中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

新エネルギーが一変させるモンゴル遊牧民の生活。太陽光発電のゲルも登場

内モンゴル自治区の大草原は、日照時間が長く遮るものがない。風も強く、太陽光、風力といった再生可能エネルギー発電に向いている。これを利用して、断熱素材、バッテリー設置の移動式住宅「ゲル」が開発されている。住宅内では電気製品を使うことができ、モンゴル遊牧民の生活も大きく変わることになると内モンゴル日報が報じた。

 

断熱素材、太陽光発電つきの移動式住宅「ゲル」

新エネルギーの普及が、モンゴル遊牧民の生活を一変させるかもしれない。モンゴル特有の組み立て式移動式住宅「ゲル」も、断熱素材のものが登場し、中には太陽光発電で蓄電したバッテリーが備えられる。冬でも内部は16度以上に保たれ、夏には10立方mの容量で8度に保てる太陽光冷蔵庫に牛や羊の肉が保存できる。

移動する時には、太陽光と風力で発電ができる牽引車により、バッテリーに充電をしておける。

内モンゴル自治区フフホト市の博洋可再生エネルギー社が、このような製品を製造して、遊牧民の生活を変えようとしている。

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▲断熱素材で作られた移動式住宅「ゲル」。太陽光と風力発電で電力を供給し、生活は大きく電化される。

 

草原は太陽光発電風力発電に適している

同社の技術責任者は内モンゴル日報の取材に応えた。「草原は日光が注ぎ、遮るものがありません。それに風も強いのです。新エネルギーには有利な条件がそろっています。太陽光発電風力発電が効果的であるばかりでなく、コストも安く、手間もかからず、環境にも優しく、設置や使用も簡単なのです」。

この発電により、水の汲み上げポンプ、羊の毛刈り機、粉砕機など、遊牧民の生活に必要な電気機器が使えるようになり、それまで手作業を強いられていた遊牧民の生活は大きく変わることになる。

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▲車で牽引できる太陽光、風力発電ユニット。ゲルの移動中にも充電ができ、バッテリーに蓄電をする。

 

シリコンが産出し、広い草原がある内モンゴル自治区

ウラド草原には、太陽光発電パネルの海原がある。約800ムー(約53.3ha、東京ドーム11個分)の太陽光発電パネルが敷き詰められている。内モンゴル自治区内モンゴル衆曜電力が設置したものだ。40MWpの発電能力があり、2.5万KWhの電力を供給している。内モンゴル自治区はシリコンの産出量が多いことを利用して、太陽光発電産業が成長している。

太陽光発電基地は、1時間から2時間に1回は人が巡回をする必要があったが、インターネットやドローン、人工知能を活用することで、巡回の負担は減少し、現在、この太陽光発電基地は2人の巡回員で運用できている。コストが下がるばかりでなく、トラブル率も減少している。

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▲ウラド草原に建設された太陽光発電基地。広さは東京ドーム11個分。ドローンが巡回をするため、2人の巡回員で運用できている。

 

内モンゴル自治区の特産品はポリシリコンと再生可能エネルギー

中国の「再生可能エネルギー中長期発展計画」によると、2050年までに太陽光発電を600GWにまでする計画だ。2050年には、25%が再生可能エネルギーとなり、その中でも5%分が太陽光発電となる予定だ。

内モンゴル自治区のポリシリコンの生産能力は2.2万トンであり、10万トンの生産能力まで拡大する計画が進んでいる。また、内モンゴル自治区は、太陽光発電基地を設置するのに適した土地が多いため、太陽光発電内モンゴル自治区の大きな産業になっていくことになる。

これまでは、漢方薬やきのこが内モンゴル自治区の特産物だったが、それに太陽光発電の電気が加わることになる。電気が豊富な内モンゴル自治区では、伝統的な遊牧民の生活も電化され、生活も大きく変わっていくことになる。

 

休日消費に起きている変化。キーワードは即時配送、到家サービス、家族

まぐまぐ!」でメルマガ「知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード」を発行しています。

明日、vol. 041が発行になります。

 

中国の新型コロナの感染拡大は、3月の頭には終息が見え、4月の頭にはほとんど新規感染者が出ない状況になりました。それ以来、小さなクラスターは起きていますが、第2波と呼べるほどの大きな感染拡大は起きていません。

世界で最初に新型コロナが感染拡大をした震源地でありながら、世界に先駆けて終息を迎えています。

それから半年、大きな打撃を受けた旅行業が復活をしています。10月1日の国慶節(建国記念日)と中秋節が重なり、8日までの8連休。金曜日の9日を休んでしまえば、11日間が休みとなるゴールデンウィークです。コロナ禍の影響もかなりなくなり、この大型連休は多くの人が旅行をすると見られていました。

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▲中国の新型コロナ新規要請者数(赤)。第2波と呼べる感染拡大は起こらなかった。ただし、空港検疫による海外からの流入と無症状感染者は現在でも散発的に確認される状態が続いている。

 

しかし、文化旅行部の発表によると、旅行に出かけた人は5.5億人でした。これは大きな数字に見えますが、昨年の国慶節での旅行人数が7.82億人ということを考えると、意外に控えた人も多かったようです。

日本の報道では、すっかりコロナのことなんか忘れて、三蜜三昧の観光旅行を楽しむ中国人という文脈での報道がされていますが、実際は意外に慎重なようです。

例えば、上海市を始めとする大都市の小中高校では、生徒学生に向けて、国慶節期間に省外などの長距離旅行にいかないように勧告をしています。もし、必要があって遠方に行った場合は、一定期間、帰宅後の自宅隔離を求めています。学校の教師や公務員の一部の職種でも、省外への旅行を制限しています。

文化旅行部は慎重な施策を打ち出していて、旅行者にはマスクの着用を求めています。また、各地の観光地には、最大収容人数の75%までしか観光客を受け入れず、ウェブでの事前予約制を実行することを求めています。さらに、観光地に入る時には体温測定を行い、発熱をしている人を入れないようにも求めています。

私個人も、この慎重さは少し意外でした。国内のコロナ感染は終息をしているとはいうものの、空港検疫ではまだ毎日10人程度の陽性患者が確認されていること、また、中国政府は現在「無症状感染者」の捜索に力を入れていて、数十人単位で見つかることもあることから、再燃させないことに神経を尖らせているのかもしれません。

各航空会社は、国際線が大幅減便になったため、国際線用機材を国内線に回して、国内乗客を獲得しようと、さまざまな割引キャンペーンを行いましたが、それでも、国内線空港利用者数は2019年の国慶節の86%と、大幅に改善はしたものの、まだまだ本調子とはいかない状況です。

 

観光地でもうれしくもあり、うれしくもなしという微妙な反応だったようです。それまで壊滅状態だった旅行客が戻ってきたことはもちろん何よりうれしいことですが、観光業は現状を「構造的な回復にすぎない」と見ています。

これまで旅行を我慢していた人が国慶節連休に集中をしたこと、海外旅行が全面禁止になっていること、旅行費用がかなり安くなっていること、地方政府が旅行クーポンなどを配布していることからの一時的な需要ではないかと見ているのです。全国1500以上の観光地が入場料を割引または無料にし、20以上の省政府が観光客向けのクーポンを配布しています。ホテルも相場の価格が3割も下がり、旅行にかかる費用は大きく下がりました。

そういう特典を利用して旅行をする観光客は、またきてくれるとは限らない。これで海外旅行が解禁になると、国内旅行は減少してしまうこともあるのではないか。そういう不安がある中で、7割回復というのはいかにも心許ないというわけです。

マッキンゼー中国が4月から8月にかけて調査した消費動向の調査では、「次に旅行に行く時期」を尋ねています。この回答によると、36%の人が国慶節と答え、それ以外の時期と答えた人はいずれも10%台でした。

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マッキンゼー中国の「次に旅行に行く時期」を尋ねたアンケート調査の結果。圧倒的に多いのが国慶節の大型連休だったが、人手は7割程度に止まった。

 

それだけでなく、旅行者側も楽しみ方を大きく変えているようです。例えば、博物館、美術館といった屋内観光施設の人気が下がり、西湖、外灘といった屋外観光スポットの人気が上昇をしています。入場予約を取るのが煩わしいのと、やはりまだどこかに感染の不安があるのだと思います。屋外スポットであれば、予約の必要もなく、人が過密になっていたら避けることもできる。そういうことではないかと思います。

それだけでなく、旅先での行動にも変化が生まれています。また、旅行にいかなった人は都市の中で連休をすごすことになりますが、そのすごし方にも変化が生まれています。日本でもGoToキャンペーンなどで旅行に行く人が戻り始めていますが、決して以前と同じ旅行の仕方ではないはずです。また、休日を自宅ですごす過ごし方もコロナ禍以前とは大きく変わったはずです。

中国で起きている変化が、そのまま日本でも起こるとは限りませんが、これからの参考にしていただければ幸いです。

今回は、中国の休日のすごし方に起きている変化についてご紹介します。

 

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上海にも生まれつつある中国版シリコンバレー。生活サービス系テック企業が集中

これまでテック企業が少なかった上海。しかし、拼多多の成功により、上海にもテック企業が集まり始め、環状のベルト地帯を作っている。上海のテック企業は、O2O生活サービステック企業が多い。上海にも「中国のシリコンバレー」が生まれようとしていると解放日報が報じた。

 

中国のシリコンバレーは中関村、華強北、西溪園

中国には「中国のシリコンバレー」と呼ばれるテック企業が集まる場所が何箇所かある。有名なものは、北京の中関村、深圳の華強北、杭州の西溪園などが有名だ。それぞれに特色がある。北京の中関村は電気街で、百度バイドゥ)などの成功例が登場してスタートアップのゆりかごとなっている。深圳の華強北も国際的に有名な電気街で、華為(ファーウェイ)などの成功により同じくスタートアップのゆりかごとなっている。北京がどちらかというとネット志向でソフトウェア寄りで人工知能のメッカになっているのに対し、深圳はプロダクト寄りで、ドローンやスマートフォンなどの製造、開発のメッカになっている。一方で、杭州はアリババを中心した企業が集まっている。

 

テック企業の空白地帯だった上海

一方で、上海には今までテック企業が少なかった。中国のIT革命が始まる前から、上海は金融と商業で発達をしていたため、端的に言えば家賃が高すぎて、スタートアップ企業が拠点を置きづらかったのだ。

実際、アリババも黎明期に杭州ではなく、上海に移転をする計画を立て、断念している。当時の杭州は、小さな地方都市にすぎず、ビジネスをするには高速バスで2時間ほどの大都市、上海の方が都合がいい。しかし、家賃の高さ、従業員の生活費の高さなどから断念をしている。

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▲上海で有名な浦東地区(右岸)。高層ビルが並ぶオフィス地区だが、家賃は高いため、テック系のスタートアップ企業はなかなか入居できない。多くは金融や一般ビジネスのオフィスになっている。

 

拼多多の成功により、上海にもテック企業が集まり始めている

しかし、ソーシャルEC「拼多多」(ピンドードー)の成功例が出たことにより、上海もテック企業の都市となり、中国のシリコンバレーのひとつが産まれようとしている。

拼多多は、SNSを使ってまとめ買いの仲間を募り、人数が集まるほど安く買えるというソーシャルEC。2015年9月に創業し、わずか3年後の2018年に米ナスダック市場に上場するという成功をし、その後も成長が続き、EC第2位の京東を時価総額、ユーザー数で抜き(流通総額は追い抜けていない)、第1位のアリババに迫ろうとしている。

 

上海は生活サービス系テック企業が集まる

この他にも、上海にはテック企業がなかったわけではない。有名なのは旅行予約サービスの「携程」(シエチャン、Ctrip)、即時配送の「美団」「ウーラマ」、若い女性に特化をし、インスタグラムとECを合体させたようなソーシャルEC「小紅書」(シャオホンシュー)などがある。また、アリババの新小売スーパー「盒馬鮮生」も本部を上海に置いている。

いずれも生活サービスに直結をしたテック企業が多い。これは自然なことだ。統計によると、ネットゲーム企業の40%、金融企業の60%、O2O生活サービスの70%が上海に集まっている。上海の豊かな物流、人材などのリソースを利用したテック企業が上海で育っている。北京や深圳、杭州とはまた違ったテック企業の都市になろうとしている。

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▲上海の主なテック企業。中心部を避け、外周部にベルト状に点在する。家賃が安い、空港や高鉄駅に近い、巨大倉庫に近いなどの理由で外周部に集中する。多くはO2O生活サービスで、上海独特のシリコンバレーになろうとしている。

 

中心部ではなく、外周部にベルト地帯を形成

しかも、面白いことに、家賃などのコストにより、上海市中心部ではなく、外周部に集中をしている。特に西側の集中地帯は、国内線の虹橋飛行場、高鉄の上海西駅が近く、国内各地へのアクセスがいい。さらに、上海のテック企業は、巨大な倉庫や物流拠点などを必要とすることが多い。郊外に近い場所に拠点を置くことで、地価の安い巨大倉庫を探しやすいのだ。

この一帯は、「ゴールデン産業ベルト」と呼ばれ始めている。ある研究者によると、この産業ベルトの中にある企業だけで、上海のGDPの80%を生み出しているとも言われる。

 

上海の物流、商業を活かしたテック産業が生まれている

北京には中国トップクラスの大学があり人材が供給できる。深圳には電子部品、電子機器が集まる。杭州にはアリババというテックジャイアントが登場した。だから、そこにテック企業やスタートアップが集まってくる。上海には、物流とビジネスがあり、巨大倉庫や物流拠点がある。だから、O2O(Online to Offline)生活サービス系のテック企業が集まってくる。

テック企業が集まる「シリコンバレー」は、地の利という理由があり生まれ、その都市が元来持っていた色彩を反映したものとなる。

 

 

生鮮ECがこぞって始めた半調理品「お惣菜」。実体スーパーはますます窮地に

実態店舗のスーパーが、コロナ禍の回復策として始めた半調理品「お惣菜」の販売は、すぐに生鮮ECに模倣をされることになった。生鮮ECを利用する消費者は、お金よりも時間を貴重と考えるため、このお惣菜が受け入れられている。そればかりか、数々の生鮮ECの課題を解決することになり、スーパーはますます窮地に立たされていると龍商網超市週刊が報じた。

 

客足を取り戻すための半調理品「お惣菜」

今年2020年の春節から感染拡大が始まった新型コロナにより、市場を大きく拡大したのが生鮮ECだ。野菜、肉、魚などの生鮮食料品をスマートフォンで注文をすると、1時間から2時間程度で宅配をしてくれるネットサービス。コロナ禍では需要が一気に3倍から7倍に増加した。

一方で、実体店舗であるスーパーは利用客の減少に苦しんでいる。新型コロナが終息し、客足は戻りつつあるものの、消費者の習慣が「買い物」から「スマホ注文」に変わってしまったケースも多く、以前と同じ賑わいが取り戻せるかは不透明だ。

そこでスーパーが対抗策として始めているのが「中国版お惣菜」だ。半調理品を販売し、それを自宅で温めたり、具材を追加して食べてもらうというもの。店舗に足を運ばなければならないという不便さの分、調理時間が短くなるという利便性で客足を取り戻そうとしている。

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▲実体店舗スーパーは、コロナ後の客足回復策として、半調理品の「お惣菜」の販売を始めた。ところが、これはすぐに生鮮ECに模倣されることになり、生鮮ECの課題を解決することになるという皮肉な結果になった。

 

生鮮ECの課題を解決するという皮肉な結果に

しかし、その動きを生鮮ECが見逃さないわけがない。生鮮EC各社は続々と半調理品の販売を始めた。

上海を中心にサービスを提供している生鮮EC「叮買菜」(ディンドン)は、注文ミニプログラムに「快手菜」というコーナーを新設し、宮保鶏丁、酸湯肥牛などの料理を冷凍した食品やザリガニ、サラダ、フライドポテトなどの半調理品などの販売を始めている。

この「中国版お惣菜」は、スーパーよりも生鮮ECに大きな効果をもたらした。生鮮ECの難題のひとつが、スーパーに比べて商品の種類を増やしづらいという問題だ。生鮮ECは短時間配送を実現するために、配送エリアの中に小さな倉庫を設置する「前置倉」と呼ばれる考え方を採用している。前置倉を多数配置することで、市内全域をカバーするというものだ。

しかし、前置倉のひとつの倉庫は大きくないので、扱える商品種類には限界がある。日常の生鮮食料品を買うには便利だが、少し変わった食材が欲しい時は、生鮮ECではことが足りず、大手スーパーの店舗に足を運ばなければならなかった。

しかし、半調理品が登場したことで、生鮮ECを利用している家庭の食卓メニューは広がり、同時に購入する食材の種類は少なくて済むようになる。生鮮ECだけで生鮮食料品の買い物が済むようになる。既存スーパーが考えたアイディアが、生鮮ECの大きな課題を解決してしまうという皮肉なことになっている。既存スーパーは、生鮮ECのこの動きに警戒感を強めている。

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スマホで食材を注文して、1時間程度で配達してくれるディンドン。お金よりも時間を惜しむ人たちに利用され、半調理品「お惣菜」が利用者から歓迎されている。

 

複雑な仕組みだからこそデジタル化が進む

既存スーパーは、今や生鮮ECや新小売スーパーの動向に敏感になっている。なぜなら市場を大きく蚕食されているだけでなく、このままでは伝統的なスーパーの経営が立ち行かなくなる可能性もあるからだ。

最も大きな脅威が価格だ。当初、生鮮ECの販売価格が安いことを、スーパー側は過小評価をしていた。市場を拡大するためのダンピング、品質の悪い生鮮食料品の安売りと見ていた。確かにそのような側面もあったが、生鮮ECは本質的に生鮮食料品を安く提供ができる。なぜなら、前置倉という複雑な仕組みを実現するには、商品を標準化し、クラウドで在庫管理をする必要がある。これにより、自然に無駄な管理コストが不要となり、販売価格を抑えることができるようになってきた。POSが複雑なチェーン形態であるコンビニから始まったことと似ていて、複雑な仕組みを実現するためにデジタル化をし、それが価格を抑えることにつながっている。

 

生鮮ECの痛点だった鮮度も大きく改善

もうひとつが、現在では生鮮ECの方が鮮度がいい生鮮食料品を買えるようになっていることだ。

当初は、生鮮ECが配達してくる野菜や魚には、鮮度が落ちたものが混ざっていたことも多かった。それに対して、クレームがあれば返金をすることで対応していた。しかし、生鮮ECを利用する上での最大の不安は鮮度であり、この鮮度問題を克服することが生鮮ECのキモであることは明らかであるので、各生鮮ECでは、物流から配達までの温度管理、商品品質の標準化、鮮度を維持する包装などに取り組み、現在では鮮度に対するクレームは少なくなっている。

一方のスーパーは、実は鮮度の管理については遅れている。売り場担当者が鮮度の落ちた商品を取り除いて廃棄をする、来店客が見比べて鮮度の高い商品を選ぶという伝統的な仕組みで鮮度を維持しているのが実情だ。もはや、生鮮ECとスーパーの鮮度面の違いは解消されている。

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▲ディンドンの「快手菜」コーナー。温めたり炒めたりするだけで調理が終わる半調理品やお惣菜が販売されている。これが商品種類を増やしづらい生鮮ECの課題を解決することになった。

 

生鮮ECを利用する人は時間を貴重だと考える

ディンドンや毎日優鮮などの生鮮ECは、このような半調理品を開発するにあたって、西貝や紫光園などのチェーンレストラン、伊賽牛肉、福成食品などの著名食品メーカーと提携をしている。

生鮮ECを利用する消費者は、お金よりも時間を重視する人たちだ。スーパーに買い物に行く時間が惜しいというのが生鮮ECを利用する動機になっている。同様に、自宅で料理を作る時間が惜しい、飲食店に食べに行く時間が惜しいと考え、このような半調理品が受け入れられている。

実体店舗を中心にしたスーパーは、大きな転換を迫られている。

 

オンライン活用で回復をする飲食店と商店。鍵は独自クーポンとオンライン予約

1月下旬に感染拡大が始まったコロナ禍も、5月末には90%以上の飲食店、商店が再開をし、日常を取り戻している。しかし、売上がなかなか以前のようには戻らず、苦戦をしている店舗もある。復活の鍵は、オンラインサービスへの対応になっていると上観新聞が報じた。

 

飲食店の回復の決め手はオンラインサービスの活用

生活サービスポータル「美団」(メイトワン)の調査によると、上海の飲食店の営業再開が進んでいる。すでに、6月時点で、黄浦、崇明、静安などでは、消費額が昨年を上回っている。

しかし、どの飲食店、店舗も同じように回復をしているわけではない。オンラインサービスをうまく使いこなしているところが昨年を上回る売上を上げ、店舗だけで営業再開をしているところは苦戦をしている。路面店はもはや路面店だけで生き延びることはできない。実体店舗も、オンラインサービスとうまく組み合わせていかないと生き残っていくことができないようだ。

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▲5月末には、ほぼすべての飲食店、商店が営業再開をしている。しかし、多くの店舗で、客不足に悩んでいる。

 

独自に割引クーポンを発行する店が増えている

最も単純なのは、独自に割引クーポンを発行することだ。中国各都市で、経済振興のため、食事券を配布または格安で販売されている。しかし、消費の押し上げ効果には限界がある。どこでも利用できる食事クーポンでは、多くの場合、元々消費せざるを得ない日常食の消費に使われてしまうからだ。投資効果が高いとは言えない。

一方で、各飲食店にしてみたら、飲食業全体の消費が伸びることよりも、自分の店に客がきてもらうことを切実に望んでいる。食事券は、有名店の売上を伸ばす効果はあるかもしれないが、街場の小規模飲食店の売上にはさほど貢献してくれない。

そこで、多くの飲食店は、美団、ウーラマなどの外売(フードデリバリー)プラットフォーム上で、独自のクーポン券の配布、販売を始めている。

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▲飲食店にとっては、もはや外売(フードデリバリー)に対応するのは当たり前。独自に電子クーポンを配布することも広く行われるようになっている。

 

割引クーポンは少額でも効果がある

ある安徽料理店では、ウーラマ上で2元として使える金券を0.01元で、1人4枚まで限定で販売をした。ポイント還元なども組み合わせたため、実質無料で購入できる。

これだけで、1日のデリバリー注文量が840件となり、ウーラマの上海小規模飲食店ジャンルのトップ5に入ることができた。

 

予約オンリーにし、フロントとレジを合理化

また、飲食店ではないが、上海市内に32店舗を展開するマッサージ店「小確幸」は、徹底した合理化で売上を伸ばしている。

小確幸では、どのマッサージ店にもあるフロントが存在しない。原則、美団アプリから予約をし、その場で決済をしてから、店舗に向かう。到着すると、担当するマッサージ師が直接出迎えてくれる。決済まで終わっているので、施術を受けて、終わったらそのまま帰るだけなので、フロントやレジが不要になっている。

また、マッサージ師も店舗に待機をしているのではなく、各店舗の来店客数に応じて移動をする。このような合理化により、どの店でも「予約が取れない」「待たされる」ということが極端に少なくなり、多くのリピーターが生まれている。

小確幸では、各店舗平均の1日の客数は60人以上で、面積あたりの売上では他のマッサージ店の6倍から8倍になっているという。

小確幸の臧継強会長によると、2016年9月に創業した時から美団と契約をし、オンライン予約を始めたという。現在、80%以上の予約は美団からのものだという。

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▲マッサージ店「小確幸」では、オンライン予約オンリーにしたため、フロントとレジが不要になった。オンライン予約前提で、出店計画なども進めているため、コストの大幅削減に成功している。

 

合理化を前提の出店計画

小確幸では、最初からマッサージ師のシェアリングを行う計画であったため、特定の地下鉄路線沿線のオフィスビルに出店をした。これなら、マッサージ師は地下鉄で店舗から店舗へと移動ができ、なおかつ大通りに面した商業ビルと比べて、家賃は1/4になる。

店舗の看板を見て小確幸にくる人よりも、美団アプリで探してくる人の方が多いので、多少の立地の悪さは問題にならない。

また、フロント、精算なども不要であるため、各店舗は10人未満のスタッフで運営ができている。

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小確幸を創業した臧継強会長。創業当時からオンライン予約を中心に、店舗計画などを組み立ててきた。それがコロナ禍を乗り切ることになった。現在、上海市内に32店舗を出店し、面積当たりの売上では他店舗の6倍から8倍になっているという。

 

コロナ後はオンライン化が必須になっていく

このような上海の生活サービス業のオンライン化率は2019年末で30.7%だった。今年はコロナ禍によりこのオンライン化率は大幅に上昇している。実体店舗は、もはや店舗だけで生き残っていくことは難しくなっている。オンラインによるプロモーション、合理化を行う必要に迫られている。

 

ポルノ表現コンテンツは人工知能が判定する。テンセント人工知能鑑定士の実力

SNSなどにアップロードされる画像、動画、音声には、暴力表現、ポルノ表現が含まれていることが想定される。これをチェックする作業は従来、人間が行っていた。しかし、現在では多くのSNSがテンセントの人工知能鑑定士を利用している。この人工知能は1日に1億件から10億件のポルノコンテンツを弾いていると文森特之剣が報じた。

 

アップロード画像のチェックも人から人工知能

中国のネットで見られるムービーや写真、音声に、いわゆるポルノコンテンツはまず存在しない。アップロードされるすべてのコンテンツは、鑑黄師と呼ばれる人たちが事前にチェックをして、問題のあるコンテンツは削除されるからだ。1人が、1日に1万枚の画像をチェックしているという。

しかし、その労力は過大で、人件費もかかることから、多くのECサイトSNS、動画共有サービスなどが、テンセントの人工知能鑑定士を利用している。この人工知能は、1日に1億件から10億件のポルノコンテンツを弾いているという。

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▲従来は、アップロードされる画像、動画は鑑黄師と呼ばれる人が判定をしていた。ストレスのかかる作業だった。

 

人工知能が確率算出、人が最終チェック

このテンセントの人工知能鑑定士は、テキスト、写真、動画を機械学習により、「正常」「セクシー」「ポルノ」の3種類に分類し、その確率を算出する。サービスの運用ポリシーにもよるが、一定確率以上の「セクシー」に関しては年齢制限を、「ポルノ」に関しては拒絶をし、一定確率以下のものだけを人間の鑑黄師が判別すればよくなる。

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▲男女の抱擁も、肌の露出度が高い場合は「セクシー」と判定される。

デモは以下のURLから試すことができる。

https://ai.qq.com/product/yellow.shtml

 

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▲下着姿の女性は「セクシー」と判定される。



画像の「文脈」も理解して判定

この人工知能の学習はかなり進み、単なる肌の露出の多いものをポルノと判定するわけではない。例えば、ビキニの水着をきた女性は「セクシー」と判定されるが、ジムでトレーニングする女性は「正常」と判定される。肌の露出の多さだけではなく、着ているものの種類、周辺の状況なども学習をしている。

また、特定の要素に注目をするようにもプログラムされており、例えば女性の胸の谷間などに注目をして、それが正常(ナイトドレスなど)なのか、セクシーなのかポルノなのかを判定する。

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▲左の水着の女性は「セクシー」、右のトレーニングする女性は「正常」と判定された。肌の露出度だけでなく、写真の文脈で判断をしている。

 

判定が難しい感情に訴える表現

さらに、学習が難しかったのは、人の感情表現だったという。例えば、服は着ていても、思わせぶりなポーズをとり、誘惑をしているという状況を学習をするのには試行錯誤が必要で、時間がかかったという。

また、動画に関しては音声トラックに着目することで大きな効果を上げている。これは人間の鑑黄師が、動画そのものよりも音声トラックの「あえぎ声」に注目して判定をするテクニックから、人工知能にも音声に注目して学習をさせた。しかし、人工知能は「あえぎ声」と苦痛による「うめき声」を判別できるようになるまでには、やはり試行錯誤が必要だったという。

結局、テンセントの開発チームは、ポルノ音声コンテンツを1000時間分集めて、学習させる必要があった。

 

誰でもデモを試すことができる

この人工知能のデモは、ウェブで誰でも試すことができるようになっている。用意されている画像を判定させることも、自分の写真を判定させることもできる。

実際に試してみると、この人工知能の優れた点と課題が見えてくる。

素晴らしいのは、男女がキスをしている写真は「セクシー」と判定されるが、親子がキスをしている写真は「正常」と判定されることだ。同じキスであっても、文脈で違いがあることを理解している。

また、裸の彫刻作品なども「正常」と判定される。

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▲男女のキスシーンは「セクシー」と判定されるが、親子のキスシーンは「正常」と判定される。

 

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▲裸体であっても、彫刻の場合は「正常」と判定される。

 

人間が錯覚する写真は、人工知能も錯覚する

一方で、課題もある。ポルノではないが、一瞬ポルノに見えてしまう錯覚写真がネットには流通している。1枚はありふれた男女の写真だが、女性の手袋が、色や飾りの関係で一瞬男性器に見えてしまう写真がある。人工知能はこれは正常と判定した。

また、同様の錯覚写真で、女性の胸が露出しているかのように見えてしまう写真がある。実は胸ではなく、ひざだが、これは「セクシー」と判定された。

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▲手袋とその飾りが男性器に見え、一瞬びっくりしてしまう錯覚写真。人工知能は「正常」と判定した。

 

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▲女性の膝が露出した乳房に一瞬見えてしまう錯覚写真。人工知能は「セクシー」と判定した。

 

芸術がポルノと判定されてしまう課題

さらに、裸体を描いた芸術作品も「セクシー」と判断された。彫刻の場合、「正常」と判断されたのは、色などから彫刻作品と判断されたのだろう。しかし、絵画の場合は「セクシー」になった。芸術作品だからポルノ表現は許されるのか否か。ただのポルノ作品を芸術と言い張れば流通させていいのか。人間が悩んでいる問題を、人工知能も同じように悩んでいるようだ。

また、大相撲の写真も「セクシー」と判定されてしまった。「裸の人間が2人いる」ということに問題があるのだろう。

このような課題はあるものの、多くのサイトがテンセントの人工知能鑑黄師を利用し、ポルノコンテンツを弾いている。

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▲裸婦の名画は「セクシー」と判定されてしまった。

 

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▲日本の大相撲も「セクシー」と判定された。

 

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  • 発売日: 2020/10/15
  • メディア: おもちゃ&ホビー
 

 

上海に無人キッチンカーが登場。地下鉄駅前にやってくる走る朝食自販機

上海市無人キッチンカーが登場して話題になっている。朝食を満載した自動運転車がやってきて、自動で地下鉄駅前に止まり、スマホで決済して、取り出すというもの。3ヶ月以内に200台が投入されると中国新聞網が報じた。

 

地下鉄出口に無人キッチンカー

この無人キッチンカーが登場したのは、上海地下鉄2号線の金科路駅の出口前。ラックは透明になっており、上部のモニターパネルをタッチして購入する。スマホ決済をすると、ドアが開き、朝食を取り出すことができる。

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▲地下鉄出口に停車をして、お客を待つ。出社する前に朝食を買って、近所の公園やオフィスで食べる人が多いため、売上は期待ができる。

 

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▲表示されているのは、WeChatミニプログラム用の二次元コード。読み込むと、無人キッチンカー専用のミニプログラムが起動し、注文や決済ができるようになる。

 

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スマホ決済をすると、ドアが開いて、朝食を取り出すことができる。

 

公園、エンタメ施設に導入されている走る自販機

この無人キッチンカーは、新石器科技が開発したもの。飲料、軽食などがスマホ決済で購入できる「走る自動販売機」として、各地の公園やエンターテイメント施設で使われ始めている。新石器科技では、江蘇省常州市に年間生産台数3万台の工場をもち、フル稼働に向けて計画を勧めている。

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▲自然公園などに導入されている新石器科技の走る自動販売機。走行中に手を振ると、目の前に止まってくれる。スマホ決済で、飲料などを買うことができる。

 

立地で劣る飲食店の売上拡大が期待できる

上海のキッチンカーは、この走る自動販売機を食事用に改良したもの。新石器科技としては、初めて公道を走行する自動運転車になる。

朝昼晩の1日3回、キッチンで食事を作り、それを積載して、売れそうな場所に自動運転で向かう。1回に200食分を積載できる。販売時間が過ぎると、自動でキッチンに戻ってくるので、清掃、消毒などを行うというものだ。

新石器科技によると、3ヶ月以内に200台を上海に投入し、年内に1000台を全国展開するという。

飲食店の多くは、食事時間になると、店の前にワゴンを設置して、軽食などを販売することは日常的になっている。あるいは、キッチンカーを用意し、大学や企業の前など人通りの多い場所で販売をする。これが自動化、無人化されることになる。

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▲新石器科技が開発した無人キッチンカー。飲料などの走る自販機は、すでに公園やエンタメ施設に導入されている。

 

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▲スタッフが商品を補充、あとは指定された場所に、キッチンカーが自動走行していく。

 

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▲出発するキッチンカー。公道を走行する走る自販機は、新石器科技としても初めての挑戦になる。