中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

百度のAI公園が北京市にオープン。人工知能のテーマパークとして話題に

11月1日、北京市の海淀区に百度がプロデュースしたAI公園がオープンした。園内交通として自動運転車が使われている他、AR太極拳などの遊具も人気だと生活と熱点が報じた。

 

百度の自動運転車が園内交通として採用

世界初のAI公園となったのは、北京市の“シリコンバレー”中関村の北側にある海淀公園。百度バイドゥ)の無人運転バスなどAI関連の設備が導入され、人工知能が生活をどう変えるかを体験できる場所になった。

その中でも注目されているのは、すでに量産化が始まっている無人運転バス「アポロ」。海淀公園の西門と子ども遊技場にバス停が設けられ、その間を往復している。

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▲園内を移動する自動運転車「アポロ」。すでに量産が始まっている百度のL4自動運転車だが、完全無人での常態営業運転は中国では初めてのことになる。

 

顔認証でジョギングデータを測定する歩道

好評なのが、人工知能歩道だ。この人工知能歩道の数カ所に顔認証カメラが設置され、登録をした人の動きを自動的に補足し、ジョギングや散歩の距離、時間などを終点にあるモニターパネルで表示してくれる。

知能音声亭は、中国の公園によくあるあずまや式の休憩所だが、天井にスマートスピーカーが設置されている。休憩中に声で尋ねるだけで、天気を教えてくれたり、渋滞情報や生活サービスなどに答えてくれ、さらには歌も歌ってくれる。

また、未来空間という展示スペースも設置され、音声で部屋の照明やブラインドを操作する、窓に世界の風景を映し出すなどなど人工知能を生活に応用する体験展示に触れることができる。

また、意外な人気となったのが、AR太極拳。モニターに自分の姿が映り、太極拳の動作をガイドする枠線が現れる。このガイドに従って体を動かすと、太極拳が学べるというものだ。

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人工知能歩道。ウォーキング、ジョギングをするだけで、顔認証により追跡をしてくれ、距離、時間、消費カロリーなどを計算してくれ、終点にあるモニターで自分のデータを確認することができる。

 

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スマートスピーカーが埋め込まれた知能音声亭。音声で天気や交通情報を尋ねると答えてくれる。音楽も流してくれる。

 

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▲意外に人気になったのがAR太極拳。モニターに太極拳の動きのガイドが現れるので、それに合わせて体を動かすと、太極拳の動作を覚えることができる。

 


李彦宏:全球首个AI公园正式开放

▲AI公園を取材したネットメディア。記者がAI遊具を体験している。

 

気軽に人工知能が体験できるテーマパーク

このAI公園は、北京市海淀区と百度が共同でオープンしたもの。海淀区では、テクノロジーを打ち出した街づくりを進めるため、区民にAIテクノロジーに気軽に触れてもらう場所を設けたかった。一方で、百度は自社のAIテクノロジーをアピールする場所を求めていた。

今後も、AIテクノロジーを利用したアトラクション、遊具などを投入していき、海淀公園を「AI公園」として整備していくという。老若男女誰でも気軽にAIに触れることができる場所として、北京市民の間で海淀公園が話題になり、来園者数も増えているという。

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▲屋内展示スペースには、人工知能関連の展示が不定期で行われている。

 

iPhone XSで転売屋が大赤字。潮目が変わった中国のiPhone事情

中国の路上にはiPhoneの転売屋がいる。香港や他国で入手したiPhoneを高値で転売する業者だ。これまで正規のiPhoneは入荷待ちであることが多く、多少高くても購入する人がいた。しかし、今回のiPhone XSでは転売屋は大赤字になっていると吱咕黑科技星人が報じた。

 

3万円高くても売れる路上のiPhone

中国には転売を職業にしている人がたくさんいる。当然、iPhoneの転売屋もいる。すでにサプライチェーンが確立していて、香港や他国のアップルストアで購入する者、中国国内で売りさばく者、街頭などで売る者という分業ができているという。

iPhone4からiPhoneXまでは、転売屋たちはホクホクだった。なぜなら、販売価格よりも高く売れるからだ。

中国にもアップルストアは42店あり、米国に次いでアップルストアの店舗数が多い国だ。しかし、新しいiPhoneは在庫数に比べて、購入希望者が多すぎるため、在庫なしの状態が長期間続くのが恒例になっている。そのため、お金に余裕がある人は、いつ入手できるかわからないアップルストアではなく、多少高くても、すぐに手に入る転売屋を使ってしまうのだ。

場合によっては、販売価格の5倍、10倍で売れることもあり、そこまでいかなくても、平均するとアップルの販売価格よりは2000元(約3万2000円)ほどは高く売れるのだという。

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▲無許可の路上販売は、もちろん違法。城管と呼ばれる監視員に見つかると逮捕される。そのため、トランクに入れて路上販売をし、城管がきたら、トランクを閉めて走って逃げる。

 

ファーウェイのMate20Proに食われたiPhone

ところが、今年のiPhone XS、XRでは勝手が違った。発売前の人気は高く、予約数が200万台を突破するという報道もあり、転売屋たちは在庫の手配に必死になった。しかも、iPhone XS MAX 512GBは、発売時にすぐに売り切れ、かつてないほどの在庫薄になると見られた。

ところが発売数日で、突然iPhone人気が急落した。ファーウェイのMate20Proが発売になり、iPhoneの在庫薄を見て、ファーウェイを購入する人が続出したからだ。相変わらず、iPhoneファンは多いが、それは大都市の経済的に余裕がある一部の人。普通の人にしてみれば、iPhoneというブランドにはさほどこだわらない。

あっという間にiPhoneの人気が下がり、アップルストアには在庫がある状態になった。アップルがアップルストアを中国各都市に開店し、販売網を強化したことも転売屋には向かい風になった。iPhoneファンは、路上で販売しているような怪しげな転売屋から2000元も高いiPhoneを買うよりも、正規のアップルストアに買いに行く。転売屋は必死になっていつもの年よりも多めに揃えたiPhoneが、まったく売れない状態になってしまった。

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iPhoneは例年、在庫がなくて入手困難になるため、他国で購入したiPhoneが路上で販売される。

 

iPhoneの優位性は背面のロゴだけになった

路上の転売屋たちは右往左往することになった。アップルの販売価格もよりも安くして投げ売りをする者、iPhoneをやめて、ファーウェイのMate20Proが在庫薄になると見て、こちらの転売に鞍替えをする者などもいる。転売屋が口にするのは、「毎年儲けが出たiPhoneの転売だけど、今年は大損だよ!」というものだ。

iPhoneは、中国でも最も高級なスマートフォンだというイメージが定着しているが、今年は違った。大きな進化がない上に、ファーウェイのMate20Proも遜色ないスペックで、さらにシャオミーのMi MIX3では、iPhoneもできていないノッチなしのフルベゼルレスを実現している。iPhoneの優位性は、背面のアップルロゴ以外なくなったと吱咕黒科星人は結んでいる。

 

アリババが杭州市に開業した未来ホテルは、新小売戦略の一環

アリババが杭州市に未来ホテルを開業した。チェックインは顔認証、ロボットが案内、部屋の操作は音声というものだ。ルームサービスは外売(出前)を利用するなど、アリババが進める新小売戦略の一環だと財経網が報じた。

 

顔認証でチェックイン、自分の顔がカギになる

アリババが開業したのは、杭州市のFlyZooホテル。通称は「アリババ未来ホテル」だ。このホテルの特徴は、チェックインから宿泊、チェックアウトまでのほとんどがIT化されていることだ。

未来ホテルに入ると、ロビーがあるだけでフロントのようなものはなく、代わりに身長1mのロボットが登場する。このロボットは、顔認識機能を持っていて、来客が予約済みであるかどうかを判別する。

予約済みの宿泊客であれば、このロボットが部屋まで案内をする。客室、エレベーター、レストラン、ジムなどはすべて顔認証でドアが開く。

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杭州市に開業したアリババ未来ホテル。290の客室がある。現在、一般のホテル予約サイトからはまだ予約できず、専用アプリでの予約が必要なようだ。

 

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▲チェックインはフロントのモニターを使い、顔認証で行う。支払いはもちろんアリペイだ。

 

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▲ロビーで待ち構えているロボットが客室に案内してくれる。ロボット内部には収納スペースがあり、ルームサービスの食事や飲み物も部屋に運んでくれる。

 

照明、エアコン、ルームサービスなどはすべてAIアシスタント

部屋に入ると、照明が自動的につき、テレビ、エアコンがオンになる。テレビ、照明、カーテン、またルームサービスなどは、すべてアリババのAIアシスタント「天猫精霊」に音声で操作することができる。音声なので、ベッドに横たわったまま操作可能だ。

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▲客室にはAIスピーカーが設置され、すべての操作が音声で可能になっている。

 

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▲アリババもAIスピーカーを発売している。マイクの形がアリババTmallのキャラクターである猫の形になっている。

 

新小売をパッケージ化して販売する

アリババは、ホテル運営をするつもりはない。これは一種のモデルルームで、未来ホテルのシステムを販売しようとしている。中国には30万軒以上のホテルがあるので、市場は広大だ。

アリババ傘下のオンライン旅行社「飛猪」がホテルのユーザー体験をデザインし、Tmallが家具などを提供し、アリババと資本提携している外売サービス「餓了么」がルームサービスを担当する。ホテルシステムを販売することで、このようなアリババ系列のサービスもパッケージにして販売することができる。アリババの狙いは、新小売戦略を普及させることにある。

 

宅配はOKなのに、出前がNGな大学の謎

中国の多くの大学では、宅配配達員は校内に入ることができる。さらに、受取所を仮設している大学も多い。ところが、外売(出前)サービスの配達員は校内に入ることができない大学がほとんどだ。なぜ、宅配はOKで、出前はNGなのか。楽説安徽が解説した。

 

宅配は校内OKなのに、出前配達員は進入禁止

どこの国でも大学生は新しく登場したサービスに真っ先に飛びつく世代だ。中国の大学生たちもスマートフォンを使い、SNSで連絡を取り、財布を持たずにキャッシュレス決済をするというのが当たり前になっている。当然ながら、ECサイトもよく利用する。また、レストランやカフェの出前サービスである外売もよく利用する。

ところが、宅配配達員は大学の門で、身分証などを提示することで校内に入ることができるが、外売の配達員は身分証を提示しても校内に入れてもらうことができない。この違いは何なのか、大学生の間で議論になっているという。

 

ECサイトは大学生にとって不可欠な存在

ひとつは、宅配は大学生にとってもはや使わないわけにはいかないサービスになっているということだ。中国の大学は、原則、校内の寮生活をすることになっている。また、大学の多くが郊外にあり、勉強には最適な環境であっても、買い物には決して適している場所にはない。生活に必要なものの多くをECサイトで購入するようになっている。

ただし、宅配配達員は学生寮の建物の中に入ることは禁じられている。特に女子寮は、防犯の観点から、男性は入ることができない。男性と会う必要がある場合は、学生寮の外で会わなければならない。

そこで、学生寮近くに、臨時の宅配受取所が作られていることが多い。と言っても、地面に荷物を並べているだけで、学生は荷物が届くとそこに受け取りに行く。

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▲大学内には、臨時の宅配便集積場が作られている。荷物を頼んだ人は、ここまで取りに来る。

 

校内の安全確保が難しい出前のスクーター

しかし、外売サービスは校内に入ることすら許されない。この違いは、校内の安全確保の問題だという。講義時間中の校内は人通りも少なくなり、ひっそりとしているが、休憩時間になると一気に人が出てきて、校内は繁華街のような人手になる。この時間に、配達の車やバイクが通ると、学生の安全確保が難しくなってくるのだ。宅配便の配送車は、講義時間中に出入りをするため、安全上問題はない。しかし、外売は、学生が講義を終えて、人出が多い休憩時間になった時に配達をする。そのため、安全確保が難しいというのが最大の理由だ。

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▲外売サービスは、校内の安全確保が難しいという理由で、校内に入ることを禁止ている大学が多い。そのため、こんな方法で受け渡しをしている例もあるという。

 

学食と利益衝突する外売サービス

学生の間では、もうひとつの理由として、学生食堂との利益衝突の問題があるのではないかと言われている。学食は、栄養価の高い食事を安価に提供するため、利益はほとんど出ない。薄利ビジネスの最たるもので、大量の学生が毎日利用してくれることで何とか維持をしている。大学側から補助を出したり、OBなどが寄付をして経営を維持している例もある。

そこに、外売サービスの利用を認めてしまうと、学食の運営が破綻をしてしまう可能性があるのだ。破綻まで行かなくても、経営が圧迫をされ、価格が上がったり、サービスが低下したり、最悪な場合は食の安全に問題が生じる可能性すらある。

つまり、大学は、学食と学生の食を守るために、外売サービスが入ることを禁じているのだという。

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北京大学の学食。学生数が多く、時間も重なるため、混雑する。安価で食事を提供するため利益は薄く、経営は厳しい。その学食も変わらざるを得ない状況になりつつある。

 

大学生が生み出した外売サービス「ウーラマ」

学生の間では、意見はさまざまだ。外売を入れて、学食も公平な競争をすべきだという意見もあれば、飲食費が高騰する中国で、安価に朝昼晩が食べられる学食がなくなってしまうと、大学生活そのものが送れなく人もいるという人もいる。

学食もひとつのビジネスではあるが、長い間、競争というものをまったくしてこなかったことは事実。キャッシュレス決済の対応や、メニューの改善などが遅いこともまた事実だ。

そもそも外売サービスの「餓了么」(ウーラマ)は、上海交通大学の学生たちが、学内に食事や飲料を届けるサービスとして始まった。大学生たちの感性に合ったサービスなのだ。

旧態依然とした「学食」も変わる時期がやってきている。

TOKYO こだわりの学食 (P‐Vine BOOKs)

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iPhoneの最大の弱点ーー「フルベゼルレス」開発競争が激化する中国スマホ

中国の携帯電話メーカーでは、ノッチのないフルベゼルレススマホの開発競争が続いている。小米(シャオミー)は、Mi MIX3で、スライドするとセルフィーカメラが現れるというデザインを採用した。どうして薄いスマートフォンでスライドが可能になるのか。その仕組みを毒眼観察が解説した。

 

画面占有率94.5%のフルベゼルレスMIX3

iPhoneのどうにも釈然としないデザインーーノッチ。上部の切り欠き部分だ。これはセルフィー用のカメラを搭載するために、どうしても画面を広げることができず、フルベゼルレス(完全フチなし)が実現できない。

中国のスマホメーカーは、ここをチャンスと見ているのか、各メーカーともさまざまな方法でフルベゼルレスを実現している。vivoはNEX Sで、セルフィーカメラが使用時に本体からポップアップしてくるというギミックで実現をした。画面占有率率は91.4%になる。iPhone XS Maxが84.4%と報じられているので、大幅なアップとなる。

そして、シャオミーは、スライドをするというギミックで画面占有率94.5%を達成した。スマホ本体が2枚構造になっていて、セルフィー撮影をしたいときは、指で縦にずらすと、上部からセルフィーカメラが現れるという仕組みだ。

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▲MIX3は2枚構造になっていて、ディスプレイ側をスライドすると、上部のセルフィーカメラが現れる。

 


【拆解】一面“科技”,一面艺术——小米 MIX 3

▲MIX3のスライドの秘密を紹介する中国ネットメディア。分解をして、仕組みを紹介している。

カニカル方式が使えない極薄スマートフォン

このようなスライド式というのは、フィーチャーフォン時代には、ノキアが盛んに採用していた。このときは、ばねを用いたメカニカルな方式で実現していた。しかし、スマホではメカニカル方式を採用することはできない。フィーチャーフォンは本体の厚みがあるので、メカニカルな仕掛けを入れることができた。しかし、薄くなったスマホではそのような余分な空間は残されていない。

かといってレールだけでは、勝手な時に開いてしまうし、それを物理的なフックのようなもので止めておこうとすると、早晩その部分が破損してしまう。フィーチャーフォン時代とは、1日の中での使用時間が圧倒的に増えたスマホでは、メカニカルな方式はもう通用しないのだ。

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▲フィチャーフォン時代には、ノキアがスライドギミックを多用していた。当時は、本体に厚みがあるので、メカニカルな方式を使うことができた。

 

ネオジウム磁石でスライドの感触を生み出す

そこで、シャオミーは磁石を採用することにした。第3世代の永久磁石であるネオジウム磁石のN52グレードを採用している。この強力な磁石の反発力を利用している。閉じている状態では、磁石の位置がずれているが、半分スライドした段階では磁石の位置が揃い、しかも同じ極同士が並ぶので反発力が生じるというのがポイントだ。閉じている状態で、何かの衝撃で開こうとしても、反発力があるために開けない。この反発力が指で開く時の心地よく抵抗力になっている。

開く時は、磁石の反発力を指に感じるが、半分以上開くと、今度は反発力によって指にかかる抵抗力が減り、さらに開く方向に力がかかり、スムースに開くことができる。

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▲MIX3のスライド機構の解説図。ネオジウム磁石の反発力を利用して、スライドするときの気持ちいい感触を生み出し、きれいにスライドできるようにしている。

 

iPhoneの弱点「フルベゼルレス」を突く中国メーカー

シャオミーでは、この開閉テストを繰り返し、30万回は問題なく使えるとしている。これは1日100回開閉をしても、8年間使えるということだ。

このスライド方式。フルベゼルレスのスマホとしては、今のところノッチ解消の最もスマートな解決策なので、他社でも追随するところが出てきて、スマホのひとつのスタイルとして定着するかもしれない。中国携帯メーカーが注視するアップルが、フルベゼルレスを実現できていないことで、多くのメーカーが「このiPhoneの弱点」を突くことがアップルに追いつくことになると考え、フルベゼルレス競争が激しくなってきている。今後も、さまざまなアイディアを使ったフルベゼルレススマホが登場することになるだろう。

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▲nubiaは、背面にもディスプレイを搭載する2画面で、フルベゼルレスを実現している。カメラは、片面にしか搭載されていない。セルフィー撮影をするときは、カメラがある側を自分に向けて、サブディスプレイで写り方を確認する。

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vivoのNEX Sでは、セルフィー撮影をするときに、内部からセルフィーカメラがポップアップすることで、フルベゼルレスを実現している。

tamakino.hatenablog.com

 

Tik Tokのプラットフォーム化で、さらなる上を目指すバイトダンス

Tik Tokがミニプログラムに対応した。ミニプログラムとは、アプリ内アプリのようなもので、Tik Tokはただのアプリではなく、プラットフォームになるということだ。運営元のバイトダンスは、この戦略で中国IT企業御三家BATの地位を脅かそうとしていると三声が報じた。

 

「今日頭条」「抖音」を運営するバイトダンス

中国のIT企業の興亡は激しい。長らくIT御三家としてBATという言葉が使われてきた。百度バイドゥ)、アリババ、テンセントの3社のことだ。しかし、検索エンジンを中心にする百度が伸び悩みを見せると、BATJ(BAT+京東(ジンドン))、BATX(BAT+小米(シャオミー))という新四天王で呼ばれることも多くなり、さらに最近では新御三家としてATM(アリババ、テンセント、シャオミー)という呼ばれ方もされるようになっている。

このトップ争いを追い上げる存在として、TMDという言葉も使われる。頭条(トウティアオ)、美団(メイトワン)、滴滴出行(ディーディー)だ。頭条というのは「今日頭条」というニュースアプリのことで、機械学習により利用者の嗜好に基づいて必要なニュースをチョイスしてくれる的確さと、優れたインタフェースにより圧倒的な使いやすさを実現し、中国でナンバーワンのニュースアプリとなっている。

この今日頭条を開発、運営しているのが北京市のバイトダンスで、今日頭条に続いて抖音(ドウイン)をヒットさせている。この国際版がTik Tok(ティックトック)で、ダンスのショートムービーを軸にしたSNSとして、アジア圏で大ヒットしている。

このバイトダンスの2大ヒットアプリ「今日頭条」「抖音」がアップデートされ、ミニプログラムの機能が追加された。これは何を意味するのか。バイトダンスがTMDを抜け出し、BATの一角に入るための戦略であるという見方がされている。

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▲バイトダンスの最初のヒットアプリ「今日頭条」。機械学習で、利用者の興味を分析し、それにあったニュースを配信してくれる。アクティブユーザーは、1日3億人。

 

Tik Tokがミニプログラムに対応してプラットフォームに

ミニプログラムは、アプリ内アプリのようなもの。すでに「アリペイ」「WeChat」「百度」が採用しており、「今日頭条」「Tik Tok」の採用はこれに続くものとなる(中国版Tik Tok「抖音」はすでに対応済み。国際版Tik Tokの採用時期は未定)。列車や飛行機、映画などのチケット購入のミニプログラムが多く、また、小売ブランドのECミニプログラムも多い。

「今日頭条」「Tik Tok」のミニプログラムは、娯楽方面を中心にするようだ。すでに「今日頭条」には「猫眼電影」という映画チケット購入のミニプログラムが利用できる他、アンドロイド版「今日頭条」ではゲームのミニプログラムも利用できるようになっている。

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▲「WeChat」のミニプログラムでは、飛行機、新幹線、鉄道、長距離バスなどの予約、チケット購入ができる。空き座席もリアルタイムでわかる。生活に必要なミニプログラムを搭載することで、WeChatアプリだけでも日常のほとんどのことができるようになった。このため、WeChatは毎日高い頻度で起動される。エンターテイメントの世界で、Tik Tokを同じような位置付けのアプリに育てることをバイトダンスは狙っている。

 

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▲「WeChat」のミニプログラム。このミニプログラムは、ECサイト「京東」のもので、さまざまなクーポンが取得でき、購入もできるようになっている。

 

トラフィックを外に逃さず、毎日使うアプリに

ミニプログラムは、現在、中国のIT企業では大きなトピックになっている。WeChatのミニプログラムは、テンセントの創業者であるポニー・マーとWeChatの開発責任者である張小龍(ジャン・シャオロン)が直接指揮をとり、すでに数百人の開発部隊がいるというテンセント内部では重要プロジェクトになっている。

今回の「今日頭条」「Tik Tok」のミニプログラム対応も、バイトダンス創業者の張一鳴(ジャン・イーミン)直接の指示だった。

ミニプログラムは、「アリペイ」「WeChat」のような元々大きなトラフィックを獲得しているアプリが、そのトラフィックを外に逃さないように、アプリ内で必要なことが済んでしまうようにする仕組みだ。一方で、チケット購入のようなアプリはトラフィックを増やすことはあまり重要ではなく、チケットを購入してもらうことの方がはるかに重要で、アリペイなどの巨大なトラフィックを持つアプリのミニプログラムにした方が、購入数を増やすことができる。ユーザーは、アリペイを起動するだけで、必要な購入ができることになり利便性が上がるという三者ウィンウィンの関係を築くことができる。

 

重要アプリは「アリペイ」「WeChat」「今日頭条」「Tik Tok」

アリペイ、WeChatは、すでに1日のアクティブユーザー数が10億人に達するというモンスターアプリだが、「今日頭条」も1日3億人、「Tik Tok」も1.5億人に達している。「今日頭条」はアクティブユーザー数の伸びは頭打ちになっているが、1人あたりの利用時間が伸びていく傾向が続いていて、「Tik Tok」はいまだにアクティブユーザー数が伸び続けている。

日本のTik Tokは、リア充な若者が、ダンス映像を公開する場になっていて、「若者ならでは現象」のように扱われるが、中国版Tik Tokではダンスだけでなく、報道映像やペットの映像、ライフハック、ゲームのワンポイント実況など、さまざまな映像が共有されている。ユーチューブのショートムービー版とも言える地位になり、幅広い年齢層が利用するようになっている。

「アリペイ」「WeChat」に次ぐ重要アプリとなってきた「今日頭条」「Tik Tok」をミニプログラム対応にすることによって、トラフィックを外に逃さず、さらにアクティブユーザー数を増やし、広告収入をさらに増加させることが狙いだ。

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▲「今日頭条」アプリで利用可能になっているミニプログラム「猫眼電影」。公開中の映画、映画館が検索でき、チケット購入もできる。

 

ゲーム関係の広告と相性のいいTik Tok

実際、すでに「今日頭条」「Tik Tok」内のゲーム関係の広告は開封率が高く、バイトダンスの大きな収益源となっている。今日頭条のゲーム広告運営責任者の何欣(フー・シン)によると、ゲーム業界の半数の広告主が「今日頭条」に広告を出稿しているほどだという。

さらに、Tik Tokでは、テンセントの「王者栄耀」、網易の「第五人格」を始めとして「吃豆大作戦」「英雄文明」「守護你前行」などのゲームが公式チャンネルを開設し、ゲーム関係のビデオを配信している。ユーザーは、Tik Tokでゲームのビデオを見て、そのままTik Tok内でそのゲームのミニプログラムを遊べるようになる。

 

WeChatのミニプログラムはすでに成功

同様のことはWeChatが先行していて、ゲームのミニプログラム配信をすでに始めている。開始から100日後で、すでに広告収入が1000万元(約1.6億円)を突破したと言われている。

「今日頭条」「Tik Tok」は大きなトラフィックを得られるアプリに育ったが、張一鳴はいち早く次の成長戦略を実行に移した。BATを追撃するTMDのTが抜け出して、BATの一角を占めようとしていることは間違いない。今のバイトダンスは、中国のIT企業の中で最も勢いがある企業のひとつであることは確かだ。

 

テンセントは、なぜ10億人越えのQQを捨て、WeChatを始めたのか

中国人が連絡を取り合う時に使うアプリは圧倒的にWeChatだ。メッセージ、音声、通話などができる他、スマホ決済「WeChatペイ」も使える。しかし、テンセントは以前「QQ」というPCベースで、アカウント数10億人を超え、これが成長の源泉となった企業。なぜ、その「QQ」を捨て、WeChatを始めたのか。一車異世界が解説した。

 

テンセントの成長の原動力となったQQ

中国で最も使われているアプリと言えば、WeChatだ。メッセージ交換や通話ができ、日本のLINEと同じように使われているだけでなく、WeChatペイの決済機能も搭載され、中国人にはなくてはならないアプリになっている。

ところが、テンセントがなぜWeChatを開発することになったのかは偶然とも言っていい。なぜなら、テンセントはQQというSNSが以前からあり、一説にはアカウント数が10億件を突破(もちろん重複アカウント、ゾンビアカウントもある)したとも言われるほど、大成功したSNSだ。2000年代前半までは、中国人のほとんどがQQを使っていて、QQでメッセージを送り、音声通話を使っていた。特に海外に住んでいる中国人の間では、本土の家族と連絡を取るのにQQは必須だった。

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▲PC時代のSNS「QQ」で遊べた「QQ農場」。野菜や花を育てながら、友人の農場に行き、手伝いをしたり、育った作物を盗んだりすることができる。中国で爆発的に流行した。

 

スマホ時代になりWeChatが登場する

スマートフォンが普及をすると、PCベースだったQQはアプリ化された。しかし、なぜかほぼ同時にWeChatが登場し、テンセントユーザーは、スマホでもQQを使うべきか、それとも新しいWeChatを使うべきか、迷っていた時期がある。それがWeChatペイの決済機能が搭載されると、あっという間にユーザーはWeChatに流れた。QQは現在もサービスは提供されているものの、閑古鳥が鳴いている状況だ。なぜ、テンセントはこのようなカニバリズム的なことをしたのだろうか。

 

WeChatを開発した張小龍

WeChatを開発したのは、張小龍(ジャン・シャオロン)というエンジニアで、彼は元々はテンセントの社員ではなかった。1994年に華中科技大学を卒業すると、広州市で、あるソフトウェアの開発を始めた。Foxmailというもので、いわゆるメールソフトだ。最初の英文版がリリースされた1997年、当時はまだスマートフォンがなく、PCを使ってインターネットにアクセスをしていた。多くの人が優秀なメールソフトを求めていた。

このFoxmailは、すぐに中国で最も有名なメールソフトとなり、中国語版は400万人が利用したと言われる。英文版も20カ国以上で利用された。

このFoxmailが、2000年に、当時のソフトウェア企業「博大」に1200万元(約1.9億円)で売れた。張小龍は博大の副総裁に就任をする。

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▲テンセントの張小龍氏。Foxmailを開発して以来、ずっとメッセージ交換ソフトを開発し続け、WeChatを開発した。

 

電子メールに脅威を感じたポニー・マーがFoxmailを買収

その頃、テンセントのQQは、ユーザー数が100万人を突破し、成長期に差し掛かっていた。しかし、テンセントの創業者、ポニー・マーは危機感を持っていた。QQは基本となっているのがリアルタイムチャットで、電子メールのような長文のやり取りをするのには向いていなかったのだ。そこにFoxmailのような優秀なメールソフトが登場して、次第に世の中は電子メールを使うようになっていった。ビジネスの世界では電子メールが主流となり、個人間でも電子メールを使うことが増えていった。

そこでポニー・マーが決断したのが、Foxmailの買収だ。博大から買い取り、これをQQ向けに改良し、QQ用の電子メールソフトにしようと考えた。2005年、テンセントはFoxmailを買収し、その開発責任者である張小龍もテンセントの広州研究開発部の責任者に就任した。

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▲張小龍が開発したFoxmailメールソフト。PCベースのソフトウェアで、ビジネスマンや学生などの間で人気となった。

 

ツイッター、ウェイボーに脅威を感じたポニー・マーがWeChat開発を指示

張小龍はポニー・マーの指示通り、FoxmailをベースにQQ郵箱というQQユーザー用のメールソフトを開発した。

しかし、ここでもポニー・マーは危機感を持った。2007年にツイッターが登場し、新浪(シンラン)がウェイボーを発表したのだ。せっかくQQに電子メール機能を追加したのに、世の中は電子メールからSNSのメッセージングを使うようになっていったのだ。

ポニー・マーはこう語っている。「ウェイボーが登場して、SNSで連絡を取るということが始まりました。学校ではウェイボーのグループを作って、連絡を取り合っているという話を聞いて、大きな危機感を持ちました。我々もテンセント版のウェイボーを開発しなければと思ったのです」。

 

社内で競争開発をしたテンセント版ウェイボー

しかし、問題は山積みだった。QQはソフトウェアとして大きくなりすぎていたので、もはや携帯電話に移植することは不可能になっていた。新たに携帯電話版をゼロから開発しなければならない。

もうひとつの問題は、携帯電話の世界が大きく動いていたことだ。当時、中国ではノキアの携帯電話が圧倒的に売れていたが、アップルのiPhoneが登場し、グーグルのAndroidが登場してきて、一気にスマートフォンに移り変わろうとしていた。

ポニー・マーは、携帯電話関連の開発部隊、QQの開発部隊、ワイヤレス関連の開発部隊の3つに、「テンセントのウェイボー」の命令を下した。

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▲QQのマスコットのペンギン。このキャラクターは、現在でもテンセントを代表するマスコットになっている。

 

ブラックベリー版メールソフトがWeChatのベース

しかし、「テンセントのウェイボー」の開発に成功したのは、張小龍が率いるQQ郵箱部隊だった。張小龍はPC版QQ郵箱の次の仕事として、ブラックベリー版のメールソフトの開発をしていた。これをベースに「テンセント版ウェイボー」が開発された。

最初のバージョンは、単なるメッセージ交換アプリだった。張小龍は、そこにQQが人気となった要因の機能を追加した。QQでは、ボタンをクリックするだけで、相手を呼び出して音声通話ができる。さらに、音声を録音して、音声メールのようにやり取りすることもできる。この簡単に音声がやり取りできるという点がQQの人気の秘密で、この機能を「テンセント版ウェイボー」に追加した。このような機能は、海外でもWhatsAppなどに搭載されていたが、すでにQQでの実績があるテンセントは、高音質の音声通話機能を追加することができた。

こうして生まれたのが、WeChatだった。

 

WeChatを急成長させたシェイク機能とQRコード

ポニー・マーの思惑としては、ビジネスなどではPCベースのQQとQQ郵箱が使われ、一般の人や学生はスマートフォンベースのWeChatを使うという住み分けが生まれると考えていた。そのため、事業部からはWeChatという名前ではなく「Q信」という名称にした方がいいという意見もあり、実際「Q信」の名称で扱われたこともあった。QQの関連アプリであることを強調したかったのだ。

当初、WeChatのユーザー数は伸び悩んだ。多くのユーザーがQQで十分だと思っていたからだ。ところが、これを変えたのがシェイク機能だった。WeChatアプリを起動し、互いのスマホを振ると、それだけで相手のアカウントが登録され、 WeChat内の友達になることができる。現実に出会った人とアカウント交換が簡単になり、アカウントの英数字を入力するような面倒がなくなった。さらに、アカウントを簡単に交換できるように、自分のアカウントをQRコードで表示する機能も追加された。このアイディアが、後にQRコードスマホ決済「WeChatペイ」につながっていく。

 

ポニー・マーも読み違えたスマホの普及ペース

ポニー・マーがただひとつ読み違えていたのは、スマホのあまりにも早すぎる普及ペースだった。QQのスマホアプリも登場し、ビジネスではQQ、プライベートではWeChatという使い分けを想定していたが、あっという間にPCとスマホで使うQQは時代遅れとなり、WeChatが伸びていく。

特にWeChatペイが搭載されてからは、テンセントで最も重要なアプリになっていったのだ。テンセントの主要ビジネスは、今やWeChatを中心に展開をしている。