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独身の日セールでも売れない!消えゆくタオバオ村

独身の日セールは、中国の社会課題を解決することにも寄与してきた。それは農村の貧困問題だ。現金収入がない農村に、インフラを整備することで、農産物の加工や服飾品などの製造工場を誘致する。アリババはこの「タオバオ村」プロジェクトを支援してきたが、近年、伸び悩み、むしろタオバオ村は減少する傾向にあると棉棉網が報じた。

 

農村の貧困を解決するタオバオ村プロジェクト

中国では、農村の貧困問題をいかに解決するかが大きな社会課題になっている。アリババがこの問題に対して打ち出したのが「タオバオ村」だ。ECサイトタオバオ」で販売する服飾品、電気製品、玩具、農産品などを農村で生産させて、それをタオバオで販売しようという計画だ。アリババがネットインフラやEC販売のノウハウなどを支援している。

これにより、タオバオで販売される商品の品揃えを豊かにし、同時に地方の農村の経済を活性化させる。そういう目論見だった。

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▲数年前はタオバオ村がブームとなり、農村はこぞってタオバオ村に名乗りを上げた。豪邸を建てるタオバオ長者も生まれるなど、一時は農村の経済を潤わせたが、現在は、どのタオバオ村も経営が難しくなっている。

 

タオバオ村は180万人の農民に仕事を与えた

この目論見は、当初目覚しい成果をあげた。すでにタオバオ村は3202村になり、タオバオ村の売上は2200億元(約3.6兆円)に達している。これは農村地域のネット販売売上額の10%にあたる。タオバオ村関連の出店数は66万店舗になり、180万人が従事をしている。現金収入が少ない農村に、現金と仕事をもたらした。

成都市郊外のあるタオバオ村は、成都市に近く出荷がしやすいこともあり、多数の服飾業者がこの村にやってきて、製造拠点を作った。2014年にはアリババから、タオバオ村の成功例としてたびたび取り上げられるほどだった。この村の人口は2000人ほどだったが、700以上もの服飾製造業者が集まり、70以上のタオバオ店舗が開業された。村は一気に活気に溢れるようになった。

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▲全国で、タオバオ村によって180万人の新たな雇用が生まれた。

 

タオバオ村が過剰になり、競争が始まっている

ところがそれから4年後。村は静まり返っている。ある生産工場では、11月11日の独身の日セールの時期直前でも、数千本のズボンを生産しただけだった。セール以外の時期には注文がまったくなく、生産を停止している有様だという。他の生産工場も似たような状況で、多くが閉鎖、移転してしまったという。

ある業者は、今年の11月11日独身の日セールに賭けていたという。昨年の2倍の注文は取りたいと、営業活動に動いていた。しかし、終わってみると、昨年の1/3程度しか売れなかった。

理由は簡単だ。タオバオ村が年々増え、同品質、同価格帯の商品が一気に増えたため、競争が厳しくなってきたのだ。

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成都市近くの農村のタオバオ村生産工場。現在はひっそりとしている。

 

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▲数年前は、この通りも多くの業者が行き交う賑やかさがあったが、今はひっそりとしている。

 

独身の日セールから脱落を始めているタオバオ

棉棉網の記者が、この村を調査してみると、営業を続けている業者は約400店だった。4年前は700以上の業者がいたのだから半減していることになる。残っている業者も、タオバオで販売することをあきらめ、近隣の服飾市場に直接販売をしている。

独身の日セール全体では、毎年売上が大幅に伸び、年々盛大になっている。しかし、地方の農村は、その波から脱落をし始めている。豊かになるのは、農村はいつも最後で、貧しくなるのは、農村はいつも最初なのだ。

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タオバオ村のスローガンのひとつ。「自宅でネットに店舗を開けば、家庭と仕事を両立できる」。

 

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▲同じくタオバオ村のスローガン。「外で東奔西走するよりも、自宅でタオバオをやった方がいい」。

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独身の日セールの返品率は25%?限界にきている11月11日

11月11日独身の日セールは、今年も数々の記録を更新して大成功に終わった。しかし、一方で、大幅値引きにより利益は圧縮され、返品率が高まり、販売業者、宅配業者の間には根を上げるところも増え始めている。セール期間の返品率は25%に達するのではないかと開淘が報じた。

 

10年で70倍に成長した独身の日セール

11月11日の独身の日セールは、今年も多くの記録を更新して終わった。国家郵政局の発表によると、11月11日だけで全国の宅配便受付は13.52億件に達し、昨年よりも25.12%増加した。宅配企業が期間中処理した宅配便件数も1日平均4.16億件となり、これも昨年よりも25.68%増加した。

独身の日セールは今年で10年目にあたる。2009年の初回のセールでは宅配便件数が584万件だったので、10年でなんと70倍に増加したことになる。日本の年間宅配便件数は40.18億件。つまり、日本の4ヶ月分程度の宅配便が1日で発生していることになる。

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▲独身の日は、アリババだけが得をする日になりつつある。

 

すでにカラクリが透けて見え始めている

この独身の日セールは「爆買い」「中国人の旺盛な消費欲」と語られることが多いが、10年目に入って様相はかなり違ってきている。

なぜこの日に多くの中国人がECサイトで買い物をするかというと、お得だからだった。セール以前には大量のクーポンが配布され、当日は多くの商品が大幅値引きされる。つまり、普段から欲しいものがあっても、セールまで我慢をして買っているようなところがある。

ところが、近年は、独身の日セール以前にいったん値上げをして、そこからセール直前に値引きをし、値引率が大きいように偽装する手法が横行している。クーポンも「500元購入で、200元割引」というものが多く、割引特典を得るために、不要なものまで買って、合計金額を割引が得られる金額にするケースも多い。結局、無駄なものまで買ってしまっているのだ。

すでに多くの消費者がそれに気がついていて、セール当日を冷ややかな目で迎えている人も増えてきている。

 

ここ数年、返品率が急激に上昇をしている

その中で、上昇しているのが返品率だ。クーポンなどがどんどんもらえるので、ついつい買ってしまうが、届いてみたら、安くもないし、欲しいものでもない。それで返品をする人が増えているという。

昨年の独身の日セールでは、アリババのタオバオが912億元の売上を上げたが、そのうちの574億元分の商品が返品されたというデマが流れた。このようなデマがまことしやかに信じられるほど、多くの人が返品をしたいという気持ちが強くなっている。

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▲独身の日セール期間中の仕分けセンター。日本人の感覚では、「ひどいありさま」にしか見えないが、処理能力をはるかに超えた荷物を扱うため、仕方のない状況でもある。

消費者保護政策が整備され、返品率は25%とも

独身の日セールに参加して3年目になる服飾品販売業の営業責任者が新金融観察の取材に応えた。「通常の返品率は10%程度ですが、独身の日では30%に達する可能性もあります。ですが、この数字は業界内では低い方だと思います。返品率50%という数字を見たことがありますから。服飾品は返品率の高い商品なので、返品率を織り込んで価格設定をしています。化粧品や玩具などは返品率が比較的小さいですね」。

服飾品関連では「理由を問わず7日以内は無料返品」をうたっている業者が多い。ECサイトで購入するときはサイズ感がよくわからず、色合いや素材感も実物を見ないとはっきりしない。そこで同じものを複数サイズ、複数色を購入して、不要なものを返品するという買い方をする人が増えている。新金融観察記者の業界人に対する取材の感触では、独身の日セール全体の返品率は25%前後になっているのではないかという。

ECサイトが始まった頃、消費者は粗悪品をつかまされても泣き寝入りするしかない状況だった。そのため、弱い立場である消費者を保護するため、政府は「ネット交易管理法」「工商行政管理部門消費者クレーム処理法」などの法律を整備して、消費者保護政策を進めてきた。そのため、現在では消費者は気軽に返品をすることができるようになった。しかし、業者の間からは「立場は逆転している。業者の方こそ保護してほしい」という声が上がっているという。

 

セールでしか買わない消費者、セールでしか売れない業者

さらに問題なのが、セール終了以後の期間だ。独身の日セールに参加した業者はほぼ1ヶ月、まったく売れない状況が続くという。さらに、今では12月12日のセールや京東の6月18日のセールも行われている。この度に、価格を下げることを強要され、その他の期間は商品が売れなくなる。そのため、商品が動かない平常時には、あえて高めの価格設定にしておき、セール直前になって適正価格に戻し、大幅値引きをしたように見せて、セール期間にすべてを売り切ってしまうような業者が増えてきている。消費者も、業者のこのような思惑をわかっているので、ますますセールにしか物を買わない人が増えていく。

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▲宅配配達員は、通常時は1日100個程度の荷物を戸別配送するが、独身の日直後は毎日300個を配送しても処理が追いつかないという。さらに、25%の商品が返品をされ、逆方向の配送が発生するため、宅配物流は大混乱に陥る。当然、破損、紛失のトラブルも続出する。

サバイバルできるのは資本力のある大手のみ

大手ブランドは、価格を下げ、利益が圧縮されても、そのブランドの認知度が広がるためセールでの値引きは意味がある。しかし、中小のブランドや業者にとって、独身の日セールは頭の痛い問題になってきている。

であれば、ECサイトから離脱すればいいじゃないかと思うが、もうそうはいかない。中小業者にとって、ECサイトから離脱するということは販路を失うということで生きていけない。利益がいくら少なくなろうとも、ECサイトに出店をして、セールに参加せざるを得ないのだ。

独身の日セールが始まって10年。毎年、販売額を更新し続けて成長をしてきたが、もはやアリババしか得をしない日になっている。従来型のセールは、もはや限界にきている。

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アリペイの返済日はなぜ毎月9日なのか?

QRコード方式スマホ決済「アリペイ」には、ツケ払い、リボ払いに相当する機能「花唄」がある。借金をして「先消費、後払い」を可能にする仕組みで、翌9日までに返済をすれば、利子手数料はかからない。この花唄の返済日はなぜ9日に固定されているのか。藍汪叽嗨が解説した。

 

入れておくだけで利息がつく余額宝

中国で普及するQRコード方式のスマホ決済「アリペイ」と「WeChatペイ」。現金を持つことなく、スマートフォンさえあればほとんどの店で支払いができる利便性により急速に普及をした。しかし、スマホ決済が普及をしたのは、決済の利便性だけではない。

大きいのは余額宝(ユアバオ)というサービスだ。資金をこの余額宝に預けておくだけで、4%程度の利息がついてくる。利息は日々変動し、以前は6%を超えている時もあった。中身はMMF(公社債投信)で、個人で直接銀行で買った場合は、金額が小さいのでたいした利息にならないが、運営するアリババ系列の天弘基金という証券会社が余額宝の資金をまとめて銀行に再投資するため、高い利息を得ることができる。天弘基金は銀行から得る利息と、余額宝に支払う利息の差額から利益を得ている。利用者にとっては、入れておくだけでお金が増えていく財布のようなもので、これがアリペイを使う魅力のひとつになっている。

 

クレジット機能が利用できる花唄

もうひとつは、やはりアリババ傘下のアントフィナンシャルが運営する花唄(ホワベイ)だ。これはクレジットカード機能のようなものだ。支払いや買い物をするときに、アリペイの残額から払わなくても、あらかじめ決められた花唄のショッピング枠から支払うことができる。毎月9日が返済日になっていて、その日に精算をすれば利子や手数料は一切かからないというものだ。

ショッピング枠があれば、今現在アリペイの残高が足りなくても買い物ができることから「先消費、後払い」という新しい消費スタイルを生み出している。もし、9日に返済しきれない場合は、アリペイの中で簡単に分割払いに変更することができる。ただし、この場合は利子を取られることになり、これがアントフィナンシャルの利益になる。つまり、花唄は「残高が足りなくても、利子なしで買い物ができる」ということを誘い水にして、分割払いに誘導して利子を取るというビジネスなのだ。日本のクレジットカードにある分割払いやリボルビング払いと似た機能をアリペイに加えることができ、このような利便性も多くの中国人がアリペイを使う魅力のひとつになっている。

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▲アリペイの中から利用できる花唄。今、59.58元の借入金があり、ショッピング枠は9940.42元になっている。返済ボタンから一括返済をすると、ショッピング枠が増える。分割払いを選択すると、分割回数に応じて利子がかかることになる。クレジットカードの機能がアリペイの中で実現できている。

 

手元が寂しい時に返済させることで、分割返済に誘導

この花唄の返済は簡単で、毎月9日に、アリペイの残高を返済額以上にしておけばいいだけだ。返済日になると、アリペイ残高、余額宝残高、銀行口座残高の順に自動的に引き落としをしてくれ、それでも不足する場合は、自動的に3ヶ月払いから12ヶ月払いまでの分割返済に変更してくれる。

しかし、なぜ、返済日が毎月9日に固定なのだろうか。それは給与支払日と関係がある。中国の給与支払日は、各企業によって異なるが、統計によると20%が10日以前で、60%が10日から20日、20%が20日以降になる。つまり、9日には80%の人が給料日前ということになり、いちばんお金がない時期なのだ。このときに花唄の返済日がくるのはけっこうつらい。そこで、利子のかかる分割払いに変更する人が増える。

つまり、アントフィナンシャルは返済日を9日に設定することで、利益を最大化できるのだ。

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▲クレジット機能は、アリペイの「花唄」、ECサイト京東の白条、クレジットカードの3種類が主なもの。しかし、国際クレジットカードが使える場所は多くなく、銀聯のクレジット機能をつけるにも審査が必要になる。花唄は、芝麻信用の信用スコアが極端に低くなければ、簡単にスマホから利用できる。

 

返済してショッピング枠が最大になると購買欲が増加する

また、花唄のショッピング枠は500元から5万元の間で、各個人の信用度に応じて決められるが、11月11日独身の日のセール直前などでは、キャンペーンとして花唄のショッピング枠が臨時にあがる。11日11日のセールは、多くの中国人にとって給料日前であり、あまり購買欲が強くない時期だが、花唄のショッピング枠が突然大きくなることで、購買欲を刺激し、かつ花唄の利用率を上げることができる。

花唄を使い、きちんと返済をすると、信用スコアである芝麻信用(ジーマクレジット)のスコアが大きく上がる。信用スコアがあがると、花唄のショッピング枠も上昇をしていくという仕組みになっている。

中国のITサービスにはすべてのことに意味がある。返済日を何日に設定すれば、利益を最大化できるか。そういうことを必死で考えているのだ。

 

続々と登場するスマート駐車場ビジネス。カギは無人化とデータ化

中国の都市部では圧倒的に駐車場が足りていない。このまま放置をすると、成長する自動車産業に水を浴びせかねない。そこで、駐車場問題を解決するさまざまなスタートアップに投資が集まり、さまざまな企業が生まれていると物聯世界が報じた。

 

駐車場が足りないのに自動車は売れ続ける

中国都市の深刻な慢性疾患。それは駐車場不足だ。多くの人が、自分の車で出かけると駐車場探しで煩わしい思いをしたことがあると答える。滴滴出行のようなライドシェアが普及したのも、駐車場不足が大きく影響している。

駐車場不足はあまりにも深刻なので、それを嫌って自動車の売れ行きが頭打ちになりそうだが、そうはならない。自動車は今でもよく売れ、増え続け、さらに駐車場不足問題を深刻化させている。

大都市ではすでに自動車を嫌って、「自動車のないライフスタイル」を採る人が若年層を中心に増え始めているが、地方都市ではまだまだ「自動車を持つことが夢」と考える人が多い。駐車場不足は大都市でも深刻な問題だが、地方都市では路上駐車が増え、深刻な自動車渋滞の原因となっている。

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▲たびたび話題になる成都市の駐車場。500平米のスペースに70台が止まっている。パズルのような状況になっていて、1台を出すのに大騒ぎになることも多い。


3台に1台が駐車ができない!

公安部の統計によると、2017年末で自動車は2.17億台。免許保有者は3.42億人。2017年に新規登録された自動車は2813万台で、史上最高となった。保有台数が100万台を超えている都市は全国に53あり、200万台を超えているのが24都市、300万台を超えているのが7都市ある。

駐車場の不足率は常に50%を超えていると推計される。つまり、2台の車が駐車をしていると、1台の車は常に駐車場を捜してうろうろしていることになる。

駐車場ビジネスは好調で、中国の1級都市、2級都市の市場規模は4200億元(約6.9兆円)に達し、2021年には1兆元(約16.5兆円)を突破すると見られている。このうち駐車場収入が7800億元(約12.8兆円)、パーキングメーターが2000億元(約3.3兆円)になると予測されている。

この市場を狙って、スマート駐車場関連のスタートアップが続々と生まれている。

 

捷順科技:AIスマートパーキング

捷順科技(ジエシュン)は、早くから駐車場ビジネスを手がけており、スマート駐車場やスマートドアロックなどを提供している。2018年2月、アリババ系のアントフィナンシャルが2億元(約33億円)を投じて、捷順科技の子会社の順易通信科技と、スマート駐車場システムを共同開発をした。

すでに港珠澳大橋珠海道路で、スマート駐車場を開業している。18のゲートがあり、2500台が駐車できる。無人ゲートで、ナンバーを自動読み取りし、顔認証でオンライン決済が可能。2018年前半の収入は134万元に達し、昨年同時期よりも653.41%も増加した。

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港珠澳大橋珠海道路のスマート駐車場。料金所はあるが、原則的に無人。ナンバー読み取りと顔認証で、管理をする。2500台が駐車できる。

 

唯伝科技:ゲート、料金所不要のスマートパーキング

2012年8月に創業した唯伝科技(ウェイチュアン)は、IoTによるスマート機器を提供し、駐車場だけでなく、エネルギー、農業、畜産、金融などの分野に、クラウドシステムKitLinkを提供している。

駐車スペースに磁力で車両の有無を判別するIoT磁力センサーを設置することで、駐車場の空きスペースの数と場所を把握し、専用アプリを使うことで、運転手が自分で駐車料金を決済する。料金所のようなものは設ける必要がなく、運転手もそのまま駐車場に入って、空きスペースに勝手に駐車をすればいい。車を出すと、駐車時間が自動計算され、それに応じた料金がスマホ決済から自動的に徴収される。

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▲駐車スペースに車両センサーを埋め込み、専用アプリから料金を支払う。運転手は、空いているスペースに車を止め、用事が済んだら出発するだけ。料金は自動的に決済される。登録をしていない人が止めた場合は、すぐに公安に通知が飛び、駐車違反の切符が切られる。

 

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▲画像解析により、どの駐車スペースが空いていて、何台止まれるかがリアルタイムでわかる。場内で空きスペースに誘導をしたり、地図アプリに対してAPIを公開し、地図アプリから空き駐車場を検索できるようになる。

 

艾科智泊:スマートパーキングメーター

艾科智泊(アイカジーボー)は、道路上の駐車スペースに、磁力センサーを埋め込んだスマートパーキングメーターを提供している。パーキングメーターは、ネット接続されているため、アプリから空いている駐車スペースを検索できる他、管理側では料金を支払わずに駐車していることも把握ができる。

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▲道路に設置されるパーキングメーターも磁力センサーを使い、完全無人化される。人による管理が不要になると、24時間利用できるようになるのが魅力だ。こちらも、勝手に止めた場合は、すぐに公安に通知が飛び、駐車違反として処理される。

 

無人化をすることで24時間営業が可能になる

この他にも、各都市、各地方に同様のテクノロジーを活かしたスマート駐車場ビジネスのスタートアップが続々と登場している。スマート駐車場が狙っているのは2つだ。

ひとつは無人化をすること。無人化をすることにより、人件費の削減を狙うのではなく、24時間365日営業を実現する。以前の中国は夜11時を過ぎると、街には人がほとんどいなくなっていたが、今の大都市は不夜城になりつつある。レストランやカフェも朝方まで営業している店が増えてきたし、24時間コンビニも当たり前になってきている。駐車場を24時間営業にすることで、自動車の利用時間帯を分散させることができる。駐車スペースを有効利用することができ、道路の渋滞もわずかではあるが緩和させる効果がある。

 

データ化することで、空き駐車場への誘導ができる

もうひとつは無人化をするためにセンサー類を使うため、リアルタイムで空きスペースの把握ができるようになる。駐車場管理会社は、空きスペースを把握することで、立体駐車場などでは電光掲示板により駐車スペースへの誘導ができるようになり、駐車場内での接触事故を減らすことができる。

さらに、この空きスペースデータは、多くの駐車場がAPIを公開しているため、地図アプリなどから「付近の空き駐車場」を検索できるようになりつつある。運転手の利便性が上がるだけでなく、駐車場を探してうろうろしている自動車を減らすことで、渋滞を緩和させる効果もある。

 

成長する自動車産業をさらに成長させる鍵が駐車場問題の解決

中国の自動車熱はまだまだ高く、地方都市を中心に自動車が売れているが、この駐車場問題が足かせとなって、大都市では「若者の車離れ」が始まっているという報道もある。自分の車を持つよりも、ライドシェア、レンタカー、シェアカーを使いこなすライフスタイルを都市の若者たちは選択するようになっているというのだ。だとすると、駐車場問題が自動車産業の成長を阻害することになりかねない。そのため、今、スマート駐車場分野への投資が増えている。しばらくは、スマート駐車場がホットな領域になりそうだ。

 

BATの投資は協調と敵対。スタートアップ企業の企業価値が急速に膨らむ理由

中国IT企業の御三家BATは、有望なスタートアップに投資をする。BATが協調をして投資をする例も多い。しかし、そのスタートアップが成長してくると、自社経済圏に取り込もうと、巨額の追加投資を行い傘下に置こうとする。これがスタートアップ企業の企業価値を急速に膨らませる要因のひとつになっていると、界面が報じた。

 

スタートアップの成長を決めるBATの投資動向

中国のIT業界では、BATという言葉がよく使われる。IT業界のリーダー企業である百度バイドゥ)、アリババ、テンセントの頭文字をとったものだ。百度は検索広告や自動運転車開発、アリババはECサイト、アリペイ、テンセントはゲーム、WeChatペイなどの本業があるが、IT系スタートアップにも積極的に投資をしている。中国の投資家たちは、BATの投資動向に敏感で、「BATが投資した」ということがそのベンチャー企業の成功が約束されたかのように感じ、BAT投資企業には巨額の投資資金が集まるようになる。

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▲通信キャリアの中国聯通に対しては、BAT3社が同額の投資を行っている。


アリババとテンセントが投資をしていたウーラマ

BATの投資は、基本的にはベンチャーキャピタルと同じで、ベンチャーの成長に伴い利益を上げようとするものだ。そのため、BATが同時に同じ企業に投資をしているケースも多い。利益を上げることが目的なので、BATがぶつかる理由はどこにもない。むしろ、余計な摩擦を起こさないために、BATが同額の投資を同時に行うことも多い。

ところがBATはベンチャーキャピタル企業ではなく、本業がある。本業とのシナジー効果が見込める企業は、他のBATを排除して、支配下に収めたい。その例が外売サービスの「餓了解么」(ウーラマ)だ。

ウーラマに対しては、アリババとテンセントが2015年に3.5億ドルずつ、8月には6.3億ドルずつ投資をしている。食料品や飲料を各家庭に配送するウーラマのサービスは、アリババにとってもテンセントに取っても重要だ。アリババは新小売宅配スーパー「フーマフレッシュ」を中心に新小売戦略を展開し、テンセントも直接運営はしていないものの出資先のEC「京東」、チェーンスーパー「永輝」を通じて、アリババに対抗をしている。

ウーラマは両社にとってぜひとも欲しい企業なのだ。そのため、アリババ、テンセントがそろって同じ時期に同じ金額の投資をしていた。両者の綱引き状態にあった。

ところが、2016年にIPOの準備資金としてアリババが12.5億ドルの投資をし、ついには2018年4月に、アリババが95億ドル(約1兆円)で買収をした。

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▲アリババとテンセントの協調投資は、エンターテイメント分野が多い。

 

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百度とテンセントは、自動車関連スタートアップに多く協調投資している。

 

 

協調投資から敵対投資へ

BATの複数が同じ企業に投資をしている場合でも、同じ金額というケースが多い。利益を目的に投資をしているので、どちらが主導権を握るかで無駄な争いをしたくないために協調的に投資をしているのだ。

しかし、本業とのシナジー効果が得られると判断すると、支配下に収めようと多額の投資が始まり、他社も対抗して投資をするということから、中国のスタートアップやベンチャー企業価値は急速に大きくなっていく。スタートアップ企業側も、そのような事情はよく知っていて、BATを天秤にかけるようなことをして資金を確保している面もある。

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百度とアリババが協調投資している例はさほど多くない。

 

自動車関連、娯楽関連で始まっているBATの水面下の綱引き

現在、百度とテンセントが投資をしている企業には自動車関連が多い。また、アリババとテンセントでは映像や娯楽関係が多い。つまり、自動車と娯楽分野で、BATの静かな戦いが始まっているということだ。BATがベンチャーを自社のビジネスに組み込むため経営権を握ろうとした時、そのベンチャー企業価値は一気に膨らんでいく。もちろん、ベンチャー経営者もそれを狙っているだろう。

一方で、このような政治的なことを好まないシェアリング自転車のofoは、経営権を維持するために極力BATの資金を入れないようにしている。そのため、サービスは好評なのに、経営が苦しくなるという窮地に立たされている。中国のスタートアップ、ベンチャー経営は、優れたサービスの構築だけでなく、このようなBATの海を泳ぎ切る技術も必要とされるようだ。

 

京東が天津市に無人レストランを開店。ロボットが作る料理の味はプロ級

ECサイト「京東」が、天津市無人レストランをオープンした。従来の無人レストランはレトルト食品などを電子レンジで調理するものだったが、この「京東X未来レストラン」は、ロボットが名シェフの調理方法を再現して、中華鍋で調理をする。味のよさからリピーターが生まれそうだと文芸家青年が報じた。

 

・調理もロボット化された「京東X未来レストラン」

10月29日、京東(ジンドン)が天津市の浜海新区の新生態商業街に無人レストラン「京東X未来レストラン」を試験的にオープンした。店舗面積は400平米で、客席は最大100席。注文から調理、配膳、会計などのすべてが無人化されている。

注文は店内のタブレットか、スマホ決済アプリ「アリペイ」「WeChatペイ」のミニプログラムから可能。現在は、10元、20元、30元の3種類の価格の料理、40種類が提供されている。

配膳は、専用のロボットカート。自動的に目的のテーブルまで行き、料理が受け取られると、自動的に厨房まで戻ってくる。途中で人を感知すると、一旦停止をして、衝突を避ける。

ただし、料理をカートに乗せるは手動で、人がやらなければならない。そのためのスタッフが常駐をしているので、厳密には完全無人レストランではない。

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天津市にオープンした「京東X未来レストラン」。管理スタッフがいるだけで、調理、配膳、会計などはすべて自動化されている。

 

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▲注文した料理はロボットカートが座席まで運んでくれる。歩いている人を感知すると、停止したり、避けたりする。料理を取ると、自分で厨房まで戻っていく。

 

ロボットが名シェフの調理方法を再現

今までにも無人レストランは数多く登場し、その多くが今では消えている。理由は簡単で、美味しくないからだ。レストランを無人にするために、レトルト食品のようなものを提供することが多かった。電子レンジで温めるので、容器や冷菜までも熱くなってしまい、不評だった。

未来レストランは、ここを大きく改善した。調理ロボットが、素材からひとつひとつ作っていくのだ。調理ロボットは人型ではなく鍋型ロボット。中華料理には欠かせない「鍋ふり」もする。ここに油を注ぎ、あらかじめ用意した素材を投入、鍋ふりをしながら調理していく。

中国の8大料理に精通し、現在は40種類以上の料理が作れるという。プログラムは、、温度、時間、調味料の量など、名シェフのデータを測定し、組み込まれている。

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▲公式ビデオから。調理をロボット化したのがこの未来レストランの最大の特徴。調味料や加熱時間など、名シェフの調理法を再現している。

 

リピーターが生まれることが期待できる

現在のところ、珍しさも手伝って、来店客で賑わっているという。従来の無人レストランは、オープン直後は賑わうものの、味の問題からリピーターを作ることができなかった。ネットメディアが来店客にインタビューをしてみると、「熱々の料理が出てきて、味も美味しい」という答えが多く、リピーターが生まれることも期待されている。

この未来レストランは、アリババの新小売(ニューリテール)戦略に、京東が対抗するために提唱している「無界小売」(ノーボーダーリテール)戦略の一環だという。当然ながら、時期を見て、外売(出前)などにも対応していくことになる。

従来の無人レストランは、単なるテクノロジーのプレゼンで終わってしまったようなところがあるが、味の面を強化してきた未来レストランは、営業利益を狙った本格的な事業として見られている。

京東は、うまくいくと見れば、一気に全国に数百店舗を展開する。この未来レストランが全国展開できるのかどうか、注目されている。

萬古焼 銀峯 花三島 土鍋 (深鍋) 9号 4-5人用 52013

萬古焼 銀峯 花三島 土鍋 (深鍋) 9号 4-5人用 52013

 

 

百度のAI公園が北京市にオープン。人工知能のテーマパークとして話題に

11月1日、北京市の海淀区に百度がプロデュースしたAI公園がオープンした。園内交通として自動運転車が使われている他、AR太極拳などの遊具も人気だと生活と熱点が報じた。

 

百度の自動運転車が園内交通として採用

世界初のAI公園となったのは、北京市の“シリコンバレー”中関村の北側にある海淀公園。百度バイドゥ)の無人運転バスなどAI関連の設備が導入され、人工知能が生活をどう変えるかを体験できる場所になった。

その中でも注目されているのは、すでに量産化が始まっている無人運転バス「アポロ」。海淀公園の西門と子ども遊技場にバス停が設けられ、その間を往復している。

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▲園内を移動する自動運転車「アポロ」。すでに量産が始まっている百度のL4自動運転車だが、完全無人での常態営業運転は中国では初めてのことになる。

 

顔認証でジョギングデータを測定する歩道

好評なのが、人工知能歩道だ。この人工知能歩道の数カ所に顔認証カメラが設置され、登録をした人の動きを自動的に補足し、ジョギングや散歩の距離、時間などを終点にあるモニターパネルで表示してくれる。

知能音声亭は、中国の公園によくあるあずまや式の休憩所だが、天井にスマートスピーカーが設置されている。休憩中に声で尋ねるだけで、天気を教えてくれたり、渋滞情報や生活サービスなどに答えてくれ、さらには歌も歌ってくれる。

また、未来空間という展示スペースも設置され、音声で部屋の照明やブラインドを操作する、窓に世界の風景を映し出すなどなど人工知能を生活に応用する体験展示に触れることができる。

また、意外な人気となったのが、AR太極拳。モニターに自分の姿が映り、太極拳の動作をガイドする枠線が現れる。このガイドに従って体を動かすと、太極拳が学べるというものだ。

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人工知能歩道。ウォーキング、ジョギングをするだけで、顔認証により追跡をしてくれ、距離、時間、消費カロリーなどを計算してくれ、終点にあるモニターで自分のデータを確認することができる。

 

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スマートスピーカーが埋め込まれた知能音声亭。音声で天気や交通情報を尋ねると答えてくれる。音楽も流してくれる。

 

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▲意外に人気になったのがAR太極拳。モニターに太極拳の動きのガイドが現れるので、それに合わせて体を動かすと、太極拳の動作を覚えることができる。

 


李彦宏:全球首个AI公园正式开放

▲AI公園を取材したネットメディア。記者がAI遊具を体験している。

 

気軽に人工知能が体験できるテーマパーク

このAI公園は、北京市海淀区と百度が共同でオープンしたもの。海淀区では、テクノロジーを打ち出した街づくりを進めるため、区民にAIテクノロジーに気軽に触れてもらう場所を設けたかった。一方で、百度は自社のAIテクノロジーをアピールする場所を求めていた。

今後も、AIテクノロジーを利用したアトラクション、遊具などを投入していき、海淀公園を「AI公園」として整備していくという。老若男女誰でも気軽にAIに触れることができる場所として、北京市民の間で海淀公園が話題になり、来園者数も増えているという。

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▲屋内展示スペースには、人工知能関連の展示が不定期で行われている。