独身の日セールは、中国の社会課題を解決することにも寄与してきた。それは農村の貧困問題だ。現金収入がない農村に、インフラを整備することで、農産物の加工や服飾品などの製造工場を誘致する。アリババはこの「タオバオ村」プロジェクトを支援してきたが、近年、伸び悩み、むしろタオバオ村は減少する傾向にあると棉棉網が報じた。
農村の貧困を解決するタオバオ村プロジェクト
中国では、農村の貧困問題をいかに解決するかが大きな社会課題になっている。アリババがこの問題に対して打ち出したのが「タオバオ村」だ。ECサイト「タオバオ」で販売する服飾品、電気製品、玩具、農産品などを農村で生産させて、それをタオバオで販売しようという計画だ。アリババがネットインフラやEC販売のノウハウなどを支援している。
これにより、タオバオで販売される商品の品揃えを豊かにし、同時に地方の農村の経済を活性化させる。そういう目論見だった。
▲数年前はタオバオ村がブームとなり、農村はこぞってタオバオ村に名乗りを上げた。豪邸を建てるタオバオ長者も生まれるなど、一時は農村の経済を潤わせたが、現在は、どのタオバオ村も経営が難しくなっている。
タオバオ村は180万人の農民に仕事を与えた
この目論見は、当初目覚しい成果をあげた。すでにタオバオ村は3202村になり、タオバオ村の売上は2200億元(約3.6兆円)に達している。これは農村地域のネット販売売上額の10%にあたる。タオバオ村関連の出店数は66万店舗になり、180万人が従事をしている。現金収入が少ない農村に、現金と仕事をもたらした。
成都市郊外のあるタオバオ村は、成都市に近く出荷がしやすいこともあり、多数の服飾業者がこの村にやってきて、製造拠点を作った。2014年にはアリババから、タオバオ村の成功例としてたびたび取り上げられるほどだった。この村の人口は2000人ほどだったが、700以上もの服飾製造業者が集まり、70以上のタオバオ店舗が開業された。村は一気に活気に溢れるようになった。
▲全国で、タオバオ村によって180万人の新たな雇用が生まれた。
タオバオ村が過剰になり、競争が始まっている
ところがそれから4年後。村は静まり返っている。ある生産工場では、11月11日の独身の日セールの時期直前でも、数千本のズボンを生産しただけだった。セール以外の時期には注文がまったくなく、生産を停止している有様だという。他の生産工場も似たような状況で、多くが閉鎖、移転してしまったという。
ある業者は、今年の11月11日独身の日セールに賭けていたという。昨年の2倍の注文は取りたいと、営業活動に動いていた。しかし、終わってみると、昨年の1/3程度しか売れなかった。
理由は簡単だ。タオバオ村が年々増え、同品質、同価格帯の商品が一気に増えたため、競争が厳しくなってきたのだ。
▲成都市近くの農村のタオバオ村生産工場。現在はひっそりとしている。
▲数年前は、この通りも多くの業者が行き交う賑やかさがあったが、今はひっそりとしている。
独身の日セールから脱落を始めているタオバオ村
棉棉網の記者が、この村を調査してみると、営業を続けている業者は約400店だった。4年前は700以上の業者がいたのだから半減していることになる。残っている業者も、タオバオで販売することをあきらめ、近隣の服飾市場に直接販売をしている。
独身の日セール全体では、毎年売上が大幅に伸び、年々盛大になっている。しかし、地方の農村は、その波から脱落をし始めている。豊かになるのは、農村はいつも最後で、貧しくなるのは、農村はいつも最初なのだ。
▲タオバオ村のスローガンのひとつ。「自宅でネットに店舗を開けば、家庭と仕事を両立できる」。
▲同じくタオバオ村のスローガン。「外で東奔西走するよりも、自宅でタオバオをやった方がいい」。
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