中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

中国のAI開発体制と2020年のAI応用例

 

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「AI(人工知能)は幻滅期に入った」「PoC(概念実証)を行ってみたが、成果は芳しくなかった」という話を耳にしたことがあるかもしれません。

AI幻滅期とは、米ガートナーが、新しいテクノロジーに対する市場の期待度を調査したハイプサイクル調査で、日本市場は2018年10月までは「過度な期待のピーク期」にあったものの、その後幻滅期に入ったとする調査結果です。

しかし、幻滅期に入ったからといって、AIが一過性の流行であって消えていくわけではありません。ガートナーのハイプサイクルでは、幻滅期の後は「啓蒙活動期」「生産性の安定期」と続くのです。幻滅期とは過剰な期待により、質の低いプロダクトが淘汰され整理される段階にすぎません。

もし「幻滅期」という言葉に惑わされて、「AIなんて結局一時の流行だ。RPAだのDXと同じように、テック企業の宣伝文句にすぎない」などと思ったとしたら、それはかなり危険なことだと思います。なぜなら、AI、特に機械学習は、ビジネスに関わる人全員が使いこなす時代がもうやってきています。数年で、機械学習ビジネスパーソン必須スキルのひとつになるでしょう。

 

一言で言えば、機械学習Excelのような感覚になっていくのです。今、関わり方の濃淡はあるものの、業務でスプレッドシートを使わないという人はいないでしょう。ある人は、与えられたシートに今日の売上を入力して提出する程度かもしれませんし、ある人は分析ツールを使いこなして、売上低下の原因を探したり、売上予測をしたりするかもしれません。

機械学習の主な用途は、予測と分類です。過去のデータから売上を予測をしたり、顧客をタイプ別に分類したりすることができます。当然、Excelを使って、データ分析をしたり、予測をしたり、顧客の分析をする人は、機械学習を使うことになります。マイクロソフトがそうするかどうかはわかりませんが、機械学習機能を備えたスプレッドシートというのはいつ登場してもおかしくありません。

社内のデータサイエンティストは、このような機械学習を使ってデータ分析を行い、現場の社員たちはそのような分析結果を見て仕事をし、最新データを追加していくという働き方が当たり前のことになりますし、すでにそうなりつつあります。

つまり、機械学習は、Excelの上位版のようなもので、すでに誰でも簡単に使えるデータテクノロジーになっているのです。

 

簡単に使えるようになった最大の理由は、プログラミング言語Python(パイソン)のライブラリが充実をしたことです。機械学習のライブラリscikit-learn(サイキットラーン)、ディープラーニングのライブラリkeras(ケラス)などのオープンソースライブラリ、あるいはグーグルが開発したTensorFlow(テンソルフロー)などを利用すると、わずか1行のPythonコードで、機械学習モデルやニューラルネットワークの構築ができます。

サンプルのデータを使って、機械学習をやってみる、ディープラーニングをやってみるというだけであれば、高校の情報科の課題にしてもおかしくないほどの簡単さです。プログラミング経験があれば、中学生でも問題なくできる程度です。

 

しかし、機械学習モデルを作ってみるということと、精度の高い実用的なモデルを構築することには、天と地ほどの開きがあります。モデルのパラメーターなどを変えていき、試行錯誤をしていく必要があるからです。

特にディープラーニングでは、ニューラルネットワークをどの程度多層化するか、活性化関数をどう設定するか、どのような学習のさせ方をするかに、法則や正解はありません。与えられた課題ごとに、最適化をしていかなければなりません。論文として発表されている実例を見て、試行錯誤で試していくしかないのです。もちろん、やみくもにパラメーターを変えてもうまくいくわけがなく、AIに対する深い理解が必要になります。

使ってみることと、実用的な学習モデルを作ることには天と地ほどの開きがある。ここがAIテクノロジーの大きなポイントです。

このような事情があるため、AIの精度をあげていく体制づくりをせずに、1行のコードで機械学習モデルを作ってみて、結局、「店長の勘の方が、AIよりも予測精度が高いじゃないか」となって、「AIの本格導入は時期尚早」という結論を安易に出してしまっている例もあるようです。

 

AIを産業として成熟させるのに必要なのは、次の3つだと言われています。

1:AI理論をサイエンスとして研究できるサイエンティスト人材

2:大量のデータを生成、整理できる膨大な人手

3:学習モデルを試行錯誤しながら開発を継続できる資本と体制

中国は米国とともに、AIを次世代の産業として定め、国策として力を入れています。では、この3要素がそろっているのでしょうか。今、中国のAI分野でどのような成果が上がっているのでしょうか。

今回は、中国のAI産業がどのような体制にあるのか、そして、2020年どのような応用例が出てきたのかをご紹介します。

 

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黒字化を達成したソーシャルEC「拼多多」の次の成長戦略は農産品。地域密着の個人商店を活用

ソーシャルEC「拼多多」(ピンドードー)が2020Q3に創業以来初めての黒字化を達成した。次の成長戦略は農産品だ。地域密着の個人商店を活用し、過剰生産された農産物を流通させるという社会貢献型ECで成長を目指していると遠川商業評論が報じた。

 

創業以来、初めて黒字化をした拼多多

ソーシャルEC「拼多多」(ピンドードー)の2020年Q3の財務報告書が公開され、non-GAAP利益(米国会計基準を適用しない利益)が+4.66億元となり、拼多多創業以来、初めての黒字となった。このことは、米ナスダック市場で歓迎され、株価が上昇し、第2位のEC「京東」(ジンドン)の時価総額を瞬間的に上回る局面も見られた。

しかし、米国会計基準に従った利益は7.85億元の損失で、急成長をしてきた拼多多が次の成長戦略を見出せない状態であることは変わっていない。

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▲拼多多の営業収入の推移。順調に成長しているが、その背後には莫大な販売経費をかけた赤字成長だった。それが初めて黒字化をした。

 

販売経費の高さは解消。課題は次の成長戦略

しかし、拼多多の課題として指摘され続けてきた高い販売経費比率の問題は解消の兆しが見えてきている。大量に販売をするために「百億補助」などの大型の補助キャンペーンを行い、販売経費の比率が100%を超えていることが常態化をしていた。つまり、売っても売っても赤字になる状態で成長をしてきた。

それが今年2020年Q2、Q3と連続して80%を切った。一方で営業収入は伸びている。つまり、補助をしなくても売れる状態が確保されたことになり、株式市場はここを好感したものだと思われる。

次に必要なのが、新しい成長戦略だ。拼多多が現在、力を入れているのが、野菜を中心にした生鮮食料品だ。

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▲販売経費率は、過去100%を超えたこともある。つまり、売れば売るほど赤字だった。その経費率が抑えられるようになり、黒字化に結びついた。

 

拼多多は、地方の過剰生産品を流通させる

現在、中国のECのトップ3は天猫(ティエンマオ、Tmall)、淘宝網タオバオ)を持つアリババ、そして京東(ジンドン)、拼多多だが、ビジネスモデルはそれぞれに異なっている。

アリババのタオバオは、マッチングプラットフォーム型であるために販売業者を惹きつけることが成長の鍵になる。大量の販売業者が出品をすることで、品揃えが豊かになり価格競争が起こり、多くの消費者を惹きつける。多くの消費者が集まるので、販売業者が増えるという好循環を生み出すことで成長をする。

京東は購入から物流まで自社で行うオンライン店舗型だ。このため、高い品質の商品をいかに低価格で買い付けられるかが鍵になる。

拼多多はアウトレット型だ。地方企業などで過剰生産になった商品を低価格で大量に流通させ、消費者にSNSを使ったまとめ買いを促し、低価格だが大量に売れることで生産者に利益をもたらす。拼多多の登場は、地方企業や地方農家を活性化させている。

 

過剰生産品のアウトレット流通が拼多多の本質

つまり、拼多多の本質とは過剰生産品のアウトレット流通なのだ。これを従来は日用消耗品や日用家電製品で行い成功をしてきた。同じ手法を農産品でも行おうとしている。

以前から、拼多多は農産品を扱ってきた。しかし、物流のことを考え、乾物や加工品など、消費期限が長いものが多かった。野菜、果物などの生鮮食料品は、短期に売り切らなければならず、常に出品されている状態を作るのは難しい。これを常に供給される体制を作り、生鮮食料品を拼多多で購入する習慣づけをいかに養成できるかが鍵になる。

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▲拼多多で販売されている食品。通常宅配であるため、賞味期限が長く、鮮度を問わないものが主流だった。


地域の個人商店を配送拠点として活用

消費期限が短い生鮮食料品をそのまま拼多多の流通で扱うことは難しいため、新しいプラットフォーム「多多買菜」(ドードーマイツァイ)を構築した。食品専用の拼多多だが、異なるのは宅配されるのではなく、近所の提携している個人商店に食品が届けられるため、それを自分で取りに行くという仕組みだ(商店によっては配達をしてくれることもある)。

いわゆる「地域のお店」で、「小店」と呼ばれることもある。多多買菜は、このような地域密着の個人商店を配送拠点として活用している。

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▲多多買菜の配送拠点。地域密着の個人商店が提携をしている。購入者はこの地域のお店に注文した商品を取りに行く。

 

「社会課題の解決」がビルトインされている拼多多のビジネスモデル

個人商店は、小規模とは言え、冷蔵庫、冷凍庫を備えている。そこに保管をしてもらうことで、消費期限の問題をクリアしようとしている。個人商店にとっては、自分の利益にはならないものの、出費なしで、来店客を増やすことができるため、ついで買いを期待することができる。

この多多買菜がうまく定着できるかどうかはこれからだ。しかし、拼多多はビジネスそのものが社会貢献になっている。自分の製品を全国流通に乗せることができる地方の企業、農家はごく一部で、多くが狭い地域内に販売先を求めるしかなかった。そのため、常に過剰生産気味になっていて、利益を出すことが難しくなっていた。

それが拼多多の登場により、過剰生産分を一気に全国流通させる道筋ができた。価格は安く抑えられるが、大量に売れるので利益は得られる。拼多多は、いつ消えてもおかしくない地方企業、農家を救うことになった。

個人商店も、ECや新小売の登場により、競争力はほぼなくなっている。近所の高齢の馴染み客が訪れる程度になっている。多多買菜は、地域に根ざした店という利点に着目し、個人商店の活用を始めた。

多多買菜が、拼多多同様に急成長をすることができるかどうか、注目されている。

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▲多多買菜では、個人商店の冷蔵庫を利用することで、鮮度が要求される生鮮野菜も扱えるようになった。

 

 

 

中国の新しい一級都市は、上海、北京、深圳、杭州。杭州の格上げに議論が広がる

中国都市局は、毎年都市の発展ランキングを公開しているが、今年は異変が起きた。最も発展している都市として、例年、上海、北京、深圳、広州の4都市が挙げられていたが、今年は広州が準一級都市に格下げとなり、その代わりに杭州が一級都市に格上げされた。これが議論を読んでいると上林院が報じた。

 

北上広深時代が終わる。新しい一級都市は杭州

中国都市局と中国都市研究院が共同で「2020年中国都市発展レベルランキング」を発表した。一流都市として39都市が選ばれ、そのうちの4都市が一線都市(一級都市)、15都市が準一級都市、30都市が二級都市とされた。

しかし、今年のランキングには大きな異変が起きている。従来、中国の一級都市といえば北京、上海、広州、深圳の4都市で、まとめて「北上広深」と呼ばれることも多かった。ところが、今年の一級都市として選ばれたのは杭州市で、広州市が準一級都市に格下げとなった。これが大きな議論を呼んでいる。

 

風光明媚な観光都市が、テクノロジー都市に

つい最近まで、中国人の杭州市に対する印象と言えば、風光明媚な観光都市。古来から文人墨客が愛した西湖を中心にした静かな都市で、上海に近いことから「上海の花園」と呼ばれることもあった。

しかし、アリババが興ったことから、杭州は急速にテクノロジー都市の顔を持ち始めている。アリババだけでなく、関連するテック企業が拠点をかまえ、郊外の水郷の街は、次々とテックパークに衣替えをしていく。

その発展ぶりは数字にも表れている。2019年の人口増加は55.4万人で全国一。また、高度人材の増加率、テクノロジー関連人材の増加率も全国トップだ。さらに、地方政府の財政収入は広州市を越え、ユニコーン企業の数も北京、上海に続く多さになっている。

確かに杭州市の将来性は、中国で最も高いかもしれない。しかし、都市としての基本的なポテンシャルはまだまだ地方都市のレベルを抜け出すことができず、北京や上海、深圳と比べると見劣りがする。

このようなことから、「杭州市は一級都市と言えるのか?」という議論が起きている。

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杭州市は文人墨客が愛した西湖を中心とする観光都市だった。それがアリババの登場により、テクノロジー都市に変貌をしている。

 

GDPが伸び悩む広州

都市のGDPを見ると、やはり突出しているのは上海、北京、深圳の3都市だ。広州が伸び悩んでいることは確かだ。しかし、杭州GDPはまだ一級都市とは言えないレベル。むしろ、重慶の方がはるかに一級都市に相応しいし、今年はコロナ禍による損失が大きかったため下位に落ちてしまったが、武漢GDP重慶と競い合うレベルになっている。

GDPという都市の基本の指標から、杭州はまだ一級都市とは言えないと主張する人がたくさんいる。

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▲2020年Q3の各都市ごとのGDP。広州の伸び悩みが目立つが、杭州GDPではまだトップクラスとまでは言えない。

 

人材の自給自足がまだできていない杭州

杭州は高等教育機関が少ない。昨年まで杭州は「新一級都市」に分類されていた。この新一級都市の大学数を比べると、杭州市は最低レベルになっている。新一級都市の大学生数は杭州以外では72万人以上だが、杭州市は49.6万人。一方で、広州市は109万人もいる。

つまり、杭州市は自ら人材を供給することができてなく、外から人材を呼び込む形になっている。そのため、高度人材、テック人材の流入量が多くなっているのだ。

高等教育機関が脆弱であるというのは、一級都市としての弱点になっている。

また、都市移動の基本インフラである地下鉄(都市鉄道)の総延長を見ても、杭州市は一級都市から大きく隔たっている。

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▲都市ごとの大学数。武漢が圧倒的に多く、教育都市となっている。杭州の大学数は少なく、人材が外から流入することで発展をしてきた。

 

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▲地下鉄の総延長距離では上海と北京が圧倒的に長い。杭州はまだ地下鉄の発展中で、都市内移動は路線バスに頼っている。

 

製造業が少ない、アリババ依存の弱点を持つ杭州

産業的に見ても、杭州市の弱点は製造業が少ないことだ。2019年の製造業増加率も全国12位で、蘇州市の半分程度でしかない。製造系企業の拠点は杭州市にも置かれているものの、その多くが製造拠点ではなく研究拠点だ。

また、肝心のテック産業も、アリババ一社に頼り切っている点が弱点になる可能性がある。実はアリババも創業当時、上海への移転を考えたことがある。しかし、投資資金が枯渇し、経営危機を迎えたことで杭州に留まらざるを得なかった。その後、淘宝網タオバオ)で急成長をする。ソーシャルEC「拼多多」は、杭州で創業をしたが、早い段階で、より機会の多い上海に移転をしている。

上海まで高速バスで2時間程度、高鉄で1時間という近い距離にあるため、杭州は独自の杭州経済圏を作ることができず、上海経済圏に飲み込まれてしまっているのだ。それがアリババという巨大テック企業が登場したために、アリババの影響力により、杭州市の経済力を上昇させている。

つまり、杭州市は、北京、上海、深圳と肩を並べる可能性を持った都市だが、アリババ依存が強すぎる脆弱性を持っている。アリババ以外の企業、産業を育てることができるかどうかが、杭州が一級都市に定着できるかどうかの鍵になる。

 

日商5.5万円。投資回収期間は1年未満。ビジネス軌道に乗る無人運転キッチンカー

新石器科技の無人キッチンカーが好評だ。1日の平均売上は3500元(約5.5万円)であるため、すでに400台が稼働をし、海外6カ国でも100台が稼働と、市場を広げている。新石器科技では数万台規模の稼働を目指し、移動するミニコンビニとして新たな消費チャンネルに育てていく計画だと車東西が報じた。

 

2021年は自動運転が普及する年になる

中国で自動運転車の社会普及が加速をしている。人を乗せるロボタクシー、ロボバスは実証実験の段階を終え、試験営業の段階に入り、ロボタクシーは、上海、長沙、滄洲などで乗客を乗せた試験営業が、ロボバスでは長沙、蘇州などで営業運行が始まっている。また、企業内、マンション内でのシャトルバスとしての利用も珍しいものではなくなってきている。

京東などのEC企業、美団などのフードデリバリー企業では、施設、企業への配送に無人配送車を活用し、投入台数を拡大中だ。さらに、公園、施設内、公道などの道路清掃にも無人清掃車が用いられるようになっている。

 

収益化が見えてきた「無人キッチンカー」

しかし、これらはいずれも公共性の高いケースで、消費者のニーズに直接応えたものとは言えない。消費者からしてみれば、タクシーに乗りたいのであって、運転手が人間であるか、人工知能であるかは大きな問題ではない。

しかし、「無人販売車」という消費者のニーズに直結する分野で、成功の兆しが見え始めたのが、新石器科技の無人キッチンカーだ。無人キッチンカーは、キッチンで朝食などの食品を作り、無人キッチンカーに載せると、自動運転で、地下鉄で入口付近などに移動をする。利用客は、スマホ決済のQRコードをスキャンすることで扉を開け、食品を買うというものだ。時間または商品がなくなると、自動でキッチンに戻るので、食品を補充する。21世紀版の屋台、移動販売だと言える。

新石器科技によると、2019年から公園の飲料無人販売を行いながら試験運用を始め、今年10月には上海市で地下鉄出入り口などで朝食などを販売する本格運用が始まった。1台の無人キッチンカーが300食以上の売上をあげることもあり、一日の平均の売上は3500元(約5.5万円)を超える。コロナ禍という特殊事情もあったが、この調子で好調な売行きが維持できれば、年に25万元(約390万円)の利益が生まれる計算になり、投資コストの回収期間は1年以内になったという。

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▲購入するには専用のWeChatミニプログラムから、WeChatペイ決済で食品を購入することができる。

 

お客を求めて24時間どこにもで移動する無人キッチンカー

新石器科技では、この「移動小売」を事業のひとつの柱として考えているようだ。当初はスマホ決済でドアが開くだけという単機能のものだったが、現在では加熱、保温、冷蔵、冷凍などの機能を追加し、零下18度から60度まで設定できる。コーヒーやアイスキャンディーなどの販売も可能になっている。

現在、上海、アモイ、北京などの数都市で、新石器科技の無人キッチンカーを利用した移動販売が行われている。

この無人キッチンカーの利点は、ほぼ24時間稼働が可能な点だ。朝方は朝食を、昼に昼食、午後にコーヒー、夜には夜食を販売することができる。しかも、それぞれによって、販売場所を変えることができる。例えば、朝食はオフィス街で、昼食は大学近く、午後は繁華街と、それぞれの需要のある場所に移動をすることができる。これが高い販売率を生む要因になっている。

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▲セントラルキッチンで食品を補充。その後、無人キッチンカーは指定された場所に自動走行して、お客を待つ。

 

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▲人出のヒートマップデータと重ね合わせることで、最も効率的に販売ができる場所に移動することができる。これが無人キッチンカーの強みになっている。

 

未出店のケンタ、ピザハット吉野家も利用

AIテクノロジーの実験場ともなっている上海張江人工知能島では、無人キッチンカーが積極的に利用され、ケンタッキー、ピザハット吉野家などは、この地域ではまだ出店をしていないため、無人キッチンカーによる移動販売を行なっている。

この移動キッチンカーは、現在、店舗をもつ飲食店が、副次的な販売チャンネルとして利用をしているケースが多いが、店舗から移動販売に主軸を移す飲食店も登場するかもしれない。

ある上海の飲食店は、店舗の営業と無人キッチンカーによる営業を別建てで組み立てた。すると、朝食定食の内容はほぼ同じなのに、移動販売では店舗の維持コストが不要となるため、店舗で販売している10元の定食が、移動販売では2.9元で販売できるようになった。消費者の中には、店舗にいかず、わざわざ移動キッチンカーで買う人もいるほど好評だったという。

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ピザハット無人キッチンカー。未出店の地域での販売に利用をしている。ケンタッキーや吉野家も同様の利用をしている。

 

現在400台が稼働中。目標は数万大規模

現在、このような無人キッチンカーは中国全土で400台が稼働をしている。累積走行距離は100万kmを超えた。新石器科技は、これを数万台規模にしたいという。そのレベルになると、移動小売ネットワークが構築されるようになり、無店舗のコンビニと同じ一大消費チャンネルになる。

また、新石器科技は、中国で初めてドイツの認証機関「テュフラインランド」のL4自動運転車の認証を取得した。つまり、欧州基準にそった自動運転車ということになる。これにより、無人キッチンカーは6カ国30都市で100台が稼働をしている。

無人キッチンカーが登場した当初は、自動運転車のユニークな活用アイディア程度に見られていたが、思いの外、販売利益が出ることから、新業態のひとつになる可能性が出てきている。

 

 

人民解放軍の「最後の1km」問題。弾薬はドローンでピストン輸送

人民解放軍のドローン演習が公開された。戦場では、地形によっては、弾薬、食料などの物資を人手で輸送するしかないケースがある。この「最後の1km」問題をドローンによって解決するものだと解放軍報が報じた。

 

人民解放軍の「最後の1km」問題

都市生活の中では、ECで注文した商品、新小売やデリバリーで注文した商品は、宅配便、即時配送などが宅配してくれる。商品の「最後の1km」を担う即時配送という新たなビジネスが生まれている。

最後の1kmが問題になるのは、戦場でも同じことで、軍隊はこの問題に頭を悩ませてきた。戦場は地形的に複雑な場所であることが多いため、わずか100mか200mの距離でも輸送が難しく、最後は人手に頼るしかないケースもある。弾薬や兵士の食料を人手で運ぶしかない状況が、作戦遂行の大きな足枷になることも多い。

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人民解放軍が開発した弾薬輸送ドローン。最大積載量60km。農薬散布用ドローンをベースに開発をしたという。

 

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▲弾薬輸送ドローンの飛行演習。編隊飛行も可能。ルート設定をしておけば、自動で飛行する。

 

弾薬を前線に配送する軍事用ドローン

そこで、人民解放軍では、ドローンを使って、前線に弾薬を輸送する仕組みを導入し、その演習風景が公開された。

この弾薬輸送のドローンは、農薬散布などをする農業用ドローンをベースに開発され、最大積載量60kg、有効積載量30kg、航続距離30km以上、航行時間は10分から20分だという。製造コストは4万元から5万元程度で、軍事兵器としてはきわめて安価だ。

地図上で、着陸地点を精密に指定できるため、効率的に前線の兵士に物資を送り届けることができる。特に地形が複雑で、補給路を確保しづらい場所で有効だ。現在は、弾薬や食料などの物資補給を主にしているが、将来は大型化をして、負傷兵の救出や前線兵士の速やかな撤退に応用することも考えられている。

また、兵器としてのドローン開発も進んでいる。6軸12ローターのドローンで、歩兵に追従して飛行し、援護射撃をする「戦斧」もすでに実用化されている。

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▲攻撃用ドローンも開発をされている。敵軍のドローンを画像解析で自動判別し、発見すると、自動的に機銃で撃墜する。

 


解放军如何对付“蜂群”无人机?这场演习曝光了多种特殊武器 「威虎堂」20201023 | 军迷天下

人民解放軍が行ったドローン撃退演習の様子。自軍はドローンで物資輸送を行うが、敵軍のドローンは破壊をする。戦場でのドローンが、戦略の重要な鍵になりつつある。

 

「軍事用から民生用へ転用」の逆流現象が起きている

また、歩兵と並走する自動運転車もすでに実用化されていて、平地移動の場合は、大量の物資を輸送し、歩兵の負担を減らしている。

従来技術というのは、開発資金力の豊富な軍事技術から出発をして、民間に転用され、それが民生用にまで普及していくという流れがあった。しかし、近年では民生用に開発された技術が軍事に転用されていくという流れも起きている。軍事の世界でもイノベーションが起きている。

 

 

中国最後の巨大市場「銀髪族」。テック企業が注目をする4.7億人市場

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高齢者とデジタルというと、多くの人が「高齢者はデジタルが苦手」「デジタルデバイド」といった言葉を連想します。パソコンを使いこなしてブログを書いているおばあちゃんや、LINEを使って集まりの連絡をしている高齢者グループがあると、メディアは「スーパーおばあちゃん」として取り上げ、そのニュースを見た人は「元気なお年寄りもいるものだ」と驚きます。

しかし、これは明らかに間違ったイメージです。現在70歳の高齢者は1950年生まれですから、グラフィカル操作のコンピューター「Mac」が34歳の時に登場しています。インターネットが一気に世の中に広まったのは45歳の時です。インターネット第1世代なのです。

このような高齢者は、スマートフォンに触れても、最初はどんなアプリがあるのかわからず戸惑うこともありますが、しばらく使って慣れてしまえば問題なく使いこなします。ブログを書いたり、LINEで連絡を取ることなどなんでもありません。新しいサービスが登場した時に、慣れるのに、若者よりも時間がかかる程度のことです。

ただし、この世代は、今のように、ほぼ全員がデジタルに関わるという時代ではありません。Macが登場しても、インターネットが登場しても、関わることなく、年を重ねてきた人もいます。このような方は、確かにスマートフォンを渡しても、困惑するばかりでうまく使いこなせないかもしれません。それがあたかも高齢者の全員であるかのようなイメージが広がってしまいました。

 

なので、現役時代からパソコンやインターネットを使っていた人は、70歳になっても当たり前のようにパソコンやスマートフォンを使いこなします。その後、デジタルデバイスは特殊な道具ではなくなり、仕事や教育を受けるのには必須のものになり、スマホの登場によって生活の上でも必須のものになってきました。想像してみてください。私たちが70歳になっても、毎日スマホ(別のスタイルのデバイスに進化しているかもしれませんが)を当たり前のように使っていることでしょう。

あと10年もすれば、70歳の人は24歳でMacに触れ、35歳でインターネットに触れ、47歳でスマホに触れた世代になります。その時期にデジタルデバイスを使い始めた人は、70歳になっても使い続けるでしょう。老眼が進むので、スマホではなくタブレットを使うかもしれませんが、バッグに5GSIM入りのiPadを入れて散歩をし、地図アプリの周辺検索でカフェを探して休憩するという高齢者も珍しくなくなるでしょう。

 

「高齢者がデジタルデバイスが苦手」というのは、思い込みにすぎません。また、デバイスやサービスのUI/UXの進化がじゅうぶんでないということもあります。

例えば、私たちは、いまだにログインにパスワード方式という古い技術を使い続けています。本人認証をするには「記憶」「所有」「生体」の3つの要素のいずれかが必要で、可能ならば2つを組み合わせて使う二要素認証が安全だとされています。しかし、黎明期のデジタルデバイスには「所有」「生体」要素を実現する方法がない、または現実的ではないという事情がありました。そこで仕方なく、記憶要素であるパスワードを方式を採用しました。

しかし、現在のスマホは所有(携帯電話番号、機種識別番号など)、生体(指紋認証、顔認証、音声認証)が簡単に使えるようになっています。それでも、多くのサービスが古いパスワード方式を使い続けています。Yahoo! JAPANのようにパスワードを廃止してしまった先進的なサービスも登場していますが、まだまだ少数派です。

ネットサービスをひとつしか使わないのであればまだしも、複数のネットサービスを使うとなると、パスワードの管理をしなければなりません。こういうところが高齢者がネットサービスを利用する障害になっています。

 

今、中国では高齢者市場が大きな焦点になっています。高齢者は銀髪族(インファー)と呼ばれ、ECやデジタルサービスの新たな巨大市場として注目をされています。

そのため、スマホもUI/UXを進化させています。例えば、文字の入力はソフトウェアキーボードによるローマ字入力が最も多いものの、音声入力をメインに使う人が増えています。また、難しい漢字は手書き入力も可能であるため、キーボードを使わないという人が増えています。

2010年代半ばに音声認識エンジンにディープラーニング技術が使われるようになって、認識率は飛躍的に向上しました。特に屋外のノイズの多い環境での認識率が格段にあがっています。中国人は、周りの人が何をしようと気にしない文化があることもあって、街中でも音声入力を使う人をよく見かけるようになっています。

日本のLINEのように使われるSNS「WeChat」でも、テキストをやりとりするのではなく、マイクに向かってしゃべり、その音声データをやりとりして会話をしている人も珍しくありません。音声電報のような使い方です。検索をする時にも音声認識で入力し、検索をするという人が増えています。

音声入力の精度はかなり高くなっていて、誤認識の割合よりも、キーボード入力のタイプミスの割合の方が高いぐらいです。

 

これはあくまでもひとつの例で、多くのメーカー、企業がお年寄りでも使いこなせるような工夫をしています。なぜなら、銀髪族は中国テック業界にとって、最後の巨大市場だからです。

それは生活系サービスも同じです。現在テック企業が参入をして、激しい競争が起きているのが、「社区団購」(シャーチートワンゴウ)です。これはスマホで生鮮食料品や商品を注文すると、ご近所の商店に翌日配送されるので、受け取りに行くという地域密着系ECのような仕組みです。大型スーパーに買い物にいくのは疲れる、ECを使うのは難しい。そういう銀髪族が社区団購を利用し始めています。

では、そもそも、なぜ、銀髪族が最後の巨大市場なのでしょうか。そして、テック企業はどのようなアプローチをしているのでしょうか。

今回は、銀髪族市場についてご紹介します。

 

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進むテックジャイアントによる系列化。新サービスに流れ込む豊富な資金

アプリのMAUランキングを見ると、その多くがBAT+バイトダンスの系列アプリで占められている。系列化が進むことで、新しいサービスが登場した時に、テックジャイアントの豊富な資金が流れ込むことになる。これが中国の新サービスの定着を加速していると快科技が報じた。

 

テックジャイアントにより進む系列化

中国のテックジャイアントの寡占化が進んでいる。調査会社Trustdataが公開した2020年10月の月間アクティブユーザー数(MAU)のアプリランキングを見ると、そのほとんどが、BAT(百度、アリババ、テンセント)+バイトダンスで占められているのがわかる。

と言っても、すべてがその企業のアプリというわけではない。例えば、テンセント系列に分類されている「拼多多」(ピンドードー)、「快手」(クワイショウ)は、テンセントが開発運営をしているのではなく独立した企業だ。しかし、テンセントが出資をし、テンセント系列になっている。

ちょうど、YouTubeがグーグル系、インスタグラムがフェースブック系になっているのと同じ感覚だ。

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▲2020年10月のMAUのアプリランキング。BAT+バイトダンスの系列サービスでほとんど独占されている。

 

サービスの融合も進む系列化

出資というお金の関係だけなく、系列化によりサービスの融合も進む。例えば、テンセント系のソーシャルEC「拼多多」は、テンセントのSNS「WeChat」を使うことが前提になっている。

拼多多はまとめ買いECで、同じ商品を買う人が集まれば集まるほど価格が安くなる仕組み。そのため、その商品を買いたい人が、WeChatで商品情報を拡散することで、買いたい人が集まってくる。

これが商品の宣伝となり、販売側はプロモーション費用を大幅に抑えることができるため、低価格で提供ができる。SNSの拡散力を利用して大量販売を行う。WeChatがなければ成立しなかったECスタイルだ。

 

新規分野では、BATの代理戦争になる法則

中国のテックジャイアントがBATと呼ばれるのは、単に時価総額の大きなテック企業というだけの意味ではない。豊富な資金力を活かして、シナジー効果のある企業に資本を投入し、場合によっては子会社化をする。

そのため、新しいジャンルのビジネスが登場すると、競争をするのはスタートアップ企業であっても、その背後にBATの資金が存在していることが多い。新しいビジネス領域は、BAT、特にアリババとテンセントの代理戦争となることが多く、大規模で派手な競争になる。

その最たるものが2014年の網約車戦争だ。タクシー配車アプリの「滴滴」と「快的」が真正面からぶつかった。滴滴にはテンセント、快的にはアリババが背後につき、わずか数ヶ月で20億元分(約320億円)ものクーポンが発行された。クーポンを上手く使うと、無料でタクシーが乗れる状態となり、歩いて数分のスーパーに買い物に行くのにもタクシーを使う人まで現れたほどだった。

この網約車競争は、ウーバーの中国上陸によって、そのままライドシェア競争になった。ウーバーは最終的にこの狂乱じみたクーポン合戦についていくことができず、中国で黒字化をするのは無理だと判断をして、滴滴に売却をする形で撤退をしている。そして、滴滴と快的は合併をすることで、網約車戦争は終結する。

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▲2019年の日本のMAUランキング。系列化はほとんど起きていない。Yahoo! JAPANの「天気」「乗り換え」の機能は「Yahoo! JAPAN」アプリの中からでも利用ができる。

 

系列化が新サービスの定着を加速させている

一方、「モバイル市場年鑑2020」(App Annie)による日本の2019年のアプリMAUランキングを見ると、このような系列化は起きていない。フェイスブックとインスタグラム程度だ。ヤフーは系列化というより、天気や乗り換え案内はヤフーアプリ内で利用できるが、単独のアプリの方が利便性が高いために併用しているという感覚だ。

中国のような系列化がいいことなのか悪いことなのかはわからない。しかし、新しいビジネスが興ると、すぐに大量の資金が流れ込み、競争をすることで消費者の耳目を引き、利用する人が現れ、それでビジネスが軌道に乗っていくという定番プロセスができあがっている。

中国で新しいビジネスが次々と生まれて、短時間で市民の間に定着をしてくのは、この系列化が大きく作用していることは確かだ。

 

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