中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

社会の底辺で苦悩するフォクスコンの「新青年」

中国では「新青年」という言葉が使われ始めている。都市に出て低賃金労働に甘んじる学歴の低い農村出身の若者のことだ。生活は意外に気楽で、都市生活を楽しんでいるとも言われる。しかし、その新青年であるブロガーの神清気爽が、本音を語り、苦悩している文書を公開し、ネットで話題になっている。

 

半分働き、半分遊ぶ「新青年

このような「新青年」の中には都会で一旗あげたいという積極的な若者もいるが、大半は「勉強が苦手、学校が嫌い」「都会の華やかな生活を楽しみたい」という若者が多い。そのため「石に齧りついても努力する」という感覚はほとんどなく、「きつくない仕事でそこそこの給料がもらえればいい」と考える。このような従来の伝統的な中国人からは考えつかないような現代的な考え方をしている若者が新青年だ。

極端な例では、2日ほど宅配便や外売の日雇い仕事をして、3日間はネット喫茶に寝泊まりしてネットゲーム三昧を楽しむという生活をする。シェアリングエコノミーが発達して、働きたい時間だけ働ける環境が生まれていることも大きい。もちろん、このような働き方でじゅうぶんな給料は稼げるはずもなく、今は何とか生活できても、将来は大いに不安だ。そのため、家を買わない、車を持たない、結婚しない、子どもをつくらないと、草食系どころではない虚無的な人生観を持つ若者も増えつつあるという。

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▲フォクスコン工場の風景。世界で使われる電子機器の多くが、フォクスコン工場で組み立てられている。

 

フォクスコンで働く新青年

ブロガー神清気爽は、そのような新青年の1人だが、真面目にフォクスコン工場で働いている。しかし、将来は不安だという。

2008年5月、神清気爽が初めて働いた時、彼は中学校も卒業していなかった。働き始めてすぐ、四川大地震が起こり、会社が社員に義援金を求めた。神清気爽は、5元(約80円)を寄付するつもりだったが、20元(約320円)札1枚しか持ってなく、15元のお釣りが欲しかった。しかし、それを言い出すことができず20元を寄付してしまい、お金が一銭もなくなってしまった。次の給料日までの数日、社食でご飯を食べることもできず、お腹が空いても、水を飲んで我慢をした。神清気爽は、この時から自分の人生は転落し続けていると嘆く。

 

世界24位の企業「ホンハイ」入社も生活は好転せず

その後、いくつかの会社を転々とし、2013年7月にようやくフォクスコンの工場で働くことができるようになった。フォクスコンは、鴻海精密工業(ホンハイ)のグループ企業で、鴻海はフォーチュングローバル企業500の24位にランキングされる企業。神清気爽はようやく自分にも運が向いてきたと感じた。

月給は月1800元(約2万9000円)だったが、見習い期間の3ヶ月が終われば2120元(約3万4000円)になる。その後も1年に1回昇給のチャンスがある。神清気爽は遅刻もせず、早退もせず、仕事をサボらず、懸命に働いた。

しかし、4年間1回も昇給がなく、フォクスコンを辞めようと考え出した頃、思い出したように昇給があり、月給は2700元(約4万3000円)になった。しかし、以前よりも景気が悪くなっているのか、残業がどんどん少なくなる。暇な時期は3000元に届くか届かないか、残業が多い時期でもせいぜい4000元がいいところだった。工場の中で、朝から晩まで同じ作業を繰り返す。それに神清気爽は疲れ切ってしまっているという。

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▲神清気爽がネットに公開した給与明細。月240時間労働+残業40時間で、給与は3070元(約5万円)。社食と寮を利用すれば生活できる水準だが、経済的な余裕はない。

 

低学歴者には閉ざされている昇給の道

フォクスコンの給料が安いのは全員ではないという。同僚の中にもどんどん昇給をしていく者がたくさんいる。神清気爽は、なぜ自分だけ昇給できないのか。それは中学校を卒業していない学歴にあるのだと感じている(※これは神清気爽の思い込みであると思われる。フォクスコンはスキルを身につければ昇給するシステムを採用している)。

神清気爽は言う。「これを読んでる若者たちよ、勉強だけはした方がいい。学校の先生がいつも言うように、勉強することが出世の糸口になる。それは正しかった。この記事を読み終えたら、若者は勉強しろ。大人は仕事をしろ。老人は何もせず、今ののんびりした生活を楽しめ」。

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▲社食のメニュー。いちばん安いメニューが12元(約200円)。鳥か鴨を揚げたもの、焼いたもの、煮込んだもの。「豚の舌ご飯」「豚の耳ご飯」「豚の心臓ご飯」という不思議なメニューもある。なぜか焼きダック(半羽65元)、焼き鳩(半羽40元)という豪華メニューもある。何人かでシェアするのだろうか。

 

工場にはおばちゃんばかり。出会いもない

給料が低いので、寮から出てマンションを借りることもできない。社食の料理もどんどん値段が上がっている。

今年28歳になる神清気爽は、10年以上毎日働いて、未だに女の子と手を繋いだこともないという。「前の会社では若い女性が多く、男女比は1:5ぐらいだった。でも、フォクスコンは男女比が5:1ぐらいで、しかもおばちゃんばかりなのだ!若い女性はどこに行っているんだろう?」

神清気爽は、夜寝るとき、この10年を振り返ると、涙が出て枕を濡らすという。

「僕はどうしたらいいのだろうか。人生を間違えて、家の中は壁しかない。誰か助けてくれないか?」。

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▲神清気爽が毎日、社食で食べている「鳥ご飯」。好きな理由はメニューの中でいちばん安いから。味も悪くないという。

 

ネットで議論になる「新青年という生き方」

神清気爽の文章は、拡散をし、多くの中国人の心に届いた。一部では「新青年というのは気楽な生き方」と肯定的に捉える人もいるが、実際に新青年と呼ばれている若者たちにとって、決して気楽ではないようだ。

これは中国社会の矛盾なのか、それとも世界的な潮流なのか、未だにネットでは議論が続いている。

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スタバのコーヒーは空からお届け。本格ドローン配送が始まっている

どの国でも試みられているコーヒーや軽食のドローン配送。しかし、都市部では墜落リスクがあるために、なかなか正式運用ができない。中国スタートアップ「迅蟻ネット」は、墜落リスクの少ない山間部や孤島の郵便物からドローン配送を始め、いよいよ都市近郊でスターバックスなどの軽食の配送を始めたと浙江工人日報が報じた。

 

スタバやケンタッキーの軽食は空からお届け

浙江省杭州市西部にあるスタートアップパーク「夢想小鎮」のスターバックスでは、コーヒーのドローン配送が始まっている。スマートフォンによる注文から配達まで約20分。朝9時から夕方5時まで利用でき、8杯までのコーヒーが注文でき、配送料は1杯3元(約50円)だ。

この他、ケンタッキーや貢茶、吉祥饂飩などのファストフード店がドローン配送に対応している。

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杭州市のスタートアップパーク「夢想小鎮」のスターバックスでは、コーヒーの配達をドローンで行っている。

 

山間部、孤島など墜落リスクのない場所で実績を積む

ドローンの飛行技術はすでに成熟をしている。しかし、それでも、「万が一墜落をした場合どうするのか」という問題がある。荷物とドローンを失うだけであればまだしも、地上の建築物に損害を与えたり、最悪なのは人に損害を与える心配だ。

夢想小鎮がこの問題をクリアして、ドローン配送を始められたのには、3つ理由があるという。

ひとつは夢想小鎮が、杭州市西郊外にある新開発区であるという点だ。周囲は人家がほとんどなく、利用していない土地が広がっている。夢想小鎮内にしか人がいないので、異常飛行が発生したドローンは、パーク外に誘導することで、最悪の事態が避けられる環境にある。

また、浙江省地域は、運河のある街が多く、夢想小鎮も例外ではない。そこで、飛行ルートの大半を運河の上を飛ぶように設定している。万が一墜落した場合でも、損害を与えるリスクを最小限にすることができる。

3つ目が、このドローン配送を行うスタートアップ「迅蟻ネット」(シュンイー)の実績だ。迅蟻は3年前に創業されたスタートアップだが、すでに郵便、宅配、出前、医薬品などのドローン配送を行っている。しかも、実験運行、試験運行ではなく、固定路線を設定した営業運行を始めている。

この実績が買われて、スタートアップパークという人が多い場所でのドローン配送が許可されることになった。

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▲利用者のアプリに表示される飛行ルート。飛行ルートの多くは川。川の上を飛ぶことで、万が一の墜落リスクを最小限にしている。

 

無人カートよりは無人ドローン

2015年、現CEOの章磊(ジャン・レイ)が、ドローン配送を行う「迅蟻ネット」を創業した時、ドローン配送は将来有望なビジネスと思われていたものの、現実には、墜落した場合の保障リスクが高いとも見られていて、投資資金はまるで集まらなかった。「起業する前は、リスクを回避するため無人カートによる配送を考えていましたが、どう調べてみても、無人カートでは黒字化できる気がしませんでした」。

ドローン配送に対する理解が次第に深まっていくのを感じた章磊は、ドローン配送に資源を集中して辛抱強く待った。そして、2016年4月、100万ドル(約1億1000万円)のエンジェル投資を獲得して、ようやく本格的な開発ができるようになった。

 

山と海。ドローン配送による効果が大きなところから着手

迅蟻マーケティング部の余顕朗(ユ・シエンラン)総監は、浙江工人日報の取材に応えた。「当初は、奥深い山地や孤島での配送を行うことから始めました」。リスクの大きい都市部を避けて、実績を積もうと考えたのだ。

エンジェル投資を受けた迅蟻は、すぐに浙江省の安吉に、郵便配送の固定ドローン路線を開設した。10.5kmのルートを山地を、郵便物が小包を乗せて、約15分で配送し、市街地の配送拠点と山間の村の配送拠点を結ぶ。

この郵便配送ルートは、すでに浙江省四川省貴州省福建省陝西省江蘇省安徽省、河北省、内モンゴルなどの数百路線に広がり、約50台のドローンがこの路線を日中ほとんど休みなく飛び回っている。

また、昨年10月には、福建省莆田市と湄州島の間の郵便配送路線を開設。中国で初めて、海を越えるドローン配送路線となった。

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▲ドローンが運ぶパッケージ。意外にラフな入れ方だが、特に問題は起きていないという。

 

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▲発着スポットで飛行を待つドローン。届け先のオフィスビルにも発着スポットが設置され、そこに自動的に飛行をし、荷物を切り離し、戻ってくる。

 

農村から都市を包囲する戦略

迅蟻はこのような墜落をしてもリスクが少ない場所での営業運行を重ね、ドローン運行のノウハウを磨き上げてきた。余顕朗総監は言う。「2年前、ドローンの発着スポットは直径3mほどが必要でした。現在では直径1mで十分になっています。さらに現在では、積載重量は7kgで最大航行距離30kmに達しています」。

こうして技術を磨きながら、人口密度の小さい山間地や海で実績を重ね、次は郊外に建設されたスタートアップパークのような場所で運用をする。このようにして、次第に人口密度の高い場所までカバーしていき、最終的には市街地までカバーをしたいという。


迅蚁速运:无人机配送肯德基

▲迅蟻の公式ビデオ。ここでは夢想小鎮でケンタッキーの軽食を届ける映像が紹介されている。飛行時間は約6分。配達先スポットには、けっこうラフな置き方をするが、特に問題は起きていないという。

 

都市部では無人カートを組み合わせることも

今年4月、浙江大学医学院付属第二医院と提携して、緊急時に医薬品をドローン配送する救急医療モデル地区の実証実験も始めた。ドローンは操縦をするのではなく、ルート設定をするだけで自動的に飛行してくれるのが最大の利点だ。ルート設定は、スマートフォンからカーナビを設定する感覚で行うことができるので、専門家がいなくても救急隊員などもわずかな研修でドローン配送を利用できるようになる。

迅蟻は「ドローン配送の企業ではない」と言う。企業のミッションは「短距離物流を効率化して、生活利便性を高めること」だと言う。そのため、現在はドローン配送を中心にしているが、都市中心部では安全性を考慮して無人カートによる配送を組み合わせることも考えている。

 

わずか3年で、夢の技術は現実の技術に

なお、現在まで、ドローン機不調により、飛行中止、緊急着陸などの事態は何件が起きているが、墜落は一度もなく、地上の建築物や人に損害を与えたことはないという。

迅蟻が起業してわずか3年。いつまでも試験飛行を繰り返すのではなく、リスクが少ない場所を選んで、いち早く営業運行を始め、リスクと技術のバランスを見ながら、都市周辺部までたどり着いた。

ドローン配送はもはや「夢の技術」ではなくなって「現実の技術」になっている。

 

空港は人工知能が運営する。ETエアポートブレイン

アリババ系のアリクラウドが開発した「ETエアポートブレイン」が、北京首都空港、杭州蕭山空港などに導入されている。人工知能技術を利用して、人の手に負えない複雑な業務を自動化するものだ。すでに駐機スポットの利用効率は10%上昇、安全検査の効率は3倍になっていると天下網商が報じた。

 

時間がかかる中国空港の安全検査

中国の空港の快適さが大きく変わろうとしている。どの空港でもそうだが、悩みのタネは安全検査。丁寧に、厳格に検査をすることはいたしかたないが、ちょっとしたことで長い行列ができて、予想以上の時間がかかってしまう。安全検査にどのくらい時間がかかるかわからないからと、飛行機を利用するときは早めに空港に到着するように心がけている人も多いはずだ。

中国の空港では、荷物検査も厳格だが、本人確認も厳しい。セキュリティ担当者が、身分証の写真と航空券、本人の顔を照らし合わせて、本人であるかどうかを確認する。身分証のデータベースから、兄弟がいる場合や双子であることが判明している場合などは、かなり厳しくチェックをするという。また、整形をしている場合も、身分証の写真と容貌が異なっていることがあり、時間がかかる。

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▲顔の撮影は通路を歩いてくる10秒間の動画を撮影し、その中から鮮明な静止画を自動抽出して、身分証データベースの顔写真と比較をする。

 

人工知能が顔認識で本人確認

杭州蕭山国際空港では、現在アリババ系のアリクラウドが開発した「ETエアポートブレイン」を6月6日から導入している。蕭山空港第3ターミナルの25レーンある国内線の安全検査レーンのすべてにカメラが設置され、本人確認の判断を人工知能が行うようになった。現在のところ、識別率は99.6%で、1レーンで対応できる乗客の数は3倍以上に増え、しかも運用わずか1ヶ月で、5人の問題のある身分証を使用しようとした乗客を摘発した。

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▲記者が、カツラをかぶり、口紅をつけ、女性のフリをしたが、難なく本人だと判定された。

 

クラウド処理であるため追加整備は原則不要

ETエアポートブレインの利点は、すべてがクラウド処理であるため、新たな設備が不要であるという点だ。端末も従来現場で使っていたノートPCをそのまま使い、ネットワークも従来から使っていたものをそのまま利用する。新たに設置した設備は、広角カメラぐらいだ。

ETエアポートは、安全検査レーンを歩いてくる乗客の動画を10秒ほど自動的に撮影し、その動画の中から適切な静止画を切り出し、身分証の写真と照合する。

天下網商の記者が、実際にETエアポートブレインの顔認証を試してみた。本来は、かけていない眼鏡をかけてみると、本人相似度は78%となり、本人だと判定された。次に、他人の身分証を使ってみると、本人相似度は12%となり、本人ではないと判定された。さらに、カツラをつけてみたり、口紅などの化粧をしてみたが、いずれも本人相似度は70%以上で本人だと判定される。

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▲ETブレインはクラウドで動くので、既存のネットワーク、PCなどの設備をほとんどそのまま利用できる。杭州蕭山空港では、新たに設置したのは、顔撮影用の広角カメラぐらいだった。

 

本人確認の効率は3倍に

2017年、蕭山国際空港は3500万人の乗降客が利用した。蕭山国際空港情報管理部システム運用センターの朱林凱副経理は、天下網商の取材に応えた。「1人の安全検査官は、1時間で100人程度の本人確認をしなければなりません。しかし、双子であるとか、整形をされている方がいた場合、どうしても時間がかかるのです。また、お子さん、老人、障害のある方は、同行者のサポートが必要で、これも時間がかかります。しかし、このシステムでは、同行者と一緒に歩いてこられても、システムは全員の顔識別を並行して行うので、安全検査の効率は大幅に向上しました」。

 

1日分の駐機スポット割り当てを50秒で計算

このアリクラウドの「ETエアポートブレイン」では、顔認証はひとつの機能にしかすぎない。中心になっているのは、空港の業務管理に人工知能を応用することだ。北京首都国際空港では、ETエアポートブレインがすでに本格導入されていて、駐機スポットのスケジューリングが人工知能により行われている。

北京首都国際空港では、毎日1700機の飛行機が、駐機スポットを利用し、ボーディングブリッジによりターミナルと接続し、乗客の乗降を行っている。しかし、駐機スポットは300しかなく、しかも、飛行機の大小により、利用できる駐機スポットが異なるので、どの飛行機がどのスポットをいつ利用するか、適切な割り当て計画を作成するのが難しい作業になっていた。特に飛行機に遅延が発生した場合、混乱が生じることになる。

北京首都国際空港では、昨年の12月にETエアポートブレインを導入、このスケジューリングを人工知能に任せるようにした。ブレインは、1700機の駐機スポット利用のスケジュールを、わずか50秒で計算する。遅延が発生した場合も、50秒以内に自動再計算する。

これにより、駐機スポットの利用効率は10%上がり、これは毎日2万人の乗客が、搭乗口で待たされることなく、飛行機に乗り込めることになる。


ET大脑详情页 航空大脑

▲ETエアポートブレインのデモ映像。航空機の駐機スポットの割り当てをわずか50秒で計算する。遅延が発生した場合も自動再計算される。駐機スポットの利用効率は10%上昇した。

 

空港だけでなく、都市、医療などの効率を改善するETブレインシリーズ

アリクラウド人工知能技術を利用したETブレインシリーズは、航空だけではなく、都市、農業、工業、医療、環境という合計6アプリケーションが現在リリースされている。いずれも、人工知能を応用して効率化を図ろうというものだ。

例えば、ET都市ブレインは、交通量、交通事故発生などに合わせて、交通信号を制御し、交通の流れを円滑にするというもの。すでに杭州市が導入を進めている。

このETブレインシリーズが、今後の中国の都市インフラの効率を変えていくことになるかもしれない。注目をしておく必要がある。


ET大脑详情页 城市大脑

▲ET都市ブレインは、渋滞、交通事故の発生を監視して、適切な部署にプッシュ通知をしたり、交通信号を自動制御して、都市の道路を円滑にする。すでに杭州市で試験運用が始まっている。

 

日向に自分で歩いていく。ロボット植木鉢が大ブレイク

6本の脚を持ち、日向を探して自分で歩いていく植木鉢が世界中で話題になっている。この植木鉢HEXAの正体は、Vincrossが開発したロボット。植木鉢としてだけでなく、プログラミング学習用や工場内での検査用としての用途が高まり、世界40カ国で買われていると量子位が報じた。

 

6本の脚で歩き、感情表現も

このロボット植木鉢HEXAは、6本の脚を持ち、自分で日向を求めて歩いていく。Linuxベースで動き、720pナイトビジョンカメラ、3軸加速度センサー、距離センサー、赤外線通信を搭載し、自律的に行動する。また、専用スマホアプリを使い、リモコン操作することもできる。また、感情表現をする動作(嬉しいと踊る、不快だと足をばたつかせるなど)も組み込まれている。

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▲日向を求めて、自分で移動していく植木鉢HEXA。

 

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▲日向にたどり着くと、回転をして植木に満遍なく陽を当てる。

 

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▲日向に長時間いると、あえて日陰に自動的に移動する。

 

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▲人に甘えるなどの感情表現行動もスキルとして組み込まれている。

 

開発者は元有名科学ブロガー

このロボット植木鉢HEXAを開発したのは、北京のスタートアップ「Vincross」。創設者である孫天斉(スン・ティエンチー)は、学生時代から科学ブロガー「蘇椰」(スーイェ)として有名な存在だった。Q&Aブログサイト「知乎」で、科学や技術に関する文章を発表し、人気を博していた。

孫天斉がマイクロソフトのアジア研究所でインターンをすることになり、ブログの執筆が続けられなくなり、ブロガー引退を表明した時は、ブログサイト「知乎」の創設者である黄継新が直接、引き止める公開メッセージを書いたりしている。それほど、人気があるブロガーだった。

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▲HEXAを開発した孫天斉CEO。元は有名な科学ブロガーだった。枯れているひまわりを見て、HEXA開発の着想を得た。

 

日陰で枯れているひまわりがアイディアのきっかけ

2年後、孫天斉は清華大学の研究員となり、生物医学と神経経路の研究をする。その時、北京のオリンピック森林公園で、ひまわりの展覧会があり、孫天斉は気晴らしに出かけてみた。一面のひまわりが植えられていたが、変圧器が置かれていて、その陰になっているひまわりが枯れていた。1本だけ、太陽がどの角度になっても日がまったく当たらないひまわりがあったのだ。

このひまわりの位置が1mずれていたら枯れることもなかったのに。孫天斉は、植木鉢に脚があって移動できたらいいのではないかと思いついた。

孫天斉がそのアイディアを周囲に話してみると、ある投資家が名乗りをあげて、100万ドル(約1億1000万円)のエンジェル投資資金を出してくれた。孫天斉はその資金でHEXAのプロトタイプを開発、量産体制ができる段階で、さらに600万ドル(約6億6000万円)のAラウンド投資を獲得した。

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▲VincrssのHEXA。6本脚なので、段差があるなど路面状況が悪い場所でも歩行ができる。720pカメラも搭載されている。

 

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スマホで操縦をすることも可能で、前面のカメラ映像がスマホに表示される。

 

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▲プログラミングをすれば、脚で文字を書かせることも可能。

 

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▲本格的に使うには、プログラミングをする。教育機関などでプログラミング教育に使われている例が多いようだ。

 

フォーブズの30人のリーダーに選出

このHEXAは数も売れたが、世界中で売れたことが特徴だ。40の国と地域で買われ、昨年の夏には、孫天斉はフォーブスのアジアコンシューマーテクノロジーの30歳以下のリーダー30人のうちの1人に選ばれた(Forbes 2017 30 Under 30)。

このHEXAは単なる歩く植木鉢ではなく、行動をプログラミングできることから、学生のプログラミング教材用として買われているケースが多い。さらに、タイヤではなく6本脚で歩くことから、砂地、岩場、段差といった不規則な地形を移動することができる。そのため、荒野や砂漠、泥炭地などでの活動にも向いているため、実用用途にもニーズがあるようだ。

 

シリアから謎の注文も

あるとき、シリアとヨルダンの小学校でプログラミング教育に使うといって、120台の大量注文が入ったことがある。しかし、その人物は、HEXAのリモコンの通信限界距離と積載可能重量について細かく尋ねてくる。

妙に感じていた孫氏はある日ネットニュースを見て驚いた。HEXAの送付先として指定されていたシリアとヨルダンの住所がある場所は、世界で最も自爆テロの多い場所だったのだ。孫天斉は慌てて出荷を止めて、販売を断ったという。


HEXA from Vincross Inc., Beijing, China

▲Vincrossの公式紹介ビデオ。どのような動作、どうのようなプログラミングができるかがかなり詳しく紹介されている。

 

シミュレーターは無料で使ってみることができる

このHEXはスタンダード版が949ドル(約10万5000円)、ワイヤレス充電ドック付きが999ドル(約11万1000円)。また、シミュレータは無料でユーザー登録が必要だが、無料で利用することができる。行動をパッケージ化したスキルもすでに豊富に揃いつつある。少し高価ではあるが、プログラミング教育などで使われることもあるかもしれない。

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▲無料でダウンロードできるHEXAのシミュレーター。プログラミングというよりも既存のスキルを並べていくだけで、HEXAの行動を設定することができる。https://www.vincross.comよりダウンロード可能。

 

 

外売サービス普及で変わった飲食店。4つの変化

料理店の料理を宅配してくれる外売サービス。中国の都市部ではすっかり定着をし、電動スクーターで配達をする配達員も街の風景の一部となった。この外売サービスが普及したことにより、飲食店は大きく変わり、それが繁華街の風景や中国人の生活習慣まで変えようとしていると創業先生が報じた。

 

外売サービスが飲食店を変えていく

外売サービスとは、飲食店の出前代行サービス。消費者が外売のアプリを開くと、近所にあるほぼすべての店のメニューが表示され、好きな料理を注文することができる。外売は、その注文に従って、指定した料理店に行き料理を受け取り、配達をする。

日本の出前と違うのは、独立した配達サービスであるために、どこの料理店の料理でも出前注文できるという点だ。

主なプレイヤーは3社で、最近香港市場に上場した美団(メイトワン)、アリババ系列の餓了么(ウーラマ、お腹空いたでしょ?の意味)、そして最近参入して全国展開しつつある滴滴(ディーディー)だ。

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▲外売サービスは、指定した料理店で料理を受け取り、自宅まで配送してくれる。電動スクーターで配達をする。

 

1)繁華街の出店構成はファストからスローへ

繁華街の中心地の店舗構成が大きく変わった。外売サービスが最も使われるのが「快餐」と呼ばれるファストフード店。マクドナルドなどやハンバーガーの他、中国式ファストフードと呼ばれる麺の店、炒飯の店、包子の店などがある。価格は比較的安く、味はそこそこ、店内の環境もそこそこという店だ。このようなファストフード店は、店舗で食べる意味はさほど強くない。だったら外売を使って、自宅で食べてもいい。日本でも、マクドナルドやケンタッキー、吉野家などはテイクアウトサービスをやっている。同じ感覚だ。

このようなファストフード店は、売上の主軸が次第に外売に移りつつある。すると、好立地の場所に店舗を維持している意味が次第に薄れてくる。むしろ高い家賃が負担になってきている。そのため、同じ中心地でも表通りから裏通りに引っ込む、ショッピングビルの1階から地下に引っ込むなどの現象が起きている。

一方で、客単価の高い高級料理店は、来店客の売上が主体で、居心地をよくしてより多くの集客をしたい。このようなスローフード店は、多少の家賃コストを負担しても好立地に出店しようとする。こうして、繁華街の中心地の表通りは、次第に客単価の高い店が増えてきている。

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▲典型的な快餐店。中華料理店だが、低価格ですぐに料理が出てきて、味もそこそこ。さっと食事を済ませたいときに利用される。

 

2)実店舗は、スピードよりもエクスペリエンス

早さから体験への変化が起きている。以前の中国人消費者が飲食店に求めるものは早さだった。とにかく早く料理が出てこないと落ち着かない。料理が出たらなるべく早く食べて帰る。飲食店での滞在時間は短い。

せっかちというよりも、中国人特有の合理性で、食べ終わったのに座っているのは時間の無駄。食べ終わったら、すぐに次の行動に移りたいと考えるらしい。

この合理性は、外売が満たしてくれるようになった。自宅のいるのだから、料理が届くまで時間を有効に使うことができ、食べ終わったら、また自分の時間を使うことができる。

その結果、料理店に行くときは、早さではなく体験を求める傾向が出てきているという。内装を工夫する実店舗が増えてきている。中国の老舗高級料理店では、舞台が設置され、食事しながら寸劇などを楽しめるようになっているが、最近では中高年ではなく、若者も面白がってくるようになっている。また、料理店に中庭や庭園を作り、食事中に散歩を楽しめる店など、新しい食事体験ができる店が登場してきている。

  

3)価格競争は激化、利幅は縮小へ

一方で、飲食店の経営は厳しくなっている。外売アプリでは、ほぼすべてのメニューが見られるので、当然ながら価格も厳しく比較される。似たような品質であれば、1元でも安い料理を注文する。そのため、料理の価格の値下げ圧力が年々強まり、飲食店の利幅は小さくなっている。

 

4)メニュー映えするデザイン

見た目の競争も始まっている。従来の飲食店の競争軸といえば、味、価格、店内環境、接客態度の4つだったが、外売で注文する場合、店内環境と接客態度はほとんど意味がなくなり、味と価格の他、見た目=パッケージが大きな競争軸になっている。

今、中国全土で若者に人気にあるHEY TEAは、紅茶にフルーツを入れた飲料。パッケージも見た目も斬新で、日本で言えばインスタ映えしやすいルックス。台湾からも中国茶にミルクを入れた新しい飲料が次々と上陸して、同じく若者を中心に人気になっている。

ルックスが魅力的だと、SNSなどで拡散しやすいということもあるが、外売アプリで注文するときも目を引きやすいという利点がある。そのため、従来はただのビニールパックに炒飯を入れて、外売に出していた料理店もパッケージを工夫するようになっている。

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▲外売サービス「ウーラマ」の画面。近所の料理店一覧が表示され、それぞれのメニューが表示される。スマートフォンから出前を注文できる。

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▲若者に人気のHEY TEA。紅茶の中にフルーツが入っている冷たい飲料。味もさることながら、ルックスが可愛いと若者の間で人気になっている。また、台湾からもお茶とミルク、フルーツなどを組み合わせたコールドティー飲料が次々と上陸している。

 

外売は中国人の生活習慣をも変えつつある

外売サービスは日本には存在しないので、なかなかそのインパクトが実感しづらいが、中国人の生活習慣を大きく変え始めている。ある世論調査によると、外売利用者の52%が、自宅のキッチンを使う回数が減ったと答え、さらに驚くことに、35%の人が、キッチンなしの賃貸マンションでもかまわないと答えているのだ。中国人にとって、家の中で最も重要な場所はキッチンだったはずだ。それが大きく変わろうとしている。

 

激化する中国コンビニ戦争。4分の1が赤字経営

中国チェーン経営協会が「2018年コンビニ発展報告」を公開した。コンビニ業界は成長する都市型コンビニと赤字経営の地方ミニショップに二極分化し、都市型コンビニは日系チェーンが強い。国内系コンビニは苦しい立場に追い込まれていて、大きな再編が必要になりつつある。

 

過当競争時代に入る中国コンビニ市場

過去の国際的な経験からすると、一人当たりのGDPが2000ドルから3000ドルの時期にコンビニの参入が始まり、5000ドルに達すると急速な成長をし、1万ドルに達すると過当競争になるという。

中国では1992年にセブンイレブンが深圳市に開店して以来、中国の一人当たりのGDPは上昇をし続け、2016年には8000ドルを超え、2017年には8836ドル。コンビの数は10万軒を超え、いよいよ過当競争の時代に入ろうとしている。

2017年のコンビニ売上は前年から23%増え、市場規模は1900億元(3兆1000億円)を突破した。1軒あたりの1日の売り上げ平均は4936元。これも昨年より10%程度増えたが、上げ幅はそれ以前の半分以下になっている。

なお、日本のコンビニ市場は年間売上が約10兆7000億円、約5.5万軒。

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▲この3年間の中国コンビニ市場の伸び。順調に見えるが、一級都市はすでに飽和、過当競争になっている。

 

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▲店舗数も3年間で順調に伸びている。特に二級都市での出店が著しい。

 

二極分化する中国コンビニ業界。4分の1が赤字

2015年から2017年までの3年間、粗利率をみると、30%以上というチェーンが3%から16%に上昇している。ところが純利益でみると、4%以上のチェーンも増加している一方で、赤字チェーンも増えている。赤字のチェーンは24%にも達し、4分の1が赤字経営になっている。

この3年間で、家賃コストは18%上昇し、人件コストは12%上場し、光熱費コストは6.9%上昇している。

同じコンビニと言っても、大都市にあるコンビニは日本と同じような中型店が主体だが、地方都市ではコンビニというよりも「町のよろず屋」と言った方がしっくりする零細店が多い。このような店では、売上は限定的なのに、最低1人は店番が必要なため、これ以上コストを削ることができない。

高収益の都市型コンビニと、赤字経営の地方ミニショップに二極分化が起きている。

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▲粗利(売上ー原価)は年々改善しているが、さらに経費を引いた純利益は苦しい状態になっている。特に、赤字経営であるコンビニチェーンが24%もある。

 

一級都市は成熟。二級都市が主戦場

ただし、一級都市の上海、広州、深圳では、日本や台湾並みにコンビニがあり、売上は頭打ちになり、これ以上の成長は難しい局面になっている。北京だけは例外で、以前からキヨスクタイプの売店が多数あったため、大都市であるのにコンビニの数が少なかった。2017年になって、北京市はようやくコンビニ出店を促す政策を打ち出したため、2017年は店舗数が20.7%も増加している。しかし、これも数年で他の都市と同じように頭打ちにはなる。

一方で、コンビニが成長しているのが西安昆明重慶の二級都市で、店舗数はそれぞれ、25.0%、23.8%、21.3%の伸びとなっている。

 

地域により強いチェーンが存在する

また、地域によって強いコンビニチェーンが鼎立しているのも中国コンビニの特徴だ。上海では、ローソン、好徳/可的、ファミリーマート、快客の4チェーン。広東省ではセブンイレブン、天福、美宣佳の3チェーン、成都では紅旗、浙江省では十足/之上、江蘇省では蘇果が強い。

 

意外にキャッシュレス比率が低いコンビニ

意外なのが、コンビニは「アリペイ」「WeChatペイ」のスマホ決済が普及していない業種になっている。売上の30%以上がスマホ決済であるチェーンは56%にすぎず、10%以下というチェーンも32%ある。

これは「高収益の都市型コンビニと赤字経営の地方ミニショップ」の二極分化と関係している。中国にはコンビニチェーンが無数にあり、全国的に有名な10チェーンの店舗数は60%弱であり、40%強はローカルのコンビニチェーンになる。

このような地方ミニショップでは、未だに現金決済が主流になっている。スマホ決済が使われる場合もWeChatペイが主流で、コンビニ全体で見ると、スマホ決済のシェアはWeChatペイ48%、アリペイ47%とWeChatペイの方が多い。スマホ決済全体では、アリペイ:WeChatペイは3:2程度の規模感なので、コンビニではWeChatペイが強い。

WeChatペイは、SNSアプリ「WeChat」に付属した決済機能で、WeChatアプリは10億人以上のユーザーがあり、中国人のほぼすべてが使っていると言っても過言ではない定番アプリ。しかし、決済機能を使うには、WeChatを起動して、それからウォレットを開くという1ステップ余計な手間がかかる。一方で、アリペイは決済専用アプリなので、開けばすぐに決済ができ、しかも決済関連の機能が充実している。そのため、決済にはアリペイを使うという人が多いが、リテラシーの高くない中高年などは、すでに慣れ親しんでいるWeChatの中からWeChatペイを利用する傾向がある。大雑把に言えば、都市の若者はアリペイを使い、地方の中高年はWeChatペイを使うという傾向がある。

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▲意外に普及していないコンビニのスマホ決済。売上の10%以下というチェーンが32%もある。都市型コンビニと地方型コンビニの2つに二極分化していることが影響している。

 

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▲対面決済全体ではアリペイが優勢だが、コンビニではWeChatペイがわずかだが上回っている。WeChatペイは地方、リテラシー低めの人の間で普及をしている。

 

国内系コンビニの弱みは直営方式

中国の国内系コンビニチェーンは苦しい立場に追い込まれつつある。都市型コンビニは圧倒的に日本系コンビニが強い。ローソン、ファミリーマートセブンイレブンといった日系コンビニは大都市には必ず存在し、関東煮(おでん)、おにぎり、コンビニコーヒーといった目新しい商品を持ち込み、イートインのような新しいスタイルも持ち込む、中国コンビニ界のイノベーターの役割を果たしている。

しかも、日系コンビニは動きが早い。新たな流通拠点ができると、すぐに好立地に出店できる。これは、日本と同じようにフランチャイズ方式を採用しているからだ。日系3チェーンはいずれもフランチャイズ店舗が95%以上であり、直営店は数%。一方、中国系コンビニは50%以上が直営店だ。直営店方式では、出店をするのにも閉店をするのにも判断が遅れがちだ。面白いことに「スピード感がない」と言われる日系の方が、中国コンビニ市場ではスピード感を持ったビジネス展開ができている。

 

再編必至の中国系コンビニチェーン

二極分化する中国コンビニ業界において、利益の大きな都市型コンビニは日系コンビニで占められようとし、国内系コンビニは赤字経営の地方ミニショップに活路を求めざるを得なくなっている。最大の課題は、固定コストの上昇なのだから、IT技術を活かした効率化をしていかなければならないが、今のところそれが進んでいるようには見えない。

一方で、この地方ミニショップに世界に、IT技術を活かして徹底した効率化を図ったアリババの「天猫小店」、京東の「京東便利店」などが急速に参入してきている。国内系コンビニは、上からも下からも攻められている状況で、どこかに脱出口を見つけない限り、圧縮死してしまいかねない。

数年以内に、国内系コンビニになんらかの大きな動きが起きることは間違いないだろう。

 

駐車場から出られない!進まない新エネルギー車への対応

中国では強引なEVシフトが進んでいる。メーカーに一定割合の新エネルギー車製造を義務付けてしまうというもので、「作ったはいいが売れるのか?」と見る向きもある。あまりの急速なEVシフトにより、周囲のシステムの対応が進んでいないと北京晩報が報じた。

 

強制的にEVシフトを進める中国

「世界のEVの半分以上は中国で製造されている。中国はEV先進国だ」と口にする人がいるが、現状はそう単純ではない。

中国政府は、昨年、すべての中国国内の自動車メーカーに一定割合の電気自動車(EV)などの新エネルギー車を製造することを義務付けた。ハイブリッドカー、EVなどをエコ度に応じてポイント換算し、2020年には12%の新エネルギー車のポイント比率を獲得しなければならない。達成できない場合は、達成済みのメーカーから不足ポイント分を購入する。それでも達成できない場合は罰則があるという仕組みだ。

要は、強制的に一定数のEVを作らなければならなくなった。だから、中国で大量のEVが製造されるのは当然の話。問題は、ちゃんと売れるかどうかだ。

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▲充電ステーションは急速に設置されているが、管理者不在のステーションでは、ガソリン車の違法駐車、充電器の故障に頭を悩ませている。

 

当面は法人需要。個人需要を喚起できるかが大問題

当面は企業需要がある。特に宅配便の配達車、カーシェアリング用などの需要が強い。しかし、法人需要が一巡した後は、個人需要に頼らざるを得ない。ここを多くの人が不安視している。

世界に先駆けてEVシフトに挑戦していることは素晴らしいことだ。以前よりかなりましになったとは言え、まだ深刻な状態の都市の大気汚染問題もEVシフトにより解決ができる。しかし、個人需要を喚起する何らかの手を打たない限り、数年後にEVシフト計画は頓挫してしまうのではないかと懸念されている。

 

駐車場から出られなくなるEV

北京でいち早くEVを購入した祖さんは、公共駐車場から出庫するたびに天に祈るという。なぜなら、駐車場に入ることはできるのに、出るときはバーが上がらずに出られないということが度々あるからだ。

北京の多くの駐車場では、ナンバーで車両管理をするようにようになっている。入庫時に自動的にナンバープレートを読み取り、出庫するときに照合し、駐車時間を計算し、料金が支払われるとバーを上げるという方式のところが一般的になっている。

ところが、北京市では、一般の自動車のナンバーは5桁であるのに対して、EVなどの新エネルギー車は6桁にして、ナンバープレートも緑色にして区別している。駐車場のシステムはまだ新しい新エネルギー車用のナンバーに対応していないところが多く、出庫時にナンバーが照合できず、エラーが起きてしまうのだ。

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▲新エネルギー車に交付されるナンバープレート。京Aは地域ナンバーで、ナンバーは実質6桁。先頭がEVの場合はD、新エネルギー車の場合はFとなる。実質的なクルマのナンバーは5桁で、従来と変わらない。

 

4割の駐車場で出られなくなる

新エネルギー車のナンバープレートを緑色にしたのは、ガソリン車が駐車場代わりに充電ステーションに駐車してしまうことが問題となっていて、これを防止するためだ。

祖さんは北京晩報の取材に応えた。「西二環のレストランの駐車場では、出るときにシステムが反応せず、困っていたら、駐車料金が3000元(約4万9000円)と表示されたことがあります」。

モール、ホテル、公園。そういうところの駐車場の多くが新エネルギー車用のナンバーに対応してなく、祖さんの経験によると大体4割ぐらいの駐車場で問題が生じるという。

 

新ナンバー制度が始まって半年。まだ対応できていない駐車場が多い

実際のところどうなのか。北京晩報の記者は、実際にEVに乗って、主だった場所の駐車場に止めてみた。オリンピック公園の公園南門駐車場では、入庫時にはなんの問題もなかったのに、出庫時にはシステムが反応せず、係員を呼ぶことになった。すると、入庫の記録がなく、駐車時間が計算できないという。記者が係員に事情を聞くと、同じことがたびたび起きて困っているという。

その後、記者は崇文門の国瑞城ショッピングモールに車を止めた。ここは新エネルギー車のナンバープレートに対応していて問題なく出庫することができた。その後、王府井のあるモールの駐車場に止めたが、ここは対応してなく、出庫時に係員を呼ぶことになった。

祖さんは言う。「新エネルギー車のナンバーが始まったのは昨年の12月28日で、それからもう半年経っています。緑色のナンバーだって、街中で見かけるようになってきているのに、駐車場のシステムはいつになったらアップデートされるのでしょうか?」。

記者が駐車場システムの関係者に取材をすると、システムをアップデートする必要があると答えるだけで、いつなのかについては応えなかった。

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▲中国の大都市では、駐車場不足にどこも頭を悩ませている。そのため、EV用の充電ステーションにガソリン車が駐車してしまう問題が多発している。新エネルギー車のナンバープレートを緑色にしたのも、このような問題を解決するため。

 

管理者がいない充電ステーションでは問題多発

北京市は、第六環状線以内の地域に2000カ所の公共充電ステーションを設置し、合計1.88万本の充電器を整備した。5kmに1カ所の充電ステーションがある計算になる。その他、民間の充電ステーションもあり、大型の駐車場内にも充電対応の駐車スペースが用意されている。

しかし、管理者不在のところも多く、ガソリン車が駐車スペース代わりに利用してしまうことや、充電機の故障が多いことも問題になっている。

将来、多くの個人がEVを買う時代がくるのかも知れないが、少なくとも現在は、EVを所有するということは煩わしいことが多すぎる。

こういう周辺問題をひとつひとつ解決していくことが、EVシフトが成功するかどうかに直結していく。