中華IT最新事情

中国を中心にしたアジアのテック最新事情

11月11日独身の日。狂乱の1日までアリババのデスマーチは続く

いよいよ、11月11日独身の日がやってくる。中国全土で、単身者が「自分へのご褒美」として、ECサイトで買い物をする日で、アリババが運営するタオバオ、T-mallの売り上げだけで、1兆5000億円を超えるという狂乱の1日だ。しかし、その裏では、準備作業のために200名のエンジニアがデスマーチを続けていると今日頭条が伝えた。

 

20日前から200名のエンジニアが準備作業に入る

11月11日独身の日は、消費者にとっては楽しい1日だが、エンジニアたちにとっては、悪夢の1日だ。ECサイトに10億件の注文が殺到することになり、これは下手なサイバー攻撃など足下にも及ばないアクセス量になる。万が一、サーバーダウンでも起こりようものなら、1兆5000億円の売り上げが飛んでしまう。

そこで、アリババでは、10月20日午後11時に、200名のエンジニアが緊急招集され、準備作業が始まった。その様子は、まるで国家的大規模サイバー攻撃を受けた防衛軍のような有様だった。

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▲やるべきことは、アクセス帯域の適正配分。しかし、シミュレーションをしてみるとさまざまな問題が噴出する。エンジニア同士が本気の喧嘩になることも普通にあるという。

 

いったんすべてのアクセスを停止して、流量を正確に測定する

準備作業の最初に行われたのは、アクセス流量の正確な測定だった。タオバオ、T-mallでは、消費者のアクセスの他にも、販売企業、銀行、物流企業との通信も行われている。午後11時から、いったんこの500社との通信を遮断。1件の注文に対して、どのくらいのアクセス流量が発生するのかが正確に計算された。

そして、どの経路にどのくらいの帯域を割くのが最も効率的なのかが計算され、それに従ってシステムを調整していく作業が11月11日まで続いていく。

限られたリソースで、10億件の注文をさばくには、このような工夫が必要で、もし何もせずに11月11日を迎えてしまったら、数秒でシステムダウンしてしまう。

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▲作業室は常にこの状態。ここで3週間、24時間勤務することになる。尋常な神経では脱落してしまうという。アリババに勤めるのは楽ではない。

 

エンジニアたちの過酷なデスマーチは11月11日まで続く

帯域の適正配分作業は簡単ではない。途中、シミュレーションをしながら、問題がないかどうかを確かめながら、作業は進められるが、そのシミュレーションで、どこかの経路がオーバーフローすることがたびたび起こる。そのたびに、関係するエンジニアが集まり、解決策を議論していく。

この問題点をつぶしていく作業は、11月11日当日まで続く。エンジニアたちは、それまで毎日仮眠時間3時間、休日なしという過酷な労働を強いられることになる。それでも不平を言うエンジニアはいない。中国のECサイトにとって、11月11日は1年でいちばん輝く日、誰もが興奮の渦に包まれる日だからだ。

エンジニアたちは、11月11日、独身の日を無事乗り切ったら、翌12日に、自分へのご褒美をタオバオかT-mallで買うつもりだという。

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▲仮眠室では、常に誰かが死んだように寝ている状態。これが約3週間続く。いわゆるデスマーチ状態だが、11日という限りがあるので乗り切れるのだという。

 

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▲この環境では、食事だけが唯一の楽しみだが、それも1週間が限度で、2週目からは味もわからなくなるという。

 

 

むやみにクラクションを鳴らす車は、自動認識、違反切符を自動発行いたします

中国で問題になっているクラクション洪水。むやみにクラクションを鳴らす車を、指向性音センサーを使い、自動認識し、ナンバーを自動解析、自動で違反切符を発行するという取締システムが、主要都市で稼働し始めたと看看新聞が伝えた。

 

日本も昔は、街はクラクション洪水だった

海外の街に行き、途上国感を感じる最大のものは、街がクラクションの音でやかましいことだ。大通りが、クラクションの音の洪水に溢れていると、「途上国にきた」ということを実感する。

日本も60年代前半は、街はクラクションの洪水だったそうだ。信じられないことに、渋滞が発生すると、止まっていた車が一斉にクラクションを鳴らし始める。前に進みたいのに進めないというストレスを発散させるために鳴らしていたのだという。そんな状態で鳴らしたところで、なんの意味もないのだが。

これが変わったのは、1964年の東京オリンピック前のマナー運動だったという。無意味にクラクションを鳴らすことは道交法違反であるということを周知徹底し、街頭でボランティアが啓蒙活動をした。それ以来、日本の道路は静かになった。

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▲指向性の高い音センサーで、クラクションの音を感知。カメラで撮影し、画像解析でナンバーを読み取る。

 

「合流時にクラクション」マナーが定着してしまった中国

中国でも、クラクションの洪水が問題になっている。中国では、自動車台数が急激に増加し、それに合わせて急ピッチで道路整備、都市高速の整備が行われてきた。そのため、どこの都市でも、ファスナー合流が異常に多い。この合流をするときに、左車線の車と右車線の車が、どちらかが先に入るかで、意地を張りあい、接触事故を起こすことになる。

そこで、自然にクラクションを鳴らすマナーが定着していった。合流で競り合いになったときに、先にクラクションを鳴らした方に優先権があり、鳴らされた方は譲るというマナーだ。本来のクラクションの使い方とは異なるが、余計な事故を起こしたくないことから生まれた知恵のひとつだ。

しかし、合流だらけの中国の都市で、合流地点では年がら年中、クラクションが鳴らされることになり、街はうるさい。2008年、北京オリンピックの前には、警官が大量に街に出て、クラクションの取り締まりを厳しく行った。その成果か、2008年ごろの中国の都市は、気味が悪いほど静かになった。しかし、北京オリンピックが終って数年後から、以前の状態に戻ってしまったようだ。

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▲信号機に取り付けられた音センサーと撮影用カメラ。左下の電光掲示板には、違反車両のナンバーが表示される。

 

音を認識、ナンバーを自動読み取り、自動で違反切符まで

そこで、交通部が投入したのが、自動クラクション取り締まり装置だ。街灯の信号機に、指向性のある音センサーを設置。違法に鳴らしたクラクションを察知すると、カメラによる画像解析で、その車のナンバーを特定。電光掲示板に、ナンバーを表示する。現在、このシステムの試験中ということもあって、自動車の所有者に対する減点は行われないが、50元の罰金の違反切符はきっちりと送られるそうだ。

このシステムは、上海、石家庄、北京、南京、重慶、深圳での運用が始まっている。交通部では、このシステムを広げることで、静かな街を取り戻したいとしている。

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▲電光掲示板には違反車両のナンバーが表示される。もちろん、違反切符も自動発行される。

 

 

街頭広告が未来になる。盛り上がる3Dホログラム広告

江蘇省南京市東南大学の工学系大学院を卒業した学生たちが立ち上げたスタートアップが開発した3Dホログラムが、世界的な話題を呼んでいる。LEDが配置された羽根を回転させることで、あたかも空中に3D映像が浮かび上がっているかのように見えるというものだ。広告や街頭ディスプレイを未来化するのではないかと注目されていると捜狐が伝えた。

 

LED扇風機が描き出す3Dホログラム

棒状の装置にLEDを並べ、点滅を制御させながら動かすことで、空中に文字や文様を描くという製品は今までにもたくさんあった。棒がメトロノームのように往復し、空中に商品名やメッセージを描き出すという店頭ディスプレイは、いくつかの小売店でも実際に使われている。

しかし、基本的には同じ原理であっても、このスタートアップ南京斯琪数字科技有限公司(英文名DSEE.LAB)のディスプレイは次元がまったく違う。LEDスティックが扇風機のように毎分2500回転し、立体感のある映像を浮かび上がらせるのだ。まるで3Dのホログラムのように見える。


| 9GAG | Handheld LED fan with 3d visuals 😎

▲映像は、回転面に表示されているだけだが、映像が回転、移動するように撮影されているので、あたかも3Dであるかのように錯覚をする。

 


Hologram screen blows people away

▲映像を回転させるのがポイント。これであたかも立体であるかのように錯覚をする。

 

あたかも立体かのように錯覚する空中映像

厳密に言えば、回転面に平面的な映像が見えるだけで、実際に立体になっているわけではない。立体に見えるのは、映像そのものの工夫だ。静止画であれば回転をさせる、平面画であれば動きを加える。こうすることで、あたかも立体であるかのように錯覚をする。

近距離から、角度をつけて見れば、もちろん立体に見えず、平面であることがわかってしまう。しかし、ある程度の距離がある正面から見れば、立体に見える。LEDスティックは高速回転をしているので、目には見えない。空中にホログラムが浮かんでいるかのようにしか見えないのだ。

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▲DSEE.LABの創設者である孫簡COO。学生時代から、3Dホログラムを開発し、BMW、ベンツ、ホンダなどの自動車会社のイベントで公開をしてきた。

 

国際的に注目され始めた3Dホログラムディスプレイ

DSEE.LABでは、すでに南京市だけではなく、北米、ドイツ、シンガポールに支社を設立、ファストフード、宝飾品、不動産などのディスプレイとして活用されている。

この装置、Dsee-50は、一般でも購入することができ、価格は3699元(約6万4000円)。羽根のサイズは50cmで、512×512の映像を表示することができる。100cmクラスの装置もあり、こちらは価格が3万4999元(約60万円)、さらに150cmまでの受注生産を行っており、価格は応相談だ。

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▲不動産のモデルルームでは、販売する部屋の立体間取り図が表示されるという面白い応用例。

 

ロンドンではkino-moが創業。街頭広告は未来になっていく

要は扇風機なので、低電力であり、設置工事も一般的な街頭ディスプレイから比べれば簡単だ。さらに、Wi-Fi対応で、映像は自由に送信できるので、日によって、時間によって、表示する映像を変えることも可能だ。

ほぼ、同じコンセプトで、ロンドンのスタートアップkino-moも同様の製品の発売を始めた。DSEE.LABでは、創業者の孫簡が、学生時代から中国国内で、BMW、ベンツ、本田、コカコーラなどのイベントで立体ホログラム装置を提供していたので、kino-moとほぼ同時期に同じアイディアを思いついていたことになる。今後は、国際市場で、kino-moと切磋琢磨しながら競争する。

街頭ディスプレイとしても、価格が安く、設置も簡単。そして、消費者の目を引き、話題にもなる。なんらかのきっかけで、街頭広告が一気に3Dホログラムに変わっていく可能性もある。広告は、一足先に未来になっていくかもしれない。

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▲kino-moは自転車広告にも利用しよとしている。広告ではなく、個人の自転車用として販売しても受けそうだ。

 

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▲ライバルとなるkino-moの広告ディスプレイ。単なる映像にすぎないのだが、妙に未来っぽい。

 

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アップルストアにもkino-moが使われたことがある。通行人はみな驚いて歩みを止める。

 

 

中国は再び自転車の王国に。北京に自転車専用の高速道路

シェアリング自転車のサービスが始まって、中国人はすっかり自転車の魅力に囚われてしまったようだ。北京市は、高まる市民の自転車熱に押されて、自転車専用の高速道路を建設することを発表したと環球網科技が伝えた。

 

自転車は、人間にいちばん適している交通ツール

人と乗り物の関係は、自転車に始まり、自転車に終わるようなところがある。子どもの頃、初めて手にした乗り物は自転車であるという人が多いだろう。それからバイクになり、自動車になり、人によっては飛行機を操縦しと、速さを追求しても、結局最後は自転車に戻ってくる。

1km走るのに最もエネルギー消費の少ない乗り物は自転車だ。そして、自転車は速度が人間の認識力に合っている。走りながら、周囲の景色を感じ、理解し、考えるのにちょうどいい速さなのだ。自動車や飛行機では、速すぎて、周囲の景色は、ただの背景画になってしまうか、場合によっては映像ノイズにすぎなくなってしまう。人間の筋力だけで前に進むことができる自転車は、人間にとって最も心地のいい速度で移動できる道具なのだ。

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貧しさの象徴だった中国の自転車は、今や最先端の移動手段

中国がまだ貧しかった頃、中国のイメージと言えば、天安門広場付近の長安街を走る大量の自転車だった。それしか移動手段がないからで、自転車は中国の貧しさの象徴だった。

改革開放を経て、中国が豊かになると、人々は自転車を忘れるようになった。それも、貧しさの象徴であった自転車を意図的に忘れるようにした。みな、自動車を欲しがり、長距離を移動するときは、高速鉄道や飛行機に乗りたがった。

しかし、貧しさを知らない90年代生まれ、00年代生まれの若者たちが社会の中心になると、彼らは再び自転車に関心を持つようになった。中国に住む外国人たちが、ロードバイクロードレーサーといった貧しさの象徴だった中国の自転車とは、まったく違った自転車を持ち込むようになったからだ。

中国の大都市の中で、若者の人気のおしゃれな街と呼ばれる場所には、オープンカフェとサイクルショップが立ち並ぶようになった。

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▲1970年代の中国の自転車。市民は、自転車ぐらいしか交通手段を持つことができなかった。自転車は、中国の貧しさの象徴だった。

 

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▲現在のシェアリング自転車に乗る人たち。都市交通の「最後の1km」問題を解消する手段として始まったシェアリング自転車は、人間の認識能力に適した速度の移動手段として、若者を中心に愛され始めている。

シェア自転車も、時間貸しからサブスク方式へ

このタイミングで、シェアリング自転車のサービスが始まった。シェア自転車は、都市交通の課題だった「最後の1km」問題を解決するという実用的な面だけではなく、若者たちが自転車に関心を持ち、好感を抱いているという情緒的な面でも、ぴったりのタイミングだったのだ。

多くの若者が、自転車を「最後の1km」を補う都市交通の補助手段としてではなく、移動するための主要な手段とし始めている。シェアリング自転車も、本来は1分間いくらという「時間貸し」から始まったが、このような変化を受けて、1ヶ月単位での使い放題という「サブスクリプション」オプションを採用し始めている。

 

自転車専用の高速道路が続々と計画中

10月、北京市城市道路養護管理センターの甘鋒副主任は、北京は自転車専用の高速道路の建設を検討すると公表した。ルートもすでに考えられており、体育公園(オリンピック公園)を起点に、ショッピングセンター、新素材研究団地、中関村などの先端地域を結ぶというものだ。道路幅は、5mから7m程度を想定しており、2車線を取り、自転車が対面通行できるようにする。

道路は前線閉鎖式で、交差点はなく、当然信号もない。歩行者とバイク、自動車は入ることができず、高速で自転車が走ることができるようにするという。

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▲北京で計画されている自転車専用高速道路。実は、中関村のIT企業に務める人が多く住む地域を結んでいる。通勤に自転車を利用することで、都市交通のボトルネックを解消する計画だ。

都市交通のボトルネックを自転車高速道路で解消する

これは、自転車の愛好者のための道路でもあるが、都市交通の弱点を解決するための方策でもある。中国のIT企業が集中する中関村で働く人の多くが、高級マンション群が並ぶ上地や回龍観に住んでいる。しかし、直接中関村に到達する高速道路や地下鉄がないために、通勤に時間がかかっていた。

この自転車専用高速道路が開通すると、中関村から6.3km離れた上地からは25分で、13.9km離れた回龍観からは50分で通勤することができる。中関村で働くIT関係者の多くは、自転車が好きであり、健康にも気を使うことから、自転車通勤を望む声が高いのだという。

すでに中国では、交通ツールの変化が起きている。北京市では、この5年間で、オートバイの通行量は18.24%から6.13%と激減をしている。一方で、通行人が4.42%増え、自転車が51.85%も増加している。

 

自転車を利用して、都市交通を効率化させていく

増加する乗り物の専用道路を作り、優先をすることで、都市交通全体が効率的になり、市民全員がスムースに移動できるようになる。北京市城市道路養護管理センターでは、自転車専用道路は、都市交通を効率化させる大きな力になると考えている。

他の都市でも、状況は似ていて、次々と自転車専用道路の建設が始まっている。アモイ市では、高速道路を横断するための見事な自転車専用ループ橋が開通し、大きな話題となり、早くも観光名所のひとつになろうとしている。

自転車しか移動手段のなかった中国は、改革開放と経済成長を経て、再び自転車大国になろうとしている。

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▲アモイ市に建設された自転車専用のループ橋。市民から歓迎されているだけでなく、観光資源ともなり、話題を呼んでいる。

 

アリババが、無人スーパー、顔認証レストランに続き、無人レストランを開店

アリババのサプライズが止まらない。無人スーパー、顔認証レストランと、最先端IT技術を投入した店舗を次々と実現してきたが、次は「無人レストラン」を杭州市に開店した。スタッフがオーダーを取りにくることもなく、レジで支払いをすることもなく、財布もスマートフォンも不要のレストランになったと電商極客が報じた。

 

スマートフォンも不要。決済も顔認証決済

この無人レストランを利用するには、事前にタオバオかアリペイの会員になり、自分の顔写真を登録しておく必要がある。決済は、顔認証で紐づけられたアリペイ口座から行われる。この事前登録をしておけば、スマートフォンを持っていく必要はない。

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▲視察にきたジャック・マー会長。ホラ吹きとまで呼ばれるほど、近未来世界を口にしてきたが、そのほとんどを実現している。今、世界で最も注目されているビジョナリストの一人だ。

 

テーブルで、メニューを操作して注文

レストランに入ったら、空いている席に座る。この無人レストランの最大の特徴は、テーブルがモニターになっていて、テーブル全体にメニューが表示されるという点だ。座るだけで自動的に顔認証が行われる。

このテーブルに表示されるメニューは、同時に複数の人が操作をすることができる。また、パーソナライズもされていて、その人におすすめのメニューが表示をされる。さらに、同じ料理でも辛さを調節するなどのオプションも指定できる。

このテーブルは、タッチパネルではなく、Kinectのようなモーションで操作をする。手をかざしてアイテムを移動させたり、手で払うようにスワイプをする。

注文が決まったら、その時だけ、タッチをする。すると、バックヤードキッチンに伝わり、料理が作られ、できあがると、このときだけスタッフが料理を運んでくる。料理を待つ間、テーブルではゲームも楽しめる。4人テーブルでは麻雀ゲームも用意されているという。

食事が終わったら、そのまま席を立って帰るだけ。自動的にアリペイの口座から代金が引き落とされる。

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▲テーブルの操作は、タッチではなく、モーション。これを体験するだけでも、行く価値のあるレストランだ。

 

目標は、数年で10万店舗

アリババによると、このレストランのランニングコストは、一般のレストランの1/4になるという。数ヶ月、杭州店で、問題点を洗い出し、一気に中国全土に広げるという。目標は数年間で10万店舗を達成することだという。

この無人レストランは、開発、運営をしているアリババよりも、ネット民たちが興奮気味だ。客の目の前に現れるスタッフは、料理を運ぶスタッフと食器を片付けるスタッフだけで、そう遠くない将来ロボットに置き換えられるのではないかとネット民たちは期待をしている。また、バックヤードキッチンの様子は報道陣にも非公開だったが、ネット民たちは「すでに人間ではなく、ロボットが料理を作っている」と噂している。そんなことはないと思うが、相当に自動化、機械化をしていることは間違いないだろう。

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▲テーブルメニューは腕のモーションで操作する。複数人で、同時に操作することも可能だ。ゲームもできるようになっており、このテーブル体験が、このレストランのウリになっている。

 

大ボラを次々と実現してきたジャック・マー会長

この10万店舗という強気の目標に対して、一部では、「また、ジャック・マーの大風呂敷では?」という声もあがっている。アリババのジャック・マー会長は、常に世の中が驚くような発言をする。「銀行を変える」「スタッフのいない無人スーパーを開店する」「スマートフォンもいらない顔認証のレストランを開く」。そのような発言のたびに、世間は「ジャック・マーはホラ吹き」と嘲笑ってきた。しかし、アリペイで銀行を変えてしまい、杭州市にAmazon Goよりも先に無人スーパーを開店し、顔認証レストランKProを開店してきた。

ホラのような大風呂敷を広げながら、着実に現実のものにしてきている。この無人レストランの「数年で10万店舗」という発言も、実現の可能性は決して低くない。コンビニなどのイートインコーナー、百貨店やスーパーの一角のイートインコーナーなどには最適なシステムだからだ。料理はレトルトやファストフードの類になってはしまうが、運営側からは、人手も必要なく、飲食の専門知識も必要ない。大規模なレストランよりも、4人から20人程度の小規模イートインコーナーに向いているシステムだ。

もし、アリババがそのような用途を想定しているのだとしたら、10万店舗達成はまったく無謀ではなく、むしろ控え目な数字だと言うべきだろう。

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京東が無人運転車を開発し、無人配送に挑戦

中国ECサイト大手「京東」は、今年7月にドローン配送を始めることを宣言し、すでに過疎地でのドローン配送を始めている。さらに、京東は無人運転車を開発して、車による無人配送も始めようとしていると財新網が報じた。

 

「当日配送」で成長してきたECサイト「京東」

中国ECサイト「京東」は、アリババのタオバオ、Tモールほど、国際的知名度はないが、中国国内では圧倒的な人気がある。その理由は、迅速な配送だ。配送業車「順豊」と提携し、大都市部では、翌日配送、当日配送を実現している。さらには、スマートフォンから、届け先を自宅、職場、指定地点に変更することもでき、「自分で百貨店に買物にいくより便利」ということから、人気を博している。

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すでに始めているドローン配送。次は無人運転車配送

京東は都市部ので迅速配送を農村部までに広げるために、今年7月には、205億元(約3500億円)をかけて、ドローン専用飛行場を数百カ所建設し、ドローン配送を始めることで、中国国内のすべての地域での24時間配送を実現すると宣言していた。そして、今年9月には、一部の農村地区で、現実にドローン配送を始めている。

この「24時間配送」を実現するもうひとつの手段が、無人運転による配送車だった。

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▲すでに始まっているドローン配送。ドローンのコントロールセンターでは、すべてのドローンの位置と状態が一括監視されている。

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中規模都市での配送を担当する無人運転

今年5月、京東社内に「X事業部」という謎の部署が新設された。この事業部が、無人運転配送車の開発部署だった。上海汽車の開発した電気自動車EV80を、そして東風汽車が開発した電動カートを使い、無人運転を実現し、これに配送を行わせるというものだった。

京東の広報担当者は、財新網の取材に応えた。「無人運転はじゅうぶんに実現できるという感触を得ています。現在は、路上試験の段階なので、担当者が乗車し、万が一の事態に備えていますが、将来は完全に無人で貨物を輸送することになります」。

X事業部の肖軍副総裁は、財新網の取材に応えた。「ドローンは、主に農村地区の”最後の1km”の配送を担当します。無人貨物車は、都市の中での配送を担当することになります」。

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▲すでに試験運転が始まっている無人運転貨物車。マンション群、オフィスビルなどの拠点まで運び、そこから先は、クラウドワークで募集したアルバイトが各戸に届ける。

 

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無人運転技術は、通常の自動車に後付けで載せられる。場合によっては、有人運転にすぐに切り替えられるからだ。

 

無人運転技術は、「商用」「貨物」の分野から導入される

無人運転技術は、すでに実用化寸前の段階まで成熟してきたが、いくつかの問題を抱えている。ひとつは、まだ社会から信頼を得ていないということだ。自家用車として無人運転車を販売しても、一部の新しもの好きが買うだけで、一般の人はまだまだ様子を見たいと考えるだろう。

もうひとつの問題は、車両価格が一般の自動車の数倍になってしまうことだ。これも自家用車には向かない。高額の代金を支払うのであれば、多くの人は人間が運転する高級車を購入して、運転の楽しみを味わいたいと考えるだろう。

そこで、無人運転技術を持つ自動車メーカーの目が向き始めているのが商用車だ。車両価格が高くなっても、商用車であれば運転手の人件費が不要になるので、総コストを抑えることができる。

人を輸送する観光バス、路線バスなども無人運転技術を持つ自動車メーカーが注目をしているが、万が一の事態が起きた場合に、人命に関わることから導入は慎重にならざるを得ない。また、人を運ぶということは、人の活動時間である昼間しか利用できない。

一方で、貨物輸送であれば、万が一の事態が起きた場合でも、貨物の損害だけで済み、しかも昼間だけでなく夜中まで24時間、稼働できることは大きい。

無人運転技術は、商用車、特に貨物輸送車に目が向かおうとしている。

京東は、無人配送車をいち早く実現して、中規模都市での24時間配送を実現したいとしている。

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▲京東のX事業部が上海汽車と共同で開発した無人運転配送車。中規模都市での無人配送を実現する。

 

香港では、浸透しないスマホ決済。その理由とは?

スマホ決済のアリペイ、WeChatペイは、中国の都市部では、最も利用されている決済手段になっている。もはや、現金で支払う人はごく少数派で、現金を持っているのは地方や海外から来た旅行者ばかりだ。しかし、同じ中国でありながら、香港ではほとんど普及をしていない。欧界は、4つの理由があると伝えた。

 

中国のモバイル決済市場は、米国の90倍

中国の本土では、アリペイ、WeChatペイのスマホ決済が、最も利用される決済手段になっている。米ワシントンポストは、中国と米国のモバイル決済市場の大きさを比較した報道を行った。それによると、2011年の段階では、中国150億ドル、米国83億ドルと、さほど大きな差ではなかったものが、2016年には米国が1120億ドルと急成長をしたのに、中国は9兆ドルと輪をかけて驚異的な成長をし、米国モバイル決済市場の90倍の規模となっている。

中国のモバイル決済市場が急成長した理由は単純だ。「どの店でも使える」環境を構築できたからだ。現金と同じようにどこの店でも使えるのだから、現金よりも便利な点が多いモバイル決済を利用するのは当たり前の話だ。

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決済手段普及の鍵は、加盟店の参入障壁を低くすること

では、なぜ「どの店でも使える」環境が構築できたのか。これも理由は単純だ。加盟店の手数料を実質ゼロにして、審査も不要にした。一般的なネットサービス感覚で、アカウントを取得して加盟店となることができる。クレジットカードのような立て替え払いではなく、即時決済なので、信用度を審査する必要もない。

手数料も、銀行口座への振込時(現金化)の際にかけるので、大手企業は現金化をせざるを得ないため、手数料を支払う必要が生まれるが、露天屋台や家族経営の小規模店舗では、自分の個人的な支払いもスマホ決済にしてしまえば、現金化する必要がなくなり、手数料を支払う必要がない。

大企業から低率の手数料を取り、小商いから手数料を取らない。この発想により、チェーン店から露天屋台まで、あらゆるお店でスマホ決済が利用できるという環境が生まれた。

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香港ではまったく普及していないアリペイ

しかし、香港では、このスマホ決済がほとんど普及をしていない。今年5月、アリペイ香港が、香港でアリペイサービスを始め、開始2週間で10万ユーザー、加盟店4000店舗を達成という発表を行った。

しかし、この数字はあまりにも小さすぎる。本土では5.7億ユーザーが利用しているので、香港のユーザー割合は0.02%でしかない。香港の人口、都市の規模を考えると、あまりにも小さすぎる数字だ。

 

クレジットカードと交通カードがアリペイの成長空間を奪っている

欧界は、香港でスマホ決済が浸透しない理由は4つあるとした。まず、香港は、中国本土と違って、クレジットカードがかなりの割合普及をしているということがある。また、「八達通」という交通カードが20年前から使われていて、地下鉄やバス、タクシーなどの交通の支払いだけでなく、日本のスイカと同じように、駅ビル内の店舗での支払い、食事などに使える。

高額消費はクレジットカードで、少額消費は交通カードでというスタイルが定着をしていて、そこにわざわざスマホ決済を使う理由が見当たらないというものだ。

中国本土では、クレジットカードがほとんど普及をせず、交通カードは交通機関だけに限定をされていて、市民は手軽に使える電子決済を求めていた。そこにスマホ決済が登場したので、一気にスマホ決済に移行したという経緯がある。

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▲香港では、交通カードとして「八達通」が20年前から使われている。日本のスイカと同じように、駅ナカの店舗や飲食店でも利用できる。これがスマホ決済の普及を阻んでいる。

 

“中国産”への信頼が低い香港

もうひとつの大きな要因が、香港人には、本土の中国人をやや見下す傾向があるということだ。そのため、中国が開発した決済システムに対して、漠然とした不安を持っている人が多い。これが第2の理由。

さらに、香港政府も、アリペイの対面決済をまだ認めず、ネット決済だけに限定をしている。香港政府も、まだアリペイのセキュリティに対して不安を持っているのだと思われる。これが第3の理由。

そして、そもそも香港人が、アリペイに関心を持たない。多くの香港人が“中国産”を嫌うか、無関心なのだ。これが第4の理由。

 

台湾は受け入れ、香港は拒絶する“中国産”

しかし、香港は電子決済の普及が、クレジットカードと交通カードに限定されており、街中でのちょっとした買い物や昼食では、現金決済が幅を利かせている。スマホ決済が進出をする空間は多分に残されている。

香港は、考え方を変え、利便性の高い中国産スマホ決済を受け入れるのだろうか、あるいは今までと同じように「香港は中国ではない」態度を貫こうとするのだろうか。

アリペイ香港は、アリペイとリンクをした金融商品、保険商品を香港で販売することにより、まずアリペイブランドに対する信用を培っていきたいとしている。同じ中華圏でも、香港は、“中国産”を積極的に取り込んでいく台湾とは、対照的だ。

tamakino.hatenablog.com

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