中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

なぜ中国人はスマホの保護フィルムが好きなのか

中国人の多くは、スマートフォンを購入すると、保護フィルムを貼るという。夜市などには、保護フィルムをきれいに貼ってくれる露店がよく出ている。なぜ、中国人は保護フィルムが好きなのか。初十百科が報じた。

 

スマホの保護フィルムが大好きな中国人

スマートフォンをそのまま使うか、保護フィルムを貼るかは、人によって異なっている。現在のスマートフォンの画面には強化ガラスが使われていて、落としてもなかなか割れないし、傷もつきにくい。万が一、ヒビが入った場合でも、街中にガラス交換をしてくれるショップが増えている。そのため、年々、保護フィルムを貼らずに使っている人が増えているような気がする。

しかし、中国人は今でも、ほとんどの人が保護フィルムを貼るのだという。

 

初期のスマホは給料1ヶ月分で一括購入

中国で、一気にスマートフォンが普及したのは、2010年、iPhone4が発売された時だ。iPhone4自体もよく売れたし、この頃から中国国内メーカーのスマホも、品質が急激によくなっていった。

しかし、この当時、中国には「機種代0円」のような料金プランはなく、最初にスマホを一括購入しなければならなかった。当時のスマホの価格は、「1ヶ月分の給料とほぼ同じ」という感覚で、ものすごく高価なものだった。

そのため、壊したくない、大事に使いたいということから、保護フィルムを貼る習慣が根付いたという。

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▲よく見かける露店のフィルム貼り職人。画面のホコリを除去して、職人技できれいに貼ってくれる。

 

素人は気泡が入って失敗するため、職人が登場

もうひとつの理由は、保護フィルムを貼る商売が湧き出てきたことだ。保護フィルムをきれいに貼るのは簡単ではない。うっかりすると、ゴミを挟み込んだり、気泡ができてしまうことがある。

また、スマートフォンが普及をし始めた時期には、いわゆる山塞と呼ばれる弱小メーカーが製造したアンドロイドスマホが大量に市場に流れ込んだ。価格が安かったためだ。しかし、弱小メーカーが発売しているスマホなので、サイズが合う保護フィルムが発売されていないことが多い。そこで、大きめの保護フィルムをカッティングして貼るという商売が成立したのだ。

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▲フィルム貼りの道具は、タオバオで500元ちょっと(約8500円)で販売されている。これを購入して、露店を出すという人がたくさんいる。

 

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▲最近では、貼るときに空気を抜いて、気泡が入らないようにする道具が普及している。これ1台あれば、フィルム貼り職人の商売がすぐ開店できる。


黄砂と食用油スマホの画面を汚す

この保護フィルムの習慣は、広く定着をした。その理由のひとつは黄砂だ。春になると黄砂が降ってきて、あらゆるものが埃っぽくなる。黄砂は砂粒なので、スマホ画面についたまま放っておくと、細かな傷が入ってしまうのだ。

もうひとつが中華料理だ。中華料理では油を大量に使う。食事中でもスマホをいじってしまうのは中国人も変わらない。画面に、指紋や油汚れがついてしまう。

これが保護フィルムを貼ることで、きれいな布で拭うだけできれいになる。そんなことから保護フィルムを貼る人が多いのだという。

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▲中国は春になると、黄砂が降ってくる。画面はすぐにホコリだらけになる。多くの人が保護フィルムを貼るのは、これが理由。

 

買い替え期間短縮とともに消えゆくフィルム職人

しかし、最近ではこの保護フィルムの習慣も減りつつある。中国人はスマホを頻繁に買い換える。だいたいバッテリーがへたってくると、バッテリーを交換するのではなく、新しいスマホを買ってしまう。そのため、買い替えまでの期間が短くなっていて、1年から2年程度で買い換える。それだけ、スマホの価格が下がり、経済的な余裕が生まれているということだ。

2年以内であれば、保護フィルムを貼ってまで大事にすることもない。そういった考え方から、裸のまま使っている人も増えている。

中国の街中の風物詩とも言えた「手機美容」の看板を出した露店も、次第に見ることができなくなっていくのかもしれない。

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▲保護フィルムを4分で貼ってくれる自動機械も登場して話題になっている。どんなサイズのスマホにもきれいに貼ってくれるそうだ。

 

 

中国のサラリーマンはつらいよ。お昼ご飯は340円以下

人材紹介サービスである「智聯招聘」は、「2018年ホワイトカラー生活状況研究報告」を公開した。2万8270名のホワイトカラーのサラリーマンにアンケート調査をした結果をまとめたもの。そこから浮かび上がってきたのは、中国サラリーマンたちの悲哀だった。

 

平日の昼食代は7割の人が340円以下

今、中国ではIT企業が力強く成長していて、報酬も以前からは考えられないほどの高給をもらっている人が増えている。しかし、そのような人たちは全体の数%にすぎない。多くのホワイトカラー=サラリーマンは、慎ましやかな生活をしている。この研究報告によって、その実態が明らかになった。

驚くのは、7割近い人が、平日の昼食に使う金額は20元(約340円)以内だと答えていることだ。中国の物価は10年前と違って、かなり高騰している。特に、悩みの種なのが、外食と食材だ。北京や上海などの一級都市のビジネス街の食事代は、東京と同じぐらいだと感じる。500円のワンコイン以内に収めようとすると、裏通りに入って行って、伝統的な料理屋を探さなけれならない感じだ。オフィスビルやショッピングモールのレストランでは、すぐに1000円を超えてしまう。

20元では、2級都市、3級都市でも、麺を一杯か、弁当あるいはサンドイッチ1個が限界だという。

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▲平日の昼食代。7割が20元(約340円)以下。麺一杯、弁当ひとつ、サンドイッチぐらいしか食べられない。

 

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▲昼時に料理店が行列になるのは、中国も同じ。出前をとって社内で食べる人も多い。

 

通勤も地下鉄、バスが一般的

通勤も、多くが地下鉄、バスなどの公共交通。自家用車やタクシーなども一定数いるが、二級都市、三級都市では公共交通が発達していないので、仕方なく利用しているのだと思われる。また、バイク、徒歩という人もけっこういる。

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▲通勤はほとんどが公共交通。自家用車、バイクが多いのは、2級都市、3級都市以下では、地下鉄がなく、バスのみで、バスが大混雑するから。徒歩という人も一定数いる。

大都市ほど賃貸暮らし。シェアも多い

住宅も半数近くが賃貸だ。しかも、他人とシェアをしている人が多い。特に大都市では、マンション価格が高騰をしているため、簡単に購入することができない。大都市では賃貸住宅に住んでいる人の率があがる。北京では58.6%、上海では57.3%、深圳ではなんと68.8%にも上る。中国でも、「自分の家を持つ」ということは夢物語になりつつある。

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▲住宅状況。意外に多い賃貸住まい。しかも、賃貸をシェアしている人が多いことに驚かされる。

 

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北京市内の中心部まで地下鉄で15分程度の場所のワンルーム賃貸。65平米と広めではあるが、家賃は6400元(約10万円)。駅からは500mあるので、徒歩10分弱。類似のワンルームは6000元から7000元が相場のようだ。

 

「明るく陽気な中国人」とは異なるホワイトカラー

「孤独感を感じることがある」という質問には、半数以上の人が「ある」と回答している。このアンケートは、現役サラリーマン全世代が対象になっているので、かなり高い数値ではないかと思われる。

孤独感を感じる理由も「配偶者や恋人、親友がいない」「周囲に溶け込むことができない」という人間関係に関する回答が多く、典型的な中国人の「いつも仲間と賑やかにやっている」というイメージからはずいぶんとかけ離れている。

しかも、孤独感を解消する方法の第1位が「仕事をする」なのだ。大都会の中で、誰とも話をすることもなく、毎日、自宅と職場を往復して、黙々と働く、都会のサラリーマン像が浮かび上がってくる。

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▲孤独感を感じるという人が半数以上。単身者のみに対する質問ではなく、サラリーマン全世代に対する質問なので、この数字はかなり高いのではないか。

 

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▲孤独感を感じる主な理由は、恋人、配偶者、親友、友人がいないこと。「明るく陽気な中国人」のイメージはここにはない。

 

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▲孤独感を解消する方法の1位は「仕事をする」こと。何か胸がしめつけられる思いがする。

 

2/3が「現在の収入に不満」

「現在の収入に満足しているか」という問いには、2/3の人が「不満」だと答えている。仕事に対する不満でも圧倒的に多いのが「報酬が低い」。日本のように、職場の人間関係に悩むことは少ないが、とにかく収入が低いということに不満を持っている。

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▲現在の報酬に対しては、2/3の人が「不満」。ここはいかにも中国人っぽい。

収入が低いので結婚も考えない

「現在の収入で結婚を考えるか」という問いには、4割以上が「考えない」と答えている。同じく4割弱が「結婚は収入とは関係ない」と答えているのが救いだが、中国のサラリーマンの悩みは「収入が低い。低いから家を買えない。家がないから結婚できない」ということであるようだ。

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▲現在の収入で、結婚を考えるかという質問に、4割以上の人が「考えない」と回答している。中国の理想的な人生サイクルが崩壊しかかっている。

 

沈みゆく「ホワイトカラー」の地位

中国で、ホワイトカラーという言葉が定着したのは1951年のことだという。この時は、都市でデスクワークをして高給をもらうという憧れの身分だった。しかし、改革開放以降、新たに登場してくる新興企業に押されて、国営企業を中心としたオールドエコノミー企業は相対的に地位を下げていった。給与が据え置かれ、上がらない状態が続いた。一方で、物価は猛烈な勢いで上がっていく。今や、ホワイトカラーは「窮忙族」(困窮して忙しい、貧乏暇なし)とすら呼ばれるようになっている。

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▲職場に対する不満も圧倒的に報酬の低さに対するものが多い。社内の人間関係に悩む人は極めて少ない。

 

サラリーマンでは人生設計が成り立たなくなっている

中国の都市生活者の基本的な生活設計は、大学を卒業して企業に就職。マンションを購入して、結婚相手を探し、子どもをつくる。子どもが社会人になる頃には、定年退職をし、老後は年金を基本に子どもや孫に面倒を見てもらうというものだった。このサイクルが成り立たなくなっている。

大学は授業料が高騰し、競争率も高止まりしている。条件のいい企業に就職するのは難関中の難関。一般の企業に入社したのでは、報酬が低く、マンション価格が高騰しているので、家を持つことができない。家がなければ、結婚できず、子どもも作れない。定年後も、物価が上昇するので年金では生活ができない、頼る子や孫もいない。

日本のサラリーマンもつらいことが多いが、それでも「サラリーマンはつらいよ」と愚痴を言うだけの余裕はまだある。中国のサラリーマンは、ごく一部のIT企業に入社できた者を除いて、黙々と仕事をして耐え忍ぶしか方法がないようだ。

急激に成長するIT企業と、取り残されて停滞する一般企業。このちぐはぐさが、中国社会の大きな弱点になっていくかもしれない。

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ブランドごとにプロフィールが大きく異なる中国スマートフォンユーザー

中国マイクロブログサービス「ウェイボー」は、「2017年スマートフォン報告」を公開した。ウェイボー利用者にアンケートを行い、その結果をまとめたもの。スマホのブランドや機種によって、ユーザープロフィールが大きく違っていることが明らかになった。

 

ウェイボー利用者の3割はiPhone

ウェイボーは約5億人のユーザーがいるマイクロブログサービスで、日本のツイッターにあたる。

ウェイボーをよく使う人は、世の中のことに関心があり、意識は高め。収入も高めの人が多く、iPhone比率は高め。最近の販売ランキングでは、5位以下に落ちているアップルだが、iPhone5からiPhone7あたりは、中国でもよく売れ、いまだに使い続けている人が多い。

それでもiPhoneは年々シェアを落としている。以前は、一度iPhoneを使うと、機種変更時にも再びiPhoneを選ぶ残留率が圧倒的に高かったが、それに陰りが出てきている。国産スマホの性能や品質があがってきているからだ。

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▲ウェイボー利用者のここ3年のスマホシェア。あいかわらずiPhoneが多いが、年々シェアを下げている。一方で、OPPO、vivo、ファーウェイといった国産スマホがシェアを伸ばしている。

 

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▲各スマホブランドの残留率。機種変更時に、同じブランドを選んでいるかどうかを尋ねたもの。iPhoneは残留率を下げた唯一のブランドになってしまった。

 

アンドロイドを選ぶ理由は「性能」

アンドロイドを選ぶか、iOSiPhoneを選ぶかで、重視をしたポイントは、想像の通りで、iPhoneは操作のし易さ、ブランド、デザインなどが上位にくる。iPhoneは女性ユーザーが多く、スマホをアクセサリーのひとつとして考え、多少高くても高級なものを持ちたいと考えるのだろう。

一方で、3年前はアンドロイドの1位または2位にきていた「価格」は4位まで後退している。性能や画面配置(アイコンや壁紙などの画面構成)、デザインなどでアンドロイドも選ばれるようになっている。特にiPhoneの弱点であった急速充電、セルフィーカメラ画質などで国産スマホは消費者の心をつかんできた。

ただし、ブランドに魅力を感じて選んでいる人はまだ多くなく、各メーカーはまだまだアップルに追いつくためにしなければならないことが多い。

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ユーザープロフィールが似ているiPhoneとOPPO

国産スマホであるファーウェイ、OPPO、vivoは、同じではなく、ユーザープロフィールに大きな違いがある。

面白いのは、どのような場所でウェイボーにツイートをしているかのデータだ。iPhoneの場合「レストラン」「小売店」「屋外」が上位で、消費生活を楽しんでいる様子がうかがわれる。

面白いのは、iPhoneとOPPOはよく似ているのに、サムスン、ファーウェイ、シャオミーになると「オフィス」が上位にきて、娯楽はホテル(旅行)が多い。なんとなく、普段はバリバリ働いて、休暇は旅行に行くというアクティブな姿が浮かんでくる。

ちょっと変わっているのがvivo。レストランではなく、中華料理店からのツイートが多い。地方都市で、遊びにも目もくれず、商売にいそしんでいる姿が浮かんでくる。

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都会のiPhone、地方都市のOPPO

また、興味深いのが、各機種ごとの男女別、年齢別、都市別データだ。iPhone 8とOPPO R11が面白い対照を見せている。

OPPO R11は、カメラ機能でアピールした機種。デュアルカメラで高精細な写真、動画が撮れるだけでなく、インサイドカメラの解像度も高くし、美しいセルフィーが撮れることから、女性に受けている。男女比で見ると、iPhone 8とOPPO R11が女性比率が高いのだ。

ところが年齢、や都市分布を見ると、iPhone 8は30代以上まで広がっていて、1級都市、2級都市が中心であるのに対して、OPPO R11は若い世代のみであり、4級以下の都市にまで広がっている。

つまり、iPhoneとOPPOはかなり似通っていて、地方都市の若い層はiPhoneではなくOPPOを選んでいるのだと思われる。iPhoneは大都市では販売店もサービス拠点も多いが、3級都市以下になると販売拠点が少なくなることが大きいのではないかと思われる。

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男性ユーザーが多いシャオミー

また特徴的なのがシャオミー6。男性比率が80%近い。ツイートする場所のデータでも「オフィス」「ホテル」「娯楽施設」で、「働く男のシャオミー」というイメージなのかもしれない。

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地方都市で好まれるvivo

vivoも特徴的だ。見事に4級以下都市にユーザーが多い。地方都市の人が使うvivoというイメージのようだ。

なお、報告書では、その他の機種についても、このようなプロフィールデータを掲載している。グラフなので、中国語がわからなくても理解ができる。興味のある方は報告書本文を読んで見ていただきたい。

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横並びにならない競争をしている中国スマホメーカー

こうして見ると、中国スマホのユーザープロフィールは、ブランドごと、機種ごとに大きく違っていることがわかる。それも当然だ。中国企業は、横並び競争をせずに、横に並ばない競争=差別化戦略が徹底しているからだ。急速充電、セルフィー撮影がiPhoneの弱点だと見ると、すぐにそこに特化した機種が登場してくる。

現在、中国のスマートフォン消費は伸び悩んでいるが、関係者は悲観していない。今年から5Gの利用が始まり、2019年には100万箇所以上の4G基地局が5Gに更新される。そのために、買換え期間が伸びていることが原因で、来年になれば販売台数は大きく伸びると見ているからだ。今年は、5Gを意識したスマートフォンが登場してくることになる。

 

アリババで7年働いたら、マンション3つ買えた。中国IT企業、報酬トップ10

アリババの社員と称する人物の匿名発言「アリババで7年働いたら、マンション3つ買えた」が話題になっている。IT系の職業専門学校「鼎利学院」は、卒業生などの情報から、中国IT企業の報酬と待遇分布をまとめた。

 

月給の額を尋ねるのが好きな中国人

中国人は、他人がいくら稼いでいるのかを尋ねるのが大好きだ。挨拶代わりに気軽に聞くし、答える方も気軽に答える。社員同士でも教え合うので、企業はおかしな給与体系にするわけにはいかない。誰かを特別扱いするようなことをすると、それが社内にあっという間に広まり、「バカバカしい」と社員がどんどん転職していってしまうのだ。そのため、ある程度の企業になると、階級を定め、それに業務評価を加えて、どのように給与を決定するかというアルゴリズムを社員に公開している。ある意味、極めて公平性の高い分配が行われているのだ。

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アリババで7年働いたら、マンション3つ買えた

最近、アリババの社員と思われるネットでの匿名発言が話題を呼んでいる。それは「アリババで7年働いたら、マンション3つ買えた」というものだ。「アリババでの努力は報われる。能力があって、意識も高い人はすぐにアリババにきた方がいい。生活が安定するよ。この7年で、マンションは3つになった。この選択に感謝している。みんな、頑張れよ!」という内容。

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▲アリババ社員と称する匿名の人物が発言した「アリババで7年働いたら、マンション3つ買えた」発言。ネット民をざわつかせている。

 

報酬が二極化しているファーウェイ

鼎利学院は、成都市にあるITの専門学校。ここが卒業生などの情報から、各IT企業の報酬トップ10と、その分布をまとめている。

それによると第10位は、ECサイト「唯品会」で1万9660元(約33万7000円)。第9位はスマホメーカーのファーウェイで、1万9770元(約33万9000円)。しかし、この情報は卒業生などから収集したもので、実際ははるかに高いのではないかと鼎利学院は注釈をつけている。なぜなら、ファーウェイの2017年の人件費は1068億元(約1兆8000億円)で、社員数が18万人だとすると、平均年収は58万元(約995万円)になるからだ。

分布を見ると、少ない方にも小さいピークがあるので、社内では高給を取れる人と取れない人の二極化があるのだと思われる。

以下、グラフの単位は1000元(約1万7000円)。50が約85万円に当たる。

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グーグルも二極化

第8位はグーグル中国の2万1430元(約36万7000円)。グーグルはサービスに関しては中国市場から撤退をしているが、サイエンティストの李飛飛氏が中心となり、人工知能研究のオフィスを開設して、約150人程度の社員がいる。グーグルも分のピークが2つあり、給与は二極化している。

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百度には低水準給与の人はいない

第7位はセキュリティ企業の「360」で2万1560元(約37万円)。第6位は検索エンジンの「百度」で2万2030元(約37万8000円)。百度は、固定給と業績給の他、自社株支給もあるという3階建の給与体系になっている。分布を見ると、ピークはひとつで、二極化はないようだ。と言っても、給与が低水準になるような人は、離職していくのではないかと思われる。

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ウーバーを買収してから給与が上がった滴滴出行

第5位は検索エンジンの「捜狗」で、2万3350元(約40万円)。第4位はQ&Aサイト運営の「知乎」で2万4560元(約42万1000円)。第3位はライドシェアの「滴滴出行」で2万7540元(約47万2000円)。解説によると、ウーバーチャイナを買収して、事実上のトップ企業になったあたりから、給与も大きく上がったという。

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高所得者が多く、福利厚生も手厚いテンセント

第2位はSNSやゲームなどの「テンセント」で、2万8770元(約49万3000円)。分布を見てもらえばわかるが、ほとんどが2万元から5万元の間になる。給与が高いだけでなく、福利厚生もしっかりしていて、無利息の住宅ローンなども用意されている。

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圧倒的高収入のアリババ

第1位はやはり「アリババ」で、3万2570元(約55万9000円)。しかも、アリババは年に16ヶ月分の給与が支払われ、年に1回のボーナスが業績評価により0ヶ月から6ヶ月の間で支給される。90%の人が3ヶ月分以上のボーナスをもらうそうだ。つまり、年に16+3=19ヶ月分の給与をもらうことになる。これを12で割って、月給に直すと5万1569元(約88万5000円)となる。

日本の中小企業から見たら、毎月ボーナスが出ているような話で、しかも本社勤務であれば、物価の安い杭州市。使い手はものすごくある。感覚的には日本の2倍から3倍程度の価値がある。アリババの社員が「7年働いたら、マンション3つ買えた」というのもまんざら嘘でもない。

ただし、唯一の欠点は、残業が多すぎて、お金を使う暇がないということだろう。

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杭州市にあるアリババ本社は、観光名所にもなりつつある。物価の安い杭州市に、中国一平均給与が高い企業がある。

 

北京のIT企業、夜10時。社員がまだ残業しているか調べてみた

北京のIT企業は何時まで残業をしているのか。夜10時すぎ、記者が本社ビルを回って、ついている灯りと迎車にきているタクシーの数を数えて、残業の程度を調べてみた。どの企業も、夜10時まで残業するのが当たり前のことになっていると北京日報が報じた。

 

北京のIT企業も10時始業、10時終業が当たり前

北京の某IT企業に務める馬科(仮名)は、毎晩、仕事が終わるのが夜10時だという。馬科は、北京日報の取材に応えた。「会社は残業を奨励していません。でも、仕事が終わらないのです」。

馬科は、会社から5kmほどのところに、3人でマンションを借りてシェアしている。夜10時であれば、地下鉄もあるし、バスで帰ることもできる。それでも、馬科はスマートフォンでタクシーやライドシェアを呼ぶ。「会社は残業を奨励していないと言っているものの、夜8時になるとマクドナルドなどの夜食の出前が無料になります。また、夜10時を過ぎるとタクシー代が出るのです」。

馬科は家に帰って、ゲームで1時間ほど遊ぶ。そして、深夜12時ごろ寝る。そして、6時か7時に起き、10時には出社をする。「平日は毎日こうです。週末は自分のためだけに使いたい。バスケをしたり、映画を見たりします。恋人はいませんが、恋人探しをする余裕はないですね」。

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京東10時20分。帰宅ラッシュでタクシーは100台

高給である分、仕事が忙しいのは仕方がないことなのかもしれない。北京日報の記者は、北京市内のIT企業はどこでも似たような状態なのかを調べるために、夜10時前後に企業の社屋をまわってみた。

ECサイト企業「京東」の本社ビル。木曜日の10時20分の様子。ビルの灯りはほとんどついているが、社屋前に約100台以上のタクシーが迎車にきている。これから、帰宅のピークが始まるのだと思われる。タクシーは駐車場や道路に並びきれず、京東の警備員が出てきて整理をしている。運転手の一人に取材をした。「このビルには2万人ぐらい働いています。帰宅はみな遅く、タクシー代は会社から出るようです。地下鉄でも帰れるのですが、地下鉄を使う人はいないですね」。

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▲京東、10時20分。帰宅のピークで、100台以上のタクシーが待っている。警備員が出てきてタクシーの整理をしている。

 

アリババ11時10分。灯りはついたまま

アリババの北京支社には木曜日の11時10分についた。11時をすぎているのに、7割ぐらいの灯りがついている。迎車にきているタクシーは約20台ぐらいだった。アリババも残業した場合は、タクシー代が支給されるようだった。

テンセントの北京支社には、金曜日の10時35分。役20台のタクシーが迎車にきていた。テンセントは、北京市内にはビルを一棟所有せず、数カ所のビルに分散してオフィスを持っている。そのため、灯りからどのくらい残業をしているのかは判断できなかった。

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▲アリババ北京支社、11時10分。ビルの灯りはほとんどがついている。

 

百度11時15分。タクシーの行列ができる

百度には金曜日の11時15分についた。約50台のタクシーが迎車にきていた。周囲の道の交通量は多く、特にタクシーが多い。記者は、まるで空港のように車が多いと感じたという。百度のビルは灯りがほとんどついていて、タクシーは一列に並んでいる。

運転手によると「百度はいつも9時ごろから社員が帰り始めますね。11時頃にも帰宅の波があり、12時30分にも波があります」と言う。また、タクシー代は会社が払ってくれる制度があるものの、全員ではなく、自腹でタクシー代を支払う人もいると言う。

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▲夜11時15分の百度。普通に社員が仕事をしている。

 

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百度本社前の知春路には、50台以上のタクシーが路上で、社員を待っている。一車線ふさがっているので、軽い渋滞が発生している。記者によると「まるで空港のよう」。

 

過度の残業が労働トラブルになる事例が増えている

このようなIT企業で、ほぼ全員が帰るのは深夜の3時、4時で、翌朝の9時または10時に出社をしなければならない。

すでに、残業が多すぎて離職をする社員も増えており、離職後に「適切な残業手当をもらっていない」として、労働人事争議仲裁院に仲裁を求める事例も増えているという。IT企業が集中する北京市海淀区の海淀区労働人事争議仲裁院の孫維一主任は、北京日報の取材に応えた。「この地区では、残業に関する労働仲裁が常に起きています」。

北京市国漢弁護士事務所の楊暁波弁護士は、「残業をするときは、できるだけデータをつけておいてください。あとで、労働法に定められた自分の権利を守るときに役立ちます」とアドバイスする。

中国IT企業にも、数年後には、残業時間を規制する働き方改革の波がやってくるのかもしれない。

 

マンション購入者は、都心志向で、iPhoneが好き。車はなし

テンセントデータラボは調査プラットフォームTalking Dataと共同して、「住宅購入者洞察報告」を公開した。多くの人が、都心の職場から30分以内の場所にマンションを購入し、都会的なライフスタイルを送っていることが明らかになった。

 

マンション購入者は30歳前後の独身男性

2017年中に住宅を購入した人は、男性が66.9%、女性が33.1%、年齢は26歳から35歳が最も多いという結果になった。

この結果は、誰もが想像する通りだが、大きく違うのが独身が主体であるということだ。未婚率が72.6%にもなる。

これは中国の習慣によるところが多い。それはマンションを所有しているかどうかが、結婚相手選びの大きな条件のひとつになっているのだ。独身のうちにマンションを購入し、それから結婚相手を探す。そういう習慣が統計にも現れている。

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▲住宅購入希望者の大半は男性。中国では「男性が結婚前に住むところを用意する」という習慣が根強い。

 

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▲年齢別では26歳から35歳が最も多い。しかし、未婚率は72.6%で、独身男性が住宅購入の中心となっている。

 

子どもの戸籍の問題から、結婚時に住宅を所有したい

「家も持っていない男性とは結婚したくない」と考える女性が多いのは、単なるイメージの問題だけでなく、切実な問題もある。それは、賃貸で暮らしていると、生まれてくる子どもが都市戸籍を取得できるかどうかが怪しくなるのだ。戸籍の制度は複雑で、賃貸暮らしの場合は、市内に居住している期間のみ都市戸籍が与えられる準戸籍扱いになるケースもある。その場合、子どもが大学まで市内の学校に通えるかどうかが怪しくなる。

間違いないのは、市内に住宅を所有し、そこで子どもを作ることだ。だから、住宅を所有していることが、結婚の大きな条件になっている。

 

都心に住んで、自動車は持たない

一方で、自動車所有率が9.3%とかなり低いことだ。テンセントデータラボでは、「自動車の購入よりも、住宅の購入を優先している」と説明している。まずは住宅、自動車のことは余裕ができてから考えるということだろう。

そのため、都心のマンションに対する強いニーズがある。北京、上海、成都、深圳の4大都市のビジネス街に通勤する人に、購入した住宅の場所がどのくらいの距離離れているかを尋ねると、圧倒的に多いのが15km以内だった。これは通勤時間にするとおおよそ30分以内ということになる。1時間以上かかる場所の住宅を購入した人は、どの都市でも10%以下だった。

住宅ローンがあるために自動車まで手が回らないということもあるだろうが、都心に住むことによって、自家用車不要のライフスタイルを選択しているようだ。

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▲4大都市で、職場と住宅の距離を尋ねると、大半が「通勤30分以内の住宅」。

 

住宅所有者はiPhone率が高い

使用しているスマートフォンのブランドを尋ねると、圧倒的に強いのがアップルで、次にシャオミーがくる。現状の販売シェアでは、シャオミーはヒット機種が出て上位にきているが、アップルはすでに7位まで落ち込んでいる。性能に比べて価格が高いと思われている。しかし、住宅購入希望者だけに絞ると、圧倒的にアップルが強いのだ。価格よりも、快適さなどを優先していると思われる。

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▲使っているスマートフォンは、一般的な売れ行きシェアとは異なり、アップルが圧倒的に強い。多少高くても、快適に使えるスマートフォンを使いたいと考えるようだ。

 

変わらない都心志向

その他の行動でも、都会型のライフスタイルが浮かび上がってくる。経済的には余裕があり、アップルが好きで、新しいものが好き。カジュアルブランドが好き。写真が好きで、セルフィーもよく撮り、撮影した写真もよくSNSにあげる。よく利用するアプリはSNSとゲーム。娯楽が好きで、よく出かける。ECサイトが好きで、学習することも好き。

住宅の都心志向は年々強まっているので、都心のマンション価格は下がらないどころか、まだまだ上がっている。大都市では、地下鉄を郊外に延伸をして、郊外に大規模集合住宅の開発はを行っているが、人々はやはり都心の企業に勤めて、都心に住むことを望んでいるようだ。

 

 

中国で流行するガラスの吊り橋。割れる。

中国の観光地に次々とガラスの吊り橋が登場している。下が透けて見えるのでスリル満点ということから観光客に人気だ。ガラスの吊り橋は進化をして、透明ディスプレイ技術を使い、割れる演出やさまざまな映像を表示するガラスの吊り橋が登場していると雪花新聞が報じた。

 

中国各地に登場するガラスの吊り橋

中国ではガラスの吊り橋が流行している。映画「アバター」の背景にも使われた湖南省張家界に強化ガラスの桟橋が登場すると、あっという間に中国各地の観光地に、ガラスの吊り橋が登場している。

非常に高い位置に設けられた桟橋で、下が透けて見える。安全だとわかっていても怖い。中国人はこういったスリルが大好きなようで、多くの観光客が訪れるようになった。

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▲最初に有名になったガラスの桟橋。スリルと雄大な自然を求めて、多くの観光客が訪れる。

 

やりすぎの安全アピールも

張家界では、一昨年にガラスの吊り橋も開通した。開通する時には、男性たちがハンマーでガラスを叩き、ひびが入ったところで、その上を自動車が通行するという安全パフォーマンスまで行っている。

ひびが入ったガラス面をどうしたのか、不安になるが、こういったパフォーマンス、スリルに惹きつけられる人が多いようだ。

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▲張家界のガラスの吊り橋では「安全検査」と称して、ハンマーでガラスを割るという無茶なパフォーマンスが行われた。安全をアピールするためのものだった。

 

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▲さらにその上を自動車が何度も通行する。このパフォーマンスは、広く報道され、安全よりも存在をアピールすることに成功した。

 

床が割れる演出があるガラスの吊り橋

このガラスの吊り橋は進化をしている。今年の春、広東省東莞市郊外の隠賢山庄に開通したガラスの吊り橋は、割れる。

歩いていると、「バリッ」と音がして、床が割れるのだ。もちろん、実際に割れるのではなく、液晶フィルムが仕込まれていて、ひびの形の映像が表示されるのだ。この橋は、高さ92mのところにかかっていて、30階建のビルとほぼ同じ高さ。長さは286mもある。

ひびが映像だとわかっていても怖く、腰を抜かして、歩けなくなる人が続出しているという。

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▲隠賢山庄のガラスの吊り橋。何もしなくても、下が透けて見えるだけでかなり怖い。この上に、ガラスが割れる演出がある。

 

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▲渡る人はかなりの恐怖を感じる。ネットでは「本当に割れた時に、ちゃんとわかるの?」と心配する声があがっている。

 


中国又一座玻璃吊桥有玻璃碎裂效果过桥吓死人

安徽省馬仁奇峰のガラスの吊り橋にも、割れてひびが入る演出がある。

 

透明ディスプレイ化して映像を表示する演出も

また、安徽省石台県の酔山野に、今年6月に開通したガラスの吊り橋はさらに進化をしている。床のガラス面がディスプレイになっていて、池の中に鯉が泳いでいるような映像が表示されたり、草原の草が風になびく映像が表示されたりする。

また、曇りガラスになって、一瞬で透明化する演出や、ひびが走って割れる演出なども用意されている。

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▲酔山野のガラスの吊り橋は、床が透明ディスプレイになっている。視野角の問題で見づらいが、床面に池の中を泳ぐ鯉の映像が表示されている。意外に最先端のテクノロジーが使われている。

 

先端テクノロジーを面白アトラクションに使う中国

この酔山野のガラスの吊り橋は、これだけ見てしまうと、ただの観光地の面白アトラクションにすぎないが、使われている技術は透明ディスプレイだ。自発光する有機ELを使うか、液晶の場合は、バックライトを側面から画面全体に回り込ませる工夫が必要になり、まだまだコストが高くつくか、技術的ハードルがあり、ようやく実用化が始まったばかりのもの。

オフィスや店舗のパーティションに効果的だし、街中のデジタルサイネージとしての効果も高い。さらには、自動車のフロントグラス、スマートフォンタブレットへの応用も期待されている。

そのような近未来技術を、こんなところに使ってしまうのが中国らしい。面白アトラクションといってもバカにすることはできず、新しいテクノロジーはまずエンターテイメントに応用することで、人々に認知されるのだ。このガラスの吊り橋で、どの観光地も観光客数が伸びているので、経済的にも見合う。意外にとても正しい初期戦略なのかもしれない。