中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

盛り上がりに欠ける中国のブラックフライデー

中国では、ECサイトのセールとして「独身の日」が有名になったが、輸入商品を主体にする越境ECサイトではブラックフライデー(11月の第4金曜日)にセールを行う。しかし、独身の日に押されて、ブラックフライデーはなかなか盛り上がらないと中国経営報が報じた。

 

中国の独身の日vs米国のブラックフライデー

小売店のセール時期は、以前は、伝統的な文化に根ざしていた。欧米のクリスマスセールや日本の初荷、福袋など、一応の文化的な理由付けがある。しかし、最近のセール時期は、そういったものとは無縁で、多くが小売店側の都合による者だ。

その中でも有名なのが、中国の「独身の日」と欧米のブラックフライデー(11月の第4金曜日)だ。

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▲「双11」という言葉は、アリババが権利を持っているので、他のECサイトは「11.11購物狂歓節」(買い物肉類喜ぶ祭り)という言葉を広めようとしている。

 

大学生の遊びから始まった「独身の日」

中国では、クリスマス、年末というのは国民的なイベントではない。カレンダー上は、西暦を使っているが、未だに新年は2月から3月の旧暦の正月である春節だ。中国人の気持ちの中では、春節がこないと新しい年になった気になれない。

そのため、小売店は夏から春節までの半年間、セールス的には厳しい時期を迎える。夏を過ぎれば冬物が売れるが、それ以降、売上はパッとしない。

2009年、アリババは11月11日の光棍節に目をつけた。光棍節は、「棒だけの祭日」という意味。南京大学の学生たちが、ジョーク交じりに始めたお祭りで、1が4つ並ぶことから、「独身者が集まって騒ぐ日」とした。当時、スマートフォンもまだ普及してなく、ECサイトを使うのはパソコンを持っている若者が多かった。そこで、アリババは「この日に自分へのご褒美を買おう」というセールを行った。当初は数十店舗しか参加しないささやかなセールだったが、スマートフォンの普及とともに急成長。今年は1日で約2.8兆円を売り上げる狂乱の日になった。ちなみに日本のアマゾンの年間の売り上げが約1.1兆円、その狂乱ぶりがわかる。

アリババは「双11」と呼んでいるが、他のECサイトも参加、「購物狂歓節」(買い物に狂い喜ぶ祭り)というネーミングが定着しかかっている。

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感謝祭の売れ残りセールだったブラックフライデー

一方、米国では、11月第4金曜日のブラックフライデーが最大のセールス日となっている。現在は、クリスマスセールよりも、こちらに力を入れている小売店が多い。本来は、前日の11月第3木曜日の感謝祭でのセールで売れ残ったものを格安で販売する日だった。それが次第に本格的なセールの日となり、大勢の人出があり、道路が渋滞するまでになった。それで、警察から「最悪の一日」という意味で、ブラックフライデーと呼ばれるようになったという説もある。あるいは、小売店から見て、「黒字にできる日」という意味でブラックフライデーになったという説もある。

いずれにしても、ここからクリスマス商戦になだれ込んでいくことになり、そのスタートセールであるブラックフライデーは、米国の小売店にとって重要な日になっている。

 

独身の日か、ブラックフライデーか。悩む中国のECサイト

中国の各ECサイトは、この独身の日に参加すべきか、ブラックフライデーに参加すべきかを迷っている。アリババのT-mallは独身の日を主導するが、アマゾンチャイナは他国のアマゾンに合わせてブラックフライデーを主導するからだ。一般に、国内製品を主体に売る京東などは独身の日にセールを行うが、アマゾン、カオラー、ヤマトなどの越境ECサイトと呼ばれる輸入製品を多く扱うECサイトブラックフライデーにセールを行う。

アマゾンチャイナは、プライム会員数がすでに1500万人いて、決して無視できない勢力になっている。

 

先に訪れる独身の日は大盛況、ブラックフライデーは盛り上がらない

しかし、問題は独身の日が11月11日で、ブラックフライデーの11月第4金曜日よりも先に行われるという点だ。独身の日が、「購物狂歓節」と呼ばれるほど盛り上がりすぎて、ブラックフライデーには消費者が疲弊してしまっている。今年、独身の日の売り上げは、T-mallが1682億元(約2.8兆円)、京東が1271億元(約2.1兆円)と驚異的なものだった。

同時に、米国ではブラックフライデーを前倒しして始めるようになってきている。ライバルに勝つために、より早くブラックフライデーセールを始めてしまうのだ。これに追従して、中国内のブラックフライデーも早まる傾向がある。ますます、独身の日とブラックフライデーの間の期間が短縮され、消費者の疲弊の影響が現れやすくなっている。

特に今年は、独身の日が大盛り上がりだったため、ブラックフライデーはその分地味になってしまった。中国政府は、輸入消費を奨励していて、一部の輸入品の関税を17.3%から7.7%に下げる措置を行った。しかし、中国のブラックフライデーはもうひとつ盛り上がりに欠けたようだ。

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山東大学学生寮に顔認証を導入。化粧、メガネもOK。整形もちょっとならOK

山東省・山東大学の学生宿舎70棟に、今年から顔認証システムが導入された。外に出るにも、中に入るにも顔認証が必要となる。化粧、眼鏡、小さな整形も問題ない。山東大学では、学生の管理に利用する予定だと北青網が報じた。

 

引きこもってしまう学生は自動的にカウンセラーに通知

中国の大学の新しい年度が始まる今年の9月から、山東省の山東大学では、済南市にある6カ所、70棟の学生宿舎に、顔認証ゲートを設置した。入居者は、学生宿舎に入るにも、出るにも、この顔認証をパスしないとゲートが開かない。個々の学生の出入りが自動的に記録されることになり、長期間にわたって外に出ない学生の情報は、自動的にカウンセラーに通知される。

山東大学洪家楼10号棟に入局する芸術学部の孔方妍は、北青網の取材に応えた。「以前よりずっと便利ですし、安全にも感じています。以前は、カードでゲートを開ける方式でしたが、しっかりと閉まるわけではなかったので、他人が入ろうとすれば入れてしまっていたのです」。

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▲宿舎から出る時に、読み取り装置に顔を見せる。化粧をしている、していないはほとんど問題なく判定できる。

 

学習をして、正答率が上がっていく

この顔認証システムは、山東大学の校友である北京眼神科技有限公司が無償提供をしたもの。登録している写真と、顔の映像を比較して、一致するかどうかを判定するだけでなく、学生が顔をシステムに見せるたびに学習をして、正答率を高めていく機能があるという。山東大学英語学部の肖寒は、顔認証システムが導入された当日、6回も出入りをした。「最初は、うまく認証してくれませんでした」。しかし、1週間後には、システムが肖寒の顔を学習し、誤認証はまったく起こらなくなったという。

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▲宿舎に入る時も認証が必要。学生の出入りの時間は自動的に記録され、問題行動のある学生は自動的にカウンセラーなどに通知がいく仕組みになっている。

 

化粧もメガネも大丈夫。美容整形もちょっとなら大丈夫

大学生でも、まだ成長をして、顔が変化することもある。このシステムは、そのことを考慮して、学習するように設計されている。北京眼神科技の陳瑞丹副総裁は、北青網の取材に応えた。「双子の場合、システムは当初はうまく識別できません。しかし、何回も読み取りをすれば、わずかな差異を認証して、双子でも識別できるようになります」。

さらに、女子学生の場合、化粧をした時としていない時で、同一人物と認証をしてもらえるのだろうか。ある女子学生は、まったく問題ないと答えた。なぜなら、夜、化粧をせずにコンビニに買い物にいく時も、休日に化粧をしてデートに出かける時も問題なく認証してくれたからだという。

北京眼神科技の担当者は、北青網の取材に応えた。「化粧はまったく問題ありませんし、眼鏡も問題ありません。整形をされた場合、限度問題ですが、小さな美容整形であればシステムは学習をすることができます」。

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▲管理側では、誰が出入りをしたかが一目瞭然。学生たちの顔は変わっていくことを考慮して、システムは顔の変化も学習していく機能が組み込まれている。

 

学生の生活状況を管理するために使われる

この顔認証システムは、学生宿舎の安全性を高めることが主な目的だ。学生宿舎の居室には、友人や親なども立ち入り禁止で、ロビーなどの共用スペースで会うことが義務付けられている。カード方式では、学生が友人を連れ込んでしまうことがあったが、顔認証ではそれができなくなる。

また、学生が宿舎にいるかどうかも一目瞭然となる。学生の中には、授業をサボって、こっそりと宿舎に舞い戻って、自室でゲームをしている者もいたが、顔認証システムではそれもできなくなる。なぜなら、今後、学生が外出したら、自動的に無人になった部屋の電力供給を停止するシステムを組み込む予定だからだ。

また、朝帰りをする学生、授業をサボって昼まで寝ている学生も、自動抽出され、宿舎の管理者やカウンセラーに自動的に通知されるシステムも組み込む予定だという。

勉学にあまり熱心ではない学生たちは、ため息をついているのかもしれない。

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サムスンがアップルに真っ向からケンカを売る

バッテリー問題で元気を失っていたサムスンが、少しずつ元気を取り戻してきた。サムスンがギャラクシーノート8のプロモーションとして公開した映像は、ことあるごとにiPhoneの10年を皮肉ったもので、中国でも話題になっていると、捜狐科技が報じた。

 

このサムスンのプロモーション映像Grow up with an upgrade to Galaxyは、ある男性がiPhoneの発売された2007年から2017まで、iPhoneを使いづけたが、がっかりすることばかりに出くわし、結局、Galaxy Note 8に乗り換えたというストーリー。

映像は非常にうまくできており、iPhoneユーザーなら「ある、ある!」とニヤリとしてしまうシーンばかり。一部の噂では、いちばん面白がって再生しているのはiPhoneユーザーではないかとすら言われている。


Samsung Galaxy: Growing Up

 

2007年、主人公は長い行列に並んでiPhone 3GSをようやくのことで手に入れる。しかし、2010年、写真を撮ろうとすると「空き容量がありません」のメッセージ。

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2013年、iPhone5Sを購入。主人公に恋人ができた。恋人はGalaxy Note 3を使っている。電話番号を交換しようとすると、恋人はスタイラスを出して、サラサラとメモ。主人公は指で番号をモタモタと入力。

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2015年、主人公は雨の中、新しいiPhone 6を買おうと辛抱強く行列。

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2016年、恋人とふざけていて湖に落っこちてしまう。しかし、恋人のGalaxy S7 edgeは完全防水なので問題なし。撮影した写真もちゃんと保存されている。しかし、主人公のiPhone 6Sは、防水ではないので、ご臨終。

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2017年、主人公はiPhone 7を購入。箱を開けると、不思議な短いケーブルに困惑する主人公。充電しながら音楽を聴こうと思ったら、アダプターつけまくりのスパゲッティ状態。一方、恋人はGalaxy S8をQiで無線充電中。

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主人公は、結局、iPhoneをやめて、Galaxy Note 8に乗り換え。すると、iPhone Xを買う人の行列が。その中の一人が、珍妙な髪型をしている。iPhone Xの上部の切り欠きと同じ、iPhone Xヘアーをしているというもの。

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IDCの世界市場でのスマートフォンシェアの統計によると、サムスンはバッテリー問題がありながらも、シェア1位の座を保持し、なおかつわずかながらシェアを伸ばしている。アップルはシェアが伸び悩んでいる(ただし、この後、iPhone 8iPhone Xを発売するので、シェアを伸ばしているはずだと考えられる)。

このような強気のプロモーションビデオを作ってしまうあたり、サムスンに元気が戻ってきたと言えそうだ。

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ただし、iPhoneユーザーが見ても、決して嫌な気分にはならない。iPhoneユーザーは、このビデオでおちょくられているところとは別のところでiPhoneを気に入って選んでいるので、むしろ「ある!ある!」と一緒に笑ってしまうほど。

こういうユーモアのある競争はもっとやってもらいたいところだ。とにかく、サムスンが元気になってよかった。お帰りなさい、サムスンiPhoneユーザーは心より歓迎をいたします!

 

世界最速でスマホが普及するインドは、スマホ中毒者も世界最速で急増中

インド情報通信監査局(TRAI)は、2017年第一四半期に、携帯電話利用者が11.8億人に達し、世界で第2位の携帯電話市場になったと発表した。スマートフォンの普及も世界最速で、すでに4.5億人の利用者がいるという。しかし、スマホ中毒者も急増し、社会問題になっていると36クリプトンが報じた。

 

急増するスマホユーザー、社会問題も急増

インドでも、スマホが急速に普及をしている。中国産のシャオミー、ファーウェイ、OPPO、vivoなどのスマホが大量に流入しているからだ。インドでは、スマホを現金一括で購入するのが主流であるため、高価な機種は敬遠される。中国のスマホメーカーは、高級機を中国国内で売り、格安機をインドを中心としたアジア圏で売るという戦略で利益をあげている。

インターネット環境が貧弱なインドにおいて、スマホはあらゆる方面で福音になっている。仕事は効率的になり、学生は勉強がはかどり、生活ではさまざまなサービスが利用できるようになった。

しかし、一方で、スマホ中毒者も急増し、社会問題になろうとしている。歩きスマホをしていた男性がバスに跳ねられるという映像も出回っている。


Man Distracted by Cellphone Knocked Down by Bus !!!Amazing!!!

▲インドでも歩きスマホによる事故が起こり始めている。世界中で共有された映像だが、男性の安否は不明。

 

約4割がスマホ中毒に

アンケート調査によると、スマホ利用者の40が、毎日2時間から6時間使うというスマホ中毒状態になっている。また、2/3の利用者は朝起きてから30分以内にスマホを使い、38%の利用者が夜、スマホでゲームで遊ぶ。

86%がSNSを使い、74%がスマホで音楽を聴き、61%がスマホで動画を楽しみ、59%がスマホでゲームを楽しんでいる。スマホを失くしたらどう感じるかという質問には、67%の利用者が「何もできなくなる」と回答している。

現在のスマホユーザーは4.5億人だが、5年後には8.9億人に、毎月の通信量は現在1GBだが、5年後には11GBになると予測されている。

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▲電車の中、カフェ、公園。どこでも座れるところがあればすぐにスマホを見てしまうおなじみの光景がインドでも当たり前になりつつある。

 

世界最速の普及スピードのインド。問題も最速で噴出することに

インドに限らず、どの国でもスマホ中毒、歩きスマホの問題は、スマホの普及があまりにも早すぎたために、人間の方が追いつけないために起きている現象だ。インドは、人類最速のスピードでスマホが普及をし、もはや世界第2位の市場となり、今後も最速で伸びていくことになる。

モバイル革命により、インド社会は急速に進化をしていくことになるが、同時に負の面も他の国より顕著に現れることになる。

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テンセントがグループでロゴタイプ書体を統一

中国IT企業大手テンセントが、企業ロゴタイプを変更した。単なるロゴタイプ変更ではなく、テンセント字体を作り、グループ企業もこの字体を使ったロゴタイプに統一をすると好奇心日報が報じた。

 

既存フォントを使って企業ロゴタイプを作る欧米企業

日本では、企業のロゴタイプを1から作るレタリングをすることが多いが、欧米のアルファベット圏の企業では、既存フォントを使ってロゴタイプを作るのが普通だ。有名なのはヘルベチカという書体で、ルフトハンザ、ノースフェイス、マイクロソフトパナソニック、ジープ、スコッチ、3M、ターゲット、ネスレなどが採用している。多少、カスタマイズをすることもあるが、多くの場合は、書体そのままが使われる。

ロゴタイプを作成するデザイナーは、書体を選ぶだけで、日本的感覚だと、手抜きのようにも思えてしまうが、アルファベット書体は何万種類もあり、それぞれにイメージが異なっているので、適切な書体を選ぶだけでも、かなりの知識とセンスと議論が必要になる。

1からレタリングをしたところで、結局、既存フォントのどれかに近いものになってしまいがちで、それだったら、最初から既存フォントを使った方がいいという考え方だ。特に、歴史のある書体の場合、その書体のもつイメージを企業のイメージとして伝えやすく、また、どのような文字組みにしても自然な感じに仕上がる。

しかし、日本や中国の漢字圏の場合、既存書体を利用しようとしても、アルファベット圏ほど書体の数が多くなく、企業が表現したいイメージにぴったりの書体が見つからないことも多い。そういう場合は、1からレタリングをして作ることになる。

テンセントは、ロゴタイプだけでなく、6763字あるテンセント書体を作り、これを使ってロゴタイプを作成した。この書体には、ギリシャ文字、ひらがな、カタカナ、キリル文字なども含まれている。

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▲テンセント書体。グループ内で使われる書体なので、外部に公開される予定はない。元々はテンセントのロゴタイプ刷新のプロジェクトだったが、結局6763字をデザインする書体を作ってしまった。

 

グループ全体で同じ書体を。書体作りが始まった

テンセントでは、「Tencent騰訊」というロゴタイプだけをオリジナルで作成して、創業以来18年間使ってきた(騰訊はテンセントの中国名)。2年前から、このロゴタイプを一新する作業が進められてきた。

最初に行われたのは、英文のバランスを整えることだ。小文字をやや小さめにして、従来右に14度傾いていたものを11度に修正した。漢字部分も、英文のフォントに合わせ、線を細くし、ハネなどをゴシック風に変えた。また、文字色もパントーン2945Cからパントーン2728Cに変え、明るく鮮やかな印象にした。

このロゴタイプを、社内で1年間試用をして意見を集めた。すると、評判がよく、グループ内企業でも同じ書体を使いたいという希望が殺到した。それで、企業ごとに新しいロゴタイプをデザインするのではなく、テンセント書体を作り、グループ企業はその書体を使ってロゴタイプを作るということになった。

だとしたら、漢字と英字だけでなく、ひらがな、カタカナ、繁体字なども入れなくてはならない。そこで、日本の東京支社から小林章、土井遼太、米国本部からスティーブ・マターソン、ジュアン・ビルニューブ、香港支社から許瀚文、許大鵬、馮景祥などのデザイナーが集められた。

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▲上が以前のロゴタイプ。下が新しいロゴタイプ。一見似ているが、色合い、小文字のバランス、傾き、ハネの処理など、変更点は多い。

 

漢字に斜体は合わない。難航するデザイン作業

しかし、作業は難航した。なぜなら、漢字には、右に傾く斜体という概念が存在しないからだった。以前のロゴタイプでは、漢字は「騰訊」だけだったので、そう大きな問題ではなかったが、多くの漢字を作る書体となると、この斜体の扱いが難しい。

漢字は、字画が複雑なので、斜体にするとバランスが悪くなり、字によっては、右に傾き崩れるような不安感を感じてしまう。そこで、以前のロゴタイプでは14度傾いていたものを11度まで弱めたが、それでもバランスが悪い字が出てくる。

そこでデザイナーたちは、漢字の終画のハネ、ハライに注目をした。このハネなどをなくして、ゴシック風に断ち切ってしまうと、傾いている感覚が視覚的に弱まるのだ。この小さな工夫を積み重ねることで、実際は11度傾いて設計されているものの、視覚的には8度程度しか傾いていない感覚に仕上げることに成功をした。

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グループ全体がテンセント書体を使ってロゴタイプを作る

このようにしてテンセント書体が生まれた。グループ企業は、ロゴタイプを1からデザインしなくても、このテンセント書体を使って、文字を並べるだけでロゴタイプが作れることになる。

テンセントのグループ企業にの中には、「テンセント」の名前が含まれていない企業もある。それでも、同じ書体を使うことで、消費者にグループ企業の一員であることをそれとなく伝えることができるのだ。

ひとつの書体を作るには、時間もコストもかかる。しかし、グループ企業が多いのであれば、各企業がバラバラにロゴタイプをデザインするよりは、コストが節約でき、なおかつ消費者にグループの一体感を伝えることができる。

今後、中国企業、そして日本企業でも、このような企業書体を作って、グループ全体で使うというケースが増えていくかもしれない。

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▲テンセント書体を使ったグループ企業のロゴタイプ。同じ書体を使うことで、ロゴタイプのデザインコストを抑えるだけでなく、グループ企業としての一体感を消費者に伝えることができるようになった。

 

格差社会ではなくなりつつある中国社会。中間層が厚く。

クレディスイスリサーチが、「Global Wealth Report 2017」を公開した。目立っているのが中国の躍進と日本の凋落だ。中国の躍進ぶりは変化をしてきて、中間層が厚くなり、次第に国内格差が解消されてきていることが見て取れる。

 

米国と中国の二人勝ち。日本とエジプトの二人負け

世界の富を分析したクレディスイスリサーチのレポートで、目立っているのが中国の躍進と日本の凋落だ。

国別で、富を1000億ドル以上減らしたのは、エジプトと日本の2カ国のみ。増減比率でも、エジプトが突出をして-49%、日本とトルコが-6%となった。一方で、米国、中国、欧州各国は堅実に富を増やしている。

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▲2016年と2017年の富の増減。米国と中国が大きく伸ばし、欧州各国も堅調だ。日本とエジプトが大きく減少している。

 

中間層が分厚くなってきた中国社会

中国が成長を始めて20年になるが、ここ最近、中国の躍進ぶりの中身が違ってきている。

資産の多さで10等分をして、それぞれの階級がどのくらい存在するかを視覚化したグラフを見ると、富の偏在ぶりが見えてくる。例えば、北米は10(富裕層)が突出して多く、1(貧困層)も多い。富の格差が深刻な度合いまで進んでいることがわかる。欧州は、7以上のボリュームが厚く、豊かな人が多い健全な社会であることがわかる。

アフリカやインドは5以下のボリュームが厚く、貧困層が多い。中国もつい最近まではアフリカやインドとよく似た形をしていたが、現在では、5から9の中間層+富裕層のボリュームが厚くなっている。欧州ほど豊かではないものの、中間層の躍進が目覚ましく、国全体で豊かになってきていることが見て取れる。

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▲富裕層(10)から貧困層(1)までの国別分布。北米は富裕層と貧困層にきれいに分離した格差社会になっている。中国は意外に中間層が厚い総中流社会へと変化した。

 

意外に少ない中国の富裕層、意外に多い日本の富裕層

中国と言うと、「ごく少数の大金持ちと多くの貧困者からなる格差社会」というイメージを持たれている方も多いかもしれない。しかし、中国は意外に富裕層(資産100万ドル以上)の数は多くない。

世界の富裕層の割合は、米国人が43%と圧倒的に多いが、中国人は5%と意外に少ない。一方で、日本人は7%もいて、欧州を抑え、米国につぐ第2位の多さだ。

中国の富裕層は195.3万人。日本は269.3万人で、富裕層の数では中国はまだ日本に追いつけていない。ただし、日本は2016年から33.8万人も富裕層が減るという減少傾向が続いているので、うかうかしていると抜かれてしまう(ただし、クレディスイスの予測では、日本の富裕層は2022年に382.1万に増加すると予測されている)。

 

崩壊しそうでしない中国の成長の秘密は「分厚い中間層」

日本のメディアは、10年以上も前から「今年こそ中国経済は崩壊する」と論評し続けて、中国はその不安を退け、堅実な経済成長をしてきた。その秘密は、格差社会が解消され、中間層が厚い総中流社会へと構造変化してきたことにあるのかもしれない。

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消費者は深夜にベッドの中で衝動買いをする

ロンドンを拠点にする広告代理店グループ「WPP」傘下の調査会社ウェーブメーカーは、「中国消費者のリアルなスクリーン体験(China Consumers’ Real Screen Behaviour)」を公表した。消費者自身が考えている時間の使い方と、実際の時間の使い方の差に注目するというユニークな内容だ。

 

自己認識している行動と実際の行動のギャップに注目

消費者がPCやスマートフォンで何をしているか。調べる方法は、いくつもある。アンケート調査により自己申告してもらう方法もあるし、アクセス量を調べて統計的に実際の行動を調べる方法もある。

この調査では、消費者の自己申告による行動と実際の行動のギャップに注目するというユニークな分析手法を採用した。このギャップから、消費者の潜在的欲求を探りだすことができるのだ。例えば「夜はあまりテレビを見ていない」と自己申告しているのに、実際は見ているとすると、それは本人は意識をしていないのに「ついつい見てしまっている」潜在的な欲求に基づく行動ということになる。

これをどうマーケティングに利用するかはケースバイケースだが、例えば「本人はテレビを1時間しか見ていない」と認識しているのに、実際は2時間見ている場合、潜在的欲求が強いのだから、適切なコンテンツやサービスを提供することで、よりテレビを見てくれるようになるかもしれない。一方で、テレビを2時間見ていると認識しているのに、実際は1時間しか見ていない場合、潜在的欲求が低下しているので、なにか手を打たなければ、テレビをますます見なくなってしまうかもしれない。

もちろん、こんな単純なものではないが、自己認識している行動と実際の行動のギャップを見ることで、さまざまなことが推測できるようになる。

 

寝る前の深夜にスマホ利用のピークがある

ウェーブメーカーは、まず、時間ごとにスマートフォン、PCの利用回数のデータを取った。すると、多くの人が想像する通りの結果が得られた。

PCよりもスマートフォンを使う頻度の方が圧倒的に多く、使う時間は朝方と夜にピークがある。

しかし、新しい発見があった。それは、スマートフォンでは深夜12時から1時の間に小さなピークがあり、PCではこのようなピークは見られないということだった。誰もが想像するのは、寝る前にベッドの中でちょっと使うというパターンだろう。

この「寝る前のピーク」は大都市の市民ほど顕著になる。1級都市、2級都市の消費者の行動と、3級都市、4級都市の消費者の行動に分けて見ると、。1級都市、2級都市では強いピークが見られた。つまり、大都市の消費者ほど、「寝る前にちょっと使う」傾向がある。

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スマホアクセスは、朝方と夜にピークがあるのは予想通り。しかし、寝る前の深夜にも小さなピークがあることが新たにわかった。

 

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▲1級、2級都市の消費者と3級、4級都市の消費者での比較。明らかに大都市である1級、2級都市の方に「深夜寝る前のピーク」が強く現れている。

 

寝る前に「ついつい」お買い物をしてしまう

では、この「寝る前のピーク」で、消費者は何をやっているのだろうか。SNSECサイト、ゲーム、天気アプリの4つについて、消費者に「どの時間に使っていたか」(自己認識している行動)を尋ねた頻度と、実際のアクセス数(実際の行動)を重ね合わせてみた。

すると、ECサイトの利用は、一般的な常識と大きく違っていることが判明をした。常識では、ECサイトへのアクセスは、昼休み、夕食後が多いと言われる。消費者への自己認識も、昼休みと夕食後の時間にピークがあるというものだった。しかし、実際のアクセス数を見ていると、意外に朝早い時間帯にピークがあり、深夜にもピークがあった。夕食後の時間のアクセスは実際はそうは多くない。

SNSの利用も同様の傾向が見られ、SNSECサイトへのアクセスが「寝る前のピーク」を作っていることがわかった。

つまり、朝と深夜寝る前は、本人が「そんな時間にあまり使っていない」と認識しているのに、実際は使っている時間帯で、潜在欲求に従って「ついつい」アクセスしてしまう時間帯だと考えられる。適切なプロモーションを行うことで、消費欲を刺激することも可能になるかもしれない。

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SNSの利用を、自己申告と実際で比較をした。本人は「その時間帯にはあまり使っていない」という認識なのに、実際は、朝方と深夜によく使われている。いわゆる「ついつい使ってしまう」時間帯だ。

 

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ECサイトも、朝方と深夜に「ついつい使ってしまって」いる。この時間帯を踏まえた商品設計、プロモーションなどを行うことで、ECサイトの売り上げを伸ばすことができるかもしれない。

 

寝る前の時間帯を狙ってのプロモーションが効果的?

実際、SNSのアクセスとECサイトのアクセスは、きれいにシンクロする。SNSでさまざまな商品を紹介する情報に出会い、そのままリンクをたどってECサイトにアクセスをしている。深夜のピーク時は、「寝る前にちょっとSNSをチェックしてから寝よう」と考え、興味のある商品情報に出会い、そのままECサイトにアクセスをしているのではないかと推測できる。このときは、他の時間帯よりも衝動買いをしやすくなっているかもしれない。

深夜のピークにどのような商品が売れるか、SNSのどのように反応をしてECサイトに移動をしているかなど、まだ調べなくてはならないことはたくさんある。しかし、「夕食を食べてからゆっくりとネットショッピング」という人は実はそうは多くなく、実際は朝方出勤前と深夜寝る前にネットショッピングをしている人が多いのだ。そこを踏まえた商品の品揃え、プロモーションを行うことで、ECサイトはより売り上げを伸ばすことができるかもしれない。

この調査は、あくまでも中国の18歳から45歳までの都市住民に対するもので、日本の消費者が同じ行動をとっているかどうかはわからない。しかし、日本でも同じ調査をしてみると、新たな発見があるかもしれない。