中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

自動運転は空でも。一人乗り自動操縦ドローンEhang184

2016年のCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)で展示された億航(イーハン)の一人乗り無人操縦ドローンEhang 184の友人飛行回数が1000回を超え、実用化の目処がついたと繍夢軍武が報じた。

 

自動操縦で飛行する一人乗りドローン

Ehang 184は、一人乗りのドローン(二人乗り仕様も可)。ヘリコプターのように操縦をすることもできるが、基本は自動操縦だ。タブレットで飛行経路を入力していけば、その通りに飛行してくれる。乗客は特に飛行訓練や操縦訓練を受ける必要がなく、タクシーに乗る感覚で、飛行を楽しむことができる。

億航によると、乗客を乗せての飛行試験がすでに1000回を超えたという。

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▲億航が開発した一人乗り自動操縦ドローンEhang 184。すでに有人飛行を1000回以上繰り返している。

 


EHANG 184 AAV Manned Flight Tests

▲億航が公開した有人飛行のビデオ。非常に軽快に飛行しているように見える。

 

乗客を乗せて25分間の飛行が可能

Ehang 184はカーボン繊維と軽量アルミ合金で機体が作られ、バッテリーで動作する。4カ所に上下2枚のプロペラを8個のモーターで回転させて飛行する。自重は260kg、積載重量は100kg。最高速度時速128kmで、巡航速度は時速60km。乗客を乗せた状態で25分間の飛行が可能だ。最高設計飛行高度は海抜3000m以下となっている。

 

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▲プロペラ部分を折りたたんだEhang184。自動車よりも狭いスペースに格納できる。

 

当面は貨物の無人輸送に用途

当初はドバイで、ビル間を移動するタクシーとして活用されるという話もあったが、今のところ、実現していない。

繍夢軍武は、人よりも当面は貨物輸送に使われるのではないとしている。宅配便などの配送センターから配送拠点までの輸送に使われることももちろんだが、より軍事的な使い方、例えば災害時の緊急物資輸送、軍行動時の携帯物資輸送、あるいは孤立した人員の救助などに使われる可能性が高いのではないかという。

 

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▲Ehang 184コクピットに搭載するタブレット。指で飛行経路を描くことで、操縦の指示を出すことができる。

 

軍事技術を背景にした中国無人機開発

また、繍夢軍武は、このような無人小型乗用ドローンが中国で開発される背景には、軍事技術の転用があるからだという。実際、人民解放軍では、無人武装ヘリの開発を進めている。ミサイルを搭載した無人ヘリを使うことで、人命の損失を防ぐことができるだけでなく、脱出機構、防弾素材などの人命を守る機能が不要になり、低コストで製造ができるようになるからだという。

Ehang 184の具体的な使い道はまだ明らかになっていないが、安全性試験も終わり、すぐにでも実用サービスに供給することが可能な段階に達している。空中タクシーが中国に登場する日も近いかもしれない。

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中国人民解放軍無人武装ヘリ「直ー19C」。人命の損失が防げるだけでなく、人命を守るための装甲、安全装置が不要になるため、低コストで製造できるのだという。

 

人工知能が交通信号を制御。ET都市ブレインが杭州市でいよいよ本格始動

9月19日、杭州市の西湖区雲棲で開催されたアリババの開発者会議で、2年間に渡って杭州市で試験運用をしていた「ET都市ブレイン」を本格始動することが発表された。ET都市ブレインは、交通信号を人工知能で制御することにより、交通流量を円滑にし、渋滞の解消を目指すもの。適用範囲は杭州市中心の3区を含む420平方キロになると浙江オンラインが報じた。

 

交通信号を人工知能が制御。渋滞を解消する

ET都市ブレインは、アリババ傘下のアリクラウドが開発した人工知能交通ソリューション。交通信号と道路監視カメラなどに接続をされ、交通信号の点滅時間を機械学習で制御することにより、交通の流れを円滑にする。

主な機能は3つある。

1)交通信号を制御することにより、交通流量を調整し、渋滞が生じないようにする。

2)救急車などの緊急車両の移動に合わせて、信号を青に切り替え、現場到着時間を短縮させる。

3)監視カメラの映像から交通違反や交通事故を自動認識、自動で交通警察などに通報する。


ET大脑详情页 城市大脑

▲アリクラウドの公式プロモーションビデオ。ET都市ブレインの機能がわかりやすくまとめられている。

 

渋滞王と呼ばれた渋滞が試験導入で解消

杭州市民が特に実感をしているのは渋滞の解消で、今年7月に試験導入された莫干山路では、以前はタクシーの運転手から「渋滞王」とまで言われて、ぴたりと動かなくなるひどい渋滞が日常的に起こる場所だったが、そのひどい渋滞が消えて、車が前に進むようになった。

この試験導入地域は、次第に拡大され、杭州市の報告書によると、2016年は杭州市は渋滞のひどい都市として全国ワースト5位だったが、今年の第2四半期ではワースト57位まで改善をした。

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▲交通信号を人工知能が制御する。渋滞の程度を機械学習させ、信号の点滅時間を変えることにより、渋滞を発生させない、あるいは解消していく。試験導入では線での制御だったが、本格導入からは面での制御ができるようになる。
 

「線」導入の試験導入でも大きな成果。いよいよ「面」導入が始まる

杭州市は2年前からET都市ブレインの導入を計画してきて、昨年から試験運用を始めていた。

このような信号制御による渋滞解消ソリューションでは、面で導入をしなければ大きな成果が得られない。しかし、線で導入をした試験運用でも大きな成果が上がっている。杭州中心部では、莫干山路で通過時間が8.5%短縮、中河・上塘高架道路で15.3%短縮を達成したとアリクラウドは発表している。

今回の本格運用で、適用範囲の面積は420平方キロ、西湖65個分になり、試験運用時の28倍となる。この適用範囲の中には、1300カ所の信号があり、4500カ所の交通監視カメラがある。杭州市全体の1/4の交差点が人工知能で制御されることになる。

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▲新しくなったET都市ブレインでは、バス停に滞留する人数も把握するという。滞留人数に合わせて、バスを増便し、市内の移動を円滑にする。

消防出動の演習も進む

アリババ開発者会議の前日、余杭区の余杭消防署では特別公開演習が行われた。午前10時57分、余杭区の住宅街の星韵北路で火災が発生したという想定の演習だった。

火災の発生もET都市ブレインが検出する。ET都市ブレインが監視をするIoT機器ーー信号機、監視カメラなどの異常温度上昇を感知すると、ET都市ブレインは火災が発生したと認識、管轄の消防署に、火災の発生位置、周辺の道路状況、ガソリンや油、火薬などの大型可燃物の有無などを通知する。同時に、救急隊、警察、水道、電力会社などにも警報が通知され、現場に向かう消防隊からの写真、音声、テキストなどが共有されるようになる。

現在、6カ所の全域消防署、10カ所の地域消防署、60カ所の小型消防署や救急隊、警察、水道、電力などの機関がET都市ブレインに対応をしている。

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▲交通事故や火災なども自動で判別をし、適切な消防署、交通警察、救急隊に通知を飛ばす。事故の程度も判別をし、どの事故を優先すべきかも判断される。

 

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▲救急車、消防車などの緊急車両が出動すると、現場までの最短経路を自動検索。緊急車両の移動に合わせて、交通信号をすべて青に変えていく。現場到着時間は約1/2に短縮される。


蘇州市、クアラルンプールでの試験導入も始まっている

ET都市ブレインは、杭州市だけでなく、2017年1月には江蘇省蘇州市、2018年1月にはマレーシアのクアラルンプールでの試験運用が始まっている。

ET都市ブレインは、2016年4月に導入計画が始まった。杭州市の交通警察、都市管理、建設委員会などの11の杭州市政府機関と、アリババを中心にフォクスコンなどの13の企業が集まって、導入のための開発を始めている。その9月には、杭州市の粛山地区で導入試験が行われ、車両の平均速度が3%から5%上昇するという結果を得た。

そして、2018年の7月に、杭州市最悪の渋滞道路、莫干山路に導入され、通過時間が8.5%短縮という結果を得た。そして、9月、杭州市の中心部をカバーする広範囲に導入されることになった。

今まで「線」での導入だったものを「面」での導入に踏み切るため、当初は目立った成果を得ることは難しいが、人工知能の学習が進む数ヶ月後には大きな成果が上がるのではないかと関係者は大いに期待している。

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▲監視カメラ映像から事故も自動判別する。左の2台の車が高速で停車。その他の車が車線変更をして避けている。ET都市ブレインは、追突事故と判断し、交通警察や救急隊に通知を飛ばす。

 

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▲すでに設置されている交通監視カメラの映像をリアルタイム解析し、交通量や交通事故、交通違反などを識別する。

 

 

ジャック・マーの論語。名言50句(下)

来年9月で引退することを表明したアリババのジャック・マー会長。杭州という地方都市で、なにもないところから今日のアリババを築いた。近年の中国では英雄の一人に数えられ、特に若い世代に対する影響力が大きい。

そのジャック・マー会長の「50の名言」が中国のネットで拡散している。現代の「論語」だと評する人もいる。いくつものバーションがあるが、ここでは「ジャック・マー:50の名言」を2回に分けてご紹介する。

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▲「アリババが成功したのは、お金もなく、技術もなく、計画もなかったからだ」

 

26:もしたくさんの本を読んでいたとしても、それを人に話してはいけない。話してしまうと、その人はいつもあなたを試そうとするようになる。

 

27:ある方法、あるアイディアがじゅぶんに独創的でなければ、人を惹きつけるのは難しい。

 

28:戦略を練る時に最も避けなければならないのは全面展開だ。最も重要なのは重点突破で、すべての資源を一点に集中して突破する。それでこそ勝てる可能性が生まれる。

 

29:小さな企業は大きな志を持っている。大きな企業は細心の注意を持っている。

 

30:勢いというのもは計画で生み出すことはできない。しっかりとした製品、サービス、システムから生み出される。

 

31:戦略はゴールではない。戦略を立ててからもゴールは遠く、長い距離を走る必要がある。

 

32:戦略にはさまざまあるが、小さな企業の戦略はひとつだけ。生き延びること。それこそが最も重要。

 

33:まず、市場と顧客のニーズを理解し、それからテクノロジーを使って課題を解決する方法を考える。これが成功の可能性を最大化する。

 

34:最も重要なことは、自社のプロダクトを市場にフィットさせること。鍵は、顧客の声をよく聞くことだ。

 

35:料金は世界で最も貴重なもの。「無料」キャンペーンはできるだけ避ける。お金ができてから、「無料」について考えればいい。

 

36:天も恐れない。地も恐れない。ただ、CFO最高財務責任者)がCEO(最高経営責任者)になることだけを恐れる。

 

37:瞬間的な情熱はお金にならない。持続する情熱だけがお金になる。

 

38:聡明さは、知恵者の天敵である。愚か者は口を使って話す。聡明な者は脳みそを使って話す。知恵者は心を使って話す。

 

39:起業することは、かっこいいことではない。

 

40:ライバルのことは常に強大だと考えなければならない。実際は弱小だとしても、強大だと考えることが大切だ。

 

41:慈善事業もビジネスとして実行されなければならい。ビジネスとして実行すれば、長期間持続でき、多くのことを成し遂げられる。

 

42:常に競争をして、勝ち上がってきたという人を私は登用しない。

 

43:最も大きな失敗はあきらめてしまうこと。最も強い敵は自分。最も難しいライバルは時間。

 

44:集団とは何か。集団は、失敗する人を一定数以下に抑えるための仕組みである。集団内の誰一人失敗させないようにしてはならない。

 

45:企業の中で、自分より能力が優れていると感じる人に出会ったら、あなたはもう人材発掘術を身につけている。

 

46:思ったことはすべてやってみる。この世界は、あなたがやることがなくなることはない。

 

47:世の中の人は、だいたいあなたよりも賢い。

 

48:あなたにとって、今日が最高の一日かもしれない。しかし、明日が今日よりもよくなる保証はない。だから、今日が最悪の一日だとしても、理解をし、努力をすれば、必ずチャンスはやってくる。

 

49:どの取引でも利益を出すことが大切。「無料」は優れた戦略ではない。無料の代償はとても大きいものだから。

 

50:順風満帆な時に統率力を発揮するのは誰にでもできる。逆境の時に本当の統率力が試される。

ドラことば心に響くドラえもん名言集

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ジャック・マーの論語。名言50句(上)

来年9月で引退することを表明したアリババのジャック・マー会長。杭州という地方都市で、なにもないところから今日のアリババを築いた。近年の中国では英雄の一人に数えられ、特に若い世代に対する影響力が大きい。

そのジャック・マー会長の「50の名言」が中国のネットで拡散している。現代の「論語」だと評する人もいる。いくつものバーションがあるが、ここでは「ジャック・マー:50の名言」を2回に分けてご紹介する。

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1:この世界は、あなたがなにができるかではなく、あなたがなにをなすべきかを問うている。

 

2:独創は企業経営できわめて重要なひとつの要素。しかし、それはあくまでもひとつの要素であって、すべてではない。ひとつひとつの仕事を確実にこなしていくことこそ重要。

 

3:自分を確立し、かつ自分を忘れろ。

 

4:好きな仕事ができるのが、最も好ましい起業。

 

5:あなたの会社がどこにあるかは問題ではない。心がどこにあり、目がどこに向いているかが重要なのだ。

 

6:将軍になろうとしない兵士は優れた兵士ではない。優れていない兵士を用いるのは優れた将軍ではない。

 

7:経営者が重要視するのは、あなたの財力ではない。あなたの真心だ。

 

8:小さな企業の戦略は2つだけ。生き残る。お金を稼ぐ。

 

9:5年経ってもまだ起業したいと思うなら、起業しなさい。

 

10:生き残るための最も優れた考え方は、今のビジネスモデルの質を高めること。スケールすることではない。

 

11:起業をするのに本からどれだけ学んだかは関係ない。世の中からどれだけ学んだかが重要。

 

12:現代の市場に秘密のようなものはない。そのような秘密や抜け穴を核心競争力にしてはならない。

 

13:失敗する原因の多くは、お金が足りないことではない。往往にして、お金がありすぎて失敗する。

 

14:人を用いるなら疑わない。疑うのであれば用いない。それが常識。しかし、人を用いたら疑う。疑う人を用いる。それは人材登用の境地である。

 

15:起業には情熱と独創だけでは足りない。優れたシステム、制度、集団、ビジネスモデルが必要だ。

 

16:あなたが日頃感じるヒントは、ビジネスのヒントにすぎず、それだけでは起業することはできない。

 

17:ビジネスモデルが複雑になればなるほど、ビジネスモデルがないのと同じになっていく。

 

18:最も優れたビジネスモデルは、しばしば最もシンプルなビジネスモデルだ。

 

19:起業をした時は、企業価値が高くなるまで売却には慎重であるべきだ。売却を考え始めると、選択肢が狭まっていく。

 

20:何かに夢中になり、生涯をかけて挑戦をしている。私はそういう人を恐れる。

 

21:投資家を探す時は、投資家とリスクを共有すべきだ。そうすれば、事業の可能性を最大化することができる。

 

22:教育、人脈、いずれも必要ない。起業は人脈ですることではなく、小賢しさですることでもないからだ。

 

23:強力なライバルに直面した時、やるべきことは挑戦することではなく、互いに足りないものを補える道を探すことだ。

 

24:この世界に優れた理論など存在しない。あるのは結果だけだ。

 

25:優れたものは往々にしてうまく言葉で説明できない。うまく言葉で説明できるものは往々にして優れていない。

 

必ず出会える! 人生を変える言葉2000

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中国人はシェア経済が苦手なのか。停滞するシェアビジネス

カーシェアリングビジネスの凋落ぶりの報道が続いている。ライドシェアの中国版ウーバー「滴滴出行」でも、女性客が暴行事件に巻き込まれるなどの事件が続いている。中国は、IT技術をいち早く投入して、社会実験をしながらビジネスとして確立することを得意としていた。しかし、シェア経済のように「利用者のマナー」が絡むものについて苦戦をしているとEV知道が報じた。

 

サービス停止状態に近い北京のToGo

カーシェアリングビジネスが問題噴出であるという報道が続いている。小規模の事業者が撤退、倒産するのは、淘汰整理という必然のプロセスだが、大手と言われるToGoなどの事業者にも問題が生じている。

報道によると、利用者が北京市内でToGoのシェアカーを利用しようと専用アプリを開いたところ、ほとんどのステーションで利用できる車が0になっている。アプリでは実際に利用されている車もリアルタイムで表示されるが、その台数も少ない。わずかに利用できる車を利用しようとしても、「ガソリンが空」「現在運用停止中」などの表示が出て利用できない。現実には、サービス停止と変わらない状態になっているという。

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▲記者が実際に使ってみたToGoアプリ。ステーションはたくさんあるが、ほとんどの利用可能台数が0か1になっている(左)。利用可能な車も詳細情報を開くと、ガス欠(中)、前の利用者が駐車カードを持ち去ったため駐車場から出られないため利用不可(右)など利用できない車がほとんどだった。

 

有望視されていたカーシェア市場に暗雲

カーシェアリング市場は、2018年には37億元(約615億円)規模に達すると予測されていた。今後5年間は毎年50%前後の成長を続け、2020年には120億元(約2000億円)規模に達し、企業価値1000億元(約1兆6000億円)を突破するユニコーン企業が登場すると予測されていた。現状は、この予測がまったく信じられなくなっている。

カーシェアリング企業の多くは、EV(電気自動車)を採用していて、中国が国を挙げて推進しているEVシフトの大きな弾みになると考えられていた。さらに、カーシェアリングは、私有からシェアへの転換を図るシェアリング経済の弾みにもなる。この両方で、カーシェアリングのつまづきが大きな影響を与えそうだ。

現在、シェアリング経済関連の190社に対して、1159.56億元(約1兆9000億円)の投資資金が集まっているが、カーシェアリング関連の投資は764.59億元(約1兆2700億円)で、シェアリング経済全体の投資の2/3を超える。投資家の間でも、シェアリング経済への見方が大きく変わる可能性がある。

 

問題は「ずさんな運営」と「利用者のマナー」

EV知道は、ここまでカーシェアリング企業が問題続出なのは、一言で言ってずさんなビジネス設計と利用者の民度の低さにあると断言している。経済成長に伴って、中国人の公共マナーは驚くほど改善されてきたが、人の目がない車内ではまだまだ改善されていないというのだ。

EV知道は、カーシェアリングの問題点を5つ挙げている。

 

1)投資資金だけでは運営資金が賄えない

カーシェアリング企業は大量の投資資金を集めているが、そもそもが大量の運営資金、修理費用、メンテナンス費用、保険費用などを必要とするため、投資資金だけでは足りていない。追加投資を得るか、速やかに黒字化する必要があるのに、シェアを拡大することに集中をしていて、投資資金がショートし始めている。

 

2)利用者のマナーが悪すぎる

管理が行き届いていないため、車体に傷がある、車内から嫌な臭いがするということが少なくない。さらに、ゴミも散乱していることがある。特に、中国特有の状況として、スイカやカボチャの種の殻が散乱している。中国では、スイカやかぼちゃの種を炒って、歯で種を割って中身を食べる習慣がある。現在でも、おやつとして食べられている。この殻が散乱してしまい、細かいために掃除をしてもなかなか取りきれない。

 

3)管理と責任の所在が明確にされていない

利用者が交通事故を起こした場合、利用者とカーシェアリング企業の責任分担が明確にされていないので、どちらが修理費用などを支払うかでトラブルが続出している。最近、天津市の浜海新区で、GoFunのシェアカーがガードレールに貫通するという大事故が起きたが、利用者は、車両を放置して、そのまま逃げてしまった。この車両の撤去費用、修理費用をどうするかで、GoFunと利用者の間でトラブルになっている。

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天津市で起きた重大事故。運転手は命に別状がなく、そのまま現場を離れてしまった。撤去作業などを誰が負担するかで、利用者とGoFunの間でトラブルになっている。

 

4)駐車場が圧倒的に足りていない

中国の都市はどこでも駐車場不足に頭を悩ませている。そのため、シェアカーが歩道などに勝手に駐車してしまう現象が相次いでいる。シェアリング自転車の成長期にも、歩道などに乱雑に駐輪される現象が社会問題となったが、自転車の場合は、ボランティアがどかして通行スペースを確保するということができた。しかし、自動車の場合はそうはいかない。解決が難しい問題になっている。

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山東省煙台で発見された「シェアカーの墓場」。実際は公共駐車場なのだが、まったく整備されていないため、車が捨てられているようにしか見えない。タイヤも持ち去られている。

 

5)料金体系が複雑で、追加料金が高い

多くのカーシェアリング企業の料金体系が複雑になっている。少しでも多くの会員を獲得するため、最低料金を安く見せるために、料金体系が複雑なものになっている。これが「使ってみたら、想像したより高かった」という利用者の反発を招いている。

例えば、ToGoのショート利用では、1時間単位で料金が計算されるが、1分でも1時間と計算され、8時間をすぎると1日として計算される。すべてが繰り上げ計算になっているのだ。

また、他のカーシェアリングでは、1日に利用する距離をあらかじめ200kmまで、300kmまで、制限なしの3種類から選べるようになっていて、短距離の設定にするほど、時間料金が安くなる仕組みになっている。ところが、200kmの設定にしておいて、実際の乗車距離が200kmを超えた場合は、1kmあたりの超過料金が必要となり、かなりの割高料金になる。

さらに評判が悪いのがキャンセル量だ。利用24時間前以前であっても、基本料金の20%のキャンセル料、24時間以内では50%のキャンセル料というのが一般的。

 

良質の行動を引き出すデザイン感覚がない中国

EV知道は、「ずさんな運営」と「中国人のマナーの低さ」の問題を指摘しているが、日本のカーシェアリングは、マナーよく使った人にポイント付与などのインセンティブを与える工夫をしている。また、米国のライドシェア「ウーバー」や民泊「Airbnb」では、相互評価の仕組みを取り入れ、マナーの悪い提供者、利用者は自然に排除されていくデザインになっている。いずれも、良質の行動を引き出すデザインをしていて、これがシェアリングエコノミーの成否の鍵となっている。

ところが、中国のライドシェア「滴滴出行」やカーシェアリングでは、このような「良質の行動を引き出すデザイン」がほとんど用いられていないか、形骸化している。EV知道もこの点を指摘していない。ひょっとしたら、中国人の発想の中には「デザインを工夫することで、良質な行動を引き出すことができる」という発想がないのかもしれない。だとしたら、シェアリング経済は、中国の大きな弱点になる。

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▲街に自転車が溢れて大騒ぎをしたシェア自転車も、現在では駐輪スペースが設置され、マナーよく使われている。それでも、ボランティアが常に違法駐輪自転車を移動している。自転車は人手で移動できるのでなんとかなっているが、自動車の場合、そう簡単には解決できない。

 

街の果物屋さんが新小売戦略。オンライン売上30%の「百果園」

アリババが提唱している新小売戦略。実体店と宅配ECを巧妙に組み合わせた「盒馬鮮生」(フーマフレッシュ)が好調だ。他企業も同様の新小売業態に参入しているものの苦戦をしている。その中で、街の果物屋さんとして知られる「百果園」が新小売戦略に成功している。その秘訣は、実店舗を起点にしていることだと打靶商学院が報じた。

 

新小売戦略を成功させている街の果物屋さん

百果園の店舗だけを見ると、ただの街の果物屋にしか見えない。しかし、全国に2400店舗を展開し、店舗売上40億元(約660億円)、宅配EC売上20億元(約330億円)という、隠れた「新小売」(ニューリテール)チェーンに成長している。ネット会員はすでに400万人を突破する。

新小売とはアリババが提唱し始めた新しいビジネスモデルで、ECサイトと実体店舗を融合して、両者の「いいとこ取り、悪いとこ捨て」を図ろうというもの。ECサイトはすでに成長の限界に達していて、これ以上の成長を望むには、日用の生鮮食料品を販売するしかない。しかし、生鮮食料品は品質のばらつきが大きいので、現物を見ずにECで購入する人は少ない。

アリババが展開する新小売スーパー「盒馬鮮生」(フーマフレッシュ)では、半径3km以内に最短30分配送する。消費者は、専用アプリから宅配注文することも、店舗に行って自分で買うこともできる。店舗に行くことにより、生鮮食料品の品質を知ることができるので、安心して宅配注文ができるようになる。

フーマフレッシュでは、60%が宅配EC注文であり、単位面積当たりの売上は同規模既存スーパーの3.7倍という成功を収めている。

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▲見た目はちょっと小ぎれいな街の果物屋さん。しかし、売上の1/3が宅配ECという新小売戦略に成功している。

 

「店舗+直販サイト」では新小売ではない。融合がカギ

多くの小売業が、店舗展開もしながら、同時に直販宅配ECサイトも展開している。これと新小売は似て非なるものだ。直販サイト方式では、店舗とは別に配送センターから出荷をする。そのため、生鮮食料品の場合、店舗に置いてある商品と同じ品質であるかどうかはわからない。また、遠方の配送センターからの配送になるので、30分配送などという短時間配送が難しい。さらに、多くの場合、直販宅配と店舗で価格が異なったり、配送料が必要になったりする。このような理由で、店舗で買う人でも宅配ECを利用しようとする人は少ない。

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▲百果園のシンボルともなっているスイカの彫刻ディスプレイ。

 

品質の標準化を徹底したことで、EC注文が可能になった

百果園も当初は、店舗運営と宅配運営を別に行っていたが、2016年に運営を一本化した。そこからわずか2年で、宅配EC会員数400万人を突破するところまで成長した。

その成功の理由は、まさしく新小売戦略に沿ったものだった。まず、百果園は以前から果物の品質の徹底した標準化を行なっていた。これが百果園の店舗の魅力ともなったが、新小売化するときにも大きなメリットとなった。

百果園が行った標準化は、「産地の標準化」「鮮度管理の標準化」「品質管理の標準化」だ。

百果園は、国内に200以上の農場を有していて、そこから90%の果物が供給されている。また、輸入果物に関しても米国、英国、アルゼンチンなどの16カ国の企業と契約をし、直接輸入をしている。

さらに、すべての果物をデータ入力し、品種、倉庫での保存期間、天候などの情報から、販売期限を設定。これを過ぎたものは店頭から撤去することを徹底している。また、百果園は「四度一味一安全」をアピールしている。「糖度、鮮度、脆度、きめ細かさ」「香り」「(農薬などの)安全性」だ。これをただアピールするだけでなく、この基準によって、商品を最低でも5等級に分類し、価格を変えて販売をしている。高級果物によっては18等級に分類しているものもある。

ここまで徹底しているので、宅配ECからでも安心をして注文ができるのだ。

f:id:tamakino:20181003191203p:plain百果園の店内。果物の品質を標準化し、細かく等級に分けてあるため、スマホからでも安心して注文できるようになった。

 

店舗を起点にネット会員をプロモーション

もうひとつは、あくまでも店舗を起点にビジネスを構築していることだ。ネット会員を獲得するには、さまざまなプロモーションを行う必要があり、中国のネット会員の場合、一人の会員を獲得するコストはだいたい100元(約1600円)程度だと言われる。ところが、百果園の場合、獲得コストは2元(約30円)以下なのだという。その秘密は、あくまでも店舗を起点にしていることだ。

百果園の宅配ECの会員は、SNSやプロモーションサイトから流れてくる人が50%いるが、残りの50%は店舗からなのだ。つまり、店舗で宅配EC会員のプロモーションを行い、専用アプリのダウンロードを勧める。決め手となるのは、重たいスイカなどを大量に買ったお客さんに「宅配もできますよ。価格も同じです。配送料も不要です」というトークだ。品質は目の前で確認している、店舗の果物が配達される、自分で重たいものを買って帰る必要はない。多くの人が、これでネット会員になっていく。

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店舗は倉庫兼ショールーム

アリババのフーマフレッシュも、まずは店舗にきてもらい、品質を知ってもらった上で、「重たいものを持ち帰ることなく、宅配できる」というところから会員を獲得していく。新小売戦略においては、店舗が重要な戦略拠点であり、そこは倉庫でありショールームであるのだ。

 

無人駐車場をスマホで突破するハッキングが流行中

中国では無人駐車場が増えている。開閉式ゲートのところに監視カメラが設置され、入庫しようとする車のナンバーを読み取る。これでゲートを開け、スマホ決済をする。しかし、スマホで撮影した他人の車のナンバーを見せて、ゲートを開けるというハッキング手法が広がっていると荔枝網が報じた。

 

ナンバー読み取りで無人化が進む中国の駐車場

中国では無人の駐車場が増えている。開閉式ゲート付近にカメラを設置し、入庫する車、出庫する車のナンバーを読み取る。あらかじめ専用アプリにナンバーを登録しておけば、それだけで自動的にスマホ決済により駐車料金が引き落とされる。

運転手は窓を開けて駐車カードを取る必要もなく、一時停止をするだけでいい。駐車場側も開閉式ゲートに料金徴収の人員を配置する必要もなく、支払用の清算機を置く必要もない。運転手は帰るときも、ゲート前で一時停止をするだけで、ゲートが開くので、そのまま出庫すればいいだけだ。

 

テレビ番組が駐車場ハッキングを実験

ところが思わぬところに脆弱性があり、スマホ1台で簡単に駐車料金を支払わずに利用されてしまうという事態になっている。

この問題を報じたのは、荔枝網の衛星テレビ番組「新聞360」の中のコーナーである「360実験室」。街の話題を拾って、記者が実際に街に出て試してみるというコーナーだ。ここで報道されたのが、スマホ無人駐車場のゲートを突破する方法だった。記者は南京市のあちこちの駐車場にいき、その方法が本当に使えるのかを実験している。

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▲登録済みの他人の車のナンバーをスマホで撮影

 

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▲ナンバーの写真をカメラにかざすとゲートが開いてしまう

 

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▲すべての駐車場でうまくいくわけではないようだ

 

ナンバーを撮影して、カメラにかざすだけ

そのハッキング手法とは、すでに駐車されている車のナンバーをスマホで撮影してしまうこと。すでに駐車されているということは、その車のナンバーはナンバー読み取りで入庫している。この写真をカメラに見せると、システムはその車が入庫しようとしていると勘違いしてゲートを開けてしまうのだ。

そして、自分の車を入れ、出庫するときも、スマホで撮影した他人の車のナンバーを見せる。これでゲートが開き、駐車料金は写真のナンバーの持ち主である他人が支払うことになる。


一张照片就能刷开停车场道闸,真有这种神操作?

▲荔枝網の衛星テレビ番組「新聞360」では、この方法で駐車場のゲートが開くのか、実際に南京市の駐車場数カ所で実験をしてみた。


警備員の胸の識別番号でもゲートが開く

そもそもシステムが相当に雑な作りのところもあるようだ。記者が駐車場の警備員に取材をすると、その警備員は「私たちは胸に識別番号バッジをつけていますが、それがカメラに映ると、ゲートが開いてしまうことがあるんですよ」。

無人駐車場システムは、入庫する車のナンバーを撮影し、それをテキスト化して照合しているという単純な仕組みであるため、スマホで撮影した写真に騙されてしまう。

この番組が放映されると、ネットには全国で同じ方法でゲートを開ける映像が次々とアップされた。このハッキング手法は、市民の間ではよく知られていて、相当に広まっているようだ。

 

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▲駐車場近くの警備員は、胸につけている識別番号バッジでもゲートが開いてしまうと話す。

 

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▲ネットにアップされたハッキング映像。みな、撮影したナンバーの写真をカメラに見せてゲートを開けている。

 

車体を感知する仕組みを導入してはいるものの

ただし、メーカーもすでに対策を始めている。ゲートの支柱に対物センサーを設置し、実際に車がいないとゲートが開かない仕組みにしたり、レーダーなどでカメラからナンバーまでの距離を測定し、一定の距離がないと認識しないようにするなどの仕組みを導入している。

しかし、そのような設備は当然コストが高くつき、駐車場の運営側は頭を悩ませている。

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▲最新の機器では、ナンバーを読み取るだけでなく、車体を感知するセンサーをつけている。しかし、価格が高価であるため、すぐには置き換えが進まない。