきて、6月には市民感覚ではほぼ終息をしたと感じ、9月には中央政府が、人民大会堂で、感染対策に貢献をした人への表彰が行われ、事実上の終息宣言をしました。

もちろん、それ以降も、無症状感染者が見つかったり、小規模クラスターの発生は断続的に続いています。そこには対策チームが急行し、その地区を封鎖し、住民、関係者を一斉にPCR検査をするという手法で、最後の掃討戦を行っています。

市民感覚としては、もう新型コロナのことは過去のものになっているようです。ただし、感染予防対策は続いています。多くの都市で、公共交通機関を利用するには健康コード(感染リスクを緑、黄、赤の3段階で表示する仕組み)の提示が必要ですし、店舗を利用するにはマスク着用と体温測定、さらには長距離移動をした場合は、戻ってから14日間程度の自己隔離が必要になります。

そのため、毎年、故郷に帰る人で空港、鉄道、高速道路が大混雑となる春節も、今年は故郷に帰らなかったという人が多かったようです。各都市の政府も春節で故郷に帰らないことを推奨しています。

 

このような制限はまだあるとはいうものの、人出の賑わいは各地で戻っています。最近使われるようになった言葉が「内循環」です。つまり、長距離移動には制限があるため、制限を受けない同じ都市の中、同じ省の中でレジャーを楽しむというものです。人気になっているのは、フィールドアスレチックやキャンプ、サイクリングなどのアウトドアアクティビティです。家に閉じこもっている期間が長かったため、広い場所で思いっきり体を動かしたいのだと思います。スポーツが苦手な人も、景観の美しい場所、広い公園などにいくという傾向が高くなっているようです。

 

経済も完全に復活をしているといっていい状態です。中国のGDP成長率は、感染拡大期にあたる2020年Q1(第1四半期)には-6.8%という大きな落ち込みになりましたが、Q2には+3.2%と復活し、Q3は+4.9%、Q4には+6.5%となりました。2019年のGPD成長率は6.0%前後を推移していたので、2020Q4には再び成長軌道に乗ったといってもいいほどです。

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▲中国の四半期ごとのGDP成長率(前年比)。感染拡大期には-6.8%の落ち込みとなったが、現在は+6,5%に戻っている。というより、2019年の数字よりも成長率が高くなっている。中国国家統計局のデータより作成。

 

社会消費品小売総額(日本の個人消費に相当)も2020年9月に前年を上回り、それ以降、わずかとは言え成長をしています。特に目覚ましいのがネット売上で、2020年はコロナ禍があったにもかかわらず10.9%の成長となりました。ネット小売の中で、最も成長をしたのが食品で30.6%の成長です。一方、最も低調だったのが衣類で5.8%の成長にとどまりました。

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▲社会消費品小売総額も2020年9月に前年を超えるようになり、それ以来前年ごえが続いている(単位:億元)。中国国家統計局のデータより作成。

 

このように経済が以前の水準に戻っている中、戻り切れていないのが旅客関係と大型小売店です。旅客関係は、長距離移動が制限されているので致し方ありません。といっても、移動制限が解除されるにつれて遅れて戻っていくことは確実なので、業界関係者は大いに期待をしているでしょう。

問題はショッピングモールなどの大型小売店です。なぜ、モールだけが復調できないのでしょうか。それはコロナ禍による影響だけではありません。不運なところもありますが、時代の流れを読み違えていたことも大きな原因です。モールの不調を調べることで、モールだけではなく、中国の小売業に大きな変化が起きていることがわかってきます。

中国の小売業はこの20年、大きな変化トレンドの中にあって、コロナ禍は突発事態というよりも、そのトレンドを加速したにすぎないと見ることもできるのです。モールは時代に合わせた業態変革に遅れていたところにコロナ禍が襲ってきたために、致命的な打撃を受けたと見ることができます。

今回は、ショッピングモールの苦境をご紹介し、そこから見えてくる小売業の変革トレンドとはどのようなものなのかをご紹介します。

 

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今月発行したのは、以下のメルマガです。

vol.057:テック企業に蔓延する996。社会問題化する長時間労働問題

vol.058:再び成長を始めたTik Tok。テンセントのWeChatと正面から激突

vol.059:新型コロナ終息後の消費行動はどう変わったのか。5つのキーワード

 

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Tik Tokが独自のスマホ決済を開始。ねらいはWeChatに対抗するスーパーアプリ化

中国版Tik Tok「抖音」が、独自のスマホ決済「抖音支付」を始めた。利用できるのはTik Tok内の決済に限り、オンライン決済やオフライン対面決済には使えない。決済手段を始めたねらいは、Tik TokのSNS化であり、スーパーアプリ化であると雷科技が報じた。

 

Tik Tokが独自のスマホ決済「抖音支付」を開始

Tik Tok(抖音、ドウイン)が2021年1月に、自社の決済システム「抖音支付」を開始して、テック業界から注目されている。現在のところ、海外展開をする予定はないようだが、もし海外に展開すれば、Tik Tok Payというネーミングになることが予想される。

中国国内の抖音のDAU(日間アクティブユーザー数)が4.5億人、海外版のTik Tokが4億人となっているだけに、その影響は大きいと思われる。

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▲Tik Tokのライブコマースでの決済方式設定画面。支付宝(アリペイ)、微信支付(WeChatペイ)、銀行カードの他に、抖音支付が選べるようになっている。

 

アリペイ、WeChatペイのライバルとなるのか?

ただし、巷間言われているようなアリペイやWeChatペイと競争をする意図はないようだ。なぜなら、現在、抖音支付が利用できるのは、配信主に対する投げ銭と、抖音内のライブコマースでの決済のみだからだ。

アリペイ、WeChatペイと比べると、オンライン決済、オフライン対面決済の機能はなく、あくまでもTik Tok内での決済に限られている。

また、消費者金融や分割払いなどの金融機能も現在のところ存在しない。決済サービスとして利益を狙いにいくには金融機能への対応が必須だ。アリペイを運営するアントグループでは収益の2/3が金融からのものであり、WeChatペイを運営するテンセントの収益の27%が金融からのものになっている。

 

決済企業を買収して実現した抖音支付

抖音支付が当面、金融機能を持たないことは運営会社からも裏付けられる。抖音支付を直接運営しているのは、武漢合衆易宝科技で、2012年に創業し、2014年に人民銀行から決済業務許可証を取得してスマホ決済を運営していた。Tik Tokを運営するバイトダンスは、この武漢合衆易宝科技を間接的に買収する形で、抖音支付を始めている。

この武漢合衆易宝科技は、金融機能を持っていないので、もし分割払いなどを始めるのであれば、金融機能を持っている企業を買収、提携して、抖音支付と融合させる必要があるからだ。将来はともかく、当面は決済機能のみだと思われる。

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▲すでに中国版Tik Tokにはウォレット機能が搭載されている。ECへの決済に使えるだけでなく、ライブコマース、投げ銭などの収入も、このウォレットに溜まっていく。

 

ライブコマースに本格参入したTik Tok

バイトダンスのねらいは、短期的にはライブコマースの成長であり、長期的にはTik Tokのスーパーアプリ化であると見られている。

バイトダンスは、2020年6月にEC部門を設置し、Tik Tokでのライブコマースに本格的に力を入れている。2020年11月の独身の日セールに初参入し、187億元(約3000億円)という初年度としては驚異的な成績をあげた。このライブコマースを拡大していくために、抖音支付が大きく貢献する。抖音支付を利用する場合だけに割引をするなどの施策も取れるようになり、また、返金処理もスムースにいくようになる。すでにECでは、余計に買って返品するという習慣が広がっていて、これが購入のハードルを下げているため、スムースな返品処理、スムースな返金処理はECの購買行動を高めるひとつの手段にすらなっている。

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▲Tik Tokでは、ライブコマースに本格参入をし、新しい買い物スタイルとして人気が出ている。

 

バイトダンスの真のねらいはWeChat並みのスーパーアプリ化

もうひとつがスーパーアプリ化だ。Tik Tokの莫大な流量を活かして、アプリ内ミニプログラムから他のサービスを利用させる。アリペイ、WeChatペイはこのスーパーアプリ化によって成功をした。アリペイ、WeChatペイでは、フードデリバリー、モバイルオーダー、タクシー配車、チケット購入などがタップするだけ利用できる環境が整っている。ログインや決済方式を指定する手間は不要だ。

Tik Tokもこのようなスーパーアプリ化に向けて動き出すのだと見られている。ただし、アリペイやWeChatペイと同じような生活系サービスを充実させていくのではなく、Tik Tokのユーザー層を考えたサービスを充実させていくことは明らかで、映画、旅行などのエンターテイメントサービスに特化したスーパーアプリになるのではないかと見ている人もいる。

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▲2020年11月の独身の日セールでは、初参加でありながら、187億元(約3000億円)という売上をあげた。

 

スーパーアプリは、WeChat、アリペイ、Tik Tokの三極化をするのか?

Tik Tokは瞬く間に世界中に広がったが、本格的な成長はこれからだとも言える。その成長をするための基本となる道具が決済機能だ。Tik Tokはその決済機能を手に入れた。

バイトダンスは、機械学習人工知能技術に長けているだけでなく、強運も持っているようだ。2021年の春節の前の晩、大晦日にあたる日には「春晩」と呼ばれるテレビ番組が放映される。日本の紅白歌合戦にあたる視聴率30%越えの国民的番組だ。

この番組では公式紅包スポンサーがいる。番組を見ている人に電子お年玉である紅包を配布する役割で、テック企業にとっては大量の新規ユーザーを一気に獲得できるチャンスになっている。2015年には、それまでシェアの低かったWeChatペイがこの紅包で、一気にアリペイのライバルとなった。

今年は、ソーシャルECの拼多多(ピンドードー)がこの公式紅包の座を獲得していた。しかし、昨年暮れから今年にかけて、労働環境の過酷さから従業員が死亡をしたり、飛び降り自殺をするという事件が相続き、公式紅包の座を辞退した。

それに代わって公式紅包の座を射止めたのが、バイトダンスだった。当然、抖音支付の紅包が配られた。Tik Tokの新規ユーザー、ウォレットの開通率などが大きく上昇したことは間違いない。

アリペイ、WeChatペイとはまた違った形で、バイトダンスは独自の経済圏をつくっていくことになる。

 

 

今後20年のテクノロジー進化で、消えてしまう10の製品

スマホの登場により、この20年で多くの製品がその姿を消した。では、今後20年で消えていくものはどのようなものだろうか。全球檔案館が、今後20年で消えるものを10個挙げた。

 

スマホの進化が、デジタル製品を過去に変えていく

まだ一部では使われてはいるが、この20年で消えてしまった日用品はたくさんある。フロッピーディスクやDVD、コンパクトデジタルカメラ、ラジカセ、フィーチャーフォン、紙の地図帳などは今ではほとんど使われなくなっている。要は、スマートフォンで機能が代替的できるものばかりだ。

よく「スマホの進化は止まった」と言う人がいるが、実際はスマホは今でも進化をし続ける。特に質的な進化で大きいのが、IoTにより他の製品と繋がり始めていることだ。部屋の照明やエアコンなどをスマートスピーカーからオンオフすると言うのももはや珍しいものではなくなっている。顔認証やNFCカードを使い、スマホで本人認証をするというのも珍しいものではなくなっている。

このような進化を受けて、全球檔案館では、今後20年で消えていくことになる10の製品を紹介している。もちろん、精密な未来予測ではなく、一種のお遊びだ。ほんとうに消えてしまうのか、あるいはそうではないのか。考えながらお読みいただきたい。

 

1:自動車のバックミラー

鏡を使って、運転手の死角になる後方を確認するという、よく考えれば原始的なやり方は次第に消滅し始め、後方カメラに置き変わりつつある。モニターであれば、置く場所を室内にできるので、冬や雨の日にバックミラーが曇って困るということも起こらない。また、駐車時などには、複数のカメラ映像を合成して、上から自分の車を眺めたかのような360度映像も普及が広がっている。

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2:リモコン

テレビ、エアコンなどの家電製品のリモコンはアプリ化をされていく。あるいはスマートスピーカーからの操作が可能になる。これも普及が始まっている。

最も大きな点は、赤外線を利用したリモコンからBluetoothまたはWi-Fiを利用したリモコンになることだ。これにより、リモコンを使うときにわざわざ製品の方向に向ける必要がなくなり、さらに外出先から家電製品の状態を知り、制御ができるようになる。現在でも、360度赤外線を放射するユニットを利用することで、スマホをリモコン代わりにするデジタル機器が販売されている。

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3:現金

中国では、北京冬季五輪前にデジタル人民元の導入が行われるとも言われている。すでにスマホ決済が普及をし、現金を扱うシーンは少なくなっている。20年後には、現金を使うことはほぼなくなっていると考えられる。

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4:鍵

玄関の鍵、自動車の鍵はすでに電子化されているものが登場している。スマホを鍵にできる仕組みも登場しているが、普及が今ひとつなのは、バッテリー切れになった場合に鍵が使えず困るのではないかという不安感があるからだ。しかし、よく考えれば、電子錠も電池で動作しており、電池切れで困ることはあり得る。単に私たちがまだ慣れていないだけのことかもしれない。

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5:ケーブル

有線イヤホンがワイヤレスイヤホンに置き換わっている。また、PCの周辺機器であるプリンターなどもケーブルからWi-Fiに置き換わっている。以前は、デジタルカメラやICレコーダーからケーブルを使って、データをPCに移していたが、今ではスマホを使い、ネット経由やBluetoothのワイヤレスでデータを受け渡しするのが基本になってきている。つまり、従来使われていたケーブルは、急速にワイヤレスに置き変わってきている。残っているのは電源ケーブルぐらいだが、これもデジタルデバイスではワイヤレス充電が広がり始めている。

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6:注射器の針

予防接種や治療などで注射を嫌がる人は意外に多い。針の痛みがあることと、針を過剰に怖がる心理があるからだ。すでに、針なしの注射器が開発をされ、徐々に普及をし始めている。針なし注射器は、皮膚に押しあて、気泡などの圧力によって、薬剤を皮膚組織に浸透させる仕組み。痛みがないだけでなく、使う薬剤量を大きく減らすことができることから注目をされている。

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7:宅配配送員

すでに、中国では無人カートによる配送、ドローンによる配送が行われている。大規模マンションなどでは、荷物があることを受取人のスマホに通知をし、呼ぶと自分の建物の1階まで移動してきてくれるという走る宅配ボックスのような使われ方をしている。また、企業や大学など、荷物が多いところには、無人カート配送の対応が始まっている。ドローンは、農村など、交通の便が悪い地域で使われている。

特にEC「京東」(ジンドン)は、無人配送の技術開発に積極的で、配送の完全無人化を目指している。

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8:サイン

中国では、重要な契約書などでは、サインを使う。それも芸能人のサインのようなデザイン的に工夫をした書き方をする。それにより偽造を不正でいる。日本で近代以前に使われていた花押と同じ考え方だ。

しかし、今では、サインを印鑑化してくれるサービスなどもあり、本人確認の面では無意味になっている。

書類も電子化が進み、サインとともに顔認証や身分証データなども併用するようになっている。サインは、見た目を華やかにするためだけの儀式的なものになりつつある。

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9:レジ袋

中国では、2008年からレジ袋は有料化をされている。有料化以来、風の強い日に街中を舞うレジ袋はめっきり少なくなった。それでも、世界では1分間に200万枚のレジ袋が使われている。レジ袋は、完全に分解するのに早いものでも15年かかり、長いものでは1000年かかる。

レジ袋の使用量が大幅に減り、しかも買い物が店舗からECに移るとともにレジ袋を下げた人を見かけることが少なくなっている。環境面からもレジ袋ではなく、繰り返し利用が可能な素材、または紙のようなリサイクル可能、分解が早い素材の袋に置き換わっていく。

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10:マウス

マウスを使わないとどうも仕事がやりづらいという人はまだまだ多い。しかし、そのような人は、最初にPCを使い始めた時にマウスを使ったから。スマートフォンからデジタルに触れた世代にとって、マウスはかえって使いづらいものになっている。画面に直接触れるか、せめてトラックパッドを使いたいと考えるようだ。グラフィックや製図など細かい作業でマウスは使われ続けるとしても、一般の事務系業務ではマウスは珍しいデバイスになっていく。

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春晩紅包は、拼多多からバイトダンスに急遽変更。Tik Tok飛躍の年となるか

晦日の国民的番組「春晩」の公式紅包が、労働問題で不祥事を起こしている拼多多から、急遽、Tik Tokを運営するバイトダンスに変更となった。ECに本格参入、独自の決済システムも始めたバイトダンスにとっては、思わぬ幸運を得たことになる。Tik TokはSNS機能も強化され、テンセントのWeChatに近づいており、今年はテンセントとバイトダンスが激しく競争する年になりそうだと財経無忌が報じた。

 

中国では大晦日の定番番組「春晩」

中国の正月は、1月下旬から2月上旬の春節旧正月)を盛大に祝う。その前日である大晦日にあたる除夕の午後8時から放送されるのが、中央電子台の春節聯歓晩会(春晩、チュンワン)と呼ばれる番組だ。

内容は歌と踊り、武術、寸劇などのバラエティーショーで、中国の紅白歌合戦とも言われる。午後8時から始まる4時間番組で、番組が終わると夜12時となり、新年を視聴者全員で祝う。

驚くのはその視聴率だ。2001年以降、2015年に28.3%になっただけで、毎年30%を超えている。海外へのネットライブ配信も盛んに行われている。日本でも、YouTubeライブ、ニコニコ生放送などで同時放送をされた。2020年の春晩は、世界中で12.32億人が視聴したと発表されている。


《中央广播电视总台2020年春节联欢晚会》完整版 2020 Spring Festival Gala | CCTV春晚

▲春晩は、日本でも在住の中国人のために、YouTubeライブやニコニコ生放送などでも放映された。

 

ユーザー数を飛躍的に伸ばすことができる春晩紅包

これだけの人が見るお化け番組であるため、そのCM争奪戦は毎年凄まじさを加えている。テック企業はCMだけでなく、紅包(ホンバオ)の配布を毎年やっている。紅包というのはお年玉のことで、1元程度のお年玉をスマホ決済でもらえたり、知り合いに紅包を送ることができるというものだ。

昨年は、テンセント系の動画共有サービス「快手」が春晩公式紅包を配布した。この紅包をもらうには、快手をインストールし、アカウントを作ることが必要で、ユーザー数を一気に拡大することができる。

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▲メイン会場に観客を入れ、多次元生中継などを織り込むバラエティ番組「春晩」。大晦日に生放送されるため、中国の紅白歌合戦とも言われる。

 

公式紅包は、拼多多から急遽、Tik Tokに変更

2021年の春晩は、公式紅包は、ソーシャルEC「拼多多」(ピンドードー)が行うことになっていた。しかし、拼多多は、昨年暮れに従業員が帰宅途上で倒れて死亡する、今年2021年になって従業員が飛び降り自殺をするという労働問題を立て続けに起こしていた。そのため、公式紅包の座から降り、代わりにTik Tokのバイトダンスが行うことになった。

これは拼多多にとって大きな挫折となる。昨年、新たな生鮮EC「多多買菜」を始め、12月には独自のスマホ決済「多多銭包」を始めた。これを春晩の紅包によって一気にユーザー数を拡大しようとしていたのだと思われる。

一方で、バイトダンスには幸運がめぐってきた事になる。昨2020年6月にはEC部門を新設し、Tik Tok(抖音、ドウイン)でのライブコマースを強化してきた。そして2021年には独自のスマホ決済「抖音支付」を始めている。このようなサービスを春晩紅包で一気に拡大をすることができる。

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▲内容は、歌と踊り、武術、寸劇などのバラエティーショー。中国では、故郷の実家で家族全員で春晩を見るのが、幸福な家族の一典型だとされている。

 

バイトダンス飛躍の年となるか

この紅包は、春晩公式でなくても、各サービスが独立てして行う。合計すると、この7年で70億元(約1100億円)が配布されている。

各テック企業が紅包にこだわるのは、テンセントのWeChatペイの成功例があるからだ。それまでスマホ決済市場は、アリババのアリペイが9割のシェアを占め、圧倒的な地位を保っていた。しかし、テンセントのWeChatペイは、2014年に500万人、2015年には2000万人規模の紅包を配布して、一気にアリペイのシェアの半数程度まで追いついた。それ以来、WeChatペイは、アリペイのライバルとして、中国人が使う2大スマホ決済の地位を確保した。

新しいサービスを始めるテック企業にとって、新年の紅包は、飛躍する大きなチャンスになっている。思わぬ幸運に恵まれたバイトダンスだが、昨2020年からECへの本格進出、SNS機能の強化を行い、テンセントのWeChatの座をねらっているとも言われる。今年は、テンセントとバイトダンスの競争が激しくなる年になりそうだ。

 

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電気自動車市場が再び成長に転じる。立役者は超小型の「代歩車」

伸び悩んでいた電気自動車(EV)市場が、わずかでとは言え、再び成長に転じた。その立役者になったのは、五菱宏光MINIEVに代表される超小型の代歩車だ。「歩く代わりに使う車」という意味で、50万円前後という価格の安さもあって、生産が追いつかないヒット商品になっていると阿貴看車が報じた。

 

消費者の反応が鈍い電気自動車EV

中国の電気自動車(EV)市場が、政府の思惑通りに成長しない。最新のEVでは満充電の走行距離がカタログ値で500kmを超えるようになり、消費者のひとつの大きな不満が解消された。また、充電ステーションも都市部、高速道路を中心に整備され、以前のような「充電ステーションが見つからない、見つかっても空いていない」という問題は解決され始めている。

しかし、やはり面倒なのは、EVを使うには事前計画を要求されることだ。たとえば、1泊2日で遊びに行く場合、ホテルの駐車場に充電設備はあるか、途中のどこに充電設備があるかを事前に調べておく必要がある。計画をして遠出をするのであればEVでも問題ないが、「今日は天気がいいからどこかに行こう」と無計画で出かけると、バッテリー切れのトラブルに見舞われたり、出先で充電ステーションを探すことになる。

自動車というのは、自由気ままに遠出ができるところが最も優れた点であるのに、そこが打ち消されてしまっているのだ。

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▲新エネルギー車(EV+ハイブリッド)の販売台数は、補助金政策などもあり2018年までは順調に伸びてきたが、成長が止まってしまった。2020年は、代歩車のヒットがあり、再び伸び始めた。

 

成長し始めたEV市場。人気は小型EV

しかし、2020年の自動車市場では新エネルギー車(EV+ハイブリッド)が存在感を示すことになった。2020年の自動車販売台数は2531.1万台となり、前年比1.9%の減少となった。一方で、新エネルギー車の販売台数は124.7万台となり、前年比3.4%の増加となった。ただし、2018年は125.62万台だったので、記録更新には至っていない。

伸び悩むEV市場で、わずかとはいえ成長することができたのは、小型EVが次々と登場して売れているためだ。特に2020年7月に販売が始まった通用五菱の宏光MINIEVは年内で12.8万台が売れ、ヒット商品になっている。

1位のテスラモデル3は13.7万台で、この2車種で新エネルギー車全体の2割以上を占める。

 

中国版軽自動車EV=代歩車

この宏光MINIEVは、非常に小型の自動車で、日本の軽自動車よりも一回り小さいほどだ。そのため、最近ではジャンル名として「代歩車」という言い方が定着をしようとしている。歩く代わりに乗る車という意味だ。電動スクーターなども代歩車と呼ばれる。

遠出をするには向かないが、日常の買い物や通勤にはじゅうぶん。そういう使い方であれば、長時間使わないので、乗らない時間を充電に充てることができる。また、通勤、買い物などのほぼ固定したルートを走るのであれば、周辺の充電ステーションの位置などもわかってくる。

そして、何より価格が安いことだ。最安値では3万元(約49万円)を切ることもある。バイクとそう変わらない価格帯になってきているのだ。雨の日や寒い日にも乗れるということを考えると、「自動車はいらないけど、移動手段がほしい」という人たちが代歩車を買い求め始めている。

このような人気になっている代歩車は次の5つの車種だ。

 

通用五菱宏光MINIEV

MINIEVは、価格は2.88万元から3.88万元。最大走行距離は120-170km。外観デザインが可愛らしいのが特長で、今まで自動車を買おうと考えなかった若い女性たちが買い始めている。また、地方都市では日常使いのセカンドカーとして購入する例も多い。

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長安奔奔E-Star

2.98万元から3.98万元。最大走行距離は150km。インテリアデザインに気を使い、室内空間を広くとったデザインになっている。

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CLEVER

上海汽車のブランド。4.6万元とやや高め。最大走行距離は302kmと性能は1ランク上になっている。エアバッグ装備など安全装備も充実している。ただし、外観、インテリアとも質素。

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長城汽車Ora黒猫

6.98万元から8.48万元と代歩車の中では、上位車種となる。最大走行距離は301kmから405km。外観が猫をイメージしたものになっている。代歩車として使うのであれば、数日に1回の充電で済むことが利点となっている。

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BYD e1

BYDで最も低価格のEVで6.98万元。最大走行距離は305km。すでにEVの分野ではBYDは信頼されるブランドとなっているため、代歩車を買うときにもBYDを選ぶ人も増えている。代歩車として使うのであれば、数日に1回の充電で済む。

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地下鉄の少ない地方都市で人気になる代歩車

代歩車は、大都市ではなく、地方都市で売れる傾向がある。地下鉄が発達をしていないため、移動手段を必要としているためだ。代歩車を所有し、遠出をするときは航続距離の長い高性能のEVをレンタルするという人も増えている。

この代歩車の普及により、中国のEV市場が再び成長軌道に乗る可能性が見えてきている。ガソリン乗用車の代替と考えると、どうしてもEVの欠点がついてまわる。しかし、用途を限定し、価格を安くすることで再びEV市場が動き始めている。

 

 

よく利用するスマホ決済調査で、WeChatペイがアリペイを抜いて初めての1位に

中国支付清算協会が行った「日頃よく利用するスマホ決済」調査で、WeChatペイがアリペイを抜いて初めての1位になった。WeChatペイは、少額決済に使われることが多く、コロナ禍により、少額決済をする局面が増えているのだと思われると界面新聞が報じた。

 

シェアが動かなかったスマホ決済市場

アリババの「アリペイ」、テンセントの「WeChatペイ」などが市場をリードするスマホ決済市場に異変が起きている。

スマホ決済市場は、アリペイが強く、それをWeChatペイが追いかける形で成長をしてきた。アリペイは、余額宝(ユーアーバオ)がキラーサービスになっている。これは1元単位でスマホから購入できる投資信託商品で、アリババ傘下でアリペイを運営するアントフィナンシャルが、資金をまとめて銀行に再投資し、手数料を引いた上で、利用者に還元をするというものだ。一時期は、年利7%近い利息がついたため、余額宝を利用するためにアリペイを使う人も多かった。

これにより、市場シェアは、アリペイ、WeChatペイ、その他がだいたい6:3:1になる「631局面」が長く続いた。中国では、631局面になると、シェアが動きづらくなると言われていて、スマホ決済もその状態が長く続いた。

 

ミニプログラムの投入でWeChatペイがシェアを拡大

しかし、2016年にテンセントがWeChatミニプログラムを投入すると、シェアが動き始めた。これはWeChatの中で起動できる小さなプログラムで、このアイディアはLINEミニアプリ、iOS App Clipsと同様のものだ。

WeChatの中からさまざまなECや飲食店のミニプログラムが起動でき、しかも、WeChatのアカウントでログインできるため、個別のアカウント登録は不要。また、決済方法も自動的にWeChatペイになるために設定不要という利便性がもたらされた。例えば、初めて利用するカフェであっても、アカウント登録や決済方法を設定せず、いきなりモバイルオーダーやフードデリバリーを注文することができる。

このミニプログラムの成功により、WeChatペイの利用額も上昇し、631局面が動き始めた。

2020年Q2のスマホ決済のシェアは、アリペイ49.16%、テンセント(WeChatペイ+QQ幣)33.74%と、WeChatペイが相対的なシェアを伸ばしている。

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▲アリペイ、WeChatペイ、その他のシェアは、631局面と呼ばれる6:3:1の状態からなかなか動かなかった。しかし、WeChatがミニプログラムをリリースしてからWeChatペイのシェアがじわじわと大きくなってきている。

 

アンケートではWeChatペイがよく使うスマホ決済の1位に

さらに衝撃的なのが、中国支付清算協会のレポートだ。2020年に日常よく使うスマホ決済を尋ねたアンケート調査(複数回答)によると、WeChatペイが92.7%、アリペイが91.0%とわずかながら、WeChatペイが初めて首位に立った。WeChatペイの利用率を押し上げたのは、ミニプログラムの登場が大きかったと思われる。

人によっても異なるが、多くの人がアリペイとWeChatペイの両方を使い、どちらかというとアリペイは金額の大きな決済に使い、WeChatペイは日常の小額決済に使う傾向がある。以前は、百貨店などで買い物をするときはアリペイで払い、カフェでお茶をするときはWeChatペイで支払うという人が多かった。

しかし、それがコロナ禍により大きく変わった。平均決済額別の利用者構成を2019年と2020年で比較をしてみると、2020年は高額決済をする人の割合が大きく減り、小額決済をする人の割合が大きく増えている。

つまり、外出自粛により、百貨店や量販店での買い物、旅行予約などの高額決済そのものが大きく減り、日常の飲料や食品、日用雑貨などの小額決済の割合が大きく増えたのだと想像できる。

これにより、WeChatペイに利用率が上昇したのではないかと見られている。使用割合は追いついても、決済額シェアにはまだ開きがあることから、WeChatペイで小額決済をする傾向は変わっていないことがわかる。

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▲日常よく利用するスマホ決済を複数回答で聞いたもの。初めて、WeChatペイがアリペイを抜いて1位になった。

 

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▲決済金額による決済の構成割合を2019年と2020年で比較すると、小額決済が大きく増加している。

 

再びスマホ決済のシェアが動き始めるか

あくまでも利用アンケートの結果であるとは言え、WeChatペイがアリペイを抜いたというのは大きなニュースだ。さらに、デジタル人民元も、大規模利用実験が進み、導入前夜になっている。さらに、アリペイやWeChatペイに対する影響は少ないとも言われているが、PayPalが中国決済市場に参入をする。また、地味ながら銀聯のQuickPassも地味にシェアを伸ばしてきている。

アリペイが強く、それをWeChatペイが追いかけるという形で進んできた中国スマホ決済市場だが、ここにきて地殻変動が起こり始めた。

 

 

新型コロナ終息後の消費行動はどう変わったのか。5つのキーワード

まぐまぐ!」でメルマガ「知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード」を発行しています。

明日、vol. 059が発行になります。

 

新型コロナとの戦いは、当初から長期戦になるとは言われていたものの、ここまで長引くのかと辟易している方も多いでしょう。しかし、この戦いはまだまだ長引くことを覚悟しておくべきかもしれません。

なぜなら、感染者数を押さえ込んだら終わりではないからです。常に無症状感染者が潜在をしているため、気を緩めると再び感染拡大が始まります。さらに、感染を完全に押さえ込んだとしても、経済が復調するのには時間がかかります。しかも、感染の再拡大をにらみながらの復興ですから、小刻みなステップをひとつひとつクリアしながらの復興になります。

2003年のSARSでは、7月にWHOから終息宣言が出されましたが、中国の経済活動が「元通りになった」と多くの人が感じられるようになったのは、その1年後だったと言われます。

 

中国は現在、最後の終息作戦を展開中ですが、最後の最後で一進一退が続いています。2020年3月中旬には、新規感染者数が全国で50名以下になり、ほぼ終息が見え、9月には、北京の人民大会堂で、感染防止に貢献した科学者、医療関係者の表彰式典が行われ、事実上の終息宣言をしました。

しかし、それ以降も、健康コードによる行動制限や長距離移動の自粛は続いています。また、無症状感染者は断続的に確認されていますし、小規模なクラスターが発生することもあります。

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▲中国の新規感染者は、3月には激減をし、6月頃には市民の不安感は薄れた。9月には中国政府が終息宣言。しかし、完全終息の手前で一進一退が続いている。

 

このような小規模クラスターが起きると、コロナ対策チームが急行し、その地区を封鎖、住民、関係者全員にPCR検査を行うという方法で、掃討作戦を展開しています。

そのために、PCR検査バスも製造され、活用が始まっています。商業車メーカーの蜀都客車やEVメーカーのBYDが開発をしています。バスの中で、検体採取、PCR検査ができ、その結果はセンターに5G通信で送信できるというものです。検査能力は1/10のプール方式(10人分の検体を混ぜて検査をする)で、最大1日に2万人分となり、最速2時間で検査結果が判明します。

小規模クラスターが発生すると、その規模に合わせて、このPCR検査バスが複数台急行し、広場や駐車場などを検査会場として住民全員を検査していくということを行います。

それでも、まだ完全終息にはいたりません。暖かくなり、湿度もあがれば感染力が抑えられるため、春、夏には完全終息になるかもしれませんが、SARSの経験から経済が完全回復をするのはその1年後、2022年の春か夏頃になると見る必要があります。今年2021年の冬は、再拡大のリスクも否定できず、まだまだ長い戦いになりそうです(当然、中国政府は2022年2月の北京冬季五輪を“新型コロナに打ち勝った証”の大会にする予定でしょう)。

 

しかし、だからと言ってため息ばかりついているわけにもいきません。目の前の感染予防も大切ですが、新型コロナの完全終息後のための準備もしなければなりません。

そこで、多くの方が気になっているのが、完全終息の後、ビジネスは元に戻るのか、それともまったく違ったものになっていくのかということです。感染拡大によって、人の消費行動が大きく変わるのは当然です。しかし、それが完全終息後も新日常として定着をしていくことになるのか、それともコロナ以前に戻るのか、そこの読みが難しいところです。

例えば、感染拡大でライブハウスの多くが苦しむことになりました。中には、ネットを使ったライブ中継を始めたところもあります。これは感染拡大に対する対応です。では、完全終息後、再び以前のようにライブハウスに人が集まるのでしょうか、それともネットライブ中継の方に進んでいくのでしょうか。

 

2003年のSARSの時は、中国では国内旅行が成長期にありました。と言っても、団体旅行が主体で、典型的なのは地方都市の団体が、北京に行って、天安門や毛主席記念堂を参観するといった修学旅行的な旅行が主体でした。それがSARSの感染拡大によって途切れます。

完全終息から1年後、再び旅行にいく人が増え始めますが、そこで注目をされたのが日本でした。日本はSARSの感染が0で、元々清潔好きで、衛生環境も図抜けて優れていることから国内よりも安心できる旅行先として注目されるようになったのです。しかも、北京や上海の沿岸部の都市からであれば、内陸部の成都重慶に行くよりも近いのです。また、団体行動をする団体旅行ではなく、個人旅行が伸びていきます。

終息後に旅行業は復調し、以前よりも成長をすることができましたが、消費者のニーズは以前とはまったく違ったものになっていました。

 

小売業もSARSで変わりました。SARS路面店が苦しむ中、アリババの淘宝網タオバオ)や店舗からECに転換をした「京東」(ジンドン)などが急速に成長しました。当初は、外出を控えたい、人との接触を避けたいというニーズからでしたが、完全終息後も利用する人が増えていきました。それは、自宅に配送してくれるという利便性に多くの人が気がついたからです。

しかし、この頃から、都市内に大型ショッピングモールの建設が始まります。それまで、中国には商城と呼ばれるモールはたくさんありました。しかし、その多くが通路は狭く、小さな商店がひしめいていて、日用品を格安で販売するというものです。新しいショッピングモールは、開放的で通路も広く、ブランドものなど非日常の製品が販売されています。

つまり、日用品はECで便利に買えるようになった反面、「買い物を楽しみたい」というニーズが強くなり、ショッピングモールが成長していくことになります。

感染拡大→非接触系ビジネスという単純な図式だけでは、コロナ完全終息後のビジネスを読むことはできません。

 

生鮮食料品をスーパーなどにスマートフォンで注文すると、数時間で自宅まで届けてくれる「到家サービス」は、新型コロナの感染拡大機に爆発的に伸びました。しかし、終息をした現在ではさすがに感染拡大期ほどの成長はしていません。

中国ニールセンが美団、ウーラマ、京東到家などの利用額を集計した統計では、2019年12月から2020年3月(感染拡大期)には20%もの成長をしましたが、2020年3月から6月(終息前期)には6%成長に落ちています。

感染拡大期には到家サービス以外の選択肢がほぼない状態になりましたが、終息期になれば他の選択肢も利用できるようになります。つまり、感染拡大期と終息期では、消費者の消費行動が変わってくるのです。

この「終息後の消費行動はどうなっていくのか」という問いに正確に答えられる人はどこにもいません。では、中国の「コロナ前」「感染拡大期」「終息後」それぞれの消費行動はどう変化しているでしょうか。

すでに消費行動の変化について、いくつものキーワードが浮かび上がってきています。「内食化」「飲食の小売化」「健康消費」「精緻生活」「新品消費」「内循環」などです。

今回は、新型コロナ終息後の消費行動がどのように変化をしているのか、中国の状況をご紹介します。

 

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vol.057:テック企業に蔓延する996。社会問題化する長時間労働問題

vol.058:再び成長を始めたTik Tok。テンセントのWeChatと正面から激突

 

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