いよいよ、11月11日独身の日がやってくる。中国全土で、単身者が「自分へのご褒美」として、ECサイトで買い物をする日で、アリババが運営するタオバオ、T-mallの売り上げだけで、1兆5000億円を超えるという狂乱の1日だ。しかし、その裏では、準備作業のために200名のエンジニアがデスマーチを続けていると今日頭条が伝えた。
20日前から200名のエンジニアが準備作業に入る
11月11日独身の日は、消費者にとっては楽しい1日だが、エンジニアたちにとっては、悪夢の1日だ。ECサイトに10億件の注文が殺到することになり、これは下手なサイバー攻撃など足下にも及ばないアクセス量になる。万が一、サーバーダウンでも起こりようものなら、1兆5000億円の売り上げが飛んでしまう。
そこで、アリババでは、10月20日午後11時に、200名のエンジニアが緊急招集され、準備作業が始まった。その様子は、まるで国家的大規模サイバー攻撃を受けた防衛軍のような有様だった。
▲やるべきことは、アクセス帯域の適正配分。しかし、シミュレーションをしてみるとさまざまな問題が噴出する。エンジニア同士が本気の喧嘩になることも普通にあるという。
いったんすべてのアクセスを停止して、流量を正確に測定する
準備作業の最初に行われたのは、アクセス流量の正確な測定だった。タオバオ、T-mallでは、消費者のアクセスの他にも、販売企業、銀行、物流企業との通信も行われている。午後11時から、いったんこの500社との通信を遮断。1件の注文に対して、どのくらいのアクセス流量が発生するのかが正確に計算された。
そして、どの経路にどのくらいの帯域を割くのが最も効率的なのかが計算され、それに従ってシステムを調整していく作業が11月11日まで続いていく。
限られたリソースで、10億件の注文をさばくには、このような工夫が必要で、もし何もせずに11月11日を迎えてしまったら、数秒でシステムダウンしてしまう。
▲作業室は常にこの状態。ここで3週間、24時間勤務することになる。尋常な神経では脱落してしまうという。アリババに勤めるのは楽ではない。
エンジニアたちの過酷なデスマーチは11月11日まで続く
帯域の適正配分作業は簡単ではない。途中、シミュレーションをしながら、問題がないかどうかを確かめながら、作業は進められるが、そのシミュレーションで、どこかの経路がオーバーフローすることがたびたび起こる。そのたびに、関係するエンジニアが集まり、解決策を議論していく。
この問題点をつぶしていく作業は、11月11日当日まで続く。エンジニアたちは、それまで毎日仮眠時間3時間、休日なしという過酷な労働を強いられることになる。それでも不平を言うエンジニアはいない。中国のECサイトにとって、11月11日は1年でいちばん輝く日、誰もが興奮の渦に包まれる日だからだ。
エンジニアたちは、11月11日、独身の日を無事乗り切ったら、翌12日に、自分へのご褒美をタオバオかT-mallで買うつもりだという。
▲仮眠室では、常に誰かが死んだように寝ている状態。これが約3週間続く。いわゆるデスマーチ状態だが、11日という限りがあるので乗り切れるのだという。
▲この環境では、食事だけが唯一の楽しみだが、それも1週間が限度で、2週目からは味もわからなくなるという。